縄文研究者であり、また「杉並の縄文人」として縄文的な日常生活を実践している著者による、「縄文エッセイ」である。1万5千年前に始まり、2300年前に弥生時代に移行した縄文時代の遺跡は、北海道から沖縄まで、膨大な数に上る。著者はその縄文研究の代表的研究者の一人で、本書は近年の研究成果をエッセイとしてまとめ、縄文時代の生活を再現したものである。近年の研究成果に驚くとともに、想像上の縄文生活を楽しむことができた。
考古学的な遺跡には物質的な遺物しか残されておらず、生活、特に信仰や社会など形に残らないものは、研究者が推理するしかない。文中に「と考えられます」という推理の文言が多いのはやむを得ない。その推理の妥当性は今後の研究にまちたいが、このような一般向けの本で研究の途中成果を問うことは大いに歓迎したい。いずれにせよ、昔学校で習った「縄文式土器」の形式中心の退屈な記述は本書とは無縁である。本書から浮かび上がるのは、日本人の現在の生活習慣や心性の古層には、「縄文的なるもの」が根付いており、その影響はむしろ弥生時代よりも大きいのではないか、という感想である。これは、時代が持続した長さが、縄文時代の方が圧倒的に長いことからも、当然かもしれない。
本書で印象に残ったのは、祖先の墓地がある広場を囲んで環状に集落を作った縄文遺跡から、自然との共生や万物にカミが宿ると信じた社会・精神生活が推理されるとの説明である。また、縄文人が食品として採集狩猟し、また栽培した品々には、現代の日本人にも馴染みが多いのものが含まれることも意外であった。このように、柳田国男が民俗学で解明した常民生活のルーツのかなりの部分は、縄文時代まで遡れることは間違いなさそうである。縄文時代早期(1万1500年前以降)の漆製品が発見されているとのことだが、2015年2月22日付けの東京新聞で、東北地方の漆掻き(およびその道具職人)の後継者不足の危機が報じられている。細々とではあるが、縄文生れの技術が今も続いているのだ!
本書は、縄文時代が日本人に遺した物質的社会的精神的遺産の大きさをあらためて考えるための好エッセイである。ただ、研究対象がやや狭いのが残念である。東アジア諸国の先史文化との関係、アイヌなど現存民族との関係、あるいは民俗学や最近の人類学の成果とも関連付けて欲しかった。たとえば、日本人が人類学的に見ても混合民族であることは、篠田謙一『日本人になった祖先たち-DNAから解明するその多元的構造』(NHKブックス)などで科学的にも証明されている。著者の研究の発展を期待したい。
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縄文人からの伝言 (集英社新書) 新書 – 2014/7/17
岡村 道雄
(著)
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縄文・弥生
「日本人の本当のルーツ」はどっちだ?
縄文と弥生は断絶していなかった! 我々の古代観を一変させた縄文研究の第一人者が、居住環境、流通システム、葬送の儀礼他、現代日本と縄文の連続性を全く独自の切り口から考察。
著者は、通説に真っ向から抗い、弥生ではなく縄文に日本人のルーツを求める。今日の日本人にも通じる「自然物に根ざした食生活」や「共同体の祈りや祭り」、そして、一万年も平和が続いた奇跡の時代に我々が教えられることとは? 大胆な論考から、縄文時代に現代人が学ぶべきことを探る。
[著者情報]
岡村道雄(おかむら みちお)
一九四八年、新潟県生まれ。考古学者。三内丸山遺跡の発掘調査などに関わり、縄文研究者として知られる。東北大学大学院史学専攻修了。宮城県東北歴史資料館、文化庁、奈良文化財研究所などで勤務。現在は「杉並の縄文人」として、縄文的な生活の実践に務めている。主な著書に『縄文の生活誌』(講談社学術文庫)、『旧石器遺跡「捏造事件」』(山川出版社)など。
「日本人の本当のルーツ」はどっちだ?
