読んでいて、革命期のフランスだからこそ生まれた物語だと感じました。
同じような時代の日本では、この様な人物達が存在できる環境はないでしょう。
モンテスパン侯爵の様な行動を将軍に起こせば、即御家取り潰し。
ネー元帥は能力を評価されて、敵対していた大名に捕虜にされた後に召抱えられたことでしょう。
ラスネールは、御白州で持論を披露する機会すら与えてもらえず即極刑。
六代目サンソンは、処刑人として賞賛される。もしくは処刑人にならずにすんだでしょう。
これらの魅力的な人物がフランスに登場した背景には、
良くも悪くも当時のフランスの状況の賜物でしょう。
絶対君主制と貴族主義が強い力を持ち、民衆は不満を抱きながらもそこで生きることを選んだ。
その中で、未熟ながらも、公聴会制裁判が行われ、ある程度の地位のあるものは、
国王への陳述書の提出まで許されていた。
民衆は、読み書きができない者が多いにもかかわらず、
人の口から語られる演説とか詩などの言葉に込められた真意を理解する感性に優れていた。
ルイ14世から16世までのフランス国王も、よく批判されていますが、
この本を読んで、当時のフランス国王の苦労も感じることができました。
当時は認められていた、側室愛人のトラブルの処理から、臣下からの未払給料の催促状の処理。
犯罪者の処罰書類への目通し。などなど。
絶対君主制ゆえに、国の法務にかかわる事柄の、最終責任は、国王に帰するのですから。
四人の中での一番、惹かれましたのは、ラスネールの話です。
とんでもない自己中な理論で、犯罪と社会と司法を批判するのですが、
ラスネールの詩を、翻訳を通して読んでいるのもかかわらず
詩を読んだ後には、ラスネールの理論が正解だと感じてしまいました。
フランスの人物と歴史の魅力を教えてくれた良い本です。
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フランス反骨変人列伝 (集英社新書) 新書 – 2006/4/14
安達 正勝
(著)
自分独自の生き方に徹した四人の男たち。
太陽王と対決したモンテスパン侯爵、愛国の人ネー元帥、犯罪者詩人ラスネール、死刑執行人六代目サンソン。正史にはめったに登場しない魅力的なフランスの奇人・変人四人を紹介。反骨の生き様!
太陽王と対決したモンテスパン侯爵、愛国の人ネー元帥、犯罪者詩人ラスネール、死刑執行人六代目サンソン。正史にはめったに登場しない魅力的なフランスの奇人・変人四人を紹介。反骨の生き様!
- 本の長さ232ページ
- 言語日本語
- 出版社集英社
- 発売日2006/4/14
- ISBN-104087203379
- ISBN-13978-4087203370
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登録情報
- 出版社 : 集英社 (2006/4/14)
- 発売日 : 2006/4/14
- 言語 : 日本語
- 新書 : 232ページ
- ISBN-10 : 4087203379
- ISBN-13 : 978-4087203370
- Amazon 売れ筋ランキング: - 441,194位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 177位フランス史
- - 872位集英社新書
- - 1,137位ヨーロッパ史一般の本
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2013年5月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2006年4月30日に日本でレビュー済み
「死刑執行人サンソン」に続く、安達氏のフランス史評伝集。期待して購入し、そして期待は裏切られませんでした。
ここに登場する四人の登場人物、いずれも自分の性格、ポリシーを曲げる事が出来ないがゆえに、それぞれに数奇な運命をたどります。
ネー元帥のように、かつては軍人としての成功の原因であった直情径行ゆえに破滅を迎える人もいれば、六代目サンソンのように首切り役人としての家業を受け入れられない意気地なさゆえにその家業から解放され、死刑廃止運動に邁進することが出来た人もいる。反骨者たちの抱える強さと弱さ、それを安達氏は平易軽妙な筆致で描き出します。
手軽に読む事ができるので、ちょっとした読書を楽しみたい人に自信を持ってオススメします。
ここに登場する四人の登場人物、いずれも自分の性格、ポリシーを曲げる事が出来ないがゆえに、それぞれに数奇な運命をたどります。
ネー元帥のように、かつては軍人としての成功の原因であった直情径行ゆえに破滅を迎える人もいれば、六代目サンソンのように首切り役人としての家業を受け入れられない意気地なさゆえにその家業から解放され、死刑廃止運動に邁進することが出来た人もいる。反骨者たちの抱える強さと弱さ、それを安達氏は平易軽妙な筆致で描き出します。
手軽に読む事ができるので、ちょっとした読書を楽しみたい人に自信を持ってオススメします。
2008年12月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
そもそも反骨とはなんであろうか。辞書によれば『不当な権力や世俗的風習に反抗する気概』とある。しかもこの‘気概'、何かの反動であったり、やむを得ぬ事情に流された結果ではなく、個人の哲学の所産でなければならない。
そういった視点でこの物語を読んでみて、果たしてどの人物がこれらの条件を満たしているだろうか。
最初に出てくるモンテスパン公爵。寝取られ男の嫉妬と泥仕合。同じような話は最近の週刊誌や芸能ニュースに溢れていて珍しくもない。違うのは相手が太陽王だという点だけで、しかも怒りの矛先はむしろ完全に浮気した妻に向いている。妻が修道院送りになった後は平然と宮廷に出入りするところなどは『それでいいのか?』と思ってしまう。
ネー元帥はよくいる世渡り下手な武人の典型。致命的なのは行動が一貫性を欠き、『反骨』に必要な哲学が全く感じられない点。知性と反骨は表裏一体だ。
一番反骨に近いだろうラスネールも、実のところ貧困に負けて犯罪に走ったよくある人生の転落話だ。本物の反骨者ならば、貧困に打ち勝って這い上がってくる筈…と思うのは私だけだろうか?
