最終巻まで読んだ上の感想。
最近、受験教育系の新書を複数読んでいた流れで、「そういえば昔ヒットした東大受験マンガがあったな」と思い出して読破する事にした。
本作自体20年前のマンガだが、評者の受験したのは更にその20年ぐらい前なので隔世の感を禁じ得ない。評者の時は英語にリスニングは無いし、逆に２次の社会の選択科目に政治経済があった（浪人中に無くなり、地理に変更せざるを得ず、そこで悪問が出たのは酷い思い出である）。ギフテッド的な天才キャラが、群制度（学区制）が廃止されて、東京で中高一貫校に行かなかった学生達の中で最も上澄み層を集めて復活した都立日比谷高校をモデルにした高校の生徒というのも、時代の世相を反映していてある種の感慨を覚えた。
しかし、出題傾向がかなり変化したとはいえ、心理コントロール、解く順番や時間配分、問題や科目を捨てる技術（他の受験生もできないので気にする必要は無い）等、昔のテクニックがそのまま生き残っているのも多々見受けられる。自分・出題者・他の受験生という三つの敵との闘いである事は不変だからであろう。
受験テクニックそのものを題材にするのは、当時としては斬新なネタだったのだろう。「灘→東大」卒の編集者の助けもあった模様だが、作者自身が東大卒ではないため、悪く言えば各種ノウハウ本のつまみ食い濃縮詰め合わせなのだが、それがむしろ良い方向に出ていると思う。東大卒だとどうしても自分の経験に基づくバイアスがかかりやすい。本作はそれがなく、どこか冷めていてバランスが取れていると思う。ヒットしたのも理解できる。
最後に、抜けている、もしくは意図的に描写を省いている問題点を挙げておく。
１）６年分の履修内容（中学段階からやり直している）を１年未満に圧縮し、なおかつ応用練習までする時間の問題。
→同内容を中１～中３までで終わらせる鉄緑会よりハードスケジュール。
２）上記１）を実現するには、かなりの地頭（思考速度や処理能力）が必要。
３）教科書の内容を完璧にこなせば大丈夫という罠。
→確かに出題範囲はそうなのだが、教科書の練習問題を解ける程度では全然駄目。そもそも、それでは差が出ない。単元の境目や重複するような応用問題や、書かれた背景の原因を深く考察する問題に対応するには、自分で教科書をゼロから書けるぐらい、つまり編者の大学教授クラスに習熟しないと駄目で、簡単な事ではない。
４）社会科論述の攻略が無く、理系なのはずるい。社会科論述をどう攻略するかを見せて欲しかった。
引き続き、続編も読んでみたい。
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