現在の呼称、Female Genital Mutilation=略称「FGM」「女子割礼」。
私がこの儀式・慣習を知ったのは、中学3年か高校生になりたての頃。
その頃は「処女割礼」と言われていた。
この本は、「FGM」「女子割礼」入門書としては良いと思う。
具体的な記述が多く、難解ではなく分かりやすい。価格も安価だ。
私は、特定の宗教の元、幼い男子に対して行われる「割礼」という儀式・慣習がある事を、
中学生の頃には既に知っていた。
(映画『ゴッド・ファーザー』をきっかけに調べた記憶がある。)
男性性器が包茎(仮性含む)だと、性器に垢が溜まりやすく不衛生になりがち。
垢が溜まった男性性器だと、性行為の際に女性も二次的被害(迷惑)を被ることになる。
「割礼は別に悪くない儀式じゃないか?赤ん坊の頃なら痛みも忘れてしまうだろうし。」
と思っていたのだが、「処女割礼」の存在を知った時は衝撃だった。
「処女割礼・密着ドキュメント」のようなテレビ番組で、実際の割礼シーンが放送されていた。
これも私が高校生の時だったと思う。
(四半世紀近く前になるが、当時は規制も少なく、良質なドキュメント番組も多かったと思う。)
見ているだけで、「痛い痛い痛いっ!死ぬよ!」ってなシーンが淡々と流れる。
10歳前後の少女が、大人の女性達に手足と頭を押さえつけられ、股を広げられる。
大人の女性達が、渾身の力で少女を押さえつけているのが分かる。
割礼場所は水深の浅い川。
なんと道具は、鋭利な刃物状の石(石器時代か?!)。
音は編集で消したのか、口を押さえられていたのか、少女の絶叫は聞こえなかった。
局部を、グリグリ!グリグリっ!とえぐり取られる少女。時間も結構かかる。
少女の血が、川の水を赤く染めている。
切除が終わると、少女は大人達に抱え込まれ、局部に灰のような物をかけられていた。
消毒らしいが、「逆に化膿するんじゃないのかっ?!」と心配になった。
で、その少女は近くの河原に横たえられてぐったり。
そして、次の少女が「割礼場所」へ連れて行かれる。
高校生の私にとって、あまりにも残酷で衝撃的なシーンだったし、忘れることが出来ない。
「ああ、あんな国に生まれなくて良かった。」というのが、当時の私の正直な感想だった。
この本には、あの時のテレビ番組よりも、はるかに詳細に「女子割礼」の現実が書いてある。
「女子割礼」には複数の種類があることや、施術(?)内容に関して、端的に具体的に書いてある。
やっぱり、あの儀式による死亡や、酷い後遺症が残る例は多いんだ。
当然だよな・・。テレビのシーンが蘇る。
儀式・慣習と言っても、「男子の割礼」とは根本的に違う気がする。
私は、この本以外にも、「女子割礼」に関する書籍はいくつか読んだ。
近年は、この慣習を根絶しようとする動きも活発で、その観点からのテレビ番組もたまにある。
現在も「女子割礼」は行われており、「女子割礼の根絶に反対する女性」も少なからず存在する。
長年培われてきた文化や慣習、宗教的儀式を、「女性の人権擁護」というスローガンのみで根絶するのは、
なかなか難しいことであり、時間もかかるだろう。
感情論や理想論だけで解決できる問題ではないと、個人的には思っている。
だがやはり、命を落とす危険性があり、多大な苦痛をもたらす儀式や慣習は、男女を問わず減って欲しいとは思う。
また、現代の日本人女性は、様々な面で恵まれた立場にいるのだと再認識させられる。
(2006年に購入済。)
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ドキュメント 女子割礼 (集英社新書) 新書 – 2003/9/17
内海 夏子
(著)
アフリカ北部に今も幅広く残る女子性器切除の風習。気鋭の女性フォトジャーナリストがたびたび現地を訪れ、当事者たちを取材。廃絶に向けての多様な活動を紹介しながら、現状を検証する。
- 本の長さ208ページ
- 言語日本語
- 出版社集英社
- 発売日2003/9/17
- ISBN-104087202089
- ISBN-13978-4087202083
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登録情報
- 出版社 : 集英社 (2003/9/17)
- 発売日 : 2003/9/17
- 言語 : 日本語
- 新書 : 208ページ
- ISBN-10 : 4087202089
- ISBN-13 : 978-4087202083
- Amazon 売れ筋ランキング: - 238,625位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 494位集英社新書
