本作は、2002年2月号から2007年8月号までの『すばる』に長期掲載された、
全六部・522頁からなる長編小説である。
辻作品の中では『ニュートンの林檎』『太陽待ち』などに並ぶ大河的大作である。
1960年、福岡に生まれた祖父江九。
父は、やくざ者の遠藤匠。
母は、ホステスの祖父江七。
祖父母は、七の父母にあたる勘六と三(みつ)。
九の幼なじみであり、
彼が生涯において想いを寄せるのが、寺内茉莉(まり)。
同時並行で執筆された『左岸』では、
この茉莉の物語が江國香織によって綴られている。
茉莉の兄は、思想家の惣一郎。
父は、九州大学の理系の教授の新(あらた)。
母は、喜代。
以上が、物語最初の主要な登場人物である。
第一部では、小学生の九が、スプーン曲げの能力を示し、
マスコミにも取り上げられる。
サーカス団で、その超能力を見世物にすることと引き換えに、
つかの間ながら家族3人での暮らしを手に入れる。
兄のように慕っていた2歳年上の惣一郎が、12歳の時に首吊り自殺したことで、
九は惣一郎の受け売りのように、哲学めいたことを語るようになり、
その早熟さは、周囲から一目を置かれるようになる。
そうした中、遠藤匠が射殺され、九の超能力も衰える。
九は後ろ盾を二人、少年期に失うのである。
高校生の九は、遠藤匠の子分・銀次が七と交接している場面を見てしまい、
失望のあまりに家を飛び出す。
行き先は、生前の勘六から一度訪れるとよいと言われていた、
阿蘇に住む仲間・田崎勇三のところである。
旅の共は、福岡駅で出会った円という修験者。
辻作品では、こうした道案内的な人物(ピノキオにとってのジミニークリケット)がよく登場する。
第二部では、九は19歳となり、通っていた九州大学文学部を中退する。
風俗店で知り合った5歳年上の菊丸と、幾度か肉体関係を持つ。
茉莉は東京男の山辺と家出をしていたが、その男を連れて戻ってくる。
九と茉莉の関係は、もどかしいながらも、少しずつ距離は縮まっていき、
1980年、九の10代が終わろうとしている時、初めての口付けをする。
ただ、肉体関係だけは、とある事情(←ご確認ください)で遂げることができずに終わる。
九は、祖母・三の死を機に、沖縄で一年を過ごす。
その間に、超能力は蘇り、
スプーンではなく、鉄板や鉄棒を曲げられるようになる。
その後、25歳になるときには、インドに身を置き、27歳はパリで迎える。
パリでは、マイコ、ネネと交接するも、心は常に茉莉に在った。
ここでのマイコの九への誘い方は、
「オキーフの恋人 オズワルドの追憶」をなぞるものとなっている。
第三部では、28歳になった九に、ネネとの間に男児・阿弥(ami)ができる。
夢の中で出て来た惣一郎が「きっと君の傍にたどり着く」と告げていたように、
阿弥は惣一郎にそっくりであった。
その頃、茉莉も女児・さきの母親になっており、
九の勤めるパリの寿司屋「徳川」を訪れる。
パリには、画家・青山志津夫にモデル頼まれたからだという。
宿泊先が「左岸」にあるホテルであるところは、細やかな設定である。
ここでネネは交通事故死を遂げるが、
ネネの「この瞬間を忘れないで」という思いは、
これまでの辻小説でよく示された恋愛観である。
第四部では、ネネの死により、記憶を失った九は福岡に帰っており、
銀次が営むラブホテルの屋上で植物を育てていた。
4年の間に、そこは森のように生い茂っていた。
九は、森に来る人たちを「外人間」と呼び、
自身もすっかり森から出ることは無かった。
菊丸と15年ぶりに再会したとき、
九は空に浮かぶ術を身に付けるようになり、再びマスコミに取り上げられる。
九を新時代の神と見なす若者は「キューリアン」と呼ばれ、
菊丸を襲ったり、銀次を狙ったりした。
七だけは、キリスト教におけるマリアのような存在として崇められた。
ここでも茉莉が登場するが、それまでに何をしていたのか、
東京男とどう知り合ったか、産んだ娘の父親は誰なのかなどについては全く触れられていないので、
「右岸」を読まないと完結しない点は、もどかしくもあり、巧いところである。
この四部では、阿弥については全く描かれていない。
第五部では、九は正体を隠して、再会したサーカス団とともに日本を回る。
長野では、円とも再会する。
東京では、銀次が刺殺される。
ここでは、茉莉も阿弥も登場しない。
第六部では、七が死去する。
九が44歳の時である。
九の超能力は次第に衰え、サーカス団のオーナーになるも、
団員からは「役に立たないピエロ」とも呼ばれ出す。
そこに、さきが阿弥と一緒に姿を見せる。
いずれ二人は結婚して、日本で暮らすという。
阿弥の大学入学を機に、九はサーカス団を離れ、博多へと戻る。
生家の隣には、昔通りに茉莉が居た。
実に40年ぶりに訪れた光景である。
九は余生で「祖父江九の黙示録」を何冊ものノートに記した。
九は茉莉との日々を過ごしながら、
東京から阿弥とさきが戻る日を待つのだった。
全体を通して、1人の女性を生涯にわたりに想い続けるという点では、
いつもの辻作品であるが、
本作は超能力と巨大なペニスの描写が、「どうしたの?」と思えるほど異常に多く在り、
そこだけがどうしても読後、強く残ってしまう。
また、記憶を失ってからの九の「どもり口調」も実に、まどろっこしい。
長期連載のためか、夢の中で故人が出てきて、語らう場面が多くあったり、
茉莉への手紙だけで済ます章もあったり、初期に出会った者は全員が再登場したりする。
それが、まさに人の生涯だと言ってしまえば、それまでなのだが、
ともあれ、男女の視点で2作を同時に描くというアイデア自体の見付けと、
