山岡荘八の原作でも、「織田信長」より「徳川家康」の方が圧倒的に長いですが、それゆえ、コミカライズの横山光輝版でも本作の方が「徳川家康」より、ずっと短いです。家康の方が長生きしたので必然的に長くなるというのもあるんですが、それを考慮しても、中盤以降が急ぎ足の展開になるため、もう少し長い物語にしてほしかったところです。それでも少年期から始めて最期までを描いているというのは貴重です。
ゲームなどでは開幕早々発生することもある桶狭間の戦いは本作では真ん中より後なので、若い頃に大分尺をとっていることになります。イメージ通り、信長は奇矯な行動をとり続けており、周囲からは低い評価を与えられています。その周囲も、天下統一どころか織田家もまとまっていない状態です。
奇矯な行動は、一部は本巻でも説明されていますが、それなりに全て意味があります。しかし、他の人間は理解していません。また、信長は、何かの回答の一歩手前のヒントどまりというような意味ありげな発言をすることが多いのですが、これも他の人は理解できないことが多いです。父親と教育係の平手だけは、うつけ者に期待をかけていますが、さりとて言動を理解しているわけではありません。同じ山岡荘八でも「徳川家康」の方では、ある程度、父や平手が(漠然と期待したり、愛情で補正するのではなく)信長の能力を買っている節があります。しかしこちらの作品では父も平手も、あまり理解できぬままに命を落としてしまいます。
(史実ではなく本作の解釈として)周囲が敵ばかりの状況で手の内を明かしたくないせいもあるものの、信長がハッキリと答えを言わないで匂わせるだけなのもよくないのですが……とはいえ、理解されない天才として描かれていきます。後半、斉藤道三の娘の濃と結婚し、彼女だけは、信長の能力に気づく、というのは興味深いです。
「徳川家康」も産まれる前から始まりますが、本作も青年期にかなりの分量を割いており、こっちは後半ちょっと駆け足になってしまうのですけども、準備段階からじっくり描かれるというのは面白いと思います。
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新装版 織田信長(1) (講談社漫画文庫) 文庫 – 2009/9/11
群雄割拠の戦国乱世、尾張に梟雄、現る! 応仁の乱から70数年、骨肉相食む織田家内紛の中、茶筅髷に縄の帯、毛ずね丸出しの吉法師、尾張のうつけで終わるか、天下を取るか、波瀾の生涯スタート!
- 本の長さ328ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社コミッククリエイト
- 発売日2009/9/11
- 寸法10.8 x 1.7 x 14.8 cm
- ISBN-104063706753
- ISBN-13978-4063706758
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登録情報
- 出版社 : 講談社コミッククリエイト (2009/9/11)
- 発売日 : 2009/9/11
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 328ページ
- ISBN-10 : 4063706753
- ISBN-13 : 978-4063706758
- 寸法 : 10.8 x 1.7 x 14.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 960,261位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1934年(昭和9年)6月18日、兵庫県神戸市須磨区生まれ。銀行員、映画興行会社などを経て、55年「音無しの剣」でデビュー。56年「鉄人28号」 の連載を開始、大人気となる。2001年1月に完結した「殷周伝説」が遺作となった。91年「三国志」で漫画家協会賞優秀賞、04年「全作品」で文部科学 大臣賞を受賞(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『横山光輝「三国志」大研究』(ISBN-10:4267018502)が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2012年7月31日に日本でレビュー済み
戦乱の世に天下布武を唱えた織田信長ほど日本史上、英雄の姿をした人物はいないでしょう。
