フランスの神経科医と科学ジャーナリストの女性2人組の記した「脳科学による性差別の正当化」への批判の書。
『話を聞かない男、地図が読めない女』(アラン ピーズ・バーバラ ピーズ(著) 藤井留美(訳) 主婦の友社 2000年)以来の、お手軽「男脳・女脳」路線に乗った新書かと思ったら、全く逆、そういう言説を真っ向から否定する本だった。「男脳・女脳」説はもとより、生得的な性差を生み出すとする、ニューロン説、遺伝子説、性ホルモン説、進化説に根拠がないことを次々と明らかにしていく。最終的には、性差の生得論に限らず、広く「生物学的決定論」を人間性に反するものとして(?)批判している。
翻訳された日本語の文章は大変読みやすく、そのおかげで気づきにくいが、フランス語で書かれた原著は初っ端からかなり過激な調子なのではないかと思う。NatureやScienceといった一流誌に載った研究を実名を挙げてバッタバッタと斬りまくっていく。「こんなバカな話があるか」と言わんばかりの調子で余りにもアッサリと否定していくせいか、新書にしては珍しく巻末に原著の引用文献がそのまま掲載されている。
「男女の脳には構造的な違いがある」「同性愛は受精卵の発達初期における性ホルモンのバランスの崩れが原因」「浮気の遺伝子が発見された」といったメディアを騒がす「発見」に対して、それらの研究結果が実際はそれほど決定的なものではないことや、メディアに報道される際に過度の一般化・単純化がなされていることを指摘し、そういったマユツバものの「発見」が「科学的真実」として独り歩きしてしまうことの怖ろしさ、特定の研究者が政治の世界で発言力をもち政策決定にまで関与することの危険性、科学がイデオロギー補強の道具と化している現実を糾弾している。
ただ、正直言って、本書を貫いている「生物学的決定論への反発」もやや度を越しているように思う。これはこれである種のイデオロギーに基づいた態度のように思えるのだが…。
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脳と性と能力 (集英社新書) 新書 – 2007/6/15
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男と女の特性を、脳科学が検証する!
女性は生まれつき女らしく、男性は生まれつき男らしいのか。男女の知性や行動の違いが脳にもとづくという言説は、どこまで本当なのか? 仏の女性科学者らが徹底検証し、わかりやすく解説する。
女性は生まれつき女らしく、男性は生まれつき男らしいのか。男女の知性や行動の違いが脳にもとづくという言説は、どこまで本当なのか? 仏の女性科学者らが徹底検証し、わかりやすく解説する。
- 本の長さ176ページ
- 言語日本語
- 出版社集英社
- 発売日2007/6/15
- ISBN-104087203964
- ISBN-13978-4087203967
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登録情報
- 出版社 : 集英社 (2007/6/15)
- 発売日 : 2007/6/15
- 言語 : 日本語
- 新書 : 176ページ
- ISBN-10 : 4087203964
- ISBN-13 : 978-4087203967
- Amazon 売れ筋ランキング: - 290,004位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 616位集英社新書
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著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2007年8月19日に日本でレビュー済み
「女性は生まれつき社交的であり、感情的であり、言語を操る才能に恵まれていて、その一方、男性は闘争心が強く支配したがる性格で、空間能力が高い」。こうした男女間の行動上・能力上の差異は、しばしば、人間の生物学的本性にその原因があると考えられてきた。事実、こうした決定論的な説明の試みは、骨相学や社会生物学など時々の科学的知見を背景に絶えず否定と再生産が繰り返されてきたのであり、近年では、fMRIによる脳画像診断など長足の技術的発展を遂げた脳神経科学が、その試みを継承している。本書は、こうした男女の行動上・能力上の差異に関して提示されてきた科学的主張の検証を目指す、フランスの神経科医と科学ジャーナリストによる共著である。
