中学生の時に読んだ本である。もしいつか娘ができたら、読んでもらいたい本である。
愛着のありすぎる作品のレビューをするときはいつもそうだが、どう良さを表現したらいいかわからず、
甚だ言葉足らずで誤解を生む表現になりがちだ。
と、いうようなことをレビューに書くのもふさわしくないとわかっていつつ、つい逃げを打ってしまう。
架空の王国で舞姫を目指す二人の少女の物語である。
性格も髪の色も違う二人は無二の親友であり、親元から離れ、互いを頼りに舞の修行に励んでいた。
この国の舞姫はただの踊り子ではなく、国の精神的支柱、言い換えればシャーマンたる役割を担っている。
その舞姫が突如、変わり果てた姿で発見されるところから、物語は始まる。
眠っていた少女は薄い膜を張ったようなまどろみを経て、やがて自らが今どこにいて、
どこへ向かおうとしているのかを知る。
自らの運命を決めるのは、果たして自分自身か否か。
少女から大人へ、二人は、自分は、いつ変わったのだろう。
大いなる人生の始まり、例えばアルハンブラ宮殿の入口に立ったら、そんな気分になるのかもしれない。
少女たちの心の動き、舞への思い、恋、そして隠された過去が、非常に精緻な文体で描き出されており、
ストーリーも大変読みごたえがある。
流麗な水の都、神殿や王宮、ひたむきに舞う少女たちの息遣い、すべてが儚くも美しい。
まさに「物語」かくあるべし、上質な御伽噺である。
まったくのあてずっぽうで手に取った本だったが、大人になるにつれ、
その価値が大きく感じられる作品に出会えたのは得難い幸運であった。
著者は他のシリーズのほうが有名なようだし、本作のレビューが一件もないことにもそんなに驚くことはないのかもしれないが、
インターネットが本格的に普及した後に発表されていたら、こんなに埋もれず、もっと日の目を見ていた作品だと思う。
少女向けのレーベルから出版されていることも、多分に影響しているだろう。
このレビューをありがたくも見つけて下さった方はぜひ、本作をお手に取っていただきたい。
きっと損はさせませんから。
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水の都の物語(前編) (水の都シリーズ) (コバルト文庫) 文庫 – 1995/9/1
「水の巫女姫」が暗殺されてからというもの、日照りが続いている水の都ファロン。新しい巫女姫を決める「水の大祭」で、親友同士のサヒャンとリランは美しい舞いを見せるが…悲劇は始まっていた!
- 本の長さ288ページ
- 言語日本語
- 出版社集英社
- 発売日1995/9/1
- ISBN-104086141078
- ISBN-13978-4086141079
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登録情報
- 出版社 : 集英社 (1995/9/1)
- 発売日 : 1995/9/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 288ページ
- ISBN-10 : 4086141078
- ISBN-13 : 978-4086141079
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,828,116位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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