山岡荘八氏の『織田信長』は歴史文学というよりは講談に近い説話のような印象を持っています。
信長について歴史的な考証を行うのも興味深いことでしょうけれども、多くの人たちの願望の集合体として語られてきた信長の英雄譚も実に興味深いものがあります。
大うつけと呼ばれた若殿時代。なぜ大うつけが天下統一の大事業を行えたのか。
この問題に解答を得ようと多くの人が挑戦していますが、山岡荘八版信長像は最もポピュラーな信長像だと思います。
信長の人生で最も困難な時代は尾張内戦時代だと思われます。
横山先生は、原作の持ち味を生かして実に上手く描いておられると思います。
漫画で読んでも面白い『織田信長』です。
山岡荘八氏の『織田信長』は歴史文学というよりは講談に近い説話のような印象を持っています。
信長について歴史的な考証を行うのも興味深いことでしょうけれども、多くの人たちの願望の集合体として語られてきた信長の英雄譚も実に興味深いものがあります。
大うつけと呼ばれた若殿時代。なぜ大うつけが天下統一の大事業を行えたのか。
この問題に解答を得ようと多くの人が挑戦していますが、山岡荘八版信長像は最もポピュラーな信長像だと思います。
信長の人生で最も困難な時代は尾張内戦時代だと思われます。
横山先生は、原作の持ち味を生かして実に上手く描いておられると思います。
漫画で読んでも面白い『織田信長』です。
2014年4月4日に日本でレビュー済み
うつけ者のふり、でも分かるヤツには分かる信長の資質、美濃の蝮に試される
織田家の、未だ纏まっていない時代の話が主です。信長はその危うさを知り、家督争いの目を摘みつつうつけ者を演じています。こういう信長像が、今やメインですねえ。ある日突然覚醒、それではさすがに説得力ないですし……。
平手政秀の自刃により、いよいよ信長も尾張以外の地に実際的な立場で目を向けるようになります。時が来た、図らずも政秀の死が節目になったということでしょうか。自分の教育係の死に、独り立ちの時刻が来たと悟ったのですかねえ……。一部の者からは麒麟児と言われるも、美濃の蝮からも同様の評価は得られるのか?2巻も楽しみです。
織田家の、未だ纏まっていない時代の話が主です。信長はその危うさを知り、家督争いの目を摘みつつうつけ者を演じています。こういう信長像が、今やメインですねえ。ある日突然覚醒、それではさすがに説得力ないですし……。
平手政秀の自刃により、いよいよ信長も尾張以外の地に実際的な立場で目を向けるようになります。時が来た、図らずも政秀の死が節目になったということでしょうか。自分の教育係の死に、独り立ちの時刻が来たと悟ったのですかねえ……。一部の者からは麒麟児と言われるも、美濃の蝮からも同様の評価は得られるのか?2巻も楽しみです。
2009年11月22日に日本でレビュー済み
山岡荘八原作の小説を横山光輝先生が漫画化。
織田信長は日本史上でも1・2を争う英雄であるはず。
が、なぜか未だ「織田信長漫画の決定版」というような作品は出てきてない。
というか、織田信長漫画の数自体もあまりないような・・・・・。
そんな中でこの作品が現在まで版を重ねていることが定番というような証かもしれない。
が・・・やはり信長の生涯を表現するのに全4巻は短すぎます。
ひとつひとつのエピソードが短いし、大河ドラマの「総集編」的なイメージがする。
「主人公」なためか、信長も他の横山作品に出てくる信長より若々しく描かれています。
でもそれが逆に違和感を感じる部分でもあります。
他の横山作品では合理主義者が前面に出されているのに、この作品では「情に厚い親分肌」の面が強調されている。
コンパクトに信長の生涯を知るには良作ですが、やはりまだ「信長漫画の決定版」は登場していませんね。
織田信長は日本史上でも1・2を争う英雄であるはず。
が、なぜか未だ「織田信長漫画の決定版」というような作品は出てきてない。
というか、織田信長漫画の数自体もあまりないような・・・・・。
そんな中でこの作品が現在まで版を重ねていることが定番というような証かもしれない。
が・・・やはり信長の生涯を表現するのに全4巻は短すぎます。
ひとつひとつのエピソードが短いし、大河ドラマの「総集編」的なイメージがする。
「主人公」なためか、信長も他の横山作品に出てくる信長より若々しく描かれています。
でもそれが逆に違和感を感じる部分でもあります。
他の横山作品では合理主義者が前面に出されているのに、この作品では「情に厚い親分肌」の面が強調されている。
コンパクトに信長の生涯を知るには良作ですが、やはりまだ「信長漫画の決定版」は登場していませんね。