完結したので感想を。
アニメ版もそうだが、クロスメディアの影響のためか、キャラ設定や世界観が原作から微妙にズレている。
原作のファン(愛していると言っても過言ではない)としては、そこは楽しめる部分でもあり、違和感しか感じない部分でもある。
ある意味、成功していると言える作品かもしれない。
ストーリーは基本に忠実にしつつも、端折るところは端折っているし、また追加されている情景はまったく冲方テイストではないので、本当にまったく別の作品に思える(たしか原作者もそう評していた気がする)
最も強い違和感は、やたらとコミカルな部分である。これは作者の意図なのかもしれないが、原作にはコミカルな部分はまったくと言っていいほど存在しないことに対し、コミック版では各キャラクターにかなりコミカルな部分が付け足されている。また、原作に匹敵するほどのグロテクスクでセクシャルな情景もあるため、そのギャップが激しい。
内容はネタバレしてしまうので、各キャラクターについての所感。
声を出せず、また生い立ちゆえに内向的で表情も豊かではないはずのバロットだが、心情は豊かで激情家であるのが、原作のイメージだが、コミック版では表現上の問題故か、心情表現(いわゆる心の声的な)はあまり無く、リアルクションや感情表現に優れている。ある意味年齢相応であり、その暗い過去や精神の焦げ付きがあまり描写されていない。
ボイルドは原作に近いイメージがある。まぁ、魂と同義の拳銃を1巻であっさり捨てるあたり、「え?」って思ったが。
イースターの扱いはかなり酷いと思う。道化であり、賢者でもあるというのがイースターのイメージだが、コミック版ではほとんどただの道化で脇役である。あと若すぎるのもあると思う。
ウフコックもかなり内実が変更されている思う。揺るぎない知恵、知識、仁、礼を持つネズミのはずが、どこかヌケているカワイイマスコットキャラクターとなっている・・・。人間だったすれば40代の頼り甲斐のある冷静沈着でニヒルでジェントルな男性というイメージだったはずだが、コミック版ではかなりコミカルになっている。
あくまで原作の大ファンとしての視点から見ているので、若干酷評気味ではあるが、原作の世界観を受け継ぎつつ、少し軸をズラしたパラレルワールド的作品としては、非常に良いと思う。原作が30代~40代に受け入れられる作品なのに対し、コミック版は10代~20代に向けた軌道修正がされていると感じる。
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マルドゥック・スクランブル(7)<完> (講談社コミックス) コミック – 2012/6/8
なんで私なの? 身寄りのない少女・バロットは、救いの手を差し伸べたはずの男・シェルに突然殺されかける! 瀕死の状態から目覚めると、その身には金属繊維の人工皮膚と、あらゆる電子機器を操る力が与えられていた。ネズミ型万能兵器・ウフコックの力を借りて、答えを探し求めるバロットの闘いが、今、始まる!!
シェルの消された記憶を奪取したバロット。シェルの罪を暴くため、そして「自分が殺された理由を知るため、彼の記憶を見ることを決意する。ついに事件の真相へと辿り着いたバロットは、宿敵・シェルのもとへ。だが、そこに再びボイルドが姿を現し‥‥。最後の戦いに挑むバロットの運命は!? 衝撃の完結編!!
シェルの消された記憶を奪取したバロット。シェルの罪を暴くため、そして「自分が殺された理由を知るため、彼の記憶を見ることを決意する。ついに事件の真相へと辿り着いたバロットは、宿敵・シェルのもとへ。だが、そこに再びボイルドが姿を現し‥‥。最後の戦いに挑むバロットの運命は!? 衝撃の完結編!!
