古いやきものに興味があり、読みました。
十四代の語りで、十二代、十三代のことや、ご自身が改名に至るまでのお話や、
有田のやきもの、磁器の歴史が書かれており、参考になりました。
マイセンの柿右衛門写しを、
マイセンでは柿右衛門の真似をしたと思われたくなくて、
「インド文様インド文様」と言っていた…というエピソードが書かれていて、思わず笑ってしまいました。
今の日本では、マイセンの方が入手し易いためか、一般的となっていますが、やはり美術館で柿右衛門のお皿をみると全く違いますから、
当時のマイセンの方々には、真似をするなら、柿右衛門の職人になってほしかったと思います。
それから、原料の話しですが、
幕末・明治以前の銅や鉱物には、不純物が多く含まれ、あまり良く精製されていないそうです。
そういった不純な鉱物の方が、透明度が高く、深みがある、味のある色味が出せるので、
十四代は、「化学は自然に及ばない」
「ある種の矛盾のようなものがやきものにも無いといけないわけです。ノイズ(雑音)っていうんでしょうか?」
と仰っていて、なるほどと思いました。
濁手は、
泉山陶石、白川山土、岩谷川内の石を混合して作られ、
焼成の際にそれぞれの陶石の収縮率が違うため、
割れることが多く、作るのが難しくて、
江戸時代後半にはほとんど作られなくなったそうですが、
十二代と十三代が、元禄三年(1690年)の古文書『土合帳』などをたよりに、
昭和二十八年にこれを復興し、この技法は昭和三十年三月に、
「記録作成等の措置を講ずべき無形文化財」に選定されたそうです。
あの柔らかな乳白色の白磁は、自然の色の美しさが合わされて、
奇跡のような煌めきのなかで生まれたのだと思いました。
しかし、十四代は、
濁手の技法が国の重要文化財に総合指定されてからもう三十数年という時を経ているわけで、
自然そのものも変化しているので、酸化は日々続いていると言っています。
ずっとやきものに付き合うには、
自然の変化にもついていけるだけの、基礎的なことをきちっとやっておかなければいけないそうです。
伝統的な技術の上に成り立っている工藝の世界というのは、
人も、素材も、道具類も、全部後の世代に繋いでいかなければいけないので、
個人的な「作家」の世界とはまったく違う世界であり、
後の世代には、輪郭や流れを教え、あとは任せるという、次の世代のための職人を育ててゆくことに、力を注いでいかなければいけないという側面を持っているそうです。
「柿右衛門」は、作家であり、デザイナーでもあるけれど、窯元の親父であり、経営者であり、プロデューサーであり、オーケストラの指揮者のような存在なんです。
やきものの話しを通じて、自然をみるまなざしが変わったような、
柿右衛門の窯元でのお話を読んで、その親父的存在に、修道のような生きざまを感じました。
読んでよかったです。
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余白の美 酒井田柿右衛門 (集英社新書) 新書 – 2004/11/17
十四代酒井田柿右衛門
(著)
至高の色絵磁器、柿右衛門。研ぎ澄まされた美の秘密を十四代当主が初めて明かす!
色絵磁器の最高峰、柿右衛門。その最大の特徴は赤絵の華麗な絵柄とともに、『濁手(にごしで)』と呼ばれる乳白色の磁肌にある。江戸時代に生まれ、一時途絶えていた濁手の技術を甦らせた十二代、十三代柿右衛門とその工房。そして、十二代の祖父、十三代の父から伝統と工房を受け継ぎ、傑作を生み出してきたのが十四代柿右衛門だ。祖父、父から受けた薫陶、やきものを作る実際の工程など、人間国宝でもある十四代が初めて語った柿右衛門の美の神髄。歴代柿右衛門の作品解説もあわせて、柿右衛門窯のすべてがここに明かされる。
濁手 桜文 花瓶(十四代作)
染錦 唐草龍鳳凰文 花瓶(十一代作)
濁手 椿文 花瓶(十三代作)
濁手 草花文 八角深鉢(十二代作)
クリックすると大きな画像で見ることが出来ます
[著者情報]
十四代酒井田柿右衛門 (じゅうよんだい さかいだ かきえもん)
一九三四年佐賀県有田町生まれ。多摩美術大学日本画科卒業。一九七一年、日本工芸会正会員となる。一九八二年十四代柿右衛門を襲名。二〇〇一年重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定される。二〇〇二年、日本工芸会常任理事に就任。
色絵磁器の最高峰、柿右衛門。その最大の特徴は赤絵の華麗な絵柄とともに、『濁手(にごしで)』と呼ばれる乳白色の磁肌にある。江戸時代に生まれ、一時途絶えていた濁手の技術を甦らせた十二代、十三代柿右衛門とその工房。そして、十二代の祖父、十三代の父から伝統と工房を受け継ぎ、傑作を生み出してきたのが十四代柿右衛門だ。祖父、父から受けた薫陶、やきものを作る実際の工程など、人間国宝でもある十四代が初めて語った柿右衛門の美の神髄。歴代柿右衛門の作品解説もあわせて、柿右衛門窯のすべてがここに明かされる。
濁手 桜文 花瓶(十四代作)
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[著者情報]
十四代酒井田柿右衛門 (じゅうよんだい さかいだ かきえもん)
一九三四年佐賀県有田町生まれ。多摩美術大学日本画科卒業。一九七一年、日本工芸会正会員となる。一九八二年十四代柿右衛門を襲名。二〇〇一年重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定される。二〇〇二年、日本工芸会常任理事に就任。
- 本の長さ264ページ
- 言語日本語
- 出版社集英社
- 発売日2004/11/17
- ISBN-104087202674
- ISBN-13978-4087202670
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登録情報
- 出版社 : 集英社 (2004/11/17)
- 発売日 : 2004/11/17
- 言語 : 日本語
- 新書 : 264ページ
- ISBN-10 : 4087202674
- ISBN-13 : 978-4087202670
- Amazon 売れ筋ランキング: - 316,014位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 92位アート・建築・デザインの陶芸
- - 628位集英社新書
- - 48,169位趣味・実用
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2017年9月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2009年6月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
私は中古の第十三代柿右衛門濁手湯呑を購入してからこの本を買いました。著書を読んでは濁手に触れて味わい、眺めては再び読み浸るという繰り返しを行っています。やはり、ホンモノは、すなわち芸術作品というものは製品も作者本人の語りも繰り返し味わうに耐えられるものなのですね。絶対後悔のない名著です。自分の濁手に対する愛着は増すばかりです。これから柿右衛門の濁手を購入しようと考えている方にもお勧めします。
2012年11月7日に日本でレビュー済み
14代酒井田柿右衛門が祖父(12代)や父(13代)のこと、顔料、職人、窯などなどについて語ったもの。和多田進さんによる聞き書きである。全部で3年くらいかけての取材という。
語り口はざっくばらんで分かりやすい。とはいえ、そのなかには絵付け、色、土などへの並々ならぬこだわりが見えており、陶芸への執念が感じ取れる。みずからを陶芸作家ではなく、職人として位置づけているのもおもしろい。
多摩美在学時代の思い出、職人養成の苦労、土の種類についてなども興味深かった。
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