花田清輝の名を知ったのは、同時代の作家だった坂口安吾の「花田清輝論」を読んだからでした。その紹介では、「思想自体を生きている作家精神の位が高く、その上教養が高すぎ、文章がうますぎる。つまり俗に通じる世界が稀薄なのである」とあります。その評にぴったりと思われる本書「復興期の精神」は戦時中に書かれたエッセイを1冊にまとめたもので、これほど反時代的で洒落た本はありません。単行本を手放して10年ぶりくらいに再読したのですが、特に作家や学者の人名などはちゃんと読んでいないことに気づきました。講談社文芸文庫には、初版・1959年版・1966年新版の著者によるあとがきと、池内紀の解説が付いています。
全22篇はすべてヨーロッパの歴史人物のポートレートですが、その選択の方針はわかりにくい。ダンテ、コロンブス、ダ=ヴィンチ、マキャヴェリ、コペルニクス、ルター、トマス=モア、カルヴァン、セルヴァンテス、ルイ11世とヴィヨン、ゴッホとゴーガン、ソフォクレスとアリストファネス、スピノザ、スウィフト、ゲーテ、ガロア、これらの人々にまとまりや共通点があるように思えませんし、ダ=ヴィンチについての文章の中にドストエフスキーの「悪霊」が引用されたり、マキャヴェリについての文章の末尾にハイネが登場したりで、教養にあふれた愉しい脱線がそこかしこにあります。ルイ11世の逸話やガロアの群論を説明したくだりは明晰で、印象深い。
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復興期の精神 (講談社文芸文庫) 新書 – 2008/5/9
花田 清輝
(著)
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ルネッサンスを生きたダンテ、ダ・ヴィンチら22人の生の軌跡を追求、滅亡に向かう文明の復活の秘密を探る。大胆なレトリックと苛烈な批判精神が横溢する名著!
戦時下執筆の比類なき抵抗の書にして代表作!
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- 本の長さ288ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2008/5/9
- 寸法10.8 x 1.1 x 14.8 cm
- ISBN-104062900130
- ISBN-13978-4062900133
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登録情報
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- 新書 : 288ページ
- ISBN-10 : 4062900130
- ISBN-13 : 978-4062900133
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2018年3月1日に日本でレビュー済み
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太平洋戦争下、マルクス主義者としてまともに言論活動ができないので、主にルネサンス期の人物伝を題材にしてそれとなく時局を論じたエッセイ集。トマス・モアを論じた「ユートピアの誕生」では東亜協同体論を遠回しに批判している。コペルニクスを論じた「天体図」の「闘争しない闘争」というのは自己弁明のように思える。討ち死にするだけが闘いではない、今は雌伏の時だ、ということか。
2013年3月5日に日本でレビュー済み
戦時中に雑誌に掲載された文章を、戦後間もない昭和46年に、新たな文章も加えて、出版されたもの。戦後の芸術界のみならず、文化全体に影響を与えた、古典的な名著。
自らの知識をひけらかすような、キザな文章は、今日から見ると、ダサ過ぎる、という印象は拭えない。しかし、当時の時代の雰囲気を、よく表している。
ダンテ、ダ・ヴィンチ、マキャベリなど、ルネサンス期を中心としたヨーロッパの人物論だが、花田の視点は、過去にではなく、戦争をはさんだ当時の日本に向けられている。
そして、そこで論じられているのは、ルネサンス期の人物たちではなく、紛れもなく、花田本人の心である。
すべてに冷めてしまった今日では、花田のような、ダサ過ぎるほどの、熱い気分こそが、本当は一番必要なのかもしれない。
