88年11月初版。大塚が古典エッセイの分野で評価を得る以前、まだ27歳の無名のライターだった頃に発表した「失恋ノンフィクション」(帯による)で、すでに絶版。しばらく前に小谷野敦がブログで好意的に言及したため直後に一部で古書価格が跳ね上がったが、最近は値を戻したので入手してみた。
パラパラ読み始めると、文体は昔のコバルト文庫やX文庫ティーンズハートみたいな感じ。ティーンズハートは87年創設だから、まさに同時代で、これは花井愛子とか林葉直子の諸作と並べて読むべき本かもしれない(私はいずれも未読)。また主婦の友社は80年代前半に林真理子を送り出している版元だから、その系譜での位置づけも可能かもしれない。
しかし小谷野敦がこの本に惹かれたのは、分かる気がする。実録振られ話で、男への未練を断ち切れずに付き纏って相当みっともない部分も曝け出しているところは、小谷野の小説世界と通じる。また大塚はセックスについてもハッキリ書いていて(ポルノ的な描写はない。為念)、フェミ系の女性知識人が自分の性的経験については韜晦しがちな傾向を批判する小谷野にとっては、その点も評価ポイント(=理由)かもしれない。ただ小谷野のおかげでこの旧作に注目が集まったことを、大塚が心底喜んでいるかどうかは正直言って疑問。むしろ闇に葬ってしまいたかった作品ではないのか?
ひとつビックリしたのは、「温泉編集者K氏」の引きで大塚が「作家A氏」のカンヅメ旅行に「付き人」待遇で同行する件り。寝ているところを深夜1時にK氏に叩き起こされ、男女混浴のジャングル風呂で、素っ裸で、「羞恥と怒りと屈辱と情けなさに哀しみ」(p175)にうち震えながらA氏の背中を流させられる(失恋相手のYとさえ一緒に入浴したことはなかったのに)。これ、大塚の失恋を耳にしたKが、あわよくば大塚をA氏への貢ぎ物にしようと企んだんでしょうね。いやぁ、編集者ってタ〜イヘン!

無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
いつの日か別の日か: みつばちの孤独 単行本 – 1988/11/1
大塚 ひかり
(著)
このページの読み込み中に問題が発生しました。もう一度試してください。
- 本の長さ223ページ
- 言語日本語
- 出版社主婦の友社
- 発売日1988/11/1
- ISBN-104079291213
- ISBN-13978-4079291217
この著者の人気タイトル
ページ: 1 / 1 最初に戻る
登録情報
- 出版社 : 主婦の友社 (1988/11/1)
- 発売日 : 1988/11/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 223ページ
- ISBN-10 : 4079291213
- ISBN-13 : 978-4079291217
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,372,889位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 30,600位日本文学
- - 190,167位ノンフィクション (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。

1961年生まれ。早稲田大学第一文学部日本史学専攻卒業。小さいころから漫画のよみかきと古典と歴史が大好き。中学生のころは新撰組と柳生十兵衛に入れ込み、学校を休んで柳生の里に行ったりした。『ブス論』『歯医者が怖い。』『源氏物語』全訳六巻、『本当はひどかった昔の日本』『昔話はなぜ、お爺さんとお婆さんが主役なのか』『女系図でみる驚きの日本史』など著書多数。
カスタマーレビュー
星5つ中4.6つ
5つのうち4.6つ
3グローバルレーティング
- 星5つ星4つ星3つ星2つ星1つ星5つ62%38%0%0%0%62%
- 星5つ星4つ星3つ星2つ星1つ星4つ62%38%0%0%0%38%
- 星5つ星4つ星3つ星2つ星1つ星3つ62%38%0%0%0%0%
- 星5つ星4つ星3つ星2つ星1つ星2つ62%38%0%0%0%0%
- 星5つ星4つ星3つ星2つ星1つ星1つ62%38%0%0%0%0%
評価はどのように計算されますか?
全体的な星の評価と星ごとの割合の内訳を計算するために、単純な平均は使用されません。その代わり、レビューの日時がどれだけ新しいかや、レビューアーがAmazonで商品を購入したかどうかなどが考慮されます。また、レビューを分析して信頼性が検証されます。
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中にエラーが発生しました。ページを再読み込みしてください。
- 2008年7月16日に日本でレビュー済みフォーマット: 単行本Amazonで購入
- 2018年2月2日に日本でレビュー済みフォーマット: 単行本大塚ひかりがデビューしたエッセイで、1988年に刊行。うんこがでないので恋人に背中をさすって貰ううちにセックスになった、恋人に過去の女の写真を出させて彼から過去の女を否定させる言葉を引きだすまで粘るといった、恋人と付き合っていた頃の思い出から、男と別れた後も諦められずに新しい女が住んでいるという下北を徘徊した(p98)ことなど、大塚の痛切な思いが恥ずかしいところも含めて吐露されていて度胸を感じた。「かなりのトシで独身で、しかもキレイな女がいたならば、“かげの男”が必ず彼女をたっぷりかわいがっていると思っていい」(p41)という提言など、大塚の洞察力が既に鋭いことも伺い知れる。
ところで大塚はライター時代、編集長に命令され、男女混浴風呂で男の作家の背中を流したりしたというが(p173)、現代ではアウトだから驚いた。
- 2015年6月27日に日本でレビュー済みフォーマット: 単行本この本を読んだ時に私は中年で一人暮らしの自分が恥ずかしくて堪らなくなりました。
同じ様な才媛の岸本葉子さんと対な感じです。
大塚さんはモテる方だからこんなに嘆いていたけど直ぐに彼氏が出来て結婚したみたいですね。
お風呂に一緒に入ったA氏って誰かしら?私はYS先生ではないかと思ってます。