読後一番、「テンポが悪い」「長い」という感想をもつ読者と、「深い」「世界観の完成度が高い」という感想をもつ読者に二分されるだろうな、という印象を受けました。
マンガにしては読むのに時間がかかった(ネームが多いから)Pumpkin Scissors(パンプキンシザーズ )の第14巻。
前巻(前々巻?)から、「西方諸国連盟合同会議」がまだ続いていて、終わっていません。
今回はアクションシーンは控えめ。オーランドの出番も少ないです。
閑散とした会場で、戦時復興の意義と、援助継続の必要性を主張するアリス。スピーチの中で彼女が披歴した「施政者は郵便ポストのようなもの」、「(第3課は)民の道具であっても、民の味方ではない」という揺るぎのない持論の中に、かつて「正義とは何か」という迷いの中にあった彼女の成長が見てとれます。
そして、マーチスとの出会いによって道具としての自分に疑問を感じ、人間性に目覚めつつあるセッティエーム。
多くのキャラクターが変化を経験し、あるいはそのただ中で足掻く様を描写するこうしたいくつかのエピソードやシーンは、この物語の主題のひとつを表象しているようで、私的には高評価。
そして一方で、物語としての本巻を柱のように貫くのが”戦車の父”コルトゥ博士の演説。
「我々と同じただの人間だ。そして我々と違い本当の天才だった」。
コルトゥ博士はカウプランをそう評した上で、ロジカルな論理構築でカウプランの技術の弊害を説きます。
カウプランの特許の開放を巡って各国が議論を重ねる会議においてコルトゥ博士が説くのは「カウプラン技術の完全破棄」。
そして、抗帝国軍(アンチアレス)の狂気を帯びた蜂起。
静から動へ。
その両者が絡み合いながら怒涛の展開への流れ込むことを期待させてくれる、タメの巻でありました。
明らかなダレ場であった「ONE PIECE」第62巻とは異なる読後感です。
カウプランのキャラが(いまだ正体不明な点も含めて)Dr.ベガパンクと被っていたとしても。
「Homo Legens(読書人)の書評ブログ」より
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Pumpkin Scissors(14) (KCデラックス) コミック – 2011/2/17
岩永 亮太郎
(著)
社会を覆う欺瞞のブ厚い皮を斬り裂き、腐敗したその実を暴き出す!! 帝国陸軍情報部第3課 通称――Pumpkin Scissors(パンプキン・シザーズ)!!!
国家の未来を決する『西方諸国連盟合同会議』――。地を睥睨する『言語の塔』の中で、熾烈な外交戦が繰り広げられる! 議場の大鍋で国連が煮られる一方、地の底からも帝国を衝く地響きが‥‥!? 単行本でしか読めない! 恒例の描き下し新作『Interval』も収録!!
国家の未来を決する『西方諸国連盟合同会議』――。地を睥睨する『言語の塔』の中で、熾烈な外交戦が繰り広げられる! 議場の大鍋で国連が煮られる一方、地の底からも帝国を衝く地響きが‥‥!? 単行本でしか読めない! 恒例の描き下し新作『Interval』も収録!!
- 本の長さ212ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2011/2/17
- 寸法13 x 1.6 x 18.3 cm
- ISBN-104063760030
- ISBN-13978-4063760033
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商品の説明
著者について
岩永 亮太郎
兵庫県出身。2002年より『Pumpkin Scissors』(月刊少年マガジン掲載)を連載中。
兵庫県出身。2002年より『Pumpkin Scissors』(月刊少年マガジン掲載)を連載中。
登録情報
- 出版社 : 講談社 (2011/2/17)
- 発売日 : 2011/2/17
- 言語 : 日本語
- コミック : 212ページ
- ISBN-10 : 4063760030
- ISBN-13 : 978-4063760033
- 寸法 : 13 x 1.6 x 18.3 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 319,097位コミック
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
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2011年2月17日に日本でレビュー済み
今回の話は秀逸としか言いようがないです。
カウプランについて語るコルトゥ博士。
ここの話は本当に好きだ。
カウプラン文明と名付けられた、手に余る技術で埋め尽くされた世界。
モノを行使することは、誰にでも出来る。
行使できるからいいかと、そのモノの本質を知ろうしない。
危険な部分を理解しない。
これは今の私達の世界にも言えるのではないか?