で、6代目サンソン。処刑人が嫌で嫌でたまらず、放蕩の末にギロチンを質に入れ、処刑人をクビになる。ここに至っては反骨どころか、軟弱そのもの。4代目の苦悩を読み知っている我々からすると、実にふがいない子孫ではないか。
・・・・結局、この本に出てくる人物はみな『運命に打ち勝つ』という人生哲学を実践できなかった不幸で『普通の』人々だ。
フランス革命期の人間模様としては楽しめるが、反骨を期待すると失望する。きっと著者も気づいているはずだ。本物の『反骨』って、なかなかいないよね。
そういった視点でこの物語を読んでみて、果たしてどの人物がこれらの条件を満たしているだろうか。
最初に出てくるモンテスパン公爵。寝取られ男の嫉妬と泥仕合。同じような話は最近の週刊誌や芸能ニュースに溢れていて珍しくもない。違うのは相手が太陽王だという点だけで、しかも怒りの矛先はむしろ完全に浮気した妻に向いている。妻が修道院送りになった後は平然と宮廷に出入りするところなどは『それでいいのか?』と思ってしまう。
ネー元帥はよくいる世渡り下手な武人の典型。致命的なのは行動が一貫性を欠き、『反骨』に必要な哲学が全く感じられない点。知性と反骨は表裏一体だ。
一番反骨に近いだろうラスネールも、実のところ貧困に負けて犯罪に走ったよくある人生の転落話だ。本物の反骨者ならば、貧困に打ち勝って這い上がってくる筈…と思うのは私だけだろうか?
で、6代目サンソン。処刑人が嫌で嫌でたまらず、放蕩の末にギロチンを質に入れ、処刑人をクビになる。ここに至っては反骨どころか、軟弱そのもの。4代目の苦悩を読み知っている我々からすると、実にふがいない子孫ではないか。
・・・・結局、この本に出てくる人物はみな『運命に打ち勝つ』という人生哲学を実践できなかった不幸で『普通の』人々だ。
フランス革命期の人間模様としては楽しめるが、反骨を期待すると失望する。きっと著者も気づいているはずだ。本物の『反骨』って、なかなかいないよね。
2013年9月1日に日本でレビュー済み
著者は近代フランスを、その時代の特徴的な人物群から描き出してみせるのが上手い著述家。
本書では、モンテスパン侯爵、ネー元帥、ラスネール、6代目サンソンの4人が扱われている。
モンテスパン侯爵は妻をルイ14世に奪われた男。悲しいと同時に滑稽な人物だ。
ネー元帥については、ナポレオンと復古王政にふりまわされる姿を示している。
泥棒詩人ことラスネールの生き様は強烈。
6代目サンソンは、パリの公式処刑人だった人物。
それぞれの人物の悲哀が巧みにえぐりだされ、思わず引き込まれ、共感してしまうような本であった。
本書では、モンテスパン侯爵、ネー元帥、ラスネール、6代目サンソンの4人が扱われている。
モンテスパン侯爵は妻をルイ14世に奪われた男。悲しいと同時に滑稽な人物だ。
ネー元帥については、ナポレオンと復古王政にふりまわされる姿を示している。
泥棒詩人ことラスネールの生き様は強烈。
6代目サンソンは、パリの公式処刑人だった人物。
それぞれの人物の悲哀が巧みにえぐりだされ、思わず引き込まれ、共感してしまうような本であった。