再掲
図書館本
読み始めて、単なるワイナリー事業の話かと思って諦めかけていた。
ところがである。読み進むに従い、本書は、タイトルのビジネスという文脈からは遥かに深い里山思想が綴られている。
そしてそこに、仕事と稼ぎという、忘れられた日本人のDNAが脈々と受け継がれていることに気がつく。
玉村さんがワイナリーの設立書に書いた一文を備忘録として載せておきたい。
「農業は続けることに意味がある。その土地を絶えず耕して、そこから恵みを受けながら、人も植物も行き続ける。それが農業であり、人間の暮らしである。ワイナリーを中心に地域の人が集い、遠方から人が訪ねて来、そこで作られたワインや野菜や果物を媒介にして人間の輪ができあがる。それが来訪者を癒し、地域の人々を力づけ、双方の生活の質を高めていくことにつながるだろう。ワイナリーじたいはとりたてて大きな利益を生むものではなくても、そうした、農業生産を基盤として地域の永続的な発展と活性化を促すひとつの有効な装置として機能するとすれば、これほど大きな価値を実現できるものは他に類がないと思う」
また現在の農業や山村部の問題点も分かりやすく指摘している。最近読んだ神門善久氏の「日本の食と農」とまさに同じ指摘だと思う。
大規模営農や補助金行政では日本の農は復活しえないのだ。
玉村氏は一生働き続けると言う、そしてそこに常に新しい出会いと発見があり幸せがあるのだと。金と言うテキストを超えた人生がそこに見えるように思った。
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里山ビジネス (集英社新書) 新書 – 2008/6/17
玉村 豊男
(著)
一番効率の悪い里山で、最も割に合わないビジネスが何故成功したのか?
熊が徘徊する里山の森の一角に個人で立ち上げたワイナリーとレストラン。その道のプロの誰もが無謀だと断言した素人ビジネスが、何故客を呼び寄せ成功に導かれていったのか? ビジネス上の計算はなくとも、やりたいことのコンセプトは明快にあった。里山の自然の恵みとともにある仕事をやりながら暮らしを成り立たせる、それが里山ビジネス。拡大しないで持続する、愚直で偽りのない生活と共にあるビジネスとは? グローバリズムの嵐の中での日本人の生き方を問う一冊である。
[著者情報]
玉村 豊男(たまむら とよお)
一九四五年、東京生まれ。東京大学仏文科卒業。在学中にパリ大学言語学研究所に留学。『パリ 旅の雑学ノート』『料理の四面体』をはじめ、旅、料理、ライフスタイルなど幅広い分野で執筆活動を続ける。近著に『田舎暮らしができる人 できない人』(集英社新書)。九一年より長野県東部町(現・東御市)に移住。二〇〇四年『ヴィラデスト・ガーデンファーム・アンド・ワイナリー』開設。画家としても活躍中。〇七年箱根に『玉村豊男ライフアートミュージアム』開館。
熊が徘徊する里山の森の一角に個人で立ち上げたワイナリーとレストラン。その道のプロの誰もが無謀だと断言した素人ビジネスが、何故客を呼び寄せ成功に導かれていったのか? ビジネス上の計算はなくとも、やりたいことのコンセプトは明快にあった。里山の自然の恵みとともにある仕事をやりながら暮らしを成り立たせる、それが里山ビジネス。拡大しないで持続する、愚直で偽りのない生活と共にあるビジネスとは? グローバリズムの嵐の中での日本人の生き方を問う一冊である。
[著者情報]
玉村 豊男(たまむら とよお)
一九四五年、東京生まれ。東京大学仏文科卒業。在学中にパリ大学言語学研究所に留学。『パリ 旅の雑学ノート』『料理の四面体』をはじめ、旅、料理、ライフスタイルなど幅広い分野で執筆活動を続ける。近著に『田舎暮らしができる人 できない人』(集英社新書)。九一年より長野県東部町(現・東御市)に移住。二〇〇四年『ヴィラデスト・ガーデンファーム・アンド・ワイナリー』開設。画家としても活躍中。〇七年箱根に『玉村豊男ライフアートミュージアム』開館。
- 本の長さ192ページ
- 言語日本語
- 出版社集英社
- 発売日2008/6/17
- ISBN-104087204480
- ISBN-13978-4087204483
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登録情報
- 出版社 : 集英社 (2008/6/17)
- 発売日 : 2008/6/17
- 言語 : 日本語
- 新書 : 192ページ
- ISBN-10 : 4087204480
- ISBN-13 : 978-4087204483
- Amazon 売れ筋ランキング: - 397,755位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2008年7月20日に日本でレビュー済み
