映画のスローな世界の原作が気になり読んでしまった。
とても、セリフの少ないお話で、
映画では、沈黙を考えるパワーが要求されたのだが、
小説には、その答えが書いてあって、なにやら、
「映画の回答集」を開いて、答えあわせをしているようであった。
「あっ、やっぱり、あの解釈でよかったんだ」とか、
「あれ、そこまで、意地悪なことを考えてたんだ」とか。
映画鑑賞後に読むと
「なるほどね〜」と頷くことが多いのですが、
「よく、映画化したな〜」とはじめて、そんな思いを抱きました。
それほど、
ゆったりとして、
感情の起伏が内面だけに収めている作品です。
人間関係の複雑さに疲れ果てている人にお奨めします。
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ジャージの二人 (集英社文庫) 文庫 – 2007/1/19
長嶋 有
(著)
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芥川賞作家のアンチ・スロー小説。
失業中で小説家志望の息子。妻はよその男と恋愛中。三度目の結婚生活も危うそうな、写真家の父親。そんな二人が軽井沢の山荘で過ごす、とりとめのない夏の終わりの思い…。(解説/柴崎友香)
失業中で小説家志望の息子。妻はよその男と恋愛中。三度目の結婚生活も危うそうな、写真家の父親。そんな二人が軽井沢の山荘で過ごす、とりとめのない夏の終わりの思い…。(解説/柴崎友香)
- 本の長さ224ページ
- 言語日本語
- 出版社集英社
- 発売日2007/1/19
- ISBN-104087461181
- ISBN-13978-4087461183
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登録情報
- 出版社 : 集英社 (2007/1/19)
- 発売日 : 2007/1/19
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 224ページ
- ISBN-10 : 4087461181
- ISBN-13 : 978-4087461183
- Amazon 売れ筋ランキング: - 571,778位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1972年生まれ。2001年に「サイドカーに犬」で第92回文學界新人賞を受賞しデビュー。02年に「猛スピードで母は」で第126回芥川賞を受賞、07年に『夕子ちゃんの近道』で第1回大江健三郎賞を受賞した(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 エロマンガ島の三人 (ISBN-13: 978-4167693046 )』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2007年2月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
都会生活と夏の暑さから逃れるため、北軽井沢の別荘へドロップアウトした父子のスローライフを描いた作品。
この作品に登場する、父子は互いの夫婦仲が上手くいってなくて、人間関係に疲れてしまっている。
生きていくうえで避けることはできない人との関わりだけど、どんなにがんばっても、万事良好ということにもできない。だから面倒だとか鬱陶しくなって気疲れしてしまうのだけれど、親子であってもそうなのだから、突き詰めれば他人の夫婦なら、なお分かり合えくて当然であるのかもしれない。でも、そんな少しの可能性だから、分かり合えたときには奇跡のようにうれしく思えるのだろうか。
この作品は、淡々とした別荘地での生活を描きながら、人と人とのつながりをゆっくりと描き出してゆく作品である。
なお、本作には、表題作のほか、その次の年に再び軽井沢を訪れるもようを描いた「ジャージの三人」が併録されている。
この作品に登場する、父子は互いの夫婦仲が上手くいってなくて、人間関係に疲れてしまっている。
生きていくうえで避けることはできない人との関わりだけど、どんなにがんばっても、万事良好ということにもできない。だから面倒だとか鬱陶しくなって気疲れしてしまうのだけれど、親子であってもそうなのだから、突き詰めれば他人の夫婦なら、なお分かり合えくて当然であるのかもしれない。でも、そんな少しの可能性だから、分かり合えたときには奇跡のようにうれしく思えるのだろうか。
この作品は、淡々とした別荘地での生活を描きながら、人と人とのつながりをゆっくりと描き出してゆく作品である。
なお、本作には、表題作のほか、その次の年に再び軽井沢を訪れるもようを描いた「ジャージの三人」が併録されている。
2017年7月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
NHKのラジオに著者、長嶋有氏が出演し、その話や音楽性に面白さを感じ
「猛スピードで母は」以来、久しぶりに著者の作品を読んでみた。
奇をてらったドラマ設定が多い最近の小説の中、普通な日常生活の中にある
それぞれの想い、家庭や親子、夫婦が描かれており、スラリと読める小説でした。
ラストのメールがいいですね!一光が射すような?
壊れかけた夫婦に流れる、それぞれの想い。
やたら重くなくていいですよ。
「猛スピードで母は」以来、久しぶりに著者の作品を読んでみた。
奇をてらったドラマ設定が多い最近の小説の中、普通な日常生活の中にある
それぞれの想い、家庭や親子、夫婦が描かれており、スラリと読める小説でした。
ラストのメールがいいですね!一光が射すような?
