"わたしは立ち去りかねて、穏やかな空のもとしばし墓畔を歩き(中略)そして思うのだった。こんな静かな大地に休らう人々が静かに眠れぬわけがあるだろうか。"1847年発表の本書は荒野のヨークシャーを舞台にした『世界の三大悲劇』『世界の十大小説のひとつ』とも言われる激しい復讐劇。
個人的には随分昔に映画でみた記憶が朧げにあるも、内容をよく覚えていなかったので手にとりました。
さて、そんな本書はヨークシャーにそびえる『嵐が丘』の屋敷主人アーンショーに拾われたヒースクリフがアーンショーの娘キャサリンと仲良くなるも、彼女が成長して裕福な上流階級に憧れ、リントン家を選び嫁いだことに絶望、一度姿を消した後に裕福な紳士として戻ってきて、復讐を果たそうとしてきた事が、青年ロックウッドと古女中のネリー(エレン)を主な語り手にして語られていくのですが。
まず、何となく映画では恋愛物語としてヒースクリフとキャサリンのドラマチックな2人の悲恋が描かれていた記憶があったのですが。ヒースクリフは終始、過剰なほどに【陰湿かつ執拗】な印象で記憶のイメージとの違いに驚くと共にいくら復讐とはいえ感情移入しにくく、またキャサリンも矛盾を抱え"人間的"と言えるかもしれませんが、ヒロインとしては奔放すぎるというか【自分勝手な印象】があって、率直にいって読み進めにくかった。(しかし、エドマンド・ブランデンによる三大悲劇。『リア王』はともかく『白鯨(!)』と本書ってどうなのか。)
一方で、あとがきでも訳者が『主人公の1人、稀代の語り手』と述べているネリーの"よく嘘をつき(=信頼できない)よかれと思ったことは全て裏目に出る"彼女のあやしい存在感は(著者自身のオリジナルプランには構想されていなかったらしいですが)発表当時は【構成面で非難があった】と指摘されたとしても、今はむしろ本書の大きな魅力の一つとなっているように感じ、ロックウッドと共に作品に【スパイス的な彩りを添えてくれている】ように確かに思いました。(あと『嵐が丘』って、あらためて名訳ですね)
様々な映画、舞台、漫画や小説に音楽と派生作品を生み出している『源流的な古典』作品としてオススメ。
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嵐が丘 (集英社文庫) 文庫 – 1979/5/19
裏切られた愛ゆえに、復讐の炎を燃やして激情を果たし、恋しい人の幻影を追って狂死する青年ヒースクリフ。英国ヨークシャーの荒野を舞台に、人間の情熱と恋の残酷さを極限まで追求した永遠の悲劇。
- 本の長さ472ページ
- 言語日本語
- 出版社集英社
- 発売日1979/5/19
- ISBN-104087600556
- ISBN-13978-4087600551
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登録情報
- 出版社 : 集英社 (1979/5/19)
- 発売日 : 1979/5/19
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 472ページ
- ISBN-10 : 4087600556
- ISBN-13 : 978-4087600551
- Amazon 売れ筋ランキング: - 426,471位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2020年6月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
永川玲二氏の訳がいいというレビューをどこかで読んだので、さっそく購入しました。合わせて、岩波文庫、新潮文庫など、各社の「嵐が丘」も取り寄せて読み比べてみましたが、確かに永川氏の訳が、いちばんしっくり来ました。もちろん、これは個人的な意見、好みの問題なので、皆さんにおススメというわけにはいきませんが、少なくとも、僕にとってはイチバンの「嵐が丘」になったことは確かです。あ、旧新潮文庫版(田中西二訳)がまだ届いていないので、ひょっとすると、そちらがイチバンになるかもしれませんが、永川氏訳が、僕のお気に入りであることは間違いありません。文章の流れが自然で読みやすい。サイコーです❗