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イカの哲学 (集英社新書 0430) 新書 – 2008/2/15

4.2 5つ星のうち4.2 33個の評価

幻の書を読み解き、新しい平和学を提唱する
市井の哲学者波多野一郎が、昭和40年に自費出版した幻の書『イカの哲学』。中沢新一が、そこに語られている21世紀に通じる思想を分析し、新しい平和学を提唱する。『イカの哲学』全文も収録する。

商品の説明

著者について

中沢 新一(なかざわ しんいち)
一九五〇年山梨県生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。多摩美術大学芸術人類学研究所所長・教授。著書に『僕の叔父さん 網野善彦』ほか多数。
波多野 一郎(はたの いちろう)
一九二二年京都府生まれ。第二次世界大戦中、陸軍航空隊に所属。スタンフォード大学大学院哲学科修士課程修了。一九六九年没。著者『イカの哲学』。

登録情報

  • 出版社 ‏ : ‎ 集英社 (2008/2/15)
  • 発売日 ‏ : ‎ 2008/2/15
  • 言語 ‏ : ‎ 日本語
  • 新書 ‏ : ‎ 176ページ
  • ISBN-10 ‏ : ‎ 4087204308
  • ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4087204308
  • カスタマーレビュー:
    4.2 5つ星のうち4.2 33個の評価

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カスタマーレビュー

星5つ中4.2つ
5つのうち4.2つ
33グローバルレーティング

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上位レビュー、対象国: 日本

2024年1月30日に日本でレビュー済み
『イカの哲学』というタイトルを聞くだけで、何だそれは? と思ってしまうが、詳しくは実際の本を読んでみていただくのがよいだろう。そんなに長いものではなく、また小説の形式をとっているのでとても読みやすい。しかし、そこに描かれている発見は非常に面白い。

『イカの哲学』の著者である波多野一郎氏は、戦争で特攻隊に入り、出発の直前で作戦が中止された。その後はロシアに拘留され炭鉱での強制労働。そのような生死のギリギリのところを彷徨った経験がこの本を生み出したのではないか、と中沢新一氏によって書かれている。

どうしたら世界は平和になるのだろうか。誰もが一度は考えたことはあるのではないだろうか。学校でも道徳の授業で何回かは考えさせられる。でも、数えるほどではないだろうか。今振り返るとあまりにも少なすぎることに驚く。それよりも国語、算数、理科、社会、英語…もちろんどれも大切だけど、何のための教養なのだろうか? 何のための教育なのだろうか? と思えてしまう。またもし日本が戦争に巻き込まれてしまうことがあれば、それは戦争するための教育となり、人を殺すための教養となってしまうのではないだろうか。そんなのはあまりにも切ないが、歴史からみれば人はいつでも最高の知識や技術を戦争に活用してきたのだ。きっとそれから逃れることは難しい。それは時代が人に要請することだから。時代がその人を見出してしまうから。

どうしたら戦争をやめられるのだろうか。平和は永遠にやって来ないのだろうか。でも、今現に日本は戦争をしていないという現実がある。たしかに戦争に負けたということはあるが、戦争に負けたからと言って二度と戦争はしないなんてことはない。ドイツなんていい例だろう。何度でも戦争を起こす可能性はどの国にもあるのである。第二次世界大戦だって、アメリカはあのまま続けることもできた。しかし、終戦となった。なぜだろうか。そこには、戦争をする原理としない原理がある。永遠に続く戦争というのもきっとないのだ。

そして、戦争も平和も人の行為である。人が生み出したものである。それならばやはり戦争を止める方法というものも存在するのだろう。戦争もまた人の心が起こすものなのだから。

戦争が起きる理由を、宗教の対立、経済の問題など色々な側面で言われることがあるが、この『イカの哲学』では、機械によって大量のイカを取ってしまうという行為から着想を得る。機械によってイカが大量に網にかかって押しつぶされながら運ばれていき最後には命を奪われる。それと原爆によって一度に大量の人が死ぬ。それとどう違いがあるのかと。イカをイカと思わず、実存と考えないからそういうことができるのだと。原爆もそうで人間を人間と思わないから、そんな爆弾を投下することができるのだと。では、僕たちができることは何か、しなければならないことは何か、と考えた時にあらゆる動物の実存を見ること、感じることであると。そう『イカの哲学』は教えてくれる。

