メディア史における大革命と言えば、十五世紀に起きたグーテンベルグの活版印刷を指すことに異論はないだろう。しかし、印刷の本質とは情報の蓄積というところにあり、大量に蓄積されるだけでは価値を生み出さない。情報は、伝達されて初めて情報になるのである。本書はそんな情報蓄積メディアの革命から時をおかずして起こった、情報伝達メディアの革命”ヨーロッパ郵便網”に着目した一冊である。
◆本書の目次
序章 :十六世紀のメディア革命
第一章:古代ローマの駅伝制度
第二章:中世の伝達メディア
第三章:近代郵便制度の誕生
第四章:郵便機器
第五章:ヨーロッパ各国の郵便改革
第六章:郵便と検閲と新聞
第七章:「手紙の世紀」と郵便馬車
第八章:国庫金原理の終焉と郵便の大衆化
終章 :郵政民営化の二十一世紀
本書は2008年に刊行されているものなので、おそらく郵政民営化のあり方へ一石を投じることを目的として書かれたものと思われるが、今読むとソーシャルメディアの原点を辿る一冊のように読めて、非常に興味深い。
◆”ヨーロッパ郵便網”とソーシャルメディアの類似点
・駅伝方式での情報伝達
中世ヨーロッパでは宿駅と呼ばれる拠点ごとに馬と配達人が交代する駅伝方式で、手紙等の情報伝達が行われていた。このありよう、RTやシェアによって、友人間のつながりを媒介として伝播させていく、ソーシャルメディアの伝達方法と原理が同じである。
・パブリックでオープンな情報伝達
現代において、手紙とはプライベートでクローズドなものを指すが、当時の手紙とは「宛先に届くには届いたが、途中で開かれて、複数の人々に読まれるということが大旨常態であった」とのことである。その意味で手紙とはジャーナリズムであり、そののちに新聞というメディアを生み出していくことになったそうである。ここに、ミドルメディアによるキュレーションという昨今の潮流の原点をみることができる。
・インフラの整備による情報発信の拡大
郵便網が整備された十八世紀のヨーロッパは、まさに「手紙の世紀」と呼ばれるくらい情報発信の量が飛躍的に伸びた時代でもある。TwitterやFacebookの登場により、情報の発信量が飛躍的に増えた昨今の状況とも酷似している。ちなみに拙ブログにおいても、エントリーを書きだす際には”Post”というアイコンをクリックする。当時の時代背景を考えながらPostするのは、非常に感慨深いものである。
史実によれば、郵便網というメディアはその後、時間・空間と言う概念に決定的な影響を与え、ヨーロッパ文化の近代化を根本から促進させることとなる。しかし現在の郵便メディアの衰退は、自身が作りだしたグローバリゼーションの波に、逆に呑み込まれてしまったようにも思える。はたして、ソーシャルメディアの運命はいかに・・・
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ハプスブルク帝国の情報メディア革命―近代郵便制度の誕生 (集英社新書) 新書 – 2008/1/17
菊池 良生
(著)
あらゆるメディアは近代初期郵便網に溯る
十六世紀、ハプスブルク家の世界帝国志向がもたらした情報伝達メディアこそ、近代郵便制度であった。郵便を駆使して最初の世界経済システムを作り上げた、ヨーロッパ近代成立のからくりをのぞく。
十六世紀、ハプスブルク家の世界帝国志向がもたらした情報伝達メディアこそ、近代郵便制度であった。郵便を駆使して最初の世界経済システムを作り上げた、ヨーロッパ近代成立のからくりをのぞく。
- 本の長さ224ページ
- 言語日本語
- 出版社集英社
- 発売日2008/1/17
- ISBN-104087204251
- ISBN-13978-4087204254
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商品の説明
著者について
菊池 良生(きくち よしお)