その実践という点では貴重な1冊である。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
右岸 単行本 – 2008/10/15
辻 仁成
(著)
いくつもの川を渡る、それが男の人生だった
不思議な力を授かりながら、人を救うことができずに苦しみ続ける九。運命に翻弄され旅を続ける彼の心には、いつも幼なじみの茉莉の存在があった。江國香織『左岸』と対をなす、壮大な愛の神話。
不思議な力を授かりながら、人を救うことができずに苦しみ続ける九。運命に翻弄され旅を続ける彼の心には、いつも幼なじみの茉莉の存在があった。江國香織『左岸』と対をなす、壮大な愛の神話。
- 本の長さ528ページ
- 言語日本語
- 出版社集英社
- 発売日2008/10/15
- ISBN-104087712346
- ISBN-13978-4087712346
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
商品の説明
著者について
1959年東京生まれ。1989年『ピアニシモ』で第13回すばる文学賞を受賞。97年『海峡の光』で芥川賞、99年『白仏』の仏語版で、フランス五大文学賞の一つ、フェミナ賞を日本人として初めて受賞。現在はフランスを拠点に、執筆のみならず、様々な活動に取り組んでいる。
登録情報
- 出版社 : 集英社 (2008/10/15)
- 発売日 : 2008/10/15
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 528ページ
- ISBN-10 : 4087712346
- ISBN-13 : 978-4087712346
- Amazon 売れ筋ランキング: - 743,574位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 17,145位日本文学
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
東京生まれ。
89年「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞し、作家デビュー。97年「海峡の光」で第116回芥川賞、99年「白仏」の仏翻訳語版「Le Bouddlha blan」で、仏フェミナ賞・1999年外国小説賞を日本人としては初めて受賞。
文学以外の分野でも幅広く活動している。監督・脚本・音楽を手がけた映画「千年旅人」「ほとけ」「フィラメント」「ACACIA」でも注目を集め、メディアの垣根を越えたその多岐にわたる活躍は、今、もっとも注目されている。2003年より渡仏。現在はフランスを拠点に創作活動を続けている。
カスタマーレビュー
星5つ中3.9つ
5つのうち3.9つ
全体的な星の数と星別のパーセンテージの内訳を計算するにあたり、単純平均は使用されていません。当システムでは、レビューがどの程度新しいか、レビュー担当者がAmazonで購入したかどうかなど、特定の要素をより重視しています。 詳細はこちら
22グローバルレーティング
虚偽のレビューは一切容認しません
私たちの目標は、すべてのレビューを信頼性の高い、有益なものにすることです。だからこそ、私たちはテクノロジーと人間の調査員の両方を活用して、お客様が偽のレビューを見る前にブロックしています。 詳細はこちら
コミュニティガイドラインに違反するAmazonアカウントはブロックされます。また、レビューを購入した出品者をブロックし、そのようなレビューを投稿した当事者に対して法的措置を取ります。 報告方法について学ぶ
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2010年4月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
物語も中盤かな.........放浪の途中パリで最愛の女性、ネネを交通事故で亡くし主人公の九も事故に会って記憶を失くし故郷の福岡に帰るっちゃん............
母の夫でもある銀次が経営するラブ・ホテルの屋上に何年もかけて“森”を造るんさ。そこでの生活が何とも.........少しずつ、少しずつ記憶を取り戻していくんだけど、その過程がどうにも泪を誘うっちゃんね。悲しくも何ともない情景が目に浮かぶだけで、じわ〜っと涙がでてくるんさ..........辻さんが描く博多弁とか筑後の情景は自分が生まれ育った地元のせいかどうにも思い入れが強くなるばってん、幾ら超能力の持ち主の九が空を浮遊するってのはなかと思うとよ。そいで最後はハッピーエンドになりそうだけどもうちょっとひねりがほしかったなぁ....と
これから、左岸ば読まんと.................
母の夫でもある銀次が経営するラブ・ホテルの屋上に何年もかけて“森”を造るんさ。そこでの生活が何とも.........少しずつ、少しずつ記憶を取り戻していくんだけど、その過程がどうにも泪を誘うっちゃんね。悲しくも何ともない情景が目に浮かぶだけで、じわ〜っと涙がでてくるんさ..........辻さんが描く博多弁とか筑後の情景は自分が生まれ育った地元のせいかどうにも思い入れが強くなるばってん、幾ら超能力の持ち主の九が空を浮遊するってのはなかと思うとよ。そいで最後はハッピーエンドになりそうだけどもうちょっとひねりがほしかったなぁ....と
これから、左岸ば読まんと.................