今、世界中の人々が地球温暖化などの環境問題に注目し、行動するようになった。それは一見、環境問題の解決であり、戦争の解決には直接的にはつながっていないように思えるが、その『イカの哲学』の考え方で考えてみると、それはまさに平和のための行為とも言えるのである。僕たちは無意識にそういうことをしているのかもしれない。

最後に少し長くなるが中沢新一氏の言葉を引用して終わりにしたい。

だから、近代になって人間は自然との全面的な戦争状態に入ってしまった、という表現は、けっして診張ではないのだと思う。自分が開発や搾取の対象としている相手が、自分と同じ実存であることを忘れるとき、そこには無慈悲が支配する戦場とよく似た絶望が広がっていく。この状況をヒューマニズムによっては、超えることができない。人間ばかりか非人間の中に実存を見いだすことのできる直観に裏打ちされた思想だけが、そのような戦場の拡大をくい止める力を持つことができる。
 エコロジー思想を、このような自然との戦争状態に「停戦」をもたらそうとする運動として理解することができる。これ以上の戦争の持続と拡大は、この戦争における圧倒的勝者である人間に、破滅をもたらすにちがいない。私たちの言い方をすれば、それはもはや段階を超えて、超戦争のレベルにまで踏み込んでしまっている。それに立ち向かうべきエコロジー思想は、地球温暖化のベースを緩めるための現実的施策のレベルに、とどまっていることはできないだろう。ここにも、超平和の構造をもったエコロジーの思想が、かたちづくられてくるのでなければならない。

もし原爆のような超戦争が起これば、日本の憲法第9条のように超平和の思想も生まれるというのが中沢氏の考えである。もし、自然への超戦争が起これば(すでに原発は爆発してしまったが)、超平和の思想もまた生まれてくるのだろう。戦争が生まれないことに越したことはないが、でも、戦争が現に今も起こっており、これからも起こる可能性があることを理解しながら、僕たちはいつも「人間ばかりか非人間の中に実存を見いだすことのできる直観に裏打ちされた思想」を持っていなくてはならないのである。そして、『イカの哲学』はまさにそのことを教えてくれる稀有な哲学書なのである。
2020年3月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
戦後の日本を生きた著者の哲学なだけあって、日本人の感覚に寄り添った内容になっています。
正しくは少し前の日本人の感覚に寄り添った。ですね。
ここ数年は顕著に思考の欧米化が進み、日本人のアイデンティティはどこに行ってしまったんだと思うことが多いですが、そんな現代でこそ、一歩足を止めて考えるべきテーマが示されている著作だと思います。
アドラーの共同体感覚にも通ずる考えは、きっと多くの方の心を動かすと思います。
3人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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2010年8月27日に日本でレビュー済み
すごく流し読みなので評価できません。
波多野氏の壮絶な人生を想像すると目を瞑ることしかできませんが、どうもこの本の中沢さんの解説はピンと来なかった。対称性人類学はすばらしかったけど、超戦争には超平和ですか・・・。社会制度のあるべきを語るにはリアリティが不足しているのではと思いました。
しかし中沢先生のファンなのでこの後は精霊の王を読もうかと思います。
1人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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2015年6月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
生きとし生けるもの全て、神より“みこと”(命)を頂いて来ている。

平和は当たり前じゃない、みんなの創造の結晶(努力の賜物)。 相手を慮る(思いやる)心、感謝の気持ち、愛する、敬う姿勢が平和をもたらす。

思想・信条・宗教の違いも含め受け入れる器(度量)の広い心を。 八百万の神の如くに。

平和は一日にしてならず。
1人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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2020年3月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
三枝成彰の「ピアノ協奏曲『イカの哲学』」を聴き、この著作を知った。(すでに読んだ方でこの曲をご存じなければ一度聴いてみても面白いと思います。)
波多野一郎氏が書き残した「イカの哲学」は基本的には平易な言葉で書かれ、誰しもが目にしたことのあるイカを題材に存在の実存、そしてその実存から自身の生死をわけた大戦の意義へとつながってゆく構成は実に自然であり、理解にやさしい。その一方で書かれている内容は人間の根本的な問題へとアプローチされており、何気ない日常からイカを(特にそのイカの目を)通して切り込まれる対比も面白く感じられる。
第二次世界大戦から久しくも、平和と呼ぶには程遠い現代。国内においても、虐待や殺人などの痛ましい事件は絶えることがない。そんな現代に、イカに心をうつして世界平和への糸口を見出した波多野一郎は何を教えてくれるであろうか。本書を読んで、もう一度スーパーに並ぶイカの目をのぞき込んでみてもらいたい。
2人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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2013年5月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本書は波多野一郎の著した「イカの哲学」を全文掲載し、それに中沢新一が論評しながら持論を展開するという構成になっている。
まずは本書の内容を書きだす。

