1996年刊行。二十年以上ぶりの再読。
現代科学を超えるオーバーテクノロジー「狂科学」(秘宝科学)をめぐる争奪戦のシリーズ一作目。
世界の支配を企てる秘密結社「黄金の薔薇」に立ち向かう主人公は、家族を奪われ、超人に改造されながらも組織から脱出した「狂科学ハンター」姫城玲。仮面ライダー! まんま、仮面ライダーとショッカーの関係だ!
だとしたら、目的が一致するからいっしょに戦ってくれる自衛隊の戦史研究室は滝和也や玄海老師の役まわりで、いろいろあって組織に反逆することになる「薔薇十字軍」のリタはモグラ獣人またはタックルのポジションですね。(違う)
お馴染みの異能力バトル物ですが、忍法や魔術、超能力などに代わって、オカルト科学を持ち出してきた着眼点がまことに秀逸なのであります。極低温になると無重力状態が発生するから物体が浮くのですよ……とか、全編にわたってそんな感じ。ホントなのかい。
まことしやかに展開される解説をまじえたバトルは勢い優先のとてもスピーディーなものでして、ビジュアル的に「何が起こっているのか」は明瞭にイメージできるのですが、「何でそんな現象が起こるのか」という理屈の方はいくら読んでもさっぱり分かりません(笑)。
再読して意外だったのは姫城玲のキャラクターで、ニヒルでクールな美男子と思いきや、かっこつけのナンパ野郎でした。余裕たっぷりなポーズを装いつつ、けっこう抜けていて、いっぱいいっぱい。
といっても、姫城玲といい、戦史研究室のメンバーといい、その強さの振り切り方ときたらとんでもないレベルで、「黄金の薔薇」の日本本部のビルといい、巨大船舶といい、ほんの四ぺージ程度で壊滅状態に陥らせるほどなんだから。序盤では攻撃ヘリの編隊を四ぺージで撃退してしまったし。おまけにこの人たち、敵にはまるで容赦なくて、凄まじいペースで死人の山を築き上げていきます。20世紀のライトノベルは容赦ないなあ……。
残念なのはヒロインのアリシアと玲の交流のシーンがなく、組織を裏切ったレベッカから託されたものの、留守中にすぐに攫われてしまい、玲よりもリタといっしょにいる場面の方が多くて繋がりが強いので、終盤の展開がちょっと唐突な感じになってしまった点。
ここは玲ではなくてリタだった方がすんなり共感できたし、だからといって、固有の能力的にリタだったら勝ち目がないし……バトル中心のストーリーでなおかつ主人公を「白馬の王子様」的なヒーローとして描く上での構成の難しさですね。
ところで、本作の悪役である高柳閣下は旧日本軍の特務機関の残党という設定。
第二次世界大戦の終戦から半世紀。旧日本軍やナチスの残党を悪役として登場させることができる、ぎりぎり最後の時期のエンタメ小説だったといえるでしょうか。
本作の発表からはすでに約四半世紀。旧日本軍はアジアの解放のために戦い、(中韓を除く)アジア諸国からは感謝されているといった言説がインターネットや出版業界に氾濫している現在において、エンターテインメントでこうした題材を採り上げることは困難になっているようですね。
いまどきの読者に読ませてみたら、どのような感想が出てくるのか、気にかかるところであります。
「そうだよね。たしか関西の大手製薬企業なんか、上層部はほとんど七三一生き残りの吹きだまりだもんね」
「まったくよ。だから奴ら、いまでも倫理観ないんだわ」
問題発言の嵐である。とはいえ、本当だからしかたがない。
……こんな時事ネタ(薬害エイズの某企業関係)がさらっと挟まれているところに四半世紀の歳月の流れを感じさせられます。
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狂科学ハンターREI (電撃文庫 な 2-3) 文庫 – 1996/6/1
- 本の長さ255ページ
- 言語日本語
- 出版社KADOKAWA(アスキー・メディアワ)
- 発売日1996/6/1
- ISBN-104073047639
- ISBN-13978-4073047636
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登録情報
- 出版社 : KADOKAWA(アスキー・メディアワ) (1996/6/1)
- 発売日 : 1996/6/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 255ページ
- ISBN-10 : 4073047639
- ISBN-13 : 978-4073047636
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,506,164位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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