一九四八年生まれ。早稲田大学大学院博士課程に学ぶ。明治大学理工学部教授。専攻は、オーストリア文学。著書に『ハプスブルク家の人々』、『イカロスの失墜―悲劇のメキシコ皇帝マクシミリアン一世伝』(以上新人物往来社)、『犬死』(小学館)、『戦うハプスブルク家―近代の序章としての三十年戦争』、『神聖ローマ帝国』(以上講談社現代新書)等がある。
一九四八年生まれ。早稲田大学大学院博士課程に学ぶ。明治大学理工学部教授。専攻は、オーストリア文学。著書に『ハプスブルク家の人々』、『イカロスの失墜―悲劇のメキシコ皇帝マクシミリアン一世伝』(以上新人物往来社)、『犬死』(小学館)、『戦うハプスブルク家―近代の序章としての三十年戦争』、『神聖ローマ帝国』(以上講談社現代新書)等がある。
登録情報
- 出版社 : 集英社 (2008/1/17)
- 発売日 : 2008/1/17
- 言語 : 日本語
- 新書 : 224ページ
- ISBN-10 : 4087204251
- ISBN-13 : 978-4087204254
- Amazon 売れ筋ランキング: - 746,147位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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上位レビュー、対象国: 日本
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2017年6月27日に日本でレビュー済み
2008年の本。著者は明治大学理工学部教授(オーストリア文学専攻)。
曰く・・・
マクシミリアン一世は、ブルゴーニュ公国のシャルル大胆公の一人娘マリーを后に迎える。ブルゴーニュ公国はフランス王家の第一の家臣だが、豊かなネーデルラントを領し、自立の気風がみなぎる国。シャルルはついにフランスからの独立を画策し、神聖ローマ帝国に近づく。マクシミリアン一世の父である皇帝フリードリッヒ三世には金がない。両者の思惑が一致するが、シャルルはフランスとのブルゴーニュ戦争に敗れて戦死。マクシミリアン一世は勢いに乗るフランス(スイス傭兵部隊が主力)にランツクネヒト(ドイツ傭兵部隊)を使って対抗し、フランスを追い払い、ネーデルラントを手に入れる。
フランク王国は騎馬飛脚をかかえていたが、その後、王国は分裂し、騎馬飛脚も姿を消す。この結果、教会組織が唯一の全国組織となり、政治・経済への影響力を行使するようになる。教会の使僧が手紙を運ぶが、使僧はそのうち私信も運ぶようになる。使僧は、訃報を各僧院に回覧する。各僧院長は使僧の巻物に弔辞を書く(死者の巻物)。この死者の巻物とともに膨大な情報が回流する。世俗領主や帝国都市も多くの手紙を使僧にゆだねる。僧院は「死者の巻物」を通じて大量の情報を手に入れる立場になり、影響力を高める。
フランク王国のあとのカペー朝(フランス)は、王が代々長命で男子後継者に恵まれた。それゆえにフランスは早くから王権の強化がなされた。一方のドイツは御家断絶により王朝が三度交代している(ザクセン朝、ザリエル朝、シュタウフェン朝)。カノッサの屈辱はザリエル朝。シュタウフェン朝のあとドイツは内戦状態となり、大空位時代を経て、皇帝は一代限りの回り持ち状態となる。その間、諸侯領は半ば独立国家に等しくなる(領邦国家)。
14世紀になると、ミラノはライバル諸都市に対する早期警戒システムとして駅伝制度をつくる。やがてこのネットワークは私信や商用郵便を運ぶようになる。また、時刻伝票というアイディアにより配達品の時間管理ができるようになる。「時間の浪費」という概念が生まれたのはこのころだといわれる。ミラノにおそらくヨーロッパで一番速く歯車仕掛けの塔時計が出現したのも偶然ではない。時間厳守の秩序ある生活が要求されるようになる。
ヴェネチアも駅伝制度を作る。その商人飛脚にはタッシス家(タクシス家)という有力な飛脚問屋があった。タッシス家はマクシミリアンの父である皇帝フリードリッヒ三世に取り入り、チロル伯爵領の飛脚営業権を獲得する。
ハプスブルク家はお金を出さない。無い袖は振れぬと開き直る。特に、マクシミリアン一世とカール五世の金払いの悪さは天下一品。
