白昼鬼語を読了し、先ず感じたのは江戸川乱歩風だなと思い、谷崎が乱歩を参考にしたのかと思いきや、あにはからんや巻末の渡部直己の『解説ー犯罪としての話法』で逆であることを知った。「青年期の乱歩にとって、当時の谷崎ほど刺激的な作家はいなかったという。」にビックリ。
ミステリー作家として谷崎潤一郎を考えると、代表作の一つである「春琴抄」もただの愛の小説ではなく、誰が春琴の顔に熱湯をかけたのか?と言う、ミステリー小説になる。そもそも読者は「春琴抄」がミステリー小説だと分からず終わる。しかも最後まで犯人は明かされないで終わる。映画「春琴抄」はどれも愛を描き、ミステリーの側面は表に出てこない。
犯人は誰か???、今となってはなかなか入手困難な●『名作の戯れ(『春琴抄』『こころ』の真実)秦恒平)』で、徹底的に深読みしています。そして夏目漱石の『こころ』では、なぜ先生が自殺したかを深読みしています。
ミステリー小説を愛読してる人なら、どの作品も最後のオチがどうなるかは数種類思い浮かぶが、
谷崎の凄さは執拗な描写力・表現力がぐいぐいと読者を引き込む。なので行間を味わう、心に時間的ゆとりがないと良さは分からない。
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谷崎潤一郎犯罪小説集 (集英社文庫) 文庫 – 2007/12/14
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世紀末、悪魔主義。
こんな「谷崎」読んだことない!?
仏陀の死せる夜、デイアナの死する時、ネプチューンの北に一片の鱗あり……。偶然手にした不思議な暗号文を解読した園村。殺人事件が必ず起こると、彼は友人・高橋に断言する。そして、その現場に立ち会おうと誘うのだが……。懐かしき大正の東京を舞台に、禍々しき精神の歪みを描き出した「白昼鬼語」など、日本における犯罪小説の原点となる、知る人ぞ知る秀作4編を収録。(解説/渡部直己)
こんな「谷崎」読んだことない!?
仏陀の死せる夜、デイアナの死する時、ネプチューンの北に一片の鱗あり……。偶然手にした不思議な暗号文を解読した園村。殺人事件が必ず起こると、彼は友人・高橋に断言する。そして、その現場に立ち会おうと誘うのだが……。懐かしき大正の東京を舞台に、禍々しき精神の歪みを描き出した「白昼鬼語」など、日本における犯罪小説の原点となる、知る人ぞ知る秀作4編を収録。(解説/渡部直己)
- ISBN-104087462498
- ISBN-13978-4087462494
- 出版社集英社
- 発売日2007/12/14
- 言語日本語
- 本の長さ224ページ
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登録情報
- 出版社 : 集英社 (2007/12/14)
- 発売日 : 2007/12/14
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 224ページ
- ISBN-10 : 4087462498
- ISBN-13 : 978-4087462494
- Amazon 売れ筋ランキング: - 108,237位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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2022年2月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
これが、谷崎潤一郎?
松本清張ばりの面白さ。
おすすめです。
松本清張ばりの面白さ。
おすすめです。
2023年6月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
推理、サスペンス、ミステリー物は、ついついストーリーに走って頁を捲るけれど、探偵や刑事等の第三者ではない、一人称の犯人の心理を読者に理解させ、考えさせたり、共鳴させたりする作品が少なくて、あ~探してたのはコレだ!と思えた一冊でした。
本嫌いに、本を読む面白さを教える格好の一冊だと思う。
本嫌いに、本を読む面白さを教える格好の一冊だと思う。
2015年5月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「途上」は、収録編中もっとも論理的な作品で、狂人も変わり者も登場しない。
蓋然性が重なれば必然性に変わると説き、犯人の狙いを見抜く。
本編は"完全犯罪は為し得るか"という見地から乱歩の短編「D坂の殺人事件」で取り上げられている。
「白昼鬼語」は、二重だまし、眩暈を誘う頽廃的耽美の魅力もさることながら、
狂人・園村の突拍子もない被虐嗜好にうちのめされた。
探偵小説としてもちろん愉しめるのだが、圧倒的なマゾヒズムの病癖に瞠目させられる。
「私」は、一読すると二重人格者を思わせる主人公(一人称)。しかし、ラストで力説しているように、
ウソを文脈に一言も書いていない。語り口のテクニックが憎いほど冴える。
※ 写真・自己紹介は無視して下さい
蓋然性が重なれば必然性に変わると説き、犯人の狙いを見抜く。
本編は"完全犯罪は為し得るか"という見地から乱歩の短編「D坂の殺人事件」で取り上げられている。
「白昼鬼語」は、二重だまし、眩暈を誘う頽廃的耽美の魅力もさることながら、
狂人・園村の突拍子もない被虐嗜好にうちのめされた。
探偵小説としてもちろん愉しめるのだが、圧倒的なマゾヒズムの病癖に瞠目させられる。
「私」は、一読すると二重人格者を思わせる主人公(一人称)。しかし、ラストで力説しているように、
ウソを文脈に一言も書いていない。語り口のテクニックが憎いほど冴える。
※ 写真・自己紹介は無視して下さい
2018年10月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
同じ文庫の「フェチズム」「マゾヒズム」は活字が小さいし、漢字、形容詞などが現代では使われていないものが多かったけど、まあ、面白く読めた。
この犯罪小説は、ひとつ読んだだけで、ブックオフに10円で消えました。
分かりにくくて、面倒なのです。
この犯罪小説は、ひとつ読んだだけで、ブックオフに10円で消えました。
分かりにくくて、面倒なのです。
2014年2月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
いろいろな純文学を読んでいて谷崎にたどり着きました。
芥川龍之介が追及していた人間のエゴイズムの流れはここからミステリーや
ホラーへとつながっていったのではないだろうか?