タイトルだけを見ると、里山でビジネスを展開する方法が書いてある本かとも思えるが、中身は、起業を通じて、里山での生活を仕方を書いている本だと思う。話し言葉で、著者の里山での実際の生活が語られており、親しみやすい。お店が地域に密着し、自然の恩恵を受けて切り盛りされている様子がよく分かる。
定年後などに都会を離れて悠々自適の生活を送りたいという流れが大きくなっているなかで、起業しない多くの人にとっても、里山で生活するための知恵として、参考になるのではないだろうかと思った。
定年後などに都会を離れて悠々自適の生活を送りたいという流れが大きくなっているなかで、起業しない多くの人にとっても、里山で生活するための知恵として、参考になるのではないだろうかと思った。
2009年10月15日に日本でレビュー済み
「里山ビジネス」とタイトルが付けられてはいるものの、あんまりそういう話は出てこない。
むしろ、長野県東御市に著者が解説したワイナリーとレストランのことがメイン。開設までの苦労、ワインづくりについて、いざ開店しての成果、そこで働いている仲間たちのこと。そういったことが気さくな感じで述べられている。
まあ、いつもの玉村さんのエッセイである。
気軽にさくっと読めばいい本だろう。
むしろ、長野県東御市に著者が解説したワイナリーとレストランのことがメイン。開設までの苦労、ワインづくりについて、いざ開店しての成果、そこで働いている仲間たちのこと。そういったことが気さくな感じで述べられている。
まあ、いつもの玉村さんのエッセイである。
気軽にさくっと読めばいい本だろう。
2014年5月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
一見不可能なビジネスモデル
でもできるのですね!
驚きです
鳥取に住んでいる私としてはぜひ
このようなモデルを参考に
地域にあったもの
プロデュースできればいいなと考え
この本を読みました
でもできるのですね!
驚きです
鳥取に住んでいる私としてはぜひ
このようなモデルを参考に
地域にあったもの
プロデュースできればいいなと考え
この本を読みました
2008年11月16日に日本でレビュー済み
この本の中に書かれている、ワイン作りに必要な様々な施設整備にかかる大きなコストを見ると、地域ワイン作りを事業的に回していくことはとても大変。小規模な飲食業を行う際は人件費や排水処理施設の整備費など意外な支出がかさみ、たとえお客が来たとしても、利益を上げて継続していくことは大変であることも解かる。しかし、「どこかに輸送したら絶対に味わえなくなる、商品化できない野菜たち。それらが育った場所であるここでしか味わえない野菜の素晴らしさを知ってもらうには、畑のすぐそばにレストランをつくるしかないp.86」「そこでしかできないもの。そこへ行かなければ食べられないもの。同じものでも、そこで食べるからこそおいしいもの。本当はそういうものがほしいのです。P.107 そういうものを見つけて、それを遠くに送ってブランド品として売るのではなく、その場所で食べてもらう。第一次産業の生産地は、そこへ人が来てさえくれれば魅力的な観光地に変身します。そうすれば鮮度も落ちず、輸送費もかからず、中間マージンも取られず、包装代も節約でき、しかも産地の人や風景も一緒に楽しんでもらえるのです。P.108」と知恵を働かせ、「会社は大きくならなくても、収入がそれほど増えなくても、自分に嘘をつかずに生きていける。そんなたしかな生活の拠点を私はつくりたいのです。P180」という思いで小さなビジネスを回していく玉村氏の里山ビジネスはとても魅力的。「これからの時代は、里山で営む小さな農業、いろいろなものを少しずつあちこちでつくり、里と緑の恵みを享受しながら自然とうまく折り合いをつけて営む暮らしの農業が、注目を浴びてくるとp.134」という指摘も頷ける。
2008年7月1日に日本でレビュー済み
玉村豊男氏はエッセイスト、画家として知られるが、本当はすごいビジネスマンでもあると思う。
決して規模をむやみに拡大しない。豊かさを持った成長をしているのである。それもビジネスとして成り立つのが難しい土地にあってである。
この本に、こんなくだりがある。
拡大しないで持続する。
持続しながら生活の質を上げる。
どんなにグローバル化が進展しても、それに影響のない生活を確立する。
そんな暮らしができたら、どんなに素晴らしいことでしょう。
額に汗して働くことの貴さと、豊かな生活を目指し、長野でワイナリーとレストランを経営する玉村さんの活動は、単に規模の拡大でない、本当の豊かさを持った成長である。
そしてこの本のメッセージは、現代のグローバルビジネスの時代に対するアンチテーゼでもある。
久々に読後にすっきりする本を読んだ。
真の豊かさを知りたい人に勧めたい。
決して規模をむやみに拡大しない。豊かさを持った成長をしているのである。それもビジネスとして成り立つのが難しい土地にあってである。