例えばだがPCのことはよく分からない、しかし便利だから使っている。
危険な行為だと分からずに変なサイトに潜り込んだり、メールを開いたり。
万能だからこそ危険な部分も多く含まれているのに、それを学ぼうとしない。
こんな人が居るのでは?かく言う私もその中の一人だろう。
カウプラン文明の場合これがもっと顕著に現れているわけだが、一般市民にしてみればカウプランが落とした技術の結集も、現代社会のモノも同様なのではと。
この作者はこのような社会の風刺を描くことがとても上手です。
痛いところを突いて来ます。
そして今回「interva」が多めで楽しい。
嗚呼、楽しい。
カウプランについて語るコルトゥ博士。
ここの話は本当に好きだ。
カウプラン文明と名付けられた、手に余る技術で埋め尽くされた世界。
モノを行使することは、誰にでも出来る。
行使できるからいいかと、そのモノの本質を知ろうしない。
危険な部分を理解しない。
これは今の私達の世界にも言えるのではないか?
例えばだがPCのことはよく分からない、しかし便利だから使っている。
危険な行為だと分からずに変なサイトに潜り込んだり、メールを開いたり。
万能だからこそ危険な部分も多く含まれているのに、それを学ぼうとしない。
こんな人が居るのでは?かく言う私もその中の一人だろう。
カウプラン文明の場合これがもっと顕著に現れているわけだが、一般市民にしてみればカウプランが落とした技術の結集も、現代社会のモノも同様なのではと。
この作者はこのような社会の風刺を描くことがとても上手です。
痛いところを突いて来ます。
そして今回「interva」が多めで楽しい。
嗚呼、楽しい。
2011年2月18日に日本でレビュー済み
『パンプキン・シザーズ』の14巻。
合同会議が粛々と進められる中で各国の威厳と本心が絶え間なく交差する。その中でカウプランの特許についての弊害と成り立ちが語られたとき、人々は困惑し技術者たちは絶望する・・・。
面白くなってきました。
各国の演説がメインという事で1コマの文章量も多くなっていますが、それでも独自のたとえなどでその内容の深刻さが分かりやすく伝わってくるような描き方がなされています。今回カウプランというものがどれだけ化物じみた技術力なのかが判明し、どんだけ技術者泣かせの代物なんだと同情します。また、この中で「与えられるままで不要か必要かすら吟味出来てない」というのは現代にも通ずるものがあると感じ、総じてカウプランの弊害についての話は興味深く読めました。
一方で、新聞屋は本格的に動き出して(というかオーランドといっしょに)反帝国派の件に深く関わってきてちょっと心配。ハーケンマイヤーさんも少尉への願望のズレを見つけてしまい、歪みつつある。そしてラストにはアンチ・アレスがついに本会議場に突入で惨事は必至。アリスとオーランド早く来てくれ!それと全体的にキャラクターの表情とか細部まで描かれていて巧くなっていると思います。
読み応えありました。次巻が待ちきれない状態です。
それと映画のポスターみたいな表紙がカッコイイ!オススメです。
合同会議が粛々と進められる中で各国の威厳と本心が絶え間なく交差する。その中でカウプランの特許についての弊害と成り立ちが語られたとき、人々は困惑し技術者たちは絶望する・・・。
面白くなってきました。
各国の演説がメインという事で1コマの文章量も多くなっていますが、それでも独自のたとえなどでその内容の深刻さが分かりやすく伝わってくるような描き方がなされています。今回カウプランというものがどれだけ化物じみた技術力なのかが判明し、どんだけ技術者泣かせの代物なんだと同情します。また、この中で「与えられるままで不要か必要かすら吟味出来てない」というのは現代にも通ずるものがあると感じ、総じてカウプランの弊害についての話は興味深く読めました。
