第二次世界大戦の敗戦の為に見えにくくなっているものがあるのではないかと最近感じる。本書で取り上げられた大川周明もその好例ではないだろうか。
大川というと 東京裁判での奇矯な行動で有名な方だが 実は戦前は ある種の「知性」においては日本を代表する知識人であったことが本書を読んでいると感じられる。日本にとっての世界が 欧米と東南アジアしかなかった時代に インドやイスラム国を見据えて そことの連携で日本の国益を設計しようとしていた視野の広さには正直感嘆した。
インドにしても最近でこそBRICSという言葉が出てきた事もあり 新聞での記事も増えてきたわけだが それまでは遠くて遠い国だった。ましてや イスラム関係は今なお日本にとっては 未知の世界である。
また彼が展開した「アジア主義」は 「東アジア共同体」という最近の言説を考える上で 参考になる。今の日本が失っている外交上の大戦略を大川が当時持っていた点にも感心した。
北一輝などもそうだが 敗戦で「見えにくくなったもの」を掘り起こす作業は 21世紀の僕らにとっては非常に大事なものになると直感している。時間は掛るが勉強していきたい。
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大川周明 ある復古革新主義者の思想 (講談社学術文庫) 文庫 – 2009/2/11
大塚 健洋
(著)
「始末に困る」至誠の人の思想形成と生涯。 荘内中学から五高時代、社会主義による変革を目指した青年はやがて日本精神に目覚めアジア主義の理論家となる。指導的宣伝家として戦犯となった大川周明の評伝。
- 本の長さ256ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2009/2/11
- ISBN-104062919362
- ISBN-13978-4062919364
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登録情報
- 出版社 : 講談社 (2009/2/11)
- 発売日 : 2009/2/11
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 256ページ
- ISBN-10 : 4062919362
- ISBN-13 : 978-4062919364
- Amazon 売れ筋ランキング: - 766,338位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,017位東洋哲学入門
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2009年9月7日に日本でレビュー済み
2017年4月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
大川周明は東京帝大で宗教学を専攻し、古今東西の宗教思想・神秘主義思想を深く理解していたといわれる。『国体の本義』の忠君愛国論を否定し、絶対的な天皇崇拝とは一線を画した。
しかしそんな大川は、他の国家主義者たちと同様、正しい経済学の知識を欠いていた。貧困改善には自給自足ではなく、自由貿易が必要であることを理解しなかった。だからアジア主義を掲げつつ、中国侵略を肯定する矛盾に陥る。以下、抜粋。(数字は位置ナンバー)
〔一九二六年〕七月に蔣介石の北伐が始まり、その鉾先が日本に向けられるようになると、彼〔=大川〕は満州における我が国の権益を守るために、中国ナショナリズムと全面的に対決することになるのである。(1779)
大正末頃から〔略〕彼〔=大川〕は日本と満蒙を一体とした自給自足的経済圏の建設とその政治的支配が、我が国の生存と世界的使命の遂行のために、必要不可欠であると確信するに至った〔略〕。(1785)
国粋派の論客大川は〔略〕精神の次元では、西洋崇拝に対して日本精神を、内政の次元では、資本主義に対して社会主義もしくは統制経済を、外交の次元では、脱亜外交に対してアジア主義を唱えた。(2412)
大川は、早くも高校時代から、個性の伸長を妨げる資本主義経済の仕組みに痛烈な批判を放ち、社会主義の必要を唱えていた。やがて米騒動の体験は〔略〕資本主義体制とそれを支える金権的民主主義の打倒を決意させた。(2438)
彼〔=大川〕は直訳的社会主義を信奉したわけではない。日本が天皇信仰によって作られた国であり〔略〕天皇が現存する以上、天皇を中心とした錦旗革命こそ、最も現実的な変革手段であると、大川は考えた。(2441)
しかしそんな大川は、他の国家主義者たちと同様、正しい経済学の知識を欠いていた。貧困改善には自給自足ではなく、自由貿易が必要であることを理解しなかった。だからアジア主義を掲げつつ、中国侵略を肯定する矛盾に陥る。以下、抜粋。(数字は位置ナンバー)
〔一九二六年〕七月に蔣介石の北伐が始まり、その鉾先が日本に向けられるようになると、彼〔=大川〕は満州における我が国の権益を守るために、中国ナショナリズムと全面的に対決することになるのである。(1779)
大正末頃から〔略〕彼〔=大川〕は日本と満蒙を一体とした自給自足的経済圏の建設とその政治的支配が、我が国の生存と世界的使命の遂行のために、必要不可欠であると確信するに至った〔略〕。(1785)
