コンプライアンスを理解するための新しいスタンダードである。郷原氏が書かれた内容そのものについては他の方々のレビューが詳しいので割愛するが、おそらく、これからはこの新しいスタンダードを理解している人とそうでない人は同じ土俵で話をすることができなくなるだろう。コンプライアンス・デバイドが始まっている。
そしてこの本をスタンダードとして、もっと本質的な問題が語られていかなくてはならない。
コンプライアンスの中核に潜んでいるのはたぶん大衆と言う名の怪物である。間違いを指摘されるのが嫌いで、複雑な真実を知る努力を面倒がり、簡単で分かりやすいものしか理解したくない大衆に真実を伝えることは難しい。
本書ではメディアの責任が厳しく言われているが、メディアとは言え、やはり資本主義の社会で経営されている会社。果たして大衆が喜ばない真実を伝えられるものなのだろうか? 愚昧な権力者に諫言をするには常に死を覚悟しなくてはならないのだ。
巨大な権力を握ってしまった大衆と本書を読んだ一人ひとりがどうやって戦っていくかが問われている気がする。郷原氏にはその戦いをどうすべきかを是非続編で説いて欲しい。
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思考停止社会~「遵守」に蝕まれる日本 (講談社現代新書 1978) 新書 – 2009/2/19
郷原 信郎
(著)
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購入オプションとあわせ買い
2007年1月、『「法令遵守」が日本を滅ぼす』で、社会や経済の実態と乖離した法令の「遵守」による弊害に警鐘を鳴らし、大きな話題を呼んだ著者による待望の新書第2弾。
あれから2年、日本社会の状況は一層深刻化、「遵守」がもたらす「思考停止」の弊害がさらに拡大。「法令違反」だけではなく、「偽装」「隠蔽」「捏造」「改ざん」などのレッテルを貼られると、一切の弁解・反論が許されず、実態の検証もないまま、強烈なバッシングが始まる。
○消費期限切れ原料使用を作為的に隠蔽しようとしたわけでもないのに、「隠蔽」と決めつけられ、存亡の危機に立たされた不二家
○健康被害とはまったく無関係なレベルのシアン化合物の食品製造用水への混入を公表させられ、大量の商品の自主回収に追い込まれた伊藤ハム
○「耐震偽装」を叩くことに関心が集中、偽装の再発防止のための建築基準法改正で住宅着工がストップ、深刻な不況に見舞われた建築業界
○刑事司法を崩壊させかねない大問題を抱えているのに、誰も止められない裁判員制度
○経済司法の貧困により、秩序の悪化に歯止めのかからない市場経済
○何を意味するのか不明確なまま「年金記録の改ざん」バッシングがエスカレート、厚労大臣にまで「組織ぐるみで改ざん」と決めつけられた社会保険庁
調査委員会などで多くの「不祥事」に関わった著者が、問題の本質に斬り込み、「遵守」による「思考停止」で生じている誤解の中身を明らかにします。その上で、思考停止から脱却して「真の法治社会」を作るための方策を示します。
是非ご一読ください。
あれから2年、日本社会の状況は一層深刻化、「遵守」がもたらす「思考停止」の弊害がさらに拡大。「法令違反」だけではなく、「偽装」「隠蔽」「捏造」「改ざん」などのレッテルを貼られると、一切の弁解・反論が許されず、実態の検証もないまま、強烈なバッシングが始まる。
○消費期限切れ原料使用を作為的に隠蔽しようとしたわけでもないのに、「隠蔽」と決めつけられ、存亡の危機に立たされた不二家
○健康被害とはまったく無関係なレベルのシアン化合物の食品製造用水への混入を公表させられ、大量の商品の自主回収に追い込まれた伊藤ハム
○「耐震偽装」を叩くことに関心が集中、偽装の再発防止のための建築基準法改正で住宅着工がストップ、深刻な不況に見舞われた建築業界
○刑事司法を崩壊させかねない大問題を抱えているのに、誰も止められない裁判員制度
○経済司法の貧困により、秩序の悪化に歯止めのかからない市場経済
○何を意味するのか不明確なまま「年金記録の改ざん」バッシングがエスカレート、厚労大臣にまで「組織ぐるみで改ざん」と決めつけられた社会保険庁
調査委員会などで多くの「不祥事」に関わった著者が、問題の本質に斬り込み、「遵守」による「思考停止」で生じている誤解の中身を明らかにします。その上で、思考停止から脱却して「真の法治社会」を作るための方策を示します。
是非ご一読ください。
- ISBN-104062879786
- ISBN-13978-4062879781
- 出版社講談社
- 発売日2009/2/19
- 言語日本語
- 寸法10.6 x 1.1 x 17.4 cm
- 本の長さ210ページ
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レビュー