2009年1月20日に日本でレビュー済み
超能力があることによって九の人生は大変難しい。その困難と悲しみが精神世界っぽい事柄にもつながってきます。
いつもならスピリチュアルなものってスーッと心にしみ込んでくるんだけど、どうも自然じゃなくて、うまく入り込めなかった。
で、Hシーンがやたらに多い。官能的で美しい描写でもなく、そのへんにも女性は引きそう。
九の初恋の人・茉莉。
他の女性に恋をして結婚し、子供まで出来ても九の心の中にもいつも茉莉への思いが消えることなく残っていた。
九の一生は茉莉への思いであふれているというのに茉莉にとっての九は「幼なじみ」でしかない。
この決定的な温度差は悲しく、愛し愛されることの難しさを痛感します。
それぞれの壮絶な50年・・・。でも物語の締めくくりは穏やか。
こんな生活がずっと続いてくれれば・・・と、
彼らの当たり前すぎて気付かないほどのささいな幸福を祈ってなりません。
まだ「左岸」も「右岸」も読んでいない人には「左岸」から読むのをおすすめします。
「右岸」はオカルトチックなところがあるから、こっちから読むと引いちゃうかも(^_^;)
いつもならスピリチュアルなものってスーッと心にしみ込んでくるんだけど、どうも自然じゃなくて、うまく入り込めなかった。
で、Hシーンがやたらに多い。官能的で美しい描写でもなく、そのへんにも女性は引きそう。
九の初恋の人・茉莉。
他の女性に恋をして結婚し、子供まで出来ても九の心の中にもいつも茉莉への思いが消えることなく残っていた。
九の一生は茉莉への思いであふれているというのに茉莉にとっての九は「幼なじみ」でしかない。
この決定的な温度差は悲しく、愛し愛されることの難しさを痛感します。
それぞれの壮絶な50年・・・。でも物語の締めくくりは穏やか。
こんな生活がずっと続いてくれれば・・・と、
彼らの当たり前すぎて気付かないほどのささいな幸福を祈ってなりません。
まだ「左岸」も「右岸」も読んでいない人には「左岸」から読むのをおすすめします。
「右岸」はオカルトチックなところがあるから、こっちから読むと引いちゃうかも(^_^;)
2009年10月29日に日本でレビュー済み
江國さんの作品が好きで、左岸を初めに購入しました。
子供の時から大人の女性になるまでの長い長い一人の人生の物語。
江國さんの書き方は普段から大好きですが、今回の作品のみ、正直言って、
読んでいてすこし疲れてしまったのが事実です。
そして右岸、、、、。基本的には対の作品だからという簡単な理由からでしたが、
こちらは読み始めてすぐ、物語に引き込まれている自分に驚きました。
他の人とは違う力をもった「九」の人生。超能力などの話は普段でしたら
まったく興味が無いのですが、でも、本人の意思とは別に、悲しみや戸惑い
を生むこの力。左岸を読んだ後だったからこそ、「九」側からの世界観
や気持ちを、痛いくらいに感じました。最後には、この九という人が
一体どこに流れ着くのか、とても気になってページをめくっている
自分がいました。興味心ということではなく、九に、穏やかに日々を
すごして欲しいという気持ちが生まれていました。
こんなに最後まで、良い意味で落ち着かずに本を読んだのは、本当に
久しぶりです。「小説なのだから」っと、淡々と読むように自分に
言い聞かせてもダメでした。
また時間が経ったら、左岸・右岸ともう一度読み返したいなぁと
思っています。自分の年齢が増すにつれて、もっとこの本を理解
できるような気がします。
本当に、先入観無しに、いろいろな方にこの本を手に取っていただきたいです。
子供の時から大人の女性になるまでの長い長い一人の人生の物語。
江國さんの書き方は普段から大好きですが、今回の作品のみ、正直言って、
読んでいてすこし疲れてしまったのが事実です。
そして右岸、、、、。基本的には対の作品だからという簡単な理由からでしたが、
こちらは読み始めてすぐ、物語に引き込まれている自分に驚きました。
他の人とは違う力をもった「九」の人生。超能力などの話は普段でしたら
まったく興味が無いのですが、でも、本人の意思とは別に、悲しみや戸惑い
を生むこの力。左岸を読んだ後だったからこそ、「九」側からの世界観
や気持ちを、痛いくらいに感じました。最後には、この九という人が
一体どこに流れ着くのか、とても気になってページをめくっている
自分がいました。興味心ということではなく、九に、穏やかに日々を
すごして欲しいという気持ちが生まれていました。
こんなに最後まで、良い意味で落ち着かずに本を読んだのは、本当に
久しぶりです。「小説なのだから」っと、淡々と読むように自分に
言い聞かせてもダメでした。
また時間が経ったら、左岸・右岸ともう一度読み返したいなぁと
思っています。自分の年齢が増すにつれて