- - 528位文化人類学一般関連書籍
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2013年9月6日に日本でレビュー済み
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2005年4月14日に日本でレビュー済み
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この21世紀の世の中で、未だに、こんな非人間的な、残酷なことが、当たり前のように行われているということを知り、愕然としました。そして、廃絶に向けて取り組むときに、男性よりも、その娘の母親や祖母が、最後まで反対するという事実にも二度ビックリしました。この矛盾した現象に、読後も、無意識に、回答を求めつづけていました。考えてみると、日本の歴史も、長い間、男尊女卑と封建社会で成り立っていて、男女平等の思想や法律ができたのは、戦後のここ最近のことなのですね。。。ただ、割礼や中国のような纏足などの、肉体的に傷害を与えるしきたりがなかっただけのことで、どれだけ、女性たちが苦しんできたことかと思うと、戦後に生まれた私たちは、その幸せをかみしめないといけないなぁと、あらためて実感しました。考えがまとまっていませんが、今だに考えさせられている一冊です。今、関連書籍で「生きながら火に焼かれて」を読んでいます。。。
2018年3月31日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
多角面から考察されており、いろんな要因が絡んだ複雑な問題であることがよく分かる中身の濃い本。
まずどういう目的で発生した風習なのかということに関し、クリトリス切除の目的をある学者が「出っ張っていて目立ち、日常生活に支障をきたす恐れがないから切除の対象として選ばれたのではないか」と推測しているのに対し、筆者が「たとえ医学的な知識がなくても性体験さえあれば女性に性的な快感をもたらすことは直感的に分かるはずで、女性の性を否定する意図が最初からあったに違いない」という考えを持っていてなるほどなと思った。
起源を確かめることは出来ないけど、たとえいつか廃絶が実現したとしても、時代が巡り巡って同じような風習が発生しないように発生した背景を考察することも重要なのかもしれないと思った。
存続については、割礼によって我々は西洋人ではなくエジプト人であるというアイデンティティを守っている例とか、女性側が痛い思いをしてまで夫の要求に応じているという満足感を得ている例等、いろんな心理要因があることを知った。
割礼によって「大人の女性になれる」「処女性が保てる」「性欲が抑制出来る」等の言い伝えに関しては、女性だけが貞操を守り性欲を抑制させるべきであるという考え自体が女性蔑視なのではないかという疑問や前提を抜きにしても、女性への不信感が根底にあるように思えた。
分かりやすい基準とか証拠を求めたがるけど、信頼感を確かめ合い育み合っていくためには努力が必要であり、むしろ大事なこと程分かりやすく目に見えるものではないということを受け入れられない幼稚さがあるようにも思えた。
果ては割礼により死者が出ても、「悪い霊の仕業」「悪い切除者に神の罰が下る」というような都合の良い解釈をし続けることによって、いつまでも割礼が悪であるという真実に辿り着けないのだなと思った。
「外性器を切除してもホルモンに影響はなく健康な性欲は起こり、また人格が変わる訳でもない」「メリットはないばかりか女性の健康状態に多大な悪影響を及ぼす」という医学的な知識がないというのももちろん大きな原因の一つではあると思うが、「割礼を受けると健康に関してこんなデメリットがある」「割礼を受けなければこんなメリットがある」ということをただ強調するだけでなく、なぜ存続させてしまうのかという心理メカニズムの解明やそれに対するアプローチの重要性を実感した。
まずどういう目的で発生した風習なのかということに関し、クリトリス切除の目的をある学者が「出っ張っていて目立ち、日常生活に支障をきたす恐れがないから切除の対象として選ばれたのではないか」と推測しているのに対し、筆者が「たとえ医学的な知識がなくても性体験さえあれば女性に性的な快感をもたらすことは直感的に分かるはずで、女性の性を否定する意図が最初からあったに違いない」という考えを持っていてなるほどなと思った。