縄文と弥生は断絶していなかった! 我々の古代観を一変させた縄文研究の第一人者が、居住環境、流通システム、葬送の儀礼他、現代日本と縄文の連続性を全く独自の切り口から考察。
著者は、通説に真っ向から抗い、弥生ではなく縄文に日本人のルーツを求める。今日の日本人にも通じる「自然物に根ざした食生活」や「共同体の祈りや祭り」、そして、一万年も平和が続いた奇跡の時代に我々が教えられることとは? 大胆な論考から、縄文時代に現代人が学ぶべきことを探る。
[著者情報]
岡村道雄(おかむら みちお)
一九四八年、新潟県生まれ。考古学者。三内丸山遺跡の発掘調査などに関わり、縄文研究者として知られる。東北大学大学院史学専攻修了。宮城県東北歴史資料館、文化庁、奈良文化財研究所などで勤務。現在は「杉並の縄文人」として、縄文的な生活の実践に務めている。主な著書に『縄文の生活誌』(講談社学術文庫)、『旧石器遺跡「捏造事件」』(山川出版社)など。
- 本の長さ200ページ
- 言語日本語
- 出版社集英社
- 発売日2014/7/17
- 寸法10.6 x 1.1 x 17.3 cm
- ISBN-104087207463
- ISBN-13978-4087207460
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登録情報
- 出版社 : 集英社 (2014/7/17)
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- 言語 : 日本語
- 新書 : 200ページ
- ISBN-10 : 4087207463
- ISBN-13 : 978-4087207460
- 寸法 : 10.6 x 1.1 x 17.3 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 123,173位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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- - 246位集英社新書
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2015年2月23日に日本でレビュー済み
2018年7月30日に日本でレビュー済み
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西暦の起源後が、今日まで2018年その間世界のいたるところで戦争があり滅亡していった国があった。弥生時代になり稲などの栽培が始まり強者弱者が現れ作物を増やすために侵略を繰り返し戦争が起こる。
一方、本題の縄文時代は1万年の間戦争がなく狩猟採集と栽培により環境破壊せず持続していた。生きるのに大変な時代だったので戦争する余裕がないとの意見もあるが、遺跡発掘の成果から見ればある程度の生活が出来ていたと思う。
住居、食物、墓、いのりなど完成していたと思う。
各分野にわたり試行錯誤を繰り返して本書ができている。
かなり専門的な本書であるが、興味のある方には良い本です。
一方、本題の縄文時代は1万年の間戦争がなく狩猟採集と栽培により環境破壊せず持続していた。生きるのに大変な時代だったので戦争する余裕がないとの意見もあるが、遺跡発掘の成果から見ればある程度の生活が出来ていたと思う。
住居、食物、墓、いのりなど完成していたと思う。
各分野にわたり試行錯誤を繰り返して本書ができている。
かなり専門的な本書であるが、興味のある方には良い本です。
2021年5月27日に日本でレビュー済み
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今年、吉野ヶ里、三内丸山、御所野遺跡と回ってみた。弥生の吉野ヶ里は遺跡全体が堀と塀で守られていて要塞のようだが、三内丸山や御所野は全く無防備で、本書で述べられている通り、他集落とも連携して平和に暮らしていた日本的な定住生活だったのかもしれない。
諏訪大社の御頭祭でイノシシや鹿の頭が捧げられたということを思い出した。その他にも、達磨や正月飾りを燃やしたり、各種の家畜などの供養、神社に鎌などの道具を奉納する現代の我々の習慣は、縄文時代の遺伝子に基づいているような気がしてくる。神道や八百万の神に代表されるようなアニミズムなどはその典型かもしれない。そう考えると、日本のルーツは縄文だと思いたくなる。
