比較的軽くて短いショートショート的なものも含め、9篇の夜叉衆スケッチ。
当時の歴史をシャープに切り取って、夜叉衆それぞれに配した作者の腕が光ります。
終戦後、分遣隊でやってきた米軍中尉と、戦争で母を奪われたマリー(晴家)の物語。
十代のころ大陸にわたって、闇をかかえた中国の女優の用心棒になった長秀(宮地良)。
闇市の物資不足の中で医師として苦闘する色部(佐々木)。
どの物語も、現在のそれぞれの職業を選んだ転機につながっており、彼らの前半生を明かしてくれるとともに、
まだなまなましい傷痕のような、歴史の暗部や戦後の世相を色濃く描きだします。
換生者ゆえに歴史を外から見つめる目も持ちつつも、やはり、ひとつひとつの人生には渾身でかかわっていった、彼らの生きざまに打たれました。この時代はやはり彼らにも重かったのでしょう。
生き続ける鬼である「換生者」という設定を、作者は今回、特に深く掘り下げています。
景虎と直江にまつわる物語は、それぞれの思惑のすれ違いと、ときたまの奇妙な感応が、いつものようにひりひりと痛く描かれます。
景虎の闇の深さ、焦りつつその背を見つめることしかできない直江。
そして肉体年齢で上になった景虎が、「青二才」の直江を見透かしたようにあしらいつつ(「大人の本気を教えてやるよ」発言あり)、ときに自分の弱さにはっとひるんでしまう・・・その感情の揺れのダイナミクスがさりげなくひろいあげられ、
若い直江ゆえの、いつも以上の性急さ、直情的な発言(「どんなに肉体を換えたところで、私たちの関係は変わらないでしょうね」云々)も、ふたりの関係のねじれ具合をさらに強めてゆきます。これにも重く酔わされます。
(ところで、冒頭作「学園サンバ」はミスター東都大学に選ばれそうになる直江のコメディですが、この時代、大学のミスコンもなかったと思いますし、ましてミスターコンはなかったはず・・・。ここだけはパラレルワールドな昭和でしょうか、思いきり楽しく笑える一編でした)
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炎の蜃気楼昭和編 夜叉衆ブギウギ (コバルト文庫) 文庫 – 2015/9/1
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購入オプションとあわせ買い
加瀬と執行の出会い、笠原の大学生活、マリーが歌い始めたきっかけ、宮路のほろ苦い思い出、医師としての佐々木──現代人として生きる夜叉衆の日常や想いを描いた短編集。雑誌掲載のショート4編も収録。
- 本の長さ272ページ
- 言語日本語
- 出版社集英社
- 発売日2015/9/1
- 寸法10.5 x 1.4 x 15 cm
- ISBN-104086018713
- ISBN-13978-4086018715
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登録情報
- 出版社 : 集英社 (2015/9/1)
- 発売日 : 2015/9/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 272ページ
- ISBN-10 : 4086018713
- ISBN-13 : 978-4086018715
- 寸法 : 10.5 x 1.4 x 15 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 695,288位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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著者について
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9月23日千葉県生まれ。中央大学文学部史学科卒業。1989年下期コバルト読者大賞を受賞(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 炎の蜃気楼(ミラージュ) 邂逅編 真皓き残響 十六夜鏡 (ISBN-13:978-4086014045)』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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2015年9月5日に日本でレビュー済み
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2015年9月1日に日本でレビュー済み
夜叉衆それぞれを主人公に据えた短編(タイトルにすべて音楽用語がつけられている)のあいだに、雑誌掲載の4編が挟み込まれている。コミカルなものから、戦争の傷を抱える人びとを扱ったものまで、テーマは多岐にわたる。時間的にも昭和10年代後半から「瑠璃燕ブルース」直後のエピソードまで、少なくとも15年以上のスパンの物語が含まれているが、これらが時系列順ではなく、全体の緩急を考慮して配されている。なかでも冒頭の「学園サンバ」は、本編初期を彷彿とさせる楽しさがある。
「恋花火ラプソディー」「がめ医者エレジー」「二十面相バラッド」の直江の宿体は、「山口」である。この前の宿体と、「尚紀」との口調と雰囲気の違いが面白い。景虎は、自分が追い詰められることになるのがわかっていても、「直江が直江であること」を求めて「尚紀」に嫉妬し、直江は景虎に接してくる者たちに不穏な感情をおぼえる。他者からの影響を許さないという点では、どちらも同じ悩みを抱いている。
白眉はやはり、最後におかれた「ラブ・ミー・テンダー」であろう。一本の煙草に託されたふたりの感情の交換が、この賑やかな「楽曲集」を静かに締めくくる。
「恋花火ラプソディー」「がめ医者エレジー」「二十面相バラッド」の直江の宿体は、「山口」である。この前の宿体と、「尚紀」との口調と雰囲気の違いが面白い。景虎は、自分が追い詰められることになるのがわかっていても、「直江が直江であること」を求めて「尚紀」に嫉妬し、直江は景虎に接してくる者たちに不穏な感情をおぼえる。他者からの影響を許さないという点では、どちらも同じ悩みを抱いている。
白眉はやはり、最後におかれた「ラブ・ミー・テンダー」であろう。一本の煙草に託されたふたりの感情の交換が、この賑やかな「楽曲集」を静かに締めくくる。