──私は、かねてから「コンプライアンス=法令遵守」という考え方が誤っていると言い続けてきました。この二つがイコールではないということには、多くの人が賛同してくれます。大きくうなずいて「まったくその通りだ。私もかねてからそう思っていた」と言ってくれます。しかし、ほとんどの人がこの二つがイコールではないと言っている意味は、「コンプライアンス>法令遵守」です。「コンプライアンスは法令遵守より大きい。社会規範も倫理もすべて遵守しないといけないのに、法令だけ遵守すれば良いというようなことを言っているからダメなんだ」ということです。実は、このように「遵守」の対象を法令だけではなく倫理や規範にまで拡大して、「何でも遵守」とする考え方の方が、「偽装」「改ざん」などのレッテル付けによる一方的な非難につながり、一層大きな問題を生じさせているのです。
そこで、このような「遵守」に蝕まれつつある今の日本の状況を、思いきり書いてみようと思ったのが今回の新書です。食品業界の不祥事、裁判員制度の問題、いわゆる年金「改ざん」問題など最近の様々な事例を通して分析し、その思考停止状態から脱却して、この日本を良くしていくためにはどうしたらよいのかを考えています。
(中略)
国民への人気取りしか考えていない政治、責任回避ばかりの行政、問題を単純化するマスコミ、まさに「思考停止のトライアングル」そのものです。それを生じさせた「遵守」という言葉が、日本の社会を確実に蝕んでいます。
(PR誌『本』3月号より) --著者メッセージ
そこで、このような「遵守」に蝕まれつつある今の日本の状況を、思いきり書いてみようと思ったのが今回の新書です。食品業界の不祥事、裁判員制度の問題、いわゆる年金「改ざん」問題など最近の様々な事例を通して分析し、その思考停止状態から脱却して、この日本を良くしていくためにはどうしたらよいのかを考えています。
(中略)
国民への人気取りしか考えていない政治、責任回避ばかりの行政、問題を単純化するマスコミ、まさに「思考停止のトライアングル」そのものです。それを生じさせた「遵守」という言葉が、日本の社会を確実に蝕んでいます。
(PR誌『本』3月号より) --著者メッセージ
登録情報
- 出版社 : 講談社 (2009/2/19)
- 発売日 : 2009/2/19
- 言語 : 日本語
- 新書 : 210ページ
- ISBN-10 : 4062879786
- ISBN-13 : 978-4062879781
- 寸法 : 10.6 x 1.1 x 17.4 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 438,718位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
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2010年2月21日に日本でレビュー済み
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2016年7月18日に日本でレビュー済み
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日本社会の病巣がわかり、情報に踊らされないととの重要性がわかりました。
2022年4月17日に日本でレビュー済み
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著者の言う「思考停止」というのは、
・ろくに理解もしないでバッシングすること
・よりよい製品を作る「挑戦する姿勢」が減退してしまうこと
・アメリカ発のコンプアインスを考えなしに適用すること
などを指していると思います、
著者はいろいろ批判したい。とくにマスコミとか司法を。コンプライアンスについて批判的な論考を期待して買いましたが、得るものは少なかったです。
・ろくに理解もしないでバッシングすること
・よりよい製品を作る「挑戦する姿勢」が減退してしまうこと
・アメリカ発のコンプアインスを考えなしに適用すること
などを指していると思います、
著者はいろいろ批判したい。とくにマスコミとか司法を。コンプライアンスについて批判的な論考を期待して買いましたが、得るものは少なかったです。
2017年11月28日に日本でレビュー済み
マスコミで企業や官庁などの不祥事とされてきたことの報道や、裁判員制度の制定について、それが真実あるいは本当によいことであったのかを検証するとともに、そのような報道などに対して問題提起をしている。特にネット社会になってから、「我こそは正義の味方」とばかりに、個人や企業や官庁の不祥事をことさらにあげつらう炎上が頻発している。しかも、反論すると、それがさらにひどくなり、個人でも企業では社会から葬られるまでになることもある。企業ではそれを避けるため、官庁では自己保身のために、場合によっては時代遅れであったり、少々おかしいと思っても、すでにある決まりを遵守となっているのだろう。でもこの本では、それによって、決まりを遵守してればいいのか、あるいは、日本社会が不寛容になっているというか、マスメディアもそれに乗っかって煽っていて、報道が間違いと指摘されてもさまざまな屁理屈で言い逃れをしようとするところがあっていいのかということが書いてある。そうしたことを、この本の著者は、自身の経験を含めて冷静に分析している。思考停止で不寛容で屁理屈ではぐらかす社会でいいはずがないでしょうと思うのだが。
2015年3月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
