本書「いちえふ」は丁寧な取材と丁寧な描写によって構成された作品です。
福島県福島市で暮らす私は、いいかげんな取材、ストーリーありきの作品づくり、「売れれば良い」商業主義的センセーショナリズム報道、「反原発をうたえば全て正義」といった勘違いな、出鱈目な出版物に散々傷ついてきました。
この作品はそれらとは異なり、安心して中身を信用して読み進めていける作品でした。
全編、作業員の目線から見た福島第一原発の収束作業の様子がヒトコマヒトコマ丁寧なタッチで描かれています。タッチが丁寧なだけではなく作業員の作業段取りの一つ一つが誇張を排除して説明していく流れも丁寧にできています。
全体に単調な作業とも言える原発作業員の日常が、作者の丁寧な描写によって非常にリアルに描かれるので結果として、高線量放射線下での大事故収束作業の異常性特異性が読者に伝わりやすくなる効果を生み出しています。
講談社の週刊マンガ誌「モーニング」に連載されていた時から毎回買って読んでいましたが、単行本発売とのことで買い求めました。
連載にはなかった追加された部分も興味深い内容です。
著者本人はあまり「反原発運動」には好意的ではないようですが、追加部分とあわせた単行本全体としては原発事故収束作業の矛盾を浮かび上がらせており、原子力発電事業、国の対応、東京電力と企業群の体勢が抱える現状の問題点を明らかにする効果をあげているように思えます。
原発推進・反原発問わず、原発に関心のあるすべての方に読んで欲しい、丁寧な良い作品です。
※2015年2月追記:続編。第二巻が2015年2月23日に発売されました。
いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(2) (モーニング KC)
KINDLE版もあります
いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(2)
この作品の描き方の丁寧さを好感をもって感じられる方は、下の作品も気に入って頂けると思います。「いちえふ」が現れるまでは下の作品が福島を題材としたコミックでは最高の作品と考えていました。現状2作品が「トップグループを形成している」と言えると思います。
端野洋子「はじまりのはる」講談社 アフタヌーンKC
はじまりのはる(1)(アフタヌーンKC)
ISBNコード 9784063878974
はじまりのはる(2)(アフタヌーンKC)
ISBNコード 9784063879476
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いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(1) (モーニングKC) コミック – 2014/4/23
竜田 一人
(著)
福島第一原発作業員が描く渾身の原発ルポルタージュ漫画!
「いちえふ(=1F)」とは福島第一原子力発電所の通称。「F」は福島。「1」は第一。
現場の作業員や地元住人は「フクイチ」ではなく「いちえふ」と呼ぶ──。
新人賞MANGA OPENの大賞受賞作として「モーニング」に掲載されるやいなや読者、国内外のメディアからのすさまじい反響を呼んだ話題作がついに単行本化!
ここに描かれるのは「フクシマの真実」ではなく、作者がその目で見てきた「福島の現実」だ。
「メディアが報じない福島第一原発とそこで働く作業員の日常」、そして「この先何十年かかるともしれない廃炉作業の現実」を、あくまでも作業員の立場から描写。「この職場を福島の大地から消し去るその日まで」働き続ける作業員たちの日々を記録した、いま日本に暮らすすべての人たちに一度は読んでみてもらいたい「労働記」です。
「いちえふ(=1F)」とは福島第一原子力発電所の通称。「F」は福島。「1」は第一。
現場の作業員や地元住人は「フクイチ」ではなく「いちえふ」と呼ぶ──。
新人賞MANGA OPENの大賞受賞作として「モーニング」に掲載されるやいなや読者、国内外のメディアからのすさまじい反響を呼んだ話題作がついに単行本化!
ここに描かれるのは「フクシマの真実」ではなく、作者がその目で見てきた「福島の現実」だ。
「メディアが報じない福島第一原発とそこで働く作業員の日常」、そして「この先何十年かかるともしれない廃炉作業の現実」を、あくまでも作業員の立場から描写。「この職場を福島の大地から消し去るその日まで」働き続ける作業員たちの日々を記録した、いま日本に暮らすすべての人たちに一度は読んでみてもらいたい「労働記」です。
- 本の長さ186ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2014/4/23
- ISBN-104063883183
- ISBN-13978-4063883183
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商品の説明
登録情報
- 出版社 : 講談社 (2014/4/23)
- 発売日 : 2014/4/23
- 言語 : 日本語
- コミック : 186ページ
- ISBN-10 : 4063883183
- ISBN-13 : 978-4063883183
- Amazon 売れ筋ランキング: - 72,020位ノンフィクション (本)
- - 214,203位コミック
- カスタマーレビュー:
カスタマーレビュー
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5つのうち4.2つ
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2014年5月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2019年2月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
内容はルポとしては非常によくできていると思いますが、知的好奇心が満たされたか、2巻も読みたいかというと、微妙
2019年1月31日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
事故から時間が経ち、どうして関心が薄くなりつつありますが、大きな進展のニュースもなく同じ気持ちの方も多いと思います。
しかし、何となく読んだこのマンガは、今の現実を現場目線で見せてくれます。
個人的には学校の図書館などで、誰でも気軽に読める場所に置いて欲しいと思います。
忘れないために違う視点から見る価値があるマンガです。
しかし、何となく読んだこのマンガは、今の現実を現場目線で見せてくれます。
