「地球上の誰かがふと思った。人間の数が半分になったら、いくつの森が焼かれずにすむだろうか。」
「地球上の誰かがふと思った。人間の数が100分の1になったら、垂れ流される毒も100分の1になるだろうか。」
「地球上の誰かがふと思った。生物(みんな)の未来を守らねば」
で始まるこの作品。マンガのランキングで常にトップテンに入るほどの評価の高い作品です。
作者は岩明均氏。(以下ウイキ)
『モーニングオープン増刊』(講談社)にてF号(1988年)からH号(1989年)まで全3話の中編作品として連載された後、続きの第4話以降が『月刊アフタヌーン』(同)に1990年1月号から1995年2月号にかけて連載された。謎の寄生生物ミギーと共生することになった高校生・泉新一の数奇な運命を描く。
個人的には一度全巻購入し、処分したあと、再度購入したほどの作品です。
1988年といえばソ連崩壊による冷戦構造が消滅する数年前。
世界的には核戦争に対する危機意識は強く、資源・環境問題も社会に大きな不安を投げかける時代。
その根底には世界人口の爆発的増加の問題意識がありました。
1996年、国連の世界食糧農業機関は、栄養不足の人が増加し、農業の生産力が将来の食料需要を満たすことができるのか懸念が高まったことを受けてサミットの開催を呼びかけます。
これを受け、ローマで開催された世界食料サミットでは、世界食糧安全保障に関するローマ宣言と世界食料サミット行動計画という2つの鍵となる文書が採択されています。
本書はこの世界的な環境問題への危機感、持続的な人類存続に関する懸念の”只中”にある空気感を受けて大ヒットすることになりました。
最初の文言「誰かがふと思った」というのは、その当時の人々の想いを代弁したものであったのかもしれません。この「誰かが死んでくれればいいのに」という風潮は世相に大きな暗い影を落とし、自己責任的価値観や努力したものが報われるべきだという新自由主義の台頭につながっていったと考えるとやるせない思いがします。
物語の終焉で、敵のラスボスを倒すときのキーアイテムが「ダイオキシン」であったことも、環境問題と絡めた当時の空気感を表すものとして興味深いところです。(今はさほどの毒性を煽ることはなくなりました)
現在、資源・エネルギーや環境問題、食糧問題も相変わらず人類にとって大きな課題ではあると思います。しかし当時の空気感の重々しさに比べれば随分楽観的なものになっていると思います。
資源の有限性は残されているとは思いますが、エネルギーに関しては核融合の実現化、宇宙空間からの太陽光発電の送電などの目処も立ちつつあると聞きます。そもそも石油の埋蔵量も年々見積もりが変わり、今では千年単位で埋蔵されているという報告もあったりします。
環境問題は政治対策により解決が目指せる金の問題でもありますし、食糧問題は「グリーン革命」による生産性の向上で昔の数倍の収量が得られるようになり、代替肉の消費が増えつつあることも報告されてきています。大豆による代替肉が増えるということは、食肉生産のために使われる穀物の消費が大幅に減ることを意味します。
そういう中、今ではむしろ経済政策的に、少子化の弊害の方が取り沙汰されるようになってきているようです。時代の価値観は変わっていくわけです。
『寄生獣』が生み出された頃の空気感は今はないかもしれません。
しかし、今は別の問題としての「疫病」が新たな社会問題として世界に立ちふさがるようになりました。
噓か本当か実際のところは分かりませんが、人工ウイルスも含め、”ある”という可能性が否定できない以上、恐らく永遠に対策は取り続けなければならないような気がします。
『寄生獣』の存在価値は消えることはなさそうです。
作品として基本設定の古さは若干感じる面もありますが、今でも十分読めるクオリティはあると思います。
最近視聴した『ヴェノム』という映画のキャラがどことなく、本作のミギーをオマージュしているように思えるのも本作の強さだと思います。
1巻は寄生獣の人間乗っ取りの部分から、主人公の高校での大量殺人事件までが描かれています。
コミックとしては”教養として”読むべき一冊。
本書は哲学的側面から考察されることも多い作品でもあります。ミギーを通して学べることも楽しさのひとつです。
お勧めします。

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寄生獣(1) (アフタヌーンKC) コミック – 1990/7/20
岩明 均
(著)
右手に寄生生物・ミギーを宿した泉新一はミギーと共に他の寄生生物と戦い続ける。”人間とは何か”を問う問題作。
