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天使のゲーム 下 (集英社文庫) ペーパーバック – 2012/7/20

4.8 5つ星のうち4.8 29個の評価


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世界的ベストセラー『風の影』第2弾。
契約していた出版社が放火され、経営者が亡くなり刑事にマークされる
ダビッド。さらに不可解な出来事、殺人事件が相次ぎ…。“塔の館”の過去とは? 「本に宿る作家の魂」を描く珠玉の文学ミステリー。
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登録情報

  • 出版社 ‏ : ‎ 集英社 (2012/7/20)
  • 発売日 ‏ : ‎ 2012/7/20
  • 言語 ‏ : ‎ 日本語
  • ペーパーバック ‏ : ‎ 384ページ
  • ISBN-10 ‏ : ‎ 4087606473
  • ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4087606478
  • 寸法 ‏ : ‎ 10.7 x 1.5 x 15.2 cm
  • カスタマーレビュー:
    4.8 5つ星のうち4.8 29個の評価

カスタマーレビュー

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5つのうち4.8つ
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上位レビュー、対象国: 日本

2023年1月24日に日本でレビュー済み
作者の四部作の第一作である『風の影』に続く第二部である。
舞台は同じバルセロナ、時期は第一部よりも数十年遡る。
第一部と同じ「センペーレと息子の書店」や「忘れられた本の墓場」が登場する。

大きく違うのは、視点人物が小説家のダニエルであり、依頼された謎の作品を書く。
その過程で、かつて同じ依頼人から同じ依頼を受けた人物に行き当たり、過去と現在の話がシンクロしていくのは、第一部と同じ感覚を呼び起こす。

しかし、第一部がファンタジー的要素を醸していたのに対して、この第二部は血腥くかつ幻想的なゴシックホラーそのものである。

多くの殺人が錯綜し、何が真実かも定かではなくなっていく。

この迷宮的な感覚は読後も解消されず、それがある意味では本書の重厚な読後感をもたらしている。

二十世紀初期という時代のバルセロナという都市の時代性と空気とを描きこんで、次はどんな展開が待っているのかと期待が膨らむ。
1人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート
2017年6月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
物語が想像の産物であるように、登場する人々も、おぞましい死も、善も悪も暗闇も時間さえも、主人公ダビッドの中で繰り返される想像なのだろうかと、まるでその頭の中に引きずり込まれているような気になって読んでいました。本の魅力、言葉の力が、人の心をこんなに支配するのかと怖ろしくもありましたが、おもしろかった! 書くことではなく生きることを選んだ女性が、「風の影」のダニエルの母になり、そのダニエルがまた物語の中で生きることになるとは…。抜け出せない本の世界です。
2014年2月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
前作を読んで好きになった自分には、満足の内容でした。残念なのが買った事をうっかり忘れて同じものを買ってしまった事・・・。
2012年9月15日に日本でレビュー済み
 1917年のバルセロナで、少年ダビッドは文筆の才能を買われて新聞社で短編小説を書き始める。やがて一人立ちした彼のもとへ、高額の報酬と引き替えに奇妙な本の執筆を依頼する人物アンドレアス・コレッリが現れる。途端にダビッドの人生は怪異な空気に包まれ始める。コレッリとは一体何者なのか…。

 今から6年前(2006年)、カルロス・ルイス・サフォンの『
風の影 』(集英社文庫)に大変な感銘を受け、以来この作家の次回作が翻訳されるのを今か今かと待ち続けていました。ようやく今年日本で出版されたこの『天使のゲーム』はスペイン本国では2008年に出ていたものです。英訳版ペーパーバックで読もうかとも思ったこともありましたが、前作と同じく木村裕美氏の見事な日本語に移し替えられるのを待ったのは正解でした。

 サフォンの次回作というだけで手にしたので、これが『風の影』と同じく“忘れられた本の墓場”のシリーズであったことに驚きと喜びを強く感じました。前作の主人公ダニエルが思わぬ形で登場してくるところも、ファン心理をくすぐる仕掛けとして大いに堪能しました。
 ダビッドを慕う健気なイサベッラ。ダビッドが思いを募らせる美しきクリスティーナ。二人のヒロインの存在も物語に切ない彩りを加えます。