16世紀の「定期郵便」は時間のリズムを生み出す。郵便集配日が生活の重要基準となる。決済も為替が主流となる。
書簡はジャーナリズムの一種だった。信書の秘密などないので、手紙は途中で密かに開封され、複数の人びとに回覧される。その意味では手紙はジャーナリズムだともいえる。新聞も郵便が作り出したもの。不特定多数の人間に情報を売るという意味での「手書き新聞」は15世紀ごろからあったらしい。17世紀に印刷業者ヨハン・カルロスにより、おそらく世界初の活版印刷の定期新聞「報告」が発刊される。手書きから活版印刷に変わると新聞情報は「威厳性」を増す。
ナポレオンの登場は、神聖ローマ帝国を名実ともに消滅させることになり、帝国郵便も消滅。しかし、帝国郵便はタクシス郵便と名を変えて純粋な民営郵便として生き残る。
宗教改革のころ、多くのビラが印刷された。ビラにより改革思想が民衆に浸透していく。ただし、民衆の識字率は低い。ビラに蓄積された情報が市場や酒場で読み上げられることで伝達された。
タクシス家は1867年にプロイセンに郵便事業をまるごと接収され、賠償金を得ている。その賠償金を手広く投資し、しっかりと財を築いて現在に至る。
みたいな話。
曰く・・・
マクシミリアン一世は、ブルゴーニュ公国のシャルル大胆公の一人娘マリーを后に迎える。ブルゴーニュ公国はフランス王家の第一の家臣だが、豊かなネーデルラントを領し、自立の気風がみなぎる国。シャルルはついにフランスからの独立を画策し、神聖ローマ帝国に近づく。マクシミリアン一世の父である皇帝フリードリッヒ三世には金がない。両者の思惑が一致するが、シャルルはフランスとのブルゴーニュ戦争に敗れて戦死。マクシミリアン一世は勢いに乗るフランス(スイス傭兵部隊が主力)にランツクネヒト(ドイツ傭兵部隊)を使って対抗し、フランスを追い払い、ネーデルラントを手に入れる。
フランク王国は騎馬飛脚をかかえていたが、その後、王国は分裂し、騎馬飛脚も姿を消す。この結果、教会組織が唯一の全国組織となり、政治・経済への影響力を行使するようになる。教会の使僧が手紙を運ぶが、使僧はそのうち私信も運ぶようになる。使僧は、訃報を各僧院に回覧する。各僧院長は使僧の巻物に弔辞を書く(死者の巻物)。この死者の巻物とともに膨大な情報が回流する。世俗領主や帝国都市も多くの手紙を使僧にゆだねる。僧院は「死者の巻物」を通じて大量の情報を手に入れる立場になり、影響力を高める。
フランク王国のあとのカペー朝(フランス)は、王が代々長命で男子後継者に恵まれた。それゆえにフランスは早くから王権の強化がなされた。一方のドイツは御家断絶により王朝が三度交代している(ザクセン朝、ザリエル朝、シュタウフェン朝)。カノッサの屈辱はザリエル朝。シュタウフェン朝のあとドイツは内戦状態となり、大空位時代を経て、皇帝は一代限りの回り持ち状態となる。その間、諸侯領は半ば独立国家に等しくなる(領邦国家)。
14世紀になると、ミラノはライバル諸都市に対する早期警戒システムとして駅伝制度をつくる。やがてこのネットワークは私信や商用郵便を運ぶようになる。また、時刻伝票というアイディアにより配達品の時間管理ができるようになる。「時間の浪費」という概念が生まれたのはこのころだといわれる。ミラノにおそらくヨーロッパで一番速く歯車仕掛けの塔時計が出現したのも偶然ではない。時間厳守の秩序ある生活が要求されるようになる。
ヴェネチアも駅伝制度を作る。その商人飛脚にはタッシス家(タクシス家)という有力な飛脚問屋があった。タッシス家はマクシミリアンの父である皇帝フリードリッヒ三世に取り入り、チロル伯爵領の飛脚営業権を獲得する。
ハプスブルク家はお金を出さない。無い袖は振れぬと開き直る。特に、マクシミリアン一世とカール五世の金払いの悪さは天下一品。
16世紀の「定期郵便」は時間のリズムを生み出す。郵便集配日が生活の重要基準となる。決済も為替が主流となる。
