『ブラックジャック』を読み返して、現在に繋がるストーリー漫画の基点になっているのではないかと強く感じました。
ストーリー漫画は、手塚先生が生みの親ともいうべきジャンルですが、丁度『ブラック・ジャック』がこの世に出る前、手塚先生に最悪の時期が訪れていました。
虫プロの倒産、劇画ブームということが言われていますが、振り返ってみれば、それまでの作風に変更が必要であったのかと思います。
この頃手塚先生は様々な試みをされているのですが、苦悶の末、遂に傑作をものにします。
それが『ブラックジャック』です。
手塚後期の始まり、と言えるのではないかと思います。
少年漫画の読者は、もう少年だけではありませんでした。
前期と後期を比較するならば、『ブラックジャック』以降、リアリズムが加味されたと感じています。
短編小説を思わせる切れ味と余韻の残るストーリー展開。
医学をテーマにとり、天才的な無免許医という社会性を持たせた題材。
今も大勢の漫画家が『ブラックジャック』を手本にしていると思われます。
文学性を漫画に注ぎ込みながらも、少年達に伝えられる読み口のやさしさ。
日本文化の宝物と言えるでしょう。
この手塚治虫漫画全集ＤＸ版は、年代順に掲載されていません。
初めて『ブラックジャック』を手にする方よりも、もう一度読みたい、という方に向いていると思います。
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