 ただし、『風の影』とは趣が異なり、こちらはゴシック・ミステリーの様相を呈しています。ですから人智の及ばぬ、摩訶不思議な世界が展開していき、理屈の届かぬ形で物語は幕を閉じるのです。
 上巻97頁でいみじくもダビッドが感じるように、「こんなひとつかみの紙のなかに、世界中の魔法と光があるように思え」る小説です。

 訳者あとがきによればこのシリーズは全4部作になる予定で、第3作は2011年にスペインで発表済みだとか。こちらの翻訳を日本で読める日まで、さらに後4年くらいかかるのでしょうか。
 その日がとても待ち遠しく感じています。

 *下巻14頁5行目に「夫の頭にをいろいろふきこんで」とありますが、吹き込むのが何であるか、目的語が抜けています。増刷の際に訂正していただければと思います。
3人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート
2012年8月27日に日本でレビュー済み
謎の編集者・コレッリはダビッドにある雇用契約を持ちかける。脳腫瘍により余命いくばくもないダビッドに再生手術を施し、莫大な前金を払う。その対価として、コレッリの描く世界観でもって、人々を信じ込ませ煽動する力を宿す物語を書くことを求める。新しい宗教の創造といえる。預言の書と考えるのもわたしの自由であり、新しい文化の創造と言い換えることもできる。
常に悪を欲して善をなす力の一部であるメフィストフェレス=コレッリがここにいる。そしてわたしは善悪の間に引きさかれた人間状況のシンボルとしてのファウスト=ダビッドを思い浮かべる。死人同然のダビッドにかすかな光がともるラストは少女グレートヒェンの天上の愛によって救われるファウストを重ね合わせる。

誘惑者・コレッリと魂を売るダビッドの白熱した対話は聖書にある「荒野の誘惑」であり、ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』にある「大審問官」を髣髴させる。
イエズス会による異端審問が激しいさなかのスペインにイエス・キリストが現れ、大審問官がこのイエスを糾弾するという恐るべき寓話だ。その一節。
大審問官はイエスをこう弾劾する。
「自由の身になった人間は、ひざまずくべき相手を少しでも早く探し出そうと心労するのだ。それもすべての人間がいっせいに膝を折ることができる文句なしの相手だ。………まさしくこの、一緒にひざまずける相手を求めるということが、有史以来、各個人のみならず、人類全体のもっとも大きな苦しみだった。普遍的にひざまずける相手を探そうとして、彼らはたがいに剣で滅ぼしあってきた」
宗教の起源とは?支配・被支配の起源とは?戦争と平和と文化の根源?コレッリは「大審問官」の論理で、これこそが真実だとダビッドを恫喝する。人々を恐怖させひざまずかせて、一切の迷いを持たせぬ物語、これを疑問視する人々を敵とする教義、そして平和の救世主ではないぞ、戦士の救世主を現出させるベストセラーの執筆をダビッドに依頼したのだ。
魂の自由を求めるダビッドは絶対者の君臨を認めない。バルセロナは自治で生きるべきなのだ。この本心を隠して、延命のためにコレッリと契約を結び、コレッリを欺こうとする。堕天使を内にした天使たち、両極に分かれた究極の真理を実践証明しようとして、命がけのゲームが始った。勝者は?敗者は?そしてバルセロナは?

このような思いつきのたわごとを並べたのは読後に残った落ち着きのなさをなんとか宥めたいとの気持ちからなのだが、理屈っぽい作品と誤解されては心外。ゆっくりとした進行で始るが下巻に至れば、真相を探るダビッドの荒業、殺人犯としてダビッドを追う警察、そして予想を超えたハードバイオレンスの連続とページを追ってワクワクする上出来のエンターテインメントに仕上がっている。

それでもどこか合点のいかないところが残るから………
こう解釈しよう。
舞台がバルセロナの「ゴシック地区」だからではなく、この作品は正統のゴシック・ロマンスなのだと。
4人のお客様がこれが役に立ったと考えています
レポート