- 本の長さ192ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2012/6/8
- ISBN-104063846989
- ISBN-13978-4063846980
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商品の説明
著者について
冲方 丁
『マルドゥック・スクランブル』『シュヴァリエ』『蒼穹のファフナー』『ヒロイックエイジ』『カルドセプト』…全メディアの枠を軽々と越え、創作の場を拡大
する「文芸革命児」!!! この『オイレンシュピーゲル』もまた、冲方だから実現できた「同時多発ストーリー」という企みが生んだ、最高の果実である。
『マルドゥック・スクランブル』『シュヴァリエ』『蒼穹のファフナー』『ヒロイックエイジ』『カルドセプト』…全メディアの枠を軽々と越え、創作の場を拡大
する「文芸革命児」!!! この『オイレンシュピーゲル』もまた、冲方だから実現できた「同時多発ストーリー」という企みが生んだ、最高の果実である。
登録情報
- 出版社 : 講談社 (2012/6/8)
- 発売日 : 2012/6/8
- 言語 : 日本語
- コミック : 192ページ
- ISBN-10 : 4063846989
- ISBN-13 : 978-4063846980
- Amazon 売れ筋ランキング: - 300,066位コミック
- カスタマーレビュー:
著者について
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1977年岐阜県生まれ。早稲田大学在学中の1996年に『黒い季節』で第1回スニーカー大賞金賞を受賞してデビュー。2003年、第24回日本SF大賞 を受賞した『マルドゥック・スクランブル』などの作品を経て、2009年、天文暦学者・渋川春海の生涯を描いた初の時代小説『天地明察』で第31回吉川英 治文学新人賞、第7回本屋大賞を受賞し、第143回直木賞の候補となる(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『マルドゥック・スクランブル』(ISBN-10:4152091533)が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2013年5月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
小説とは、話は一緒でもこれだけ違うんだ、という印象。
小説も好きだけれど、こちらも好きです。
この作者、無言の表情がすごくうまくて自然と行間を読んでしまいます。
小説版が気に入っている方は是非、こちらも読んでみてほしいと思いました。
小説も好きだけれど、こちらも好きです。
この作者、無言の表情がすごくうまくて自然と行間を読んでしまいます。
小説版が気に入っている方は是非、こちらも読んでみてほしいと思いました。
2017年4月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ボイルドとの戦いはそれなりに読み応えがあったけど、オクトーバー氏、シェルとの対決は予想よりはるかにスッと済んじゃった感じがあって、ちょっと肩透かし。
全てを終えてからのバロットも「これから、この街を良い街にしていこう」っていう平々凡々な姿勢で終わっちゃう。
あれ?それだけ?みたいな。
まぁ、ここまで総じて高質な出来だったので★3つとは言わないが、もうちょい「ラスボス戦!」的な雰囲気は欲しかったかな。
あえてそうしないコトのスタイリッシュさを取ったンだとは思うけど。
全てを終えてからのバロットも「これから、この街を良い街にしていこう」っていう平々凡々な姿勢で終わっちゃう。
あれ?それだけ?みたいな。
まぁ、ここまで総じて高質な出来だったので★3つとは言わないが、もうちょい「ラスボス戦!」的な雰囲気は欲しかったかな。
あえてそうしないコトのスタイリッシュさを取ったンだとは思うけど。
2015年1月22日に日本でレビュー済み
はじめに、原作読んでいません。
でもこれだけ言わせて欲しい!素敵な物語をありがとう!
やはりしっかりとした原作の方が付いている作品は、面白い!!
作画の大今さん描くバロットが、巻を追うごとにどんどん可愛くなります!応援したくなります!
最後にこれより面白いと噂の原作の方も読んでみたいと思いました。
今年度初のあたり作品じゃー!!
でもこれだけ言わせて欲しい!素敵な物語をありがとう!
やはりしっかりとした原作の方が付いている作品は、面白い!!
作画の大今さん描くバロットが、巻を追うごとにどんどん可愛くなります!応援したくなります!
最後にこれより面白いと噂の原作の方も読んでみたいと思いました。
今年度初のあたり作品じゃー!!
2012年6月9日に日本でレビュー済み
本作は小説のコミカライズ作品なので常に原作と比較されるという宿命があるわけだが、
既刊(1〜6巻)において行われた原作の改編やエピソード追加はどれも納得のいくもの
であり原作以上のインパクトを生んでいるものすらあった。
原作とここまで幸福な関係を築くことができたコミカライズ作品はそう多くないだろう。
最終刊である本巻もそれは変わらず、改編や追加した部分は原作のテイストを損なうこと
なくコミックならではの魅力を生み出している。
そしてそれよりもなによりも本作を魅力的なものにしているのはマンガ作品
としての「画力」だろう。