- 本の長さ220ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日1990/7/20
- ISBN-104063140261
- ISBN-13978-4063140262
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商品の説明
著者について
岩明 均
1960年7月28日生まれ。東京都出身。1985年、ちばてつや賞入選作品『ゴミの海』が「モーニングオープン増刊」に掲載され、デビュー。『寄生獣』で第17回講談社漫画賞(1993年)、第27回星雲賞コミック部門(1996年)受賞。2003年より「アフタヌーン」にて『ヒストリエ』の連載中。
1960年7月28日生まれ。東京都出身。1985年、ちばてつや賞入選作品『ゴミの海』が「モーニングオープン増刊」に掲載され、デビュー。『寄生獣』で第17回講談社漫画賞(1993年)、第27回星雲賞コミック部門(1996年)受賞。2003年より「アフタヌーン」にて『ヒストリエ』の連載中。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2022年9月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
誰かに1冊だけ漫画をオススメするとしたら、間違いなく寄生獣を選ぶ。
巻数もそこまで長いわけではないので、読むか迷ってるのであれば迷わず読んでほしい。
巻数もそこまで長いわけではないので、読むか迷ってるのであれば迷わず読んでほしい。
2022年7月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
これを名作と言わずしてなんと言おうか
あとミギーのセリフがcv平野綾で再生されるから神
あとミギーのセリフがcv平野綾で再生されるから神
2022年3月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ここまでエンタメの中で、生物の命について考えさせられたマンガはありませんでした。それくらい奥が深くも作品としてしっかり面白いストーリー展開。ミギーのかわいさもポイントですね。
2022年6月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
絵柄が古いのさえ我慢できれば、誰にでもおすすめできる歴史的名作です。
2021年12月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
血肉が飛び散るので人を選ぶが、日常の中の危険すぎる非日常を感じたい方にはオススメ
赤ちゃんどうなるんだっけ…幸せになってくれ…
赤ちゃんどうなるんだっけ…幸せになってくれ…
2021年8月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
主人公がある日突然奇妙な能力に目覚めて、昨日とは違う世界で生き抜いていく中で成長していく・・・
という広い意味のSF作品の中でも屈指の名作です。
限られた巻数の中に、魅力的なキャラクター、息をつかせず怒涛の如く興味を引かれる、それでいて最後には綺麗に風呂敷を畳むストーリー、リアルと非日常感が適度なバランスを維持する世界観、そして通底するテーマと優れたフィクション作品に必要な要素が他に類をみない密度で詰まった作品、といえます。
という広い意味のSF作品の中でも屈指の名作です。
限られた巻数の中に、魅力的なキャラクター、息をつかせず怒涛の如く興味を引かれる、それでいて最後には綺麗に風呂敷を畳むストーリー、リアルと非日常感が適度なバランスを維持する世界観、そして通底するテーマと優れたフィクション作品に必要な要素が他に類をみない密度で詰まった作品、といえます。
2022年5月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
妖怪人間ベムを思い出したら、プライムで視聴ができてうれしい。
どこか懐かしいような気がした。
たとえばベムはヒーローすぎる。やっぱり人間じゃないよね。
人間はたまごを壁に叩きつけたら潰れることを知っていないとハードボイルドでないのだとおもう。
どこか懐かしいような気がした。
たとえばベムはヒーローすぎる。やっぱり人間じゃないよね。
人間はたまごを壁に叩きつけたら潰れることを知っていないとハードボイルドでないのだとおもう。