一方で、新聞屋は本格的に動き出して(というかオーランドといっしょに)反帝国派の件に深く関わってきてちょっと心配。ハーケンマイヤーさんも少尉への願望のズレを見つけてしまい、歪みつつある。そしてラストにはアンチ・アレスがついに本会議場に突入で惨事は必至。アリスとオーランド早く来てくれ!それと全体的にキャラクターの表情とか細部まで描かれていて巧くなっていると思います。
読み応えありました。次巻が待ちきれない状態です。
それと映画のポスターみたいな表紙がカッコイイ!オススメです。
2011年2月21日に日本でレビュー済み
既に他のレヴュアーさんがご指摘しているとおり、戦車の父・コルトゥ博士の語る「カウプラン文明」、圧倒的に面白いです。
彼の語りはSF的な面白さに満ちている。事実を積み重ね、「技術」というものの進歩を地味に論じ、唯一、カウプランという神の頂から降りてくる天才というフィクションを吐く。リアリティの積み重ねのなかで、カウプランだけが非現実的な存在なのですが、逆に「文明」とまで言われると、そうかもしれない、と思ってしまう。
私たちはレオナルド・ダ・ヴィンチや平賀源内などで我々凡人よりはるか先を行っている天才というものを知っています。天才は天才ゆえに私たちには想像も及ぶべきもない存在なので、カウプランほどの非現実も「あるのかもしれない」と思ってしまう。そこにフィクションの入り込む余地がある。このフィクションの入れ込みの上手さ、また説得力はどうだろう?! 久しぶりにゾクゾクしましたよ!
アンチ・アレスの蠍どもの組織体系もたまらない。烏合の衆だから象徴と一体感で操る。軍隊組織というよりカルトの発想ですよね、これ。
まさか「会議」でここまで盛り上がるとは思いませんでした! 岩永先生すごいよ!
彼の語りはSF的な面白さに満ちている。事実を積み重ね、「技術」というものの進歩を地味に論じ、唯一、カウプランという神の頂から降りてくる天才というフィクションを吐く。リアリティの積み重ねのなかで、カウプランだけが非現実的な存在なのですが、逆に「文明」とまで言われると、そうかもしれない、と思ってしまう。
私たちはレオナルド・ダ・ヴィンチや平賀源内などで我々凡人よりはるか先を行っている天才というものを知っています。天才は天才ゆえに私たちには想像も及ぶべきもない存在なので、カウプランほどの非現実も「あるのかもしれない」と思ってしまう。そこにフィクションの入り込む余地がある。このフィクションの入れ込みの上手さ、また説得力はどうだろう?! 久しぶりにゾクゾクしましたよ!
アンチ・アレスの蠍どもの組織体系もたまらない。烏合の衆だから象徴と一体感で操る。軍隊組織というよりカルトの発想ですよね、これ。
まさか「会議」でここまで盛り上がるとは思いませんでした! 岩永先生すごいよ!
2011年2月23日に日本でレビュー済み
前巻から引き続きの「合同会議」編。
絵柄は相変わらず安定しないし今風でもないが、話の作りは流石に面白い。
会議の水面下で錯綜するそれぞれの思惑。
そしてついに、その時は訪れる。
個性を見失った軍勢に占拠される塔、花の帝都に広がる戦場の血風。
しかし、話の帰結はまだ見えぬまま。
明日を掴むのは英雄を否定する者か、英雄を望む者か。
かつて英雄と呼ばれた者か、あるいは英雄になれなかった誰かなのか。
伏線も見せ場もあるのだが、なかなかひとつに注目できない。
ふと前巻と並べてみたら、表紙が繋がっていることに気づく。
この巻の右端に塔の半分が描かれているから、
少なくともこの章があと2巻分は続くということか。
主人公らも傷を負う事は避けられないだろうが、
救われる決着であって欲しいと思う。
絵柄は相変わらず安定しないし今風でもないが、話の作りは流石に面白い。
会議の水面下で錯綜するそれぞれの思惑。
そしてついに、その時は訪れる。
個性を見失った軍勢に占拠される塔、花の帝都に広がる戦場の血風。
しかし、話の帰結はまだ見えぬまま。
明日を掴むのは英雄を否定する者か、英雄を望む者か。
かつて英雄と呼ばれた者か、あるいは英雄になれなかった誰かなのか。
