２１世紀初頭に生きる現代人としては、「養子」とはどうしても「実子」と対抗するものととらえがちだと思いますが、こちらの本に登場する「養子」は、必ずしもそうではありません。まずだいたいが「養子縁組」ですし、著者が指摘するように吉田茂のケース以外は、成人してから「養家」に入ったケースばかりです。気になる「養子（縁組）の成功の秘訣」は、なんといっても人選だと思いました。たとえ状況が変わったり、予想以外（以上）のことが起きたとしても、自分のやるべきことがブレない人が一番なようです。夫婦仲がいいだけでもダメだし、商売面だけ良くてもダメ、と、結構ハードルが高いと思いました。また、「婿養子」というのは現代でもよくある話なので、本書を「養子縁組」という枠でくくってもいいと思いました。
ただ、取り上げられている中で、現代人に一番参考になる、面白く読める、というのは養子縁組の例ではない、普通に子供の頃実父の友人の養子になった吉田茂のケースかと思います。実家でその他大勢になるより、養家で一人っ子で思うままにかつ大切に育てられたのが本人のためにとても良かったというのがありありとわかる例でした。吉田茂の場合、あまりの華麗な経歴とわがままというイメージから「（養子で良かったと）強がりで言ってるんじゃないのかな」という邪推もありませんでした。そういう意味で、すがすがしい例です。
「セレブ信仰」に伴う、「実子偏重」のための解毒剤、という意図があると思いますので、少々「養子美化」のきらいがありますが、失われた明治の風俗を再探訪できるという点で良書かと思います。
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