自らの知識をひけらかすような、キザな文章は、今日から見ると、ダサ過ぎる、という印象は拭えない。しかし、当時の時代の雰囲気を、よく表している。
ダンテ、ダ・ヴィンチ、マキャベリなど、ルネサンス期を中心としたヨーロッパの人物論だが、花田の視点は、過去にではなく、戦争をはさんだ当時の日本に向けられている。
そして、そこで論じられているのは、ルネサンス期の人物たちではなく、紛れもなく、花田本人の心である。
すべてに冷めてしまった今日では、花田のような、ダサ過ぎるほどの、熱い気分こそが、本当は一番必要なのかもしれない。
2015年10月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
感激の復刻本だ。西洋人の思考・思想が簡潔・丁寧に描かれている。
2010年6月4日に日本でレビュー済み
具体的な歴史事象と思想的背景とを用いて解説してみせたのは、鶴見俊輔氏のみです。
第一に、真の批評を批評するには、相手と同等あるいはそれを上回る力量がなければならないからでしょう。
第二に、当時の歴史の推移を体験した記憶が必要であるからでしょう。
レトリックの実際が、「比喩」とくに「暗喩」であることが明らかな場合、レトリックの保持する自己完結性に心を奪われてはいけません。
虚の世界から、実の世界に立ち返らなければ。
第一に、真の批評を批評するには、相手と同等あるいはそれを上回る力量がなければならないからでしょう。
第二に、当時の歴史の推移を体験した記憶が必要であるからでしょう。
レトリックの実際が、「比喩」とくに「暗喩」であることが明らかな場合、レトリックの保持する自己完結性に心を奪われてはいけません。
虚の世界から、実の世界に立ち返らなければ。
2012年3月5日に日本でレビュー済み
最近、河出さんから大杉栄のムックが出てましたがそんなモノよりもこちらを強く勧めたい。
もっと大きく取り上げられるべき人だと思います。
もっと大きく取り上げられるべき人だと思います。
2005年10月14日に日本でレビュー済み
花田がルネサンスに生きた数々の巨人を
描き出す。
描いた姿が本当の姿かどうかなどは
どうでもいいことで
むしろ花田の中にあるさまざまな精神が
いろいろな名を借りて現われ出ているという感じ。
それぞれの人物が生き生きと描かれており
読ませる書物である。
一つ一つの章が完結しているので
すきな人物いや精神の部分は
何度も繰り返し読んでしまった。
これをよんで刺激をうけ
自分の中に新たなる力が湧き出てくる感じがする
そんな書物である。
描き出す。
描いた姿が本当の姿かどうかなどは
どうでもいいことで
むしろ花田の中にあるさまざまな精神が
いろいろな名を借りて現われ出ているという感じ。
それぞれの人物が生き生きと描かれており
読ませる書物である。
一つ一つの章が完結しているので
すきな人物いや精神の部分は
何度も繰り返し読んでしまった。
これをよんで刺激をうけ
自分の中に新たなる力が湧き出てくる感じがする
そんな書物である。
2008年6月30日に日本でレビュー済み
作家はある程度だが、某系譜に属するとする説明が可能である。しかしながら、花田清輝という作家に関してはそのような見立ては無理強いしてもまったく意味がない。韜晦癖にあいまって独特なレトリックでもって読み手を煙に巻いてしまうのだ。ならば読み手は書かれた本のみに集中してみよう。代表作「復興期の精神」を紐解けば分かるがレオナルドであれコペルニクスであれポーであれ、それが宗教家であろうが童話作家であろうが画家であろうがレトリックを用いて縦横無尽に精神を躍動させる。黒澤明の白黒映画にあった主人公の目の輝きに似た感覚さえ脳裡に蘇る各章は、いわば灰の中のダイアモンドとも評すべきか。書かれたのは戦中であり当然ながら思想への監視や厳しい言論弾圧の最中であった。確かに吉本隆明が批判したような目立たぬ程度の反抗にすぎなかったともとられる部分はあるだろう。しかし、息詰まるような状況下でこれほどの純度の高い強烈な本を書くことの出来る花田はやはり時代を刻んだ一箇の作家なのだ。作家はつくることが本業である。政治的であろうがなかろうが作家たる足跡を残せばいいのである。もっとも、花田清輝はその足跡をもかき消そうと試みる作家なのだから困ったもので、そんな点が本のみならず作家への興味を惹き時代を超えて再読されるのだろう。孤高なる精神の筆なるものは一筋縄にはいかないのだ。本文庫末にある池内紀の解説もなかなかに秀逸なものである。