書簡はジャーナリズムの一種だった。信書の秘密などないので、手紙は途中で密かに開封され、複数の人びとに回覧される。その意味では手紙はジャーナリズムだともいえる。新聞も郵便が作り出したもの。不特定多数の人間に情報を売るという意味での「手書き新聞」は15世紀ごろからあったらしい。17世紀に印刷業者ヨハン・カルロスにより、おそらく世界初の活版印刷の定期新聞「報告」が発刊される。手書きから活版印刷に変わると新聞情報は「威厳性」を増す。
ナポレオンの登場は、神聖ローマ帝国を名実ともに消滅させることになり、帝国郵便も消滅。しかし、帝国郵便はタクシス郵便と名を変えて純粋な民営郵便として生き残る。
宗教改革のころ、多くのビラが印刷された。ビラにより改革思想が民衆に浸透していく。ただし、民衆の識字率は低い。ビラに蓄積された情報が市場や酒場で読み上げられることで伝達された。
タクシス家は1867年にプロイセンに郵便事業をまるごと接収され、賠償金を得ている。その賠償金を手広く投資し、しっかりと財を築いて現在に至る。
みたいな話。
2010年6月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
著者は本来は神聖ローマ帝国/ハプスブルク家を研究する歴史か。ところが、ふとしたことから前近代の郵便制度に関心を抱き、一冊にまとめたのが本書。
古代の駅逓制度から1840年のイギリス/ローランド・ヒルによる近代郵便制度の確立まで、手際よく紹介されている。ルードヴィッヒ・カルムス『郵便の世界史』を参照しつつ書き進めていったことが明記されており、独自の研究というわけではないらしい。
政治や経済とからみつつ、郵便制度が発達していったことが良く分かる。近世郵便制度を確立したタクシス家の話なども、ハプスブルクとの関係から描き出されており、興味深い。
郵便の歴史の本というのは、趣味人の手になるものが多く、得てしてマニアックな書きぶりになりがちだ。しかし、本書は歴史家によるものなので、背景や歴史が重視されている。バランス良く郵便史が理解できる。
古代の駅逓制度から1840年のイギリス/ローランド・ヒルによる近代郵便制度の確立まで、手際よく紹介されている。ルードヴィッヒ・カルムス『郵便の世界史』を参照しつつ書き進めていったことが明記されており、独自の研究というわけではないらしい。
政治や経済とからみつつ、郵便制度が発達していったことが良く分かる。近世郵便制度を確立したタクシス家の話なども、ハプスブルクとの関係から描き出されており、興味深い。
郵便の歴史の本というのは、趣味人の手になるものが多く、得てしてマニアックな書きぶりになりがちだ。しかし、本書は歴史家によるものなので、背景や歴史が重視されている。バランス良く郵便史が理解できる。
2008年6月6日に日本でレビュー済み
他の方が、郵便制度についての論評を書いておられるので、私は、この「名家」について書いていこうと思う。
このトゥルン・ウント・タクシス家について知ったのは、あの池田理代子さんの書かれた「オルフェウスの窓」であった。そして、この「名家」について、調べようと思っても、なかなかなかった。今でこそ、インターネットがあるから、検索できるけれど、当時はほとんど、資料がなかった。
そして、「セブンシーズ」という雑誌が、この「名家」のことを特集したのが、本格的な、この「名家」の日本への紹介ではないか?そうして、この本である。
おそらく、こういう「本」という形で、このヨーロッパ有数の「名家」を紹介したのは、初めてと思われるのである。それ程、日本では、この「名家」のこと、一般には知られていない、と思う。かつての欧州貴族の「スケールの大きさ」を感じることが、充分にできる。
ロイターが、「通信事業」を起こしたが、それとは比べ物にならないほどの、「壮大な」「先見の明」を持ったトゥルン・ウント・タクシス家なのである。
このトゥルン・ウント・タクシス家について知ったのは、あの池田理代子さんの書かれた「オルフェウスの窓」であった。そして、この「名家」について、調べようと思っても、なかなかなかった。今でこそ、インターネットがあるから、検索できるけれど、当時はほとんど、資料がなかった。
