『狂科学ハンターREI』シリーズ２作目。今回のお題は「フィラデルフィア実験」。
主人公姫城玲の超人ぶりは拍車がかかり、冒頭からハリア―数機を2P、M1戦車を5行、カラー口絵２Ｐをもらった超能力者部隊「第六軍」まで5P程度で一蹴してしまい、大気圏外の攻撃衛星までを撃ち落としてみせるという大暴れ。中盤では天候までコントロールしています。こんな相手を敵にまわしては勝ち目というものがなく、米軍の「第六軍」は今回の強敵かと思いきや、見せ場らしい見せ場をもらえないまま、まるきり雑魚みたいな扱いで壊滅してしまって御愁傷様でした……。
いっしょに行動することの多い自衛官の桜も、多勢に無勢で劣勢だからといってビルごと火柱にしてしまうという鬼畜の所行でして、前作でも薄々感じましたが、この世界は命の値段がとっても安いのね。
前作では重要な役まわりだったリタにいたっては、本作では出番が少なく、戦闘に参加しないのかと思っていたら、最後の最後で突然現れて、飛行船を一撃で撃墜してしまいました。こんな連中に対して巨大な乗り物で特攻かけるなんて、巨大な的に当ててくれといって飛び出していくようなものですよ……
そんなこんなで戦闘描写は前作に輪をかけて勢い重視で、オカルト科学に依拠した現象の数々は「分子運動の完全停止による無重力状態」「大気圏脱出速度すら凌駕する速度」全編にわたってこんな調子でして、字面の迫力で何となく凄いことが起こっているようだとは分かるものの、どうしてそんなことが起こっているのかという理屈の方はやっぱり分かりません（苦笑）。
世界規模の秘密結社を敵にまわしているとはいえ、個々の戦闘力は彼我の差がドン引きするレベルで大きくて、読み進めるほどに何だか敵の方が気の毒に見えてきました。主人公側の戦力が強すぎるのも考えもの。良くも悪くも、『ドラゴンボールZ』世代のライトノベルであります。
そんな本作の良心は人造人間の美少女アリシア。前作からがらりとキャラクターが変わっています。
玲と桜がオーバーキルな大量虐殺をやってのけた数ぺージ後で、別の場所で敵の襲撃を返り討ちにしたエリスに向かって「みんな死んでるわ。殺すことはなかったのに」「いくら敵だって、人間は死んだら生き返れないのに」と命の価値を訴えるのはどこまで作者の計算なのでしょうか。すごくいい場面のはずなのに物語の内容的にシュールなことに。
「綺麗なものだけを見ていてほしい」と玲はアリシアへの思いを独白するものの、傍の目から見て、綺麗なものしか見たくないのは玲自身ですね……。それとも、もしかしてこれは（綺麗なものばかりを見たがる）読者の傾向に対する作者の皮肉なの？
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