この本に、こんなくだりがある。
拡大しないで持続する。
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どんなにグローバル化が進展しても、それに影響のない生活を確立する。
そんな暮らしができたら、どんなに素晴らしいことでしょう。
額に汗して働くことの貴さと、豊かな生活を目指し、長野でワイナリーとレストランを経営する玉村さんの活動は、単に規模の拡大でない、本当の豊かさを持った成長である。
そしてこの本のメッセージは、現代のグローバルビジネスの時代に対するアンチテーゼでもある。
久々に読後にすっきりする本を読んだ。
真の豊かさを知りたい人に勧めたい。
2009年12月18日に日本でレビュー済み
30年近く前、「料理の四面体」で衝撃を与えたあの玉村さんが
ビジネス書?と半ば訝しく思いながらも妻が買ってきたこの著作を
読んだ。
結論を言えば、ビジネスの参考にはなりにくい。著者の個人収入や
資産をつぎ込んで資金繰りを行っている様だし、一般サラリーマンが
脱サラして・・・・というレベルとは背景が異なります。一つの
見本にはなりますが。
地産地消など、規模を目指さない昔のビジネスへの回帰に関する
視点は、地域コミュニティ再生への参考にはなるかと思います。
ビジネス書?と半ば訝しく思いながらも妻が買ってきたこの著作を
読んだ。
結論を言えば、ビジネスの参考にはなりにくい。著者の個人収入や
資産をつぎ込んで資金繰りを行っている様だし、一般サラリーマンが
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見本にはなりますが。
地産地消など、規模を目指さない昔のビジネスへの回帰に関する
視点は、地域コミュニティ再生への参考にはなるかと思います。
2010年4月12日に日本でレビュー済み
ビラデストには40人を超える人が働いているらしい。ビラデストが出来たお陰で、信州の里山に新しい職場が出来、全国から客、人、情報が集まり、関連する本も出て、TVや雑誌の取材もあり、話題にもなる。もし玉村夫妻が移住してこなければ、存在しなかった新たな職場。産業。観光名所。
しかし、本書によれば、事業としては、なかなか多難なようだ。玉村夫妻のように、文筆、画業などの本業で稼ぎつつ、ビラデストでは経営者なので殆ど無給で働き、赤字部門の事業の補填までしてくれる人がいるお陰で、農場、ワイナリー、レストランなどから構成されるビラデスト全体の経営が成り立っているらしい。決算書などが開示されていないので、詳しいことは良く分からない。しかし、ビジネスとして見た場合、人件費がネックとなって、事業の拡大はできないようだ。(著者も拡大を望んでいないということもあるけれど。)
事業としては儲かるものではないとしても、雇用を確保し、地元の農家に販路を提供し、観光地として地元の誇りになっている。これをどう評価するか。著者は、同じような事業を第三セクターや自治体がやっても非個性的なものになりかねないから、成功しないだろうという。確かにそうかもしれない。しかし、例えば税制面とか、規制緩和などで、玉村夫妻の事業のような里山ビジネスを後押しすることで、同様のビジネスの起業を考えている人たちの後押しをすることは可能なのではないだろうか。役所が口を出すと碌なことはないのだが、とはいえ、公的支援がないと、ほとんどの人は、玉村夫妻のような文才、画才等に恵まれていないだろうから、事業の継続が難しいのではないだろうか、などといったことを読後に考えた。
しかし、本書によれば、事業としては、なかなか多難なようだ。玉村夫妻のように、文筆、画業などの本業で稼ぎつつ、ビラデストでは経営者なので殆ど無給で働き、赤字部門の事業の補填までしてくれる人がいるお陰で、農場、ワイナリー、レストランなどから構成されるビラデスト全体の経営が成り立っているらしい。決算書などが開示されていないので、詳しいことは良く分からない。しかし、ビジネスとして見た場合、人件費がネックとなって、事業の拡大はできないようだ。(著者も拡大を望んでいないということもあるけれど。)
事業としては儲かるものではないとしても、雇用を確保し、地元の農家に販路を提供し、観光地として地元の誇りになっている。これをどう評価するか。著者は、同じような事業を第三セクターや自治体がやっても非個性的なものになりかねないから、成功しないだろうという。確かにそうかもしれない。しかし、例えば税制面とか、規制緩和などで、玉村夫妻の事業のような里山ビジネスを後押しすることで、同様のビジネスの起業を考えている人たちの後押しをすることは可能なのではないだろうか。役所が口を出すと碌なことはないのだが、とはいえ、公的支援がないと、ほとんどの人は、玉村夫妻のような文才、画才等に恵まれていないだろうから、事業の継続が難しいのではないだろうか、などといったことを読後に考えた。