壊れかけた夫婦に流れる、それぞれの想い。
やたら重くなくていいですよ。
2020年6月11日に日本でレビュー済み
読売の「現代文芸名著60」に入っていたので読んでみた。2007年の文庫を今頃レビューするのもなんなのだが、低位のレビューが少ないので書いてみた。短い作品にもかかわらず何事も起こらないので、読み始めるとすぐに眠くなり、読み終えるのに苦労した。季節は夏から秋に変わる頃、場所は軽井沢近辺の避暑地。堀辰雄の小説「風立ちぬ」や「美しき村」の舞台だ。季節も似たような感じだが、昔からの避暑地の聖地とも言ってよいところを舞台に、美しい季節の移り替わるみずみずしさや恋の予感とは無縁に、脱力系コミックを文章にしたような、まったり世界が展開するのにがっかり。失敗した結婚の残滓が、何となく漂う。「成人した子と、離婚し三度結婚したその父が、都会のどん臭さをそのまま避暑地に持ち込んで、夏の終わりの数日を冴えない別荘で何となく不格好に過ごすだけの、おかしみを描いた日記のような、エッセイのような小説」と言ったら酷すぎるだろうか?面白かったのは、携帯(ガラケー)のアンテナが三つ立つスポットの話だが、あと10年もすれば何のことを言っているのやら訳が分からなくなってしまうだろう。高位のレビューを読んでみて、なるほど、評価する人はそのように評価するのかと感心した。平成の脱力文学の代表作として、客観的評価は星4つかもしれないが、私自身の趣味から評価すれば、星二つ。
2012年8月14日に日本でレビュー済み
北軽井沢の山荘へ避暑に出かけた「僕」と父。「僕」の妻には大好きな人ができてしまったし、父の三度目の結婚はうまくいっていない。古くてかび臭い別荘で過ごす”ちゃんとしていない二人”のまったりとした夏。
父の最初の妻の子が「僕」。高校生の頃に別れてしまった父と「僕」の会話は、親子というより気の置けない友達同志のようだ。理想的な親子関係に見えるけれど、そのように接するしかない微妙な距離感が、二人にはある。それぞれを気遣っていながらも、肝心なところで踏み込んでいけない。30代の息子と50代の父の、ゆるさの中にあるちょっとした意地の張り合いだ。
「僕」の抱えている問題は、苦悩をはるかに超えて悲惨というべきものである。妻が、浮気相手の子供を産みたいと切望しながら、相手にフラれてしまったのだ。世紀の大恋愛を告白された「僕」は、妻の行動を横目で見ながら、ジトジトするしかない。山荘のかびた布団のようだ。
小説家を目指して会社を辞めた「僕」。執筆活動にあてるはずの、初めて出かけた父との旅行は、流されるまま無為に過ぎていく。そもそも「僕」には、自分を見つめ直すとか、何かを解決しようとか、何かを成し遂げようとかいった強い意志があるわけではない。五右衛門風呂に入ったり、犬の散歩をしたり、ご近所さんと交流する毎日だけだ。ネガティブさを、まったり感に転換する そんな心地良さが長嶋さんの作品にはある。ぐだぐだゆるゆるな二人を象徴するのが、小学校から貰い受けたジャージだ。校章を胸につけたサイズLLのダサぽんジャージが、二人のまったりユニホームなのである。
父の最初の妻の子が「僕」。高校生の頃に別れてしまった父と「僕」の会話は、親子というより気の置けない友達同志のようだ。理想的な親子関係に見えるけれど、そのように接するしかない微妙な距離感が、二人にはある。それぞれを気遣っていながらも、肝心なところで踏み込んでいけない。30代の息子と50代の父の、ゆるさの中にあるちょっとした意地の張り合いだ。
「僕」の抱えている問題は、苦悩をはるかに超えて悲惨というべきものである。妻が、浮気相手の子供を産みたいと切望しながら、相手にフラれてしまったのだ。世紀の大恋愛を告白された「僕」は、妻の行動を横目で見ながら、ジトジトするしかない。山荘のかびた布団のようだ。
小説家を目指して会社を辞めた「僕」。執筆活動にあてるはずの、初めて出かけた父との旅行は、流されるまま無為に過ぎていく。そもそも「僕」には、自分を見つめ直すとか、何かを解決しようとか、何かを成し遂げようとかいった強い意志があるわけではない。五右衛門風呂に入ったり、犬の散歩をしたり、ご近所さんと交流する毎日だけだ。ネガティブさを、まったり感に転換する そんな心地良さが長嶋さんの作品にはある。ぐだぐだゆるゆるな二人を象徴するのが、小学校から貰い受けたジャージだ。校章を胸につけたサイズLLのダサぽんジャージが、二人のまったりユニホームなのである。
2007年7月6日に日本でレビュー済み
失業中で小説家を目指す息子が
写真家の父とひと夏を過ごすために別荘へやってきた。
二人とも現在の結婚生活がうまくいっておらず
現実から逃避するような意味合いもこめて
毎年来ている別荘へやってきた。
そこで二人は何をするでもなく
