大和へ行くには、神社仏閣もいいが、山を見ながら歩くのも楽しい。特に、大和三山の香具山、耳成山、畝傍山を。
1 [三山、なかでも香具山を尊重する思想は、持統朝を頂点とすると述べている。
春過ぎて 夏来たるらし 白たへの 衣干したり 天の香具山
に(天の香具山)とある。万葉集で「天の」という句で修飾されている山は、香具山しかない。
持統天皇は藤井が原にはじめて宮を作って、いったい、どこに立ったのか。彼女は、埴安の堤の上に立って、四方を見渡した。その埴安の池こそ、香具山宮と呼ばれた高市皇子の宮近くにある池で、香具山の西麓にある。
御井の歌は三山の中で香具山から歌いだす。しかも、三山の中で(大和の)とつけられているのは、香具山だけである。
これらから総合すると、香具山尊重の時代は、天武朝の藤原遷都が計画された時代に始まり、持統朝の最初期に確立されていた。]
大和三山というと、畝傍山、耳成山、香具山だが、どうやら、古代人は香具山を中心に風景を見ていたようだ。
2「また、 天の香具山とは、高天の原神話における神山の呼称だ」とも言う。
古事記を読んで、高天原はどこかという、問題がある。関東の鹿島神宮ともいう人もあるし、この奈良の香具山ともいう人もいる。
空想しながら、藤原京を歩くと面白い。
3 舒明天雄略天皇の時代と舒明天皇の時代はかなり間があいている。なぜか。
「万葉集の巻一が雄略天皇御製歌から始まり、次にいきなり舒明天皇の時代に飛び、舒明天皇の国見歌が二番歌にすえられている理由は、皇以降、その皇統に連なる人々が即位してきたこを考えると、舒明以降が奈良時代の人々にとっての「今」の始まりだったのだろう。」と。
4「奈良時代の天皇にとって、飛鳥の地を訪れることは、皇統の創業の地を訪れることであった。田舎に帰って、お墓参りをするようなものだった。」
実際、飛鳥と平城京の両方へ行くと、僕にとっては飛鳥の方が古代の魂が至る所に存在していると感じられる。平城京から山を見ても、少し遠いようで、よそよそしいが、飛鳥からは間近に見ているようだ。
5 著者は
「香具山(男)
畝傍山(女)
耳成山(男)」
説という。
でも、僕は、どう見ても、香具山と耳成山は弱弱しく感じられ、女性としか思えない。反対に、畝傍山は三山の中で一番、高く、雄々しいく、男性と思うが、いかがなものか。
6 「金子は脹論文を受け、自身の平城京の三山に対する説の補強を行っている。平城京の三山の通説は
東の春日山
西の生駒山
北の平城山(奈良山)
である。対して金子は、大和三山を照らし合わせて、より小さな独立した丘を求め、
東の三笠山
北の平城天皇陵
西の垂仁天皇量
との考えを示している。」
飛鳥の大和三山に対応するのが、奈良の平城京では上のどれか歩きながら考えるのが、今後、散歩がてらにしてみたい。
7「歴史学者の村井康彦は東の神楽岡、西の双ヶ岡、北の船岡山が平安京の三山だと考える。
神楽岡はああ現在の吉田山だ。」
何と、京都の平安京にも大和三山の見本があったとは。
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大和三山の古代 (講談社現代新書 1952) 新書 – 2008/7/18
上野 誠
(著)
心の故郷として古より日本人に愛される山々に秘められた思いとは? 神話・伝説・物語・歌を通し、この地に堆積した歴史の記憶やイメージを鮮やかに読み 解く国文学の刺激的な冒険!
- 本の長さ217ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2008/7/18
- ISBN-104062879522
- ISBN-13978-4062879521
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登録情報
- 出版社 : 講談社 (2008/7/18)
- 発売日 : 2008/7/18
- 言語 : 日本語
- 新書 : 217ページ
- ISBN-10 : 4062879522
- ISBN-13 : 978-4062879521
- Amazon 売れ筋ランキング: - 482,387位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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上位レビュー、対象国: 日本
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2008年8月3日に日本でレビュー済み
著者も書いているように、大和三山(香具山、耳成山、畝傍山)それ自体は「ただの小山」である。
しかしながら、そこに「歴史的な記憶」が乗っかることによって、世界遺産となりえる。
都市計画の重要なファクターとして、また歌詠みのメッカとして君臨する大和三山は、万葉集や古代〜上代の歴史文化のファンの思いをかきたてる。
時代が時代だけに、古代は謎が多く、わからないことが多い。しかし、事実がはっきりしていないからこそ、三山を通じていろいろなことを想像する楽しみがあるのだと思うし、著者が言いたかった点もそこにあるのだと思う。
しかしながら、そこに「歴史的な記憶」が乗っかることによって、世界遺産となりえる。
都市計画の重要なファクターとして、また歌詠みのメッカとして君臨する大和三山は、万葉集や古代〜上代の歴史文化のファンの思いをかきたてる。
時代が時代だけに、古代は謎が多く、わからないことが多い。しかし、事実がはっきりしていないからこそ、三山を通じていろいろなことを想像する楽しみがあるのだと思うし、著者が言いたかった点もそこにあるのだと思う。
2008年11月10日に日本でレビュー済み
大和三山に焦点を当てて、古代大和の歴史と文学をつなぐ試み。
(1)壷の中の銅銭と水晶…藤原宮の地鎮祭と思われる遺構の発掘を手がかりに、藤原宮の御井の歌を読み解いている。宮で働く女たちへの羨望。理想化された新都の景観を詠む。
(2)三山鎮護の思想…三山を藤原宮の守り神とする鎮護の思想の源流を考えている。神仙思想とつながりがあるのではないか。
(3)中大兄の三山の歌…香具山・畝傍山・耳成山はそれぞれ男か女か。三角関係の男女の宛て方には諸説あっておもしろい。
(4)香具山西麓の森と泉の物語…高市皇子の「香具山宮」がある。三山の中で香具山が特に尊重される。
(5)香具山と時間の発見…なぜ「天の香具山」なのか。天から降ってきたという香具山中心の世界観。神話・伝説・物語・歌を重層的に描いた本書には冒険があって、魅力的である。
(1)壷の中の銅銭と水晶…藤原宮の地鎮祭と思われる遺構の発掘を手がかりに、藤原宮の御井の歌を読み解いている。宮で働く女たちへの羨望。理想化された新都の景観を詠む。
(2)三山鎮護の思想…三山を藤原宮の守り神とする鎮護の思想の源流を考えている。神仙思想とつながりがあるのではないか。
(3)中大兄の三山の歌…香具山・畝傍山・耳成山はそれぞれ男か女か。三角関係の男女の宛て方には諸説あっておもしろい。
(4)香具山西麓の森と泉の物語…高市皇子の「香具山宮」がある。三山の中で香具山が特に尊重される。
(5)香具山と時間の発見…なぜ「天の香具山」なのか。天から降ってきたという香具山中心の世界観。神話・伝説・物語・歌を重層的に描いた本書には冒険があって、魅力的である。