教育もジャーナリズムもお上を支える基本の柱になっている。自分でものを考えることを社会が去勢してきた。社会規範はマニュアル化され、それを解釈する良い子が司法役人として日本の将来を決めていく。恐ろしいことだ。失われた20年が100年になるかもしれない。
2009年2月27日に日本でレビュー済み
日本の社会が陥っている「硬直化」という大問題の原因を
法曹家の視点で明らかにしています。
近年、社会の様々なところで、いろんな問題が生じています。
食品偽装、耐震偽装、さらには年金記録の改ざんなど……。
それらを詳しくみると、根っこの部分にあるものはすべて同じ。
起こっている現象の本質を見ようとせず、
当事者の法律違反だけをことさら問題にして
「法令遵守の徹底」という形だけの対処しかしないから、
決して本質的な解決にまで至らない、ということのようです。
法律に違反するのは許されないことです。
とはいえ、どんな問題に関しても「みんなが法律を守りさえすれば
解決する」と考えるのもあまりに安易すぎ。
これが本書でいうところの「思考停止社会」の状態のようですが、
いまの社会を覆っているなんともいえない閉塞感の原因や、
それがもたらしている弊害がよくわかる本でした。
法曹家の視点で明らかにしています。
近年、社会の様々なところで、いろんな問題が生じています。
食品偽装、耐震偽装、さらには年金記録の改ざんなど……。
それらを詳しくみると、根っこの部分にあるものはすべて同じ。
起こっている現象の本質を見ようとせず、
当事者の法律違反だけをことさら問題にして
「法令遵守の徹底」という形だけの対処しかしないから、
決して本質的な解決にまで至らない、ということのようです。
法律に違反するのは許されないことです。
とはいえ、どんな問題に関しても「みんなが法律を守りさえすれば
解決する」と考えるのもあまりに安易すぎ。
これが本書でいうところの「思考停止社会」の状態のようですが、
いまの社会を覆っているなんともいえない閉塞感の原因や、
それがもたらしている弊害がよくわかる本でした。
2019年9月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
わかり易いが、内容が少し、事件報告・事例分析に偏りがちに感じる。同著者の「法令遵守が日本を滅ぼす」の方が説得力がある。
2009年2月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「法令遵守が日本を滅ぼす」で、不祥事続きの社会に独自の視点を提供して警鐘を鳴らした、郷原教授の第二弾。早とちりしないように申し上げますが、法律を守らなくていいから、というのではありません。法律が制定されるにはそれぞれ社会的な背景があり、その背景を理解せずして法を守ることだけに眼が向いてしまう危険を、指摘しています。私たちと法を取り巻く社会の要請を鋭敏に感じ取り、チームワーク(コラボレーション)でそれに応えることの大切さを説いています。前著から2年の間にも、数多くの不祥事がありました。耐震偽装、食品偽装、インサイダー取引で捕まった村上ファンド、年金記録改ざん。それらを間近で見続けた著者が語る個々のケースでは、一般の報道で知ることのできない世界が広がります。中には、世界的長寿番組、水戸黄門を放映するTV局も登場します。
水戸黄門では番組終盤に登場する印籠によって、視聴者はそれまでの胸のつかえ、溜飲が下がります。言ってみれば、ご印籠は胃散のようなもの。胃散を撒くことで視聴率を稼ぐTV局は、いつしか社会の要請は胃散だと、勘違いするのでしょうか。報道番組でも、コメントが溜飲の下がる胃散であれば、視聴者の受けも良いと思い込でいるかのよう。結果、TVというマスメディアの種は、社会の要請と思い込んだ胃散に過剰適応して、絶滅する可能性も考えられます。また視聴者も胃散ですっきりしたと思っていて、実は秘かに胃癌が進行しているかもしれません。法令遵守という印籠=胃散が、かえって日本を蝕んでいるのでは。
自らの体を蝕む病を、しっかりと眼を見開いて見据え、絶滅ではなくて進化の道を指し示す本書。1809年2月12日にチャールズ・ダーウィンが生まれてから、ちょうど200年に当たる2009年2月。この時に上梓されたのは、偶然ではないように思います。
水戸黄門では番組終盤に登場する印籠によって、視聴者はそれまでの胸のつかえ、溜飲が下がります。言ってみれば、ご印籠は胃散のようなもの。胃散を撒くことで視聴率を稼ぐTV局は、いつしか社会の要請は胃散だと、勘違いするのでしょうか。報道番組でも、コメントが溜飲の下がる胃散であれば、視聴者の受けも良いと思い込でいるかのよう。結果、TVというマスメディアの種は、社会の要請と思い込んだ胃散に過剰適応して、絶滅する可能性も考えられます。また視聴者も胃散ですっきりしたと思っていて、実は秘かに胃癌が進行しているかもしれません。法令遵守という印籠=胃散が、かえって日本を蝕んでいるのでは。
自らの体を蝕む病を、しっかりと眼を見開いて見据え、絶滅ではなくて進化の道を指し示す本書。1809年2月12日にチャールズ・ダーウィンが生まれてから、ちょうど200年に当たる2009年2月。この時に上梓されたのは、偶然ではないように思います。