私は最近、川端康成 初期の前衛的作品に興味を抱き、読み漁っておりました。
「新感覚派」作家としてデビューいらい約10年間の初期前衛作品を一番まとまって収録した文庫本としては講談社文芸文庫の『水晶幻想・禽獣』があります。収録作品は下記の8点。
「青い海黒い海」「春景色」「死者の書」「水晶幻想」「抒情歌」「それを見た人達」「禽獣」「散りぬるを」
これらはいずれも令和のいま読んでも色あせない読み応えのある作品群で、とりわけ「青い海黒い海」「水晶幻想」「抒情歌」「禽獣」「散りぬるを」は読む前の予想を上回る傑作でした。
なので川端初期の前衛作品を堪能したかったら、先ずは講談社文芸文庫『水晶幻想・禽獣』がお勧めです。
さらに川端康成 初期の傑作を文庫本で探してみると下記の3つが候補に挙がりました。
◎新潮文庫『伊豆の踊子』ほかに「温泉宿」「抒情歌」「禽獣」収録
◎岩波文庫『伊豆の踊子・温泉宿』ほかに「十六歳の日記」「招魂祭一景」「青い海黒い海」「春景色」
◎集英社文庫『伊豆の踊子』ほかに「招魂祭一景」「十六歳の日記」「死体紹介人」「温泉宿」
これら3文庫の収録作を前記の講談社文芸文庫『水晶幻想・禽獣』収録の8作品と見比べてみてお分かりのとおり、集英社文庫版だけが、講談社文芸文庫版 収録作品との重複がありません。
そんなわけで、集英社文庫『伊豆の踊子』を購入しました。
「伊豆の踊子」は言わずと知れた初期の代表作。ただし前衛的というよりは抒情的傑作です。
「招魂祭一景」は大正時代のサーカスの少女を描いた新感覚派的作品。1921年4月『新思潮』に発表とのことでその発表年代に唖然としました。この時 作者は21歳 (6月で22歳) で東京帝国大学在学中。
「十六歳の日記」は満年齢15歳 (中学3年生) の日記を元とした作品ですが、すでに新感覚派の萌芽が見られるとのこと (巻末の解説)。新感覚派の発表母体である『文芸時代』という文芸誌の創刊号 (1924年10月) が出る10年も前の作品ですよ。この人やっぱり天才なんだなと思いました。
「死体紹介人」は新感覚派の傑作ですが、思わぬ奇縁で若い女性の死体紹介人になり果てていく男の物語という、ほとんどフランツ・カフカを思わせる不条理の世界です。1929年~1930年発表。ちなみにカフカが日本で翻訳紹介され始めたのは第二次世界大戦後です。前述の講談社文芸文庫『水晶幻想・禽獣』を読み終わった時点で川端康成に対する私の評価は爆上がりしましたが、「死体紹介人」を読んでみて、その後のノーベル文学賞受賞 (1968年) は当然の結果だと思いました。
「温泉宿」は新潮文庫、岩波文庫、集英社文庫すべてに収録されている通り傑作の呼び声の高い作品。伊豆の温泉宿で繰り広げられる女中さんたちを中心とした悲喜こもごもの日常と衝撃のラストは一読忘れがたい印象を受けます。
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伊豆の踊子 (集英社文庫) 文庫 – 1977/5/20
川端 康成
(著)
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20歳の旧制高校生が伊豆の旅で出会った清純な踊子・薫…。多感な青年の淡く純粋な恋ごころを描いて、みずみずしい青春の抒情を漂わせる名作。初期作品集。(解説・奥野健男/鑑賞・橋本 治)
- ISBN-104087500012
- ISBN-13978-4087500011
- 版改
- 出版社集英社
- 発売日1977/5/20
- 言語日本語
- 本の長さ216ページ
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登録情報
- 出版社 : 集英社; 改版 (1977/5/20)
- 発売日 : 1977/5/20
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 216ページ
- ISBN-10 : 4087500012
- ISBN-13 : 978-4087500011
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著者について
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(1899-1972)1899(明治32)年、大阪生れ。東京帝国大学国文学科卒業。
一高時代の1918(大正7)年の秋に初めて伊豆へ旅行、旅芸人の一行と知り合う。以降約10年間毎年、伊豆湯ヶ島湯本館に長期滞在する。菊池寛の了解を得て1921年、第六次「新思潮」を発刊。新感覚派作家として独自の文学を貫いた。1968(昭和43)年ノーベル文学賞受賞。1972年4月16日、逗子の仕事部屋でガス自殺を遂げた。著書に『伊豆の踊子』『雪国』『古都』『山の音』『眠れる美女』など多数。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2023年1月8日に日本でレビュー済み
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2014年11月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
荒木先生の絵が大好きなので是非手元においておきたいという気持ちで購入しました。やっぱりカッコイイです。
しかし新品なのにいきなり天小口が黒く、いろんな方向から擦ったようなあとがありました。(読むのに全く支障はありません)
これが一般的にどれくらいの重要性があるのか分りませんし、「汚れくらいで馬鹿じゃねぇの」とおっしゃる方が大多数だと思いますが(第一レビューに書くことなのか)読むというより鑑賞に近い気持ちで購入している分、開封した時の「ウヘェ」感は否めませんでした。
こういうこともあるよな。という勉強をさせていただきました。
しかし新品なのにいきなり天小口が黒く、いろんな方向から擦ったようなあとがありました。(読むのに全く支障はありません)
これが一般的にどれくらいの重要性があるのか分りませんし、「汚れくらいで馬鹿じゃねぇの」とおっしゃる方が大多数だと思いますが(第一レビューに書くことなのか)読むというより鑑賞に近い気持ちで購入している分、開封した時の「ウヘェ」感は否めませんでした。
こういうこともあるよな。という勉強をさせていただきました。
2023年7月6日に日本でレビュー済み
.