芥川龍之介が追及していた人間のエゴイズムの流れはここからミステリーや
ホラーへとつながっていったのではないだろうか?
2017年4月24日に日本でレビュー済み
.
谷崎を、「推理小説作家」と呼称すべきではないが、このジャンルにおいての影響力は大きなものがある。
とりわけ、犯罪構成の観点から注目されるのが、「途上」である。
内容は、第三者を「事故の蓋然性を高める」環境におく犯罪者の所為を丹念に描いているのであるが、
「事故死を起こすべく手順を踏むが、『 事故が起きてもあくまでも偶発事故 』 である 」 といった犯罪 ・ ・ ・
言うならば自然界の因果関係を最大限に利用した、” 完全犯罪 ” の 「 問題提起 」なのである。
流麗な文章構成から「和文の芸術家」とも称すべき、若き谷崎の意欲的な作品と評し得よう。
谷崎を、「推理小説作家」と呼称すべきではないが、このジャンルにおいての影響力は大きなものがある。
とりわけ、犯罪構成の観点から注目されるのが、「途上」である。
内容は、第三者を「事故の蓋然性を高める」環境におく犯罪者の所為を丹念に描いているのであるが、
「事故死を起こすべく手順を踏むが、『 事故が起きてもあくまでも偶発事故 』 である 」 といった犯罪 ・ ・ ・
言うならば自然界の因果関係を最大限に利用した、” 完全犯罪 ” の 「 問題提起 」なのである。
流麗な文章構成から「和文の芸術家」とも称すべき、若き谷崎の意欲的な作品と評し得よう。
2012年7月18日に日本でレビュー済み
谷崎潤一郎の作品は淫靡で妖しくて、なんだか苦手と遠ざけてきたが、この本は「犯罪小説集」と銘打ってある。
犯罪、とくれば、それはもう非日常であり、どのような突飛な展開であろうと、却って安心して読めるのではないかと思って読んでみた。
4編の短編が収められている。
「柳湯の事件」は、「夢オチ」ならぬ、なんとかオチと言えそうな展開だ。
あっけないほどあっさりと終わる。
これはもう、物語の設定や背景などよりも、
途中の、読んでいて気分が悪くなるほどの執拗な、
ぬらぬらぬめぬめな死体のことを詳しく書きたかったってことなんだろうか、とさえ思ってしまった。
そして私立探偵の「調査報告」を軽く聞く様子でじわじわと物語が構築されていく「途上」、
周囲の目や言葉から、やはりじわじわと事実が浮かび上がってくる「私」という2つの短編がある。
読み進むほどに、あぶり出しのように物語が見えてくるという点でこの2編は似ているかもしれない。
一行読むごとに確実に物語の輪郭は濃くなる。
謎解きの醍醐味に、一瞬たりとも集中を欠かさず読んでしまう。
最後に、やや長めの「白昼鬼語」が収められている。
これは最後に意外などんでん返しが待っているのだが・・・。
どんでん返しがないままに終わってしまえばそれはそれで呆れた途方もない変態物語であり、
しかしどんでん返しがあっても、変態だらけの驚くべき物語に変わりはない。
もし、どんでん返しがないままに終わったとしたら、
主人公・園村は、己の道(変態道)を全うするという点で、
もしかしたらちょっとかっこいいほどの変態になれたのかもしれないが、
作者・谷崎潤一郎がそうはさせなかったってことかな・・・などと思ってしまった(笑)
谷崎潤一郎はとにかく文豪で、耽美で淫靡でやっぱりちょっとなかなか・・であります。
でも、はじめにも書いたが、物語の舞台が「犯罪」というそもそも非日常空間なので、
物語として純粋に鑑賞できると思う。
とっつきやすいのではないだろうか。
犯罪、とくれば、それはもう非日常であり、どのような突飛な展開であろうと、却って安心して読めるのではないかと思って読んでみた。
4編の短編が収められている。
「柳湯の事件」は、「夢オチ」ならぬ、なんとかオチと言えそうな展開だ。
あっけないほどあっさりと終わる。
これはもう、物語の設定や背景などよりも、
途中の、読んでいて気分が悪くなるほどの執拗な、
ぬらぬらぬめぬめな死体のことを詳しく書きたかったってことなんだろうか、とさえ思ってしまった。
そして私立探偵の「調査報告」を軽く聞く様子でじわじわと物語が構築されていく「途上」、
周囲の目や言葉から、やはりじわじわと事実が浮かび上がってくる「私」という2つの短編がある。
読み進むほどに、あぶり出しのように物語が見えてくるという点でこの2編は似ているかもしれない。
一行読むごとに確実に物語の輪郭は濃くなる。
謎解きの醍醐味に、一瞬たりとも集中を欠かさず読んでしまう。
最後に、やや長めの「白昼鬼語」が収められている。
これは最後に意外などんでん返しが待っているのだが・・・。
どんでん返しがないままに終わってしまえばそれはそれで呆れた途方もない変態物語であり、
しかしどんでん返しがあっても、変態だらけの驚くべき物語に変わりはない。
もし、どんでん返しがないままに終わったとしたら、
主人公・園村は、己の道(変態道)を全うするという点で、
もしかしたらちょっとかっこいいほどの変態になれたのかもしれないが、
作者・谷崎潤一郎がそうはさせなかったってことかな・・・などと思ってしまった(笑)
谷崎潤一郎はとにかく文豪で、耽美で淫靡でやっぱりちょっとなかなか・・であります。
でも、はじめにも書いたが、物語の舞台が「犯罪」というそもそも非日常空間なので、
物語として純粋に鑑賞できると思う。
とっつきやすいのではないだろうか。