マックス・ウェーバーとともに社会学の開祖と言われるデュルケームであるが、その学風と人物像はかなり異なるように感じる。
コントやスペンサーの社会学を承継しつつ、社会学の独自性とその存在意義について強い方法論的意識の下で書かれたものが本書である。
特に、哲学や心理学の方法との区別が強く意識され、「社会的事実」の独自性と客観性が繰り返し強調される。
社会的事実は個人の意識とは独立して客観的に存在し、個人を拘束し強制するものである。法律や道徳、慣習はその典型的なもので、それらの社会的事実を収集して考察することが社会学の基本なのである。
この社会的事実の独自性と客観性の強調は、デカルトから啓蒙主義に至る近代哲学の主観主義、認識論重視をおそらく意識したものであろう。カントが「コペルニクス的転回」と呼んだように、世界認識を個人の主体の側から認識論的に構成する近代哲学の発展は、個人の主体意識を覚醒し、啓蒙思想を経て、自由な個人が社会を形成する社会契約論的政治思想へとつながり、市民革命を生んだ。
しかし、自由な個人による社会契約という思想はあくまでもフィクションに基づく思考実験であり、歴史的社会的現実ではない。それゆえ市民革命を経た19世紀以降の社会は各国各民族により紆余曲折の歴史的展開をたどり、様々な社会問題に直面している。
こうした歴史的背景の下で、社会的事実を個人の意識から独立した客観的存在として考察する必要性が意識されたのであろう。
現代社会のもたらす様々な社会問題を、哲学や心理学ではなく、社会的事実と経験の収集からアプローチして解決を目指す。そうしたマニフェストとして本書の意義は今なお色あせない。
なお、翻訳はとても読みやすく、訳語も十分検討されており、その点でも星5つに値する。
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社会学的方法の規準 (講談社学術文庫) 文庫 – 2018/6/11
エミール・デュルケーム
(著),
菊谷 和宏
(翻訳)
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マックス・ウェーバーと並ぶ社会学の祖エミール・デュルケーム(1858-1917年)が1895年に世に問うたマニフェストの書、待望の新訳。『社会分業論』(1893年)で名を馳せたデュルケームは、その2年後、社会学に固有の対象である「社会的事実」の存在を宣言し、それを扱う方法を提示する。本書が与えた影響は計り知れない。この古典中の古典を第一級の専門家が明快な日本語にした決定版が完成!
本書は、マックス・ウェーバーと並ぶ社会学の祖エミール・デュルケーム(1858-1917年)が1895年に世に問うたマニフェストの書、待望の新訳である。
ユダヤ人として生まれ、パリ高等師範学校で学んだデュルケームは、客観的な事実に基づいた実証科学としての社会学の確立のために邁進した。その最初の成果が『社会分業論』(1893年)であり、それに続く本書『社会学的方法の規準』は原理の書にほかならない。
本書でデュルケームは、社会学に固有の対象であり、また社会学によってしか取り出すことのできない対象の存在を宣言する。それが「社会的事実」というものだった。
私たちは当たり前に「社会」という言葉を使うし、社会というものが実在していると考えている。だが、実のところ、社会とは何だろうか。言うまでもなく、社会を構成しているのは複数の個人である。しかし、個人を足し算した総和がそのまま社会ではない、とデュルケームは言う。それは個に分割することができない「生物有機体たる一全体」であり、物として扱うことができる「客観的実在」である。この意味での「社会的事実」こそ、近代的な社会学に固有の対象にほかならない。
「社会的事実」の存在を高らかに宣言し、それを扱うための方法を明確に提示した本書は、社会学はもちろんのこと、多方面に多大な影響を及ぼした。機能主義やシステム論、エスノメソドロジーは、デュルケーム社会学を源泉としている。マルセル・モースを経てクロード・レヴィ=ストロースに至る人類学の系譜もまた、デュルケームから生じた。
こうして「古典」としての地位を不動のものにした書を、第一級の専門家が分かりやすく正確に翻訳する。まさに本書は「決定版」の名にふさわしい1冊である。
本書は、マックス・ウェーバーと並ぶ社会学の祖エミール・デュルケーム(1858-1917年)が1895年に世に問うたマニフェストの書、待望の新訳である。
ユダヤ人として生まれ、パリ高等師範学校で学んだデュルケームは、客観的な事実に基づいた実証科学としての社会学の確立のために邁進した。その最初の成果が『社会分業論』(1893年)であり、それに続く本書『社会学的方法の規準』は原理の書にほかならない。
本書でデュルケームは、社会学に固有の対象であり、また社会学によってしか取り出すことのできない対象の存在を宣言する。それが「社会的事実」というものだった。