・ ・ ・ 二十歳の私は自分の性質が孤児(みなしご)根性で歪んでいると厳しい反省を
重ね、その息苦しい憂鬱に耐え切れないで伊豆の旅に出て来ているのだった。
「伊豆の踊子」
.
川端康成の「青春の記念碑」とも言うべき作品「伊豆の踊子」は、1926年(大正15年)、雑誌『文藝時代』に「伊豆の踊子」、「続伊豆の踊子」として発表され、翌1927年(昭和2年)に金星堂より単行本として刊行された小説である。 川端が旧制一高在学時に、伊豆を旅した20歳の時の実体験を元にしているとされる。
多数回にわたる映画化が示すように、平明なストーリーと、有数の観光地が舞台となった美しい青春の息吹が感じられる抒情的な作品であるため、その時代の人気スターたちが競って「薫(かおる)=踊り子役」を演じており(美空ひばり・吉永小百合・山口百恵等)、さながら若手女優の登竜門としての定番作品の感さえある。
この作品は少年時代の初読から、かなりの時間を空けながら三回拝読させて頂いた。
そして、初回の「清純な純愛物語」といった印象から、二回目には美しい踊子の清楚な印象にも増して 主人公のラスト・シーンの涙の叙述に関心が移り(⇒「青春のリリシズム」の所感)、今回は三回目として他の初期作品と共にあらためて拝読すると、川端自身が幼少時に両親と死別し、「孤児(みなしご)」の自意識を強く持っていたことなどが作品と共に心に迫り、多感な青年の 「 人生との和解 ・ ・ ・ 自分という存在の肯定の喜び 」 が ひとしお強く感じられた。
幼年期から青年期にかけて両親を早く亡くしたがゆえに、兄弟姉妹が散り々々に親類に引き取られて生育するという川端の幼少期の生い立ちの経緯は、川端自身に限らず、その子が優秀で 多感であればあるほど、その後の人格形成や世界観に大きな影響を与えずにはおかぬ事実であるに相違ない。
川端の初期作品には、この「孤児意識」を克服するために川端自身が自然に身に付けたと思われる 「 第三者的諦観 」 が常に存在する と感じるが、そのような自分に対する青年期特有の「自己嫌悪」が この作品において ” カタルシス・・・精神の浄化 ” により救済され得ていることは、川端の他の作品には見られない「伊豆の踊子」という作品の大きな特色であり、魅力でもある。
「 そんなに強がらなくてもいいのよ。 あなたは、” いいひと ” なんですから・・・ 」
こんな自己肯定のメッセージを、傷心の一人旅で偶然知り合った、無辜で可憐な乙女である 薫(踊子) から告げられた事実は、多感な若き川端の、傷付いた心の奥底を揺るがしたに違いない出来事であったろう。
その喜びと 流した涙の清冽さは、読者自身が青春時代の混沌とした精神に思いを馳せる時、深く共感出来るものである。
「伊豆の踊子」は、多感な青年が自己を偽らずにその内面を綴った青春の記念碑であり、作品構成の美しさと相俟って、万人の心に迫る力を持つ 若い生命力にあふれた作品と評し得よう。
・ ・ ・ 二十歳の私は自分の性質が孤児(みなしご)根性で歪んでいると厳しい反省を
重ね、その息苦しい憂鬱に耐え切れないで伊豆の旅に出て来ているのだった。
「伊豆の踊子」
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川端康成の「青春の記念碑」とも言うべき作品「伊豆の踊子」は、1926年(大正15年)、雑誌『文藝時代』に「伊豆の踊子」、「続伊豆の踊子」として発表され、翌1927年(昭和2年)に金星堂より単行本として刊行された小説である。 川端が旧制一高在学時に、伊豆を旅した20歳の時の実体験を元にしているとされる。
多数回にわたる映画化が示すように、平明なストーリーと、有数の観光地が舞台となった美しい青春の息吹が感じられる抒情的な作品であるため、その時代の人気スターたちが競って「薫(かおる)=踊り子役」を演じており(美空ひばり・吉永小百合・山口百恵等)、さながら若手女優の登竜門としての定番作品の感さえある。
この作品は少年時代の初読から、かなりの時間を空けながら三回拝読させて頂いた。
そして、初回の「清純な純愛物語」といった印象から、二回目には美しい踊子の清楚な印象にも増して 主人公のラスト・シーンの涙の叙述に関心が移り(⇒「青春のリリシズム」の所感)、今回は三回目として他の初期作品と共にあらためて拝読すると、川端自身が幼少時に両親と死別し、「孤児(みなしご)」の自意識を強く持っていたことなどが作品と共に心に迫り、多感な青年の 「 人生との和解 ・ ・ ・ 自分という存在の肯定の喜び 」 が ひとしお強く感じられた。
幼年期から青年期にかけて両親を早く亡くしたがゆえに、兄弟姉妹が散り々々に親類に引き取られて生育するという川端の幼少期の生い立ちの経緯は、川端自身に限らず、その子が優秀で 多感であればあるほど、その後の人格形成や世界観に大きな影響を与えずにはおかぬ事実であるに相違ない。