ノンビリと、もしくはだらしなく夏を過ごしていく。
息子の胸中には不倫をした妻への
怒りとも何ともつかない思いが渦巻いている。
父も現在の妻との間がどうも冷え切っているようで
他人との接触を断ちながら
それでも何らかの接触を保ち続けたいと願っているような
そんな二人の日々が淡々と描かれている。
なんとなくゆる〜い持間が流れていて
読んでいてなんだかこちらもゆる〜くなってしまうような
不思議な感覚を抱いた。
「ジャージの三人」では
次の年の夏の別荘での話。
はじめは息子と父と息子の妻と。
後半は息子と父とその娘の三人。
ここでもゆる〜い時間が流れていて
居心地悪い、でも逆にほっとできるような
そんな時間が流れているようで
こちらもわりと面白く読めた。
写真家の父とひと夏を過ごすために別荘へやってきた。
二人とも現在の結婚生活がうまくいっておらず
現実から逃避するような意味合いもこめて
毎年来ている別荘へやってきた。
そこで二人は何をするでもなく
ノンビリと、もしくはだらしなく夏を過ごしていく。
息子の胸中には不倫をした妻への
怒りとも何ともつかない思いが渦巻いている。
父も現在の妻との間がどうも冷え切っているようで
他人との接触を断ちながら
それでも何らかの接触を保ち続けたいと願っているような
そんな二人の日々が淡々と描かれている。
なんとなくゆる〜い持間が流れていて
読んでいてなんだかこちらもゆる〜くなってしまうような
不思議な感覚を抱いた。
「ジャージの三人」では
次の年の夏の別荘での話。
はじめは息子と父と息子の妻と。
後半は息子と父とその娘の三人。
ここでもゆる〜い時間が流れていて
居心地悪い、でも逆にほっとできるような
そんな時間が流れているようで
こちらもわりと面白く読めた。
2008年7月30日に日本でレビュー済み
一般的な小説的技法が使われない。たとえば、心理描写や長い独白がない。描かれるのは断片的な思考の切れ端だけだ。また、登場人物に対する第三者視点からの説明描写がない。いわゆるト書きに当たる部分だ。これら説明的な描写がほとんど無い。
畑の真ん中一カ所だけで携帯の柱が三本立つ…だーっそんなこと大の大人なら無視してしまう極小エピソードだ。しかも妻の不倫と父の三度目!の結婚生活の破綻と、学校生活に行き詰まっているらしい義妹と、重要モチーフは満載の小説なのだ。これをドラマチックに盛り上げることなど、幾通りも思いつく。
だが「僕」は、ぼんやりとあせりながら、もらいもののトマトの使い道に悩んだりミロの散歩にうつつを抜かしたり、花輪和一の漫画を読んだりしている。重大な事項と些末な事項が、同じレベルで「僕」を取り巻き、現実と同じ速さで小説内の時間が進んでいく。
今までこの作家の読み方がわからなかったが、少しわかったような気がしてきた。ゆるゆると面白い。映画化されるそうなので、そちらも楽しみだ。
畑の真ん中一カ所だけで携帯の柱が三本立つ…だーっそんなこと大の大人なら無視してしまう極小エピソードだ。しかも妻の不倫と父の三度目!の結婚生活の破綻と、学校生活に行き詰まっているらしい義妹と、重要モチーフは満載の小説なのだ。これをドラマチックに盛り上げることなど、幾通りも思いつく。
だが「僕」は、ぼんやりとあせりながら、もらいもののトマトの使い道に悩んだりミロの散歩にうつつを抜かしたり、花輪和一の漫画を読んだりしている。重大な事項と些末な事項が、同じレベルで「僕」を取り巻き、現実と同じ速さで小説内の時間が進んでいく。
今までこの作家の読み方がわからなかったが、少しわかったような気がしてきた。ゆるゆると面白い。映画化されるそうなので、そちらも楽しみだ。
2016年11月2日に日本でレビュー済み
表題作「ジャージの二人」と続編「ジャージの三人」を収める。
初め長過ぎると思ったが別れかけの妻のテーマが出てきて、筆者自身も何を書かねばならぬのかが分かったのであろう。
父親や義妹や別荘地の人びとがいい味をだしているが、妻の下りがないと、単なるエッセイ小説になってしまう。そういう意味では続編の方がよく書けている。
と考えてくるとこの題名はどうなんだ、ということにもなる。
もっとも主題を明示しているのは、電波を求めて、高原のレタス畑の畔に腕を高く掲げる少女の姿ではないのか?
初め長過ぎると思ったが別れかけの妻のテーマが出てきて、筆者自身も何を書かねばならぬのかが分かったのであろう。
父親や義妹や別荘地の人びとがいい味をだしているが、妻の下りがないと、単なるエッセイ小説になってしまう。そういう意味では続編の方がよく書けている。
と考えてくるとこの題名はどうなんだ、ということにもなる。
もっとも主題を明示しているのは、電波を求めて、高原のレタス畑の畔に腕を高く掲げる少女の姿ではないのか?