私たちは当たり前に「社会」という言葉を使うし、社会というものが実在していると考えている。だが、実のところ、社会とは何だろうか。言うまでもなく、社会を構成しているのは複数の個人である。しかし、個人を足し算した総和がそのまま社会ではない、とデュルケームは言う。それは個に分割することができない「生物有機体たる一全体」であり、物として扱うことができる「客観的実在」である。この意味での「社会的事実」こそ、近代的な社会学に固有の対象にほかならない。
「社会的事実」の存在を高らかに宣言し、それを扱うための方法を明確に提示した本書は、社会学はもちろんのこと、多方面に多大な影響を及ぼした。機能主義やシステム論、エスノメソドロジーは、デュルケーム社会学を源泉としている。マルセル・モースを経てクロード・レヴィ=ストロースに至る人類学の系譜もまた、デュルケームから生じた。
こうして「古典」としての地位を不動のものにした書を、第一級の専門家が分かりやすく正確に翻訳する。まさに本書は「決定版」の名にふさわしい1冊である。
- 本の長さ264ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2018/6/11
- 寸法10.8 x 1.3 x 15 cm
- ISBN-104065118468
- ISBN-13978-4065118467
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商品の説明
著者について
エミール・デュルケーム
1858-1917年。フランスの社会学者。マックス・ウェーバーと並ぶ社会学の創始者。代表作は、本書(1895年)のほか、『自殺論』(1897年)、『宗教生活の基本形態』(1912年)など。
菊谷 和宏
1969年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科教授。博士(社会学、一橋大学)。専門は、社会学・社会学史、社会哲学・社会思想史。著書に『トクヴィルとデュルケーム』、『「社会」の誕生』、『「社会」のない国、日本』など。
1858-1917年。フランスの社会学者。マックス・ウェーバーと並ぶ社会学の創始者。代表作は、本書(1895年)のほか、『自殺論』(1897年)、『宗教生活の基本形態』(1912年)など。
菊谷 和宏
1969年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科教授。博士(社会学、一橋大学)。専門は、社会学・社会学史、社会哲学・社会思想史。著書に『トクヴィルとデュルケーム』、『「社会」の誕生』、『「社会」のない国、日本』など。
登録情報
- 出版社 : 講談社 (2018/6/11)
- 発売日 : 2018/6/11
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 264ページ
- ISBN-10 : 4065118468
- ISBN-13 : 978-4065118467
- 寸法 : 10.8 x 1.3 x 15 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 24,282位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 32位講談社学術文庫
- - 389位社会一般関連書籍
- - 637位その他の思想・社会の本
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2023年4月16日に日本でレビュー済み
社会は個人の集合です。しかし単純な部分(個人)の総和以上の意味や役割を持っています。たとえばコミュニティの伝統や道徳などその一例でしょう。
さてデュルケムのいう「社会」とはそういったはみ出した部分も含めた全体ということになるでしょう。社会を捉える観点と手法、彼がウェーバーとともに「社会学の開祖」と呼ばれる所以です。訳文についていえば術語や手法の説明に試行錯誤しているため“読みづらい”のですが(意図的に“読みづら”さを残した文章にしたそうです)、それゆえにデュルケムの真摯な態度が伝わってきます。
グローバル化が進んだ昨今、我々はつねに自分とは異なる価値観を持った“社会”に触れ合っています。こういった異なる価値観と向き合うためにデュルケムの規準(ルール)が助けになるのではないでしょうか。
さてデュルケムのいう「社会」とはそういったはみ出した部分も含めた全体ということになるでしょう。社会を捉える観点と手法、彼がウェーバーとともに「社会学の開祖」と呼ばれる所以です。訳文についていえば術語や手法の説明に試行錯誤しているため“読みづらい”のですが(意図的に“読みづら”さを残した文章にしたそうです)、それゆえにデュルケムの真摯な態度が伝わってきます。
グローバル化が進んだ昨今、我々はつねに自分とは異なる価値観を持った“社会”に触れ合っています。こういった異なる価値観と向き合うためにデュルケムの規準(ルール)が助けになるのではないでしょうか。