川端の初期作品には、この「孤児意識」を克服するために川端自身が自然に身に付けたと思われる 「 第三者的諦観 」 が常に存在する と感じるが、そのような自分に対する青年期特有の「自己嫌悪」が この作品において ” カタルシス・・・精神の浄化 ” により救済され得ていることは、川端の他の作品には見られない「伊豆の踊子」という作品の大きな特色であり、魅力でもある。
「 そんなに強がらなくてもいいのよ。 あなたは、” いいひと ” なんですから・・・ 」
こんな自己肯定のメッセージを、傷心の一人旅で偶然知り合った、無辜で可憐な乙女である 薫(踊子) から告げられた事実は、多感な若き川端の、傷付いた心の奥底を揺るがしたに違いない出来事であったろう。
その喜びと 流した涙の清冽さは、読者自身が青春時代の混沌とした精神に思いを馳せる時、深く共感出来るものである。
「伊豆の踊子」は、多感な青年が自己を偽らずにその内面を綴った青春の記念碑であり、作品構成の美しさと相俟って、万人の心に迫る力を持つ 若い生命力にあふれた作品と評し得よう。
2012年3月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
表紙はジョジョですが、中身は勿論川端康成の作品です。
伊豆の踊子
招魂祭一景
十六歳の日記
死体紹介人
温泉宿
が収録されています。
行間、察せよ、感じよ……こうも私は日本人らしさを喪失してしまったのかと悲しくもなりました。
これらの作品に共通するのは、悲しくも貧困です。貧困であるがゆえの美しさ、つまり拝金主義とは無縁の美しさが描かれているわけです。貧しいがゆえに奏でられる人間讃歌なんですね〜。貧困が文化の一部分を担っているとは思いもしませんでした。
また、性風俗もですよ。これは私はそうだと思っていたのですが、川端康成の作品に触れることで確信できました。
日本らしい、日本人だからこそ作ることができた繊細な美、そして、オール・オア・ナッシングではない、調和の美。それらがこの作品から感じることができます。
日本人であればこそ読むべき本ですね。
日本人こそ日本人のよさを分かってないのかもしれませんね、現在においてはね。
伊豆の踊子
招魂祭一景
十六歳の日記
死体紹介人
温泉宿
が収録されています。
行間、察せよ、感じよ……こうも私は日本人らしさを喪失してしまったのかと悲しくもなりました。
これらの作品に共通するのは、悲しくも貧困です。貧困であるがゆえの美しさ、つまり拝金主義とは無縁の美しさが描かれているわけです。貧しいがゆえに奏でられる人間讃歌なんですね〜。貧困が文化の一部分を担っているとは思いもしませんでした。
また、性風俗もですよ。これは私はそうだと思っていたのですが、川端康成の作品に触れることで確信できました。
日本らしい、日本人だからこそ作ることができた繊細な美、そして、オール・オア・ナッシングではない、調和の美。それらがこの作品から感じることができます。
日本人であればこそ読むべき本ですね。
日本人こそ日本人のよさを分かってないのかもしれませんね、現在においてはね。
2012年1月15日に日本でレビュー済み
この作品は川端の出発点です。
ですので読者が主人公の無垢を大人びた雰囲気で終わる作品でありません。
川端氏がこの作品を契機に自分の過去を相対化し消化した作品です。
この作品は川端本人に書かれたもので読者でないと思います。
でなけりゃ、こんな青臭い本を読む価値はないです。
川端研究者が読む本です。
一般向きでないと思います。
ですので読者が主人公の無垢を大人びた雰囲気で終わる作品でありません。
川端氏がこの作品を契機に自分の過去を相対化し消化した作品です。
この作品は川端本人に書かれたもので読者でないと思います。
でなけりゃ、こんな青臭い本を読む価値はないです。
川端研究者が読む本です。
一般向きでないと思います。
2017年6月30日に日本でレビュー済み
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美しくて立派な本だ。かつて本が如何に重んじられていたかが分かる復刻本だ。眺めているだけでも楽しくなる。
2009年11月2日に日本でレビュー済み
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商品には、CDと書かれてありましたが、実際に送られてきた商品はCD-Rでした。値段のわりにパッケージがチープでちょっとがっかりしました。これならiTunesでダウンロードで購入した方がよかったなと思いました。CD-Rであればその旨明記してほしかった。