著者らによれば、脳は経験や学習を通じてその機能を変質させる「可塑性」を有しており、そのために、男女間に見られる脳の働きの違いは生得の本性というよりも、むしろ環境要因によって生じた相違にすぎない。また、「男は右脳的機能(=空間的把握能力)に長じ、女は左脳的機能(=言語使用)に長ずる」といった見解は、言語機能や運動機能などの人間の個別の機能が脳の特定領域の機能に対応するという、あまりに単純化された見方を前提としている。さらに、人間の性行動や能力や情動は性ホルモンの作用が決定づけているという見解もまた、性ホルモンの役割を過度に個別化・特定化する単純極まりない発想である。
こうして、著者らは、男女間の能力上の相違を脳やホルモンの機能へと還元する生物学的決定論の主張を、逐一論駁していく。だが、本書の白眉は、現在の英米圏を中心とする脳神経科学者や関連団体の「科学的」言説が、生物学的決定論の確立といった特定のイデオロギーと結びついている事実を指摘している点であろう。例えば、近年、特にアメリカを中心として、「脳神経倫理学」(ニューロエシックス)と呼ばれる新たな学問分野が興隆しつつあるが、本書ではその背後にも特定のイデオロギー的前提が見え隠れしていることを示唆しており、最近日本にも輸入されつつあるこの学問分野の行く末を見極めるための、一種興味深い視点を提供している。
なお、人文系の読者にとっては、たとえ新書であっても自然科学的な題材には何かと気後れするものだろう。だが、本書で展開される議論は、比較的淡々とはしているものの無味乾燥でもなく、比較的細かく適切に設定された章立てや、適宜挿入される囲み記事のおかげで、興味を持続させながら無理なく読み通すことができる。また、最終章では、本書全体で検討されてきた問題と議論の内容を簡単に要約・回顧してくれるので、門外漢であっても読後に議論の要点を見失うことはない。「科学的」装いを帯びた議論は、門外漢にはその主張の真偽や妥当性を容易には判定し難いだけに、多少隔靴掻痒な印象もおぼえなくはない。しかし、男女の性差を単純な生物学的本性へと還元する俗流科学が途絶えない現状を鑑みれば、そうした状況に冷や水を浴びせ警鐘を鳴らす本書の意義は、決して小さくないと思われる。
著者らによれば、脳は経験や学習を通じてその機能を変質させる「可塑性」を有しており、そのために、男女間に見られる脳の働きの違いは生得の本性というよりも、むしろ環境要因によって生じた相違にすぎない。また、「男は右脳的機能(=空間的把握能力)に長じ、女は左脳的機能(=言語使用)に長ずる」といった見解は、言語機能や運動機能などの人間の個別の機能が脳の特定領域の機能に対応するという、あまりに単純化された見方を前提としている。さらに、人間の性行動や能力や情動は性ホルモンの作用が決定づけているという見解もまた、性ホルモンの役割を過度に個別化・特定化する単純極まりない発想である。
こうして、著者らは、男女間の能力上の相違を脳やホルモンの機能へと還元する生物学的決定論の主張を、逐一論駁していく。だが、本書の白眉は、現在の英米圏を中心とする脳神経科学者や関連団体の「科学的」言説が、生物学的決定論の確立といった特定のイデオロギーと結びついている事実を指摘している点であろう。例えば、近年、特にアメリカを中心として、「脳神経倫理学」(ニューロエシックス)と呼ばれる新たな学問分野が興隆しつつあるが、本書ではその背後にも特定のイデオロギー的前提が見え隠れしていることを示唆しており、最近日本にも輸入されつつあるこの学問分野の行く末を見極めるための、一種興味深い視点を提供している。
なお、人文系の読者にとっては、たとえ新書であっても自然科学的な題材には何かと気後れするものだろう。だが、本書で展開される議論は、比較的淡々とはしているものの無味乾燥でもなく、比較的細かく適切に設定された章立てや、適宜挿入される囲み記事のおかげで、興味を持続させながら無理なく読み通すことができる。また、最終章では、本書全体で検討されてきた問題と議論の内容を簡単に要約・回顧してくれるので、門外漢であっても読後に議論の要点を見失うことはない。「科学的」装いを帯びた議論は、門外漢にはその主張の真偽や妥当性を容易には判定し難いだけに、多少隔靴掻痒な印象もおぼえなくはない。しかし、男女の性差を単純な生物学的本性へと還元する俗流科学が途絶えない現状を鑑みれば、そうした状況に冷や水を浴びせ警鐘を鳴らす本書の意義は、決して小さくないと思われる。