国粋派の論客大川は〔略〕精神の次元では、西洋崇拝に対して日本精神を、内政の次元では、資本主義に対して社会主義もしくは統制経済を、外交の次元では、脱亜外交に対してアジア主義を唱えた。(2412)
大川は、早くも高校時代から、個性の伸長を妨げる資本主義経済の仕組みに痛烈な批判を放ち、社会主義の必要を唱えていた。やがて米騒動の体験は〔略〕資本主義体制とそれを支える金権的民主主義の打倒を決意させた。(2438)
彼〔=大川〕は直訳的社会主義を信奉したわけではない。日本が天皇信仰によって作られた国であり〔略〕天皇が現存する以上、天皇を中心とした錦旗革命こそ、最も現実的な変革手段であると、大川は考えた。(2441)
2010年11月2日に日本でレビュー済み
右翼の領袖、日本ファシズム、といったキーワードを軸に語られることが多い方であるらしい。名前は見るがどんな方か知らないのでこの本を購入。
大川周明の思想を取り上げた本ではあるが、伝記的内容も多いのでとっつきやすい。少なくともこの本で語られた大川周明の足跡や教えを見るかぎり、ファシストとはとても思えない。軍人ではないし。
「軍部に協力」したとは言えるかもしれない、がしかし例えば「軍部に協力」した軍需工場の社長がファシストか?といえばそんなわけはないし...、侵略をススメたのかといえば侵略どころかまるで逆の教えを説いていたとしか読めないし。
さらにいろんな本を読んでみたくさせられる本。
大川周明の思想を取り上げた本ではあるが、伝記的内容も多いのでとっつきやすい。少なくともこの本で語られた大川周明の足跡や教えを見るかぎり、ファシストとはとても思えない。軍人ではないし。
「軍部に協力」したとは言えるかもしれない、がしかし例えば「軍部に協力」した軍需工場の社長がファシストか?といえばそんなわけはないし...、侵略をススメたのかといえば侵略どころかまるで逆の教えを説いていたとしか読めないし。
さらにいろんな本を読んでみたくさせられる本。
2010年2月20日に日本でレビュー済み
1960年代、対抗文化が花開いたアメリカやヨーロッパの若者の多くがインドを初めとしたアジアの旅に出た。彼らの重要な巡礼地のひとつとして南インドのポンディシェリーにあるオーロヴィル(オーロビント・アシュラム)はユネスコが支援した実験都市として有名であった。このオーロヴィルを指導したのがマザーと呼ばれたフランス系の女性なのだが、私はこの女性の本名がミラ・リシャールといい、大川周明の友人であったことをこの本で初めて知った。しかも著者が実際にオーロヴィルを訪問した体験までが載っている。これだけでも正直買って良かったと思う。それ以外にルドルフ・シュタイナーの社会論に対する大川の理解(社会三層化を国家三層化と訳した意図)、戦後のイスラム教への関心など興味のつきない話題が分かりやすく書かれている。感動的なのは終戦後、ポール・リシャールが20年ぶりに激励の手紙を送ってきた下りである。アジア精神史の広がりを知ることのできる良書としてぜひ一読をおすすめしたい。
大川周明という人物は偏見にさらされがちだが、実はその先鋭的知性を狭い日本では生かすことができなかったのでないだろうか。彼の撒いたアジア主義の種は60年代のインドで花開きアメリカやヨーロッパの若者を惹きつけた。シュタイナーにしても、日本で注目を集めたのは70年代からなのだ。そして、現代のイスラム諸国と欧米との対立を予見したかのような晩年。その意味ではA級戦犯となったのは早すぎた思想家の悲劇かもしれない。
大川周明という人物は偏見にさらされがちだが、実はその先鋭的知性を狭い日本では生かすことができなかったのでないだろうか。彼の撒いたアジア主義の種は60年代のインドで花開きアメリカやヨーロッパの若者を惹きつけた。シュタイナーにしても、日本で注目を集めたのは70年代からなのだ。そして、現代のイスラム諸国と欧米との対立を予見したかのような晩年。その意味ではA級戦犯となったのは早すぎた思想家の悲劇かもしれない。
2009年4月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
大川周明というと、5・15事件などに暗躍した右翼・ファシストという評価で片付けらがちである。かといって、彼に関する研究書は決して豊富とは言えず、「魔王」北一輝とは対照的である。全体として見れば、歴史学上等閑視されてきた人物と言えるだろう。現在も、一般の人で大川周明に関する書籍を入手することは容易ではない。そうした現状において、この本は大変貴重なものである。
内容の面については、申し分ない。大川周明の生涯をたどりながら、思想形成の過程を明らかにしているが、要所を押さえており、コンパクトながら思想形成の背景が十分理解できるものになっている。
興味深いのは、学生時代に社会主義に共鳴していたことだ。この点をふまえれば、後年北一輝と手を結ぶことになったのもうなずける。大川は、ただクーデターの実現のために北一輝を利用したわけではなかったのだろう。