個人的には学校の図書館などで、誰でも気軽に読める場所に置いて欲しいと思います。
忘れないために違う視点から見る価値があるマンガです。
2023年1月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
震災当時は外で仕事していて(関東で)直後の雨を浴びてしまい、放射能も気にしてはいたのだが
やがて気にしなくなり、今に至る。
ほんの暇つぶしに買った本であったが内容は凄いと思うしかない。
当時、知人が日給7万円という報道を真に受けて福島に行ったが僅か2か月で戻ってきていたのを
思い出す。知人はその給料が嘘だ詐欺だと言っていたがそりゃこれだけ中間業者を通せば・・と
今更ながら思い出した。
国はどうして危険な作業をする人々にお金を惜しむのか、と思っていたが・・
やがて気にしなくなり、今に至る。
ほんの暇つぶしに買った本であったが内容は凄いと思うしかない。
当時、知人が日給7万円という報道を真に受けて福島に行ったが僅か2か月で戻ってきていたのを
思い出す。知人はその給料が嘘だ詐欺だと言っていたがそりゃこれだけ中間業者を通せば・・と
今更ながら思い出した。
国はどうして危険な作業をする人々にお金を惜しむのか、と思っていたが・・
2019年6月24日に日本でレビュー済み
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来年、ここを舞台にしたフクシマ50という映画が公開されます。
今からすごく楽しみにしていますが、今なお闘っている方々がいるんですね。
とても考えさせられる漫画でした。
今からすごく楽しみにしていますが、今なお闘っている方々がいるんですね。
とても考えさせられる漫画でした。
2019年1月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
いちえふの現場は意外と普通で、気のいい男たちが働く現場。
福島の日常を取り戻すために懸命に働いている。
いろんなバイアスがかかりがちな場所だけど、一度この作品をちゃんと読んでみてほしい。
これをなにかのプロパガンダだという人がいるが、それこそバイアスがかかっていると思う。
福島の日常を取り戻すために懸命に働いている。
いろんなバイアスがかかりがちな場所だけど、一度この作品をちゃんと読んでみてほしい。
これをなにかのプロパガンダだという人がいるが、それこそバイアスがかかっていると思う。
2017年8月28日に日本でレビュー済み
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「人から聞いた…」「テレビではこう言っている…」「ネットで見た…」そのような不確かな情報だけが、福島の原発事故については相変わらず喧伝されていますが、そのような情報にはあまり価値がないと思っています。
実際に著者が体験したことを基に、福島第一原子力発電所の様子を描いた本作の一次情報としての価値は、他の多くの情報と比較しても頭一つ抜け出ている作品だと感じています。もちろん漫画という作品上、著者によるバイアスはかかっていると思いますが、外野にいて現実が見えていない自分のような人間にとっては貴重な本でした。
実際に著者が体験したことを基に、福島第一原子力発電所の様子を描いた本作の一次情報としての価値は、他の多くの情報と比較しても頭一つ抜け出ている作品だと感じています。もちろん漫画という作品上、著者によるバイアスはかかっていると思いますが、外野にいて現実が見えていない自分のような人間にとっては貴重な本でした。
2015年7月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
世の中には重要な仕事があります。
何かを表現し、物事の真実を伝えるのが、そんな仕事のひとつでしょう。
しかし、マスコミが真実を伝えなくなって久しいのでは?
マスコミのトップたちが安倍首相にすりよっている状況では、サラリーマン化した部下たち、現場の記者も真実に迫れないでしょうね。
ところで、「いちえふ」の著者はジャーナリストではなくて、原発作業員であり、かつ漫画家です。
そもそも、漫画のルーツは風刺画であり、政治家や権力者、世の中にのさばる者の本質を描くことにありました。
また、漫画には毒がなければ、漫画足り得ないと、個人的には思います。
「いちえふ」という人類史上にもまれな大事件を現場からレポートするのは、また、表現するのは、たいへんな勇気です。
「からだ大丈夫ですか?」と古舘伊知郎氏が聞きました。
こんな陳腐な、誰でも口にすることを聞くのはどうかしています。
リスクはあります。
しかし、アドラー心理学で言うなら、被曝のリスクという課題は、著者の課題であり、古舘伊知郎氏の課題ではありません。
著者は何度も何度も、この問題を研究し、調査し、自分でリスクを管理できているわけです。
ですから、作業も漫画も続けられています。
古舘伊知郎氏が聞くべきは、彼が考えに考えてきたことであり、いま考えに考えていることだったでしょう。
私たちは著者の作品を通して、臨場感を味わい、「自分にできることがあるか?」と考えてみたいですね。
何かを表現し、物事の真実を伝えるのが、そんな仕事のひとつでしょう。
しかし、マスコミが真実を伝えなくなって久しいのでは?
マスコミのトップたちが安倍首相にすりよっている状況では、サラリーマン化した部下たち、現場の記者も真実に迫れないでしょうね。
ところで、「いちえふ」の著者はジャーナリストではなくて、原発作業員であり、かつ漫画家です。
そもそも、漫画のルーツは風刺画であり、政治家や権力者、世の中にのさばる者の本質を描くことにありました。
また、漫画には毒がなければ、漫画足り得ないと、個人的には思います。
「いちえふ」という人類史上にもまれな大事件を現場からレポートするのは、また、表現するのは、たいへんな勇気です。
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こんな陳腐な、誰でも口にすることを聞くのはどうかしています。
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しかし、アドラー心理学で言うなら、被曝のリスクという課題は、著者の課題であり、古舘伊知郎氏の課題ではありません。
著者は何度も何度も、この問題を研究し、調査し、自分でリスクを管理できているわけです。
ですから、作業も漫画も続けられています。
古舘伊知郎氏が聞くべきは、彼が考えに考えてきたことであり、いま考えに考えていることだったでしょう。
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