そして、「セブンシーズ」という雑誌が、この「名家」のことを特集したのが、本格的な、この「名家」の日本への紹介ではないか?そうして、この本である。
おそらく、こういう「本」という形で、このヨーロッパ有数の「名家」を紹介したのは、初めてと思われるのである。それ程、日本では、この「名家」のこと、一般には知られていない、と思う。かつての欧州貴族の「スケールの大きさ」を感じることが、充分にできる。
ロイターが、「通信事業」を起こしたが、それとは比べ物にならないほどの、「壮大な」「先見の明」を持ったトゥルン・ウント・タクシス家なのである。
2010年1月17日に日本でレビュー済み
時に先生のような学生もあれば、学生のような先生もある。新書という入れ物は手軽に知識を得られるものとして重宝されているが、これほどまずい本は少ないだろう。もちろん情報を提供するためのものであって、研究書ではないし、歴史書でもない。が、分かりやすさと分かりにくさの落差は書き手が分かっていることはそれなりに書いているが、よく分からないことは適当にお茶を濁すという感じだ。奇妙な改行と表現のつたなさもあいまって、残念な一冊である。
2009年6月29日に日本でレビュー済み
近代ヨーロッパの手記などを読んでいると
当時の人々が今と変わらず当たり前に
手紙を出したり受け取ったりしているが、
考えてみれば「手紙が配達される」というシステムは
それはそれは高度なインフラである。
その成立過程を詳しく教えてくれるのが本書である。
「ハプスブルク帝国」の、というよりも
近代郵便成立史の趣が強い。
我々が日常用いている携帯電話や電子メールの通信速度が
どれだけ待ち望まれ、そして歴史的に見てスピード感に溢れているか
いくら感謝しても足りないことが良く分かる。
当時の人々が今と変わらず当たり前に
手紙を出したり受け取ったりしているが、
考えてみれば「手紙が配達される」というシステムは
それはそれは高度なインフラである。
その成立過程を詳しく教えてくれるのが本書である。
「ハプスブルク帝国」の、というよりも
近代郵便成立史の趣が強い。
我々が日常用いている携帯電話や電子メールの通信速度が
どれだけ待ち望まれ、そして歴史的に見てスピード感に溢れているか
いくら感謝しても足りないことが良く分かる。
2008年10月26日に日本でレビュー済み
情報機関としての郵便局に触れたユニークな本です。日本では「のんびりして心温まるところ」としてイメージされがちですが、実はその出自は情報収集と伝達、検閲を目的としたれっきとした情報機関でした。そんな郵便局の側面を知らせてくれる本が世に出たことはよいことだと思います。
軍事評論家の松村劭氏が対テロ行動は「警察と郵便局が主体」と仰っていた意味が理解できてよかったです。
【おススメな人】情報活動(インテリジェンス)に興味のある方
軍事評論家の松村劭氏が対テロ行動は「警察と郵便局が主体」と仰っていた意味が理解できてよかったです。
【おススメな人】情報活動(インテリジェンス)に興味のある方
2008年9月20日に日本でレビュー済み
広大な領土を獲得したハプスブルク家が、領土安定のために情報収集網としての郵便システムに着目するのは当然の流れだと思う。商業発展著しいフランドル・ブルゴーニュなどを支配し、手形取引などが郵便網の発展を促進したともいえる。
興味深いのはこのネットワーク網にのっかるかたちで、新聞や旅行業が発展したことだ。
ちなみに検閲が当たり前の時代にあって、「信書の秘密」など守られるはずもなく葉書が出来たのはたった150年前のオーストリアで、その葉書にはわざわざ「信書の秘密は守られません」と但し書きが添えられていたというのも驚きだ。
興味深いのはこのネットワーク網にのっかるかたちで、新聞や旅行業が発展したことだ。
ちなみに検閲が当たり前の時代にあって、「信書の秘密」など守られるはずもなく葉書が出来たのはたった150年前のオーストリアで、その葉書にはわざわざ「信書の秘密は守られません」と但し書きが添えられていたというのも驚きだ。