ただ、一方で北一輝との相違点も見えてくる。大川周明は、数多くの著作を残しており、どちらかと言えば学者肌のまじめさをもった、「ブレーン」タイプである。それに対し、北は、学問的というよりは行動的で、降霊術のような怪しげなことも平気でやる「カリスマ」タイプの人間であった。そしてその奥底には野心が見え隠れする。実際、二人は袂を分かつが、両者には似た者同士でありながら、やはり相容れない要素があったのだろうと気づくだろう。
なお、この本は、新書本を収録したものであるため、紙幅に限界をもっている。そのため、後半部分――満州事変以後――の説明がやや駆け足になる。満州事変以後のクーデター(未遂)事件などについて予備知識がないと、話について行けなくなるかもしれない。また、北との関係については、ごく簡単に説明されているにとどまるが、欲を言えば、もう少し詳しく取り上げてもらいたいところではある(もっとも、紙幅の都合上、無理だったのだろう)。
内容において星は5つでよいと思うが、読者の注意を促すため、敢えて4つにしておいた。著者の罪でないことは言うまでもない。
内容の面については、申し分ない。大川周明の生涯をたどりながら、思想形成の過程を明らかにしているが、要所を押さえており、コンパクトながら思想形成の背景が十分理解できるものになっている。
興味深いのは、学生時代に社会主義に共鳴していたことだ。この点をふまえれば、後年北一輝と手を結ぶことになったのもうなずける。大川は、ただクーデターの実現のために北一輝を利用したわけではなかったのだろう。
ただ、一方で北一輝との相違点も見えてくる。大川周明は、数多くの著作を残しており、どちらかと言えば学者肌のまじめさをもった、「ブレーン」タイプである。それに対し、北は、学問的というよりは行動的で、降霊術のような怪しげなことも平気でやる「カリスマ」タイプの人間であった。そしてその奥底には野心が見え隠れする。実際、二人は袂を分かつが、両者には似た者同士でありながら、やはり相容れない要素があったのだろうと気づくだろう。
なお、この本は、新書本を収録したものであるため、紙幅に限界をもっている。そのため、後半部分――満州事変以後――の説明がやや駆け足になる。満州事変以後のクーデター(未遂)事件などについて予備知識がないと、話について行けなくなるかもしれない。また、北との関係については、ごく簡単に説明されているにとどまるが、欲を言えば、もう少し詳しく取り上げてもらいたいところではある(もっとも、紙幅の都合上、無理だったのだろう)。
内容において星は5つでよいと思うが、読者の注意を促すため、敢えて4つにしておいた。著者の罪でないことは言うまでもない。
2011年4月12日に日本でレビュー済み
ゴーマニズムのあの方の本を見るまで大川周明という人を知らなかった。この方はどなた?という感じ。本を探すと思想家として取り上げた本が多くてどうもとっつきにくいと思っていましたが、この本では大川周明の思想をというより思想家として取り上げ、そしてなにより伝記的に書いてくれているので入門として大変よい。もちろん入門=レヴェルが低い、という意味ではない。
2015年11月30日に日本でレビュー済み
大川周明という現代社会では捉えにくい人物について分かりやすく解説している。まさに、大川周明の入門書として最適である。
右翼とか左翼とかいう安直な枠組みを超えて描き出される大川周明の思想にその結果の賛否はともかく圧倒される。
戦前のナショナリズムの展開についても記載されており、学校教育における歴史の穴である明治から昭和初期におけるナショナリズムの政治思想における渇を満たしてくれる。
最近は「右翼」「左翼」のいずれかの思想に染まった学術文庫が多く、「これが学者(知識人)の書く内容か?」と呆れるものが乱出されている中で、まさに「白眉」に値する一冊である。(学生時代に巡り合っていれば、私の卒論も大きく変わっていたであろうと思われる。)
右翼とか左翼とかいう安直な枠組みを超えて描き出される大川周明の思想にその結果の賛否はともかく圧倒される。
戦前のナショナリズムの展開についても記載されており、学校教育における歴史の穴である明治から昭和初期におけるナショナリズムの政治思想における渇を満たしてくれる。
最近は「右翼」「左翼」のいずれかの思想に染まった学術文庫が多く、「これが学者(知識人)の書く内容か?」と呆れるものが乱出されている中で、まさに「白眉」に値する一冊である。(学生時代に巡り合っていれば、私の卒論も大きく変わっていたであろうと思われる。)
2009年2月28日に日本でレビュー済み
本書では序章「日本ファシズムと大川周明」において日本ファシズムを俯瞰しており正しく大川周明を理解する手立てとなっている。非西洋国では近代化を進める上で二つの思想的立場がある。すなわち一元的な歴史の発展を承認し西洋諸国をモデルとして近代化とはかる立場と西洋化で精神的故郷喪失を憂い自国の伝統に基づき主体的に西洋文明を吸収同化し土着的近代化をはかる立場である。大川周明さらには源流である岡倉天心は後者の思想的系譜であるが近代日本が現実に進んだ道は前者であった。精神的には西洋崇拝、国内的には資本主義化、対外的には脱亜という前者の立場に対し、大川周明は精神面で日本主義、内政面で社会主義あるいは統制経済、外交面でアジア主義を唱道した。本書では大川の唱道した三つの視角からその生涯と思想を論じている。本書は大川の書物への橋渡しとしても復古主義やアジア主義を探る水先案内としても脈々として受け継がれていくべきだろう。