伏線も見せ場もあるのだが、なかなかひとつに注目できない。
ふと前巻と並べてみたら、表紙が繋がっていることに気づく。
この巻の右端に塔の半分が描かれているから、
少なくともこの章があと2巻分は続くということか。
主人公らも傷を負う事は避けられないだろうが、
救われる決着であって欲しいと思う。
2011年2月18日に日本でレビュー済み
連載が続くにつれ“絵はうまくなったけどストーリーがダメになった”という漫画をよく見る。
しかしこの作者は逆だ、お世辞にも絵はうまくなったとは言えないむしろ劣化したと思う。
だが物語の構成力、キャラクター達の魅力これは連載開始時とは比べられないほど成長していて、見ていてこれ程までに興奮した漫画は久し振りだった。
作者には是非ともこの成長を次巻にも続けてほしい。
しかしこの作者は逆だ、お世辞にも絵はうまくなったとは言えないむしろ劣化したと思う。
だが物語の構成力、キャラクター達の魅力これは連載開始時とは比べられないほど成長していて、見ていてこれ程までに興奮した漫画は久し振りだった。
作者には是非ともこの成長を次巻にも続けてほしい。
2011年2月19日に日本でレビュー済み
安心してページが捲れるというのはいささか傲慢ですが、今作も期待を裏切ることなく、素晴らしいプロットに舌を巻きました。
カウプランの件は当然秀逸でしたが、アンチ・アレスの戦士の矜持を言葉少なにまとめた一シーンも見所として強くおすすめしたい。敵役の悪性、国家間の欺瞞……それぞれの思惑の中で動く一人の人間の感情が色濃く浮き彫りになった瞬間は、筆舌に尽くし難い煩悶とする様を、しかし迷いの許されない潔い様を際立たせ明確な温度差を作り出しているように思います。
毎巻そうですがパンプキンシザースは、カウプランの宿題よろしく次の巻の展開を想像することが本当に楽しい!次巻に最高の期待とひがみを込めて待ちたいと思います。
カウプランの件は当然秀逸でしたが、アンチ・アレスの戦士の矜持を言葉少なにまとめた一シーンも見所として強くおすすめしたい。敵役の悪性、国家間の欺瞞……それぞれの思惑の中で動く一人の人間の感情が色濃く浮き彫りになった瞬間は、筆舌に尽くし難い煩悶とする様を、しかし迷いの許されない潔い様を際立たせ明確な温度差を作り出しているように思います。
毎巻そうですがパンプキンシザースは、カウプランの宿題よろしく次の巻の展開を想像することが本当に楽しい!次巻に最高の期待とひがみを込めて待ちたいと思います。
2016年3月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
コルトゥという男の口を借りて、この世界観が語られる。
「この世界はカウプランという天才的な男によって、たった数十年で中世辺りから近代に移行してしまったのだ」ということが明かされる。
それはいい。とても面白い設定だ。
しかし、「ではカウプランは何者か?」という所の説明が欲しかった。
つまり、
『カウプランが余りにも天才的だったから、たった数十年で中世辺りから近代に移行できた』
のでは、単にこのカウプランという登場人物は、ラベルを張り替えた神にすぎない。
そうではなくて、
『何故カウプランが文明と呼べるに足る程の知識体系を作り出せたのか?』
まで踏み込んで説明して欲しかった。
という訳でこの評価。
「この世界はカウプランという天才的な男によって、たった数十年で中世辺りから近代に移行してしまったのだ」ということが明かされる。
それはいい。とても面白い設定だ。
しかし、「ではカウプランは何者か?」という所の説明が欲しかった。
つまり、
『カウプランが余りにも天才的だったから、たった数十年で中世辺りから近代に移行できた』
のでは、単にこのカウプランという登場人物は、ラベルを張り替えた神にすぎない。
そうではなくて、
『何故カウプランが文明と呼べるに足る程の知識体系を作り出せたのか?』
まで踏み込んで説明して欲しかった。
という訳でこの評価。