波多野一郎の部分について
・最大の主張は「世界平和のための鍵は(異なった社会に住む人々が)お互いに相手の実存を認め合うことである」であり、「直感」を必須の手段とした「思想や感情の伝達」によって、これ(認め合うこと)を達成できる、としている。
・上の論を導くために、漁場で働く波多野は「魚たちは、何故、殺されるのか?」から論を発し、以下のように展開する。
・すべての人が動物たちと意思や感情の疎通を行なって相手の実存を認めれば、動物たちを殺したり食べたりすることができなくなる。人間の戦争の原因は思想の相違による競争から起きる互いの実存の否定である。よって、遠い異国の住人の実存を知覚することで世界平和は達成される。
・上のような、仏教徒やジャイナ教徒が論を交えてきたことが波多野の「悟り」であり、波多野は新しい見解を特に示さない。
・人に動物なり異国の人なりの実存を認めさせる方法について触れない。同様に、世界平和が実現した状態を作る手段について触れない。
・上記以外の人間の戦争の原因について検証しない。
・思想の相違が実存の否定の原因となるか検証しない。
・コミュニケーションにおける直感の必要性について論証しない。

中沢新一の部分について
・重要な主張を、生物学に関する明らかな誤りを根拠に展開する。「(ウイルスやウイルスより単純な生物でも自己の内部に侵入した異物を排除する能力を持つので)生命には自分というものを認識する知性能力が、どんな単純なものにも宿っている」と主張しているが、ウイルスを単に原始的生命と言い替えたとしても、原始的生命は形質転換を頻繁に行い、自他の遺伝子の区別を行わない。
・生命と知性を包含の関係でなく同一の存在であるように無検証で扱っている。そのため、「知性は生命である」「生命には「平常態」「エロティシズム態」という2つのモードが共存している」「よって知性にはエロティシズム態のモードがある」という主張には飛躍がある。
・重要な主張を、人類史に関する明らかな誤りを根拠に展開する。「(狩猟採集社会では)このような(人類が動植物に実存を認めるような)神話が語られてきたおかげで、ホモサピエンスが出現してから十数万年もの間、動物や植物の乱獲は防止されてきたのである」と主張しているが、北アメリカにおけるウマの大量死の化石や、オオツノシカの絶滅に示されるように、古代の人類に「無駄な狩りはしない」という行動は認められない。
・「核兵器によって、自分たちが今までの戦争のレベルを超えて、(敵の実存がいっさい消去される)超戦争という未知の領域」が生じたと中沢新一は主張している。ドレスデンや東京の空襲の時点で人間の実存を消去した兵器は存在し、超戦争への踏み込みの例は有史以来枚挙に暇がない。また、『イカの哲学』に原爆の記述がある以外の、原爆を特記する妥当性を中沢は持たない。しかしこれについて本文中では検証されない。
・人に動物なり異国の人なりの実存を認めさせる方法について触れない。同様に、超平和が実現した状態を作る手段について触れない。
・資本主義経済以外の実存を無視した社会成立の原因について検証しない。

以下私見
この書は「超平和への寸進のための思考と試行」にかかずらった新書などではなく、飽くまで「超平和が実現した世界の思想」を幻想的に描いた哲学書である。
中沢は実存主義に重きをおき、同時に「生命」「古代の人々」「資本主義経済」「戦争」「原子爆弾」「憲法9条」「エコロジー」といったものを神格化する。これらのものを中沢と同様に神聖だと認められる方には得るものが多いであろう必携書である。
9人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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2016年4月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
中沢新一氏が、
学生時代、在野の哲学者、波多野一郎氏
の著作に、感動し、

その原文から、エスカレートしていく
戦争に対して、根源的な人間のあり方、
捉え方を、考察した画期的なエコロジーと
平和学である。

いまこそ、原爆を体験した日本は、
波多野氏の体験から、考察された
「イカの哲学」を学び、更に発展させて、

地球の危機を防がねばならないという
希望も含めて、読んでもらいたい一冊である。
2人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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