起源を確かめることは出来ないけど、たとえいつか廃絶が実現したとしても、時代が巡り巡って同じような風習が発生しないように発生した背景を考察することも重要なのかもしれないと思った。
存続については、割礼によって我々は西洋人ではなくエジプト人であるというアイデンティティを守っている例とか、女性側が痛い思いをしてまで夫の要求に応じているという満足感を得ている例等、いろんな心理要因があることを知った。
割礼によって「大人の女性になれる」「処女性が保てる」「性欲が抑制出来る」等の言い伝えに関しては、女性だけが貞操を守り性欲を抑制させるべきであるという考え自体が女性蔑視なのではないかという疑問や前提を抜きにしても、女性への不信感が根底にあるように思えた。
分かりやすい基準とか証拠を求めたがるけど、信頼感を確かめ合い育み合っていくためには努力が必要であり、むしろ大事なこと程分かりやすく目に見えるものではないということを受け入れられない幼稚さがあるようにも思えた。
果ては割礼により死者が出ても、「悪い霊の仕業」「悪い切除者に神の罰が下る」というような都合の良い解釈をし続けることによって、いつまでも割礼が悪であるという真実に辿り着けないのだなと思った。
「外性器を切除してもホルモンに影響はなく健康な性欲は起こり、また人格が変わる訳でもない」「メリットはないばかりか女性の健康状態に多大な悪影響を及ぼす」という医学的な知識がないというのももちろん大きな原因の一つではあると思うが、「割礼を受けると健康に関してこんなデメリットがある」「割礼を受けなければこんなメリットがある」ということをただ強調するだけでなく、なぜ存続させてしまうのかという心理メカニズムの解明やそれに対するアプローチの重要性を実感した。
2009年4月12日に日本でレビュー済み
女子割礼は、悲劇の側面もあるんだと思う。
けど、著者が「女子割礼=悲劇」という視点からのみ、取材をして、執筆しているような印象を覚えた。いわゆる、フェミニズム的な視点でかかれたものだと思うのだ。
それが悪いわけではない。しかし、それ以外の「選択肢」はないのか、と思ってしまう。100人いれば100人が悲劇と捉えているわけがない。そこを書かなければ、真実のルポではなくなってしまうように思える。
この本や著者が悪いと言うことではなく、もう少し幅の広い視野でルポを書いても良かったという感想が残るのである。
けど、著者が「女子割礼=悲劇」という視点からのみ、取材をして、執筆しているような印象を覚えた。いわゆる、フェミニズム的な視点でかかれたものだと思うのだ。
それが悪いわけではない。しかし、それ以外の「選択肢」はないのか、と思ってしまう。100人いれば100人が悲劇と捉えているわけがない。そこを書かなければ、真実のルポではなくなってしまうように思える。
この本や著者が悪いと言うことではなく、もう少し幅の広い視野でルポを書いても良かったという感想が残るのである。
2003年9月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
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2004年5月6日に日本でレビュー済み
女子割礼という言葉は知っていても、その実態についてはよくわかっていませんでした。
この本は、著者が実際に割礼をした女性たちや、割礼を施している施術者にインタビューしているあたりが、すごい。はじめて割礼の恐ろしさがよくわかりました。
中でも割礼を終えたばかりの小さな少女たちの写真が圧巻です。
虚ろな瞳や、びっしりと額に浮かんだ汗。
こんな習慣は早くなくして欲しいと願ういっぽう、割礼を取り巻く状況についての説明を読むと、諸外国からの押しつけは現地の人たちにとって決してプラスにはならないのだとわかります。
よくこうした取材しにくい内容を取材したなと、著者には感心しました。
女性の人権意識のある方に読んで欲しい、良質のドキュメントです。
この本は、著者が実際に割礼をした女性たちや、割礼を施している施術者にインタビューしているあたりが、すごい。はじめて割礼の恐ろしさがよくわかりました。
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虚ろな瞳や、びっしりと額に浮かんだ汗。
こんな習慣は早くなくして欲しいと願ういっぽう、割礼を取り巻く状況についての説明を読むと、諸外国からの押しつけは現地の人たちにとって決してプラスにはならないのだとわかります。
よくこうした取材しにくい内容を取材したなと、著者には感心しました。
女性の人権意識のある方に読んで欲しい、良質のドキュメントです。