既刊でもそうだったが、本巻はクライマックスを迎えているせいかそれが顕著に表れている。
ページをめくる度に現れるその斬新なカットに何度ハッとさせられたことだろうか。
アニメでは実現できないマンガというメディアの魅力を存分に堪能することができる作品だった。
そしてラスト4ページで本作は悲しいけれどとても優しい物語となって終わりを迎えることとなった。
作者に他の冲方作品のコミカライズをぜひして欲しいと強く思うが、
同時にオリジナル作品を読みたいという気持ちも強くある。
どちらにしても早く作者の次回作が読みたいです。
既刊(1〜6巻)において行われた原作の改編やエピソード追加はどれも納得のいくもの
であり原作以上のインパクトを生んでいるものすらあった。
原作とここまで幸福な関係を築くことができたコミカライズ作品はそう多くないだろう。
最終刊である本巻もそれは変わらず、改編や追加した部分は原作のテイストを損なうこと
なくコミックならではの魅力を生み出している。
そしてそれよりもなによりも本作を魅力的なものにしているのはマンガ作品
としての「画力」だろう。
既刊でもそうだったが、本巻はクライマックスを迎えているせいかそれが顕著に表れている。
ページをめくる度に現れるその斬新なカットに何度ハッとさせられたことだろうか。
アニメでは実現できないマンガというメディアの魅力を存分に堪能することができる作品だった。
そしてラスト4ページで本作は悲しいけれどとても優しい物語となって終わりを迎えることとなった。
作者に他の冲方作品のコミカライズをぜひして欲しいと強く思うが、
同時にオリジナル作品を読みたいという気持ちも強くある。
どちらにしても早く作者の次回作が読みたいです。
2012年6月16日に日本でレビュー済み
冲方丁の傑作SFハードボイルド小説のコミカライズ。元ネタが素晴らしい小説だったこともあって、期待半分、不安半分だったけど、見事、期待以上の作品に仕上がっている。自分の経験上、原作を上回るコミカライズ作品に出会ったことないものなぁ。
この最終巻でも顕著だが、全巻通じて、作者は元ネタである冲方丁の「マルドゥック・スクランブル」の雰囲気を壊さず、自らの作風で、全く別の面白いストーリーを創りだした。特にこの最終巻のラストシーンなんて、かなり衝撃的だった。ネタバレになってしまうのでああり詳しくは書けないのが残念だけど、冲方丁とは違ったこの物語の結末にはふさわしい内容だったように思う。
最初は、この作者の画力に一抹の不安を覚えたところだけど、読んでいくうちにそれにも慣れ、この物語にふさわしい絵だなって思うようになった。
『マルドゥック』シリーズもまだ残っているので、ぜひ、この作者の手による新たな物語が読んでみたいものだ。
この最終巻でも顕著だが、全巻通じて、作者は元ネタである冲方丁の「マルドゥック・スクランブル」の雰囲気を壊さず、自らの作風で、全く別の面白いストーリーを創りだした。特にこの最終巻のラストシーンなんて、かなり衝撃的だった。ネタバレになってしまうのでああり詳しくは書けないのが残念だけど、冲方丁とは違ったこの物語の結末にはふさわしい内容だったように思う。
最初は、この作者の画力に一抹の不安を覚えたところだけど、読んでいくうちにそれにも慣れ、この物語にふさわしい絵だなって思うようになった。
『マルドゥック』シリーズもまだ残っているので、ぜひ、この作者の手による新たな物語が読んでみたいものだ。
2012年6月8日に日本でレビュー済み
前巻にてついに因縁の相手たるシェルの記憶を手に入れたバロット。
あとはこの証拠を元に彼を法的に追い詰めれば良いだけだが、そこには最大の障害ボイルドが立ち塞がる。
バロット、ボイルド・・・そしてウフコック。
複雑な因果の絡んだ三者が迎える結末とは───。
さて、本作は作家冲方丁の代表作のコミライズである。
そしてその完結巻となるのがこの第7巻。
率直に言えば、圧倒的興奮と衝撃的展開を前もって期待しすぎていたせいもあるだろうが、クライマックスとしてはやや物足りない。
もう一冊増やすと冗長に過ぎるが、運命の最終決戦がわずか一話+αで終わってしまうのはあまりにもあっさりしすぎである。
カジノ編で燃え尽きたかのように熱量と質量を感じられなかったので、せめてもう何話か費やした上で渾身のラストを描き切って欲しかったところである。
そういったこともありこの7巻に限っては冲方節の面影も薄れてしまっており、実に惜しい幕切れとなってしまった。
(ただし媒体の都合上、原作通り表現するのは到底無理があることは考慮する。※とりわけシェルの記憶に関する残虐な描写など)
あとはこの証拠を元に彼を法的に追い詰めれば良いだけだが、そこには最大の障害ボイルドが立ち塞がる。
バロット、ボイルド・・・そしてウフコック。
複雑な因果の絡んだ三者が迎える結末とは───。
さて、本作は作家冲方丁の代表作のコミライズである。
そしてその完結巻となるのがこの第7巻。
率直に言えば、圧倒的興奮と衝撃的展開を前もって期待しすぎていたせいもあるだろうが、クライマックスとしてはやや物足りない。
もう一冊増やすと冗長に過ぎるが、運命の最終決戦がわずか一話+αで終わってしまうのはあまりにもあっさりしすぎである。
カジノ編で燃え尽きたかのように熱量と質量を感じられなかったので、せめてもう何話か費やした上で渾身のラストを描き切って欲しかったところである。
そういったこともありこの7巻に限っては冲方節の面影も薄れてしまっており、実に惜しい幕切れとなってしまった。
(ただし媒体の都合上、原作通り表現するのは到底無理があることは考慮する。※とりわけシェルの記憶に関する残虐な描写など)