小児麻痺で歩けなかった女性が20歳くらいまで生活できたという。また、ある遺跡では65歳以上の遺骨が3分の1もあったらしい。精神的にも物理的にも縄文時代は豊かだったことの証拠だ。
諏訪大社の御頭祭でイノシシや鹿の頭が捧げられたということを思い出した。その他にも、達磨や正月飾りを燃やしたり、各種の家畜などの供養、神社に鎌などの道具を奉納する現代の我々の習慣は、縄文時代の遺伝子に基づいているような気がしてくる。神道や八百万の神に代表されるようなアニミズムなどはその典型かもしれない。そう考えると、日本のルーツは縄文だと思いたくなる。
小児麻痺で歩けなかった女性が20歳くらいまで生活できたという。また、ある遺跡では65歳以上の遺骨が3分の1もあったらしい。精神的にも物理的にも縄文時代は豊かだったことの証拠だ。
2015年1月21日に日本でレビュー済み
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がっかりした、という書評もありましたが、自分には(勉強不足だったので)参考になりました。
2014年9月8日に日本でレビュー済み
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この程度の内容でも、集英社新書として出版できるのかとの失望的驚き。
一市民的レベル!! 本代がもったいない。
一市民的レベル!! 本代がもったいない。
2014年8月17日に日本でレビュー済み
縄文研究の最先端をわかりやすく親しみやすい文章でまとめたもの。
集落の造営と土地造成、住居を焼いた理由、栗や漆の栽培、アスファルトの利用と交易、土偶のもった意味などが語られている。
かつての「原始的な」縄文イメージをくつがえすような指摘が多く、とてもおもしろかった。
それなりに詳しいひとには目新しい内容ではないのかもしれないが、入門者には有用だと思う。
集落の造営と土地造成、住居を焼いた理由、栗や漆の栽培、アスファルトの利用と交易、土偶のもった意味などが語られている。
かつての「原始的な」縄文イメージをくつがえすような指摘が多く、とてもおもしろかった。
それなりに詳しいひとには目新しい内容ではないのかもしれないが、入門者には有用だと思う。
2014年7月18日に日本でレビュー済み
縄文人からどんな伝言が? 前作を何冊か読んでいたため、今回の著作では当然新たな解釈に期待感。早速読んでみたが、残念ながら新しい解釈は見当たらず。まさか、前の本の焼き直し・・・? 依然として出土品や遺構の解釈に際して、理由もなく単に「・・・と思う」、「・・・と考えられる」といった表現に終始している点は残念。先生、なぜ、そう思うのだ?
かつて宗教学者のミルチャ・エリアーデは、考古学について「人間の精神史の巨大な部分を白紙のままにしてある」といった表現で批判した(『世界宗教史1』)。そう、考古学ファンとしては、出土したモノを時代別に並べるだけでなく、そろそろ、縄文人の心について知りたいのだ! ただし、アカデミズムならば当然、学者として何故そういう結論に至るのか根拠を示すことが必要であろう。根拠のない学説は、ただの「物語」に過ぎない。
また、「里山」「土木工事」「インフラ」といった、縄文時代を単純に現代に当てはめる用語の羅列には、やや違和感を覚えた。縄文人は本当に現代的な感覚で色々なものを作ったのだろうか。考古学では呪術や祭祀が盛んに言われるが、そういう世の中ではなかったのだろうか。疑問が残る。岡村氏の次の著作に期待!!!
かつて宗教学者のミルチャ・エリアーデは、考古学について「人間の精神史の巨大な部分を白紙のままにしてある」といった表現で批判した(『世界宗教史1』)。そう、考古学ファンとしては、出土したモノを時代別に並べるだけでなく、そろそろ、縄文人の心について知りたいのだ! ただし、アカデミズムならば当然、学者として何故そういう結論に至るのか根拠を示すことが必要であろう。根拠のない学説は、ただの「物語」に過ぎない。
また、「里山」「土木工事」「インフラ」といった、縄文時代を単純に現代に当てはめる用語の羅列には、やや違和感を覚えた。縄文人は本当に現代的な感覚で色々なものを作ったのだろうか。考古学では呪術や祭祀が盛んに言われるが、そういう世の中ではなかったのだろうか。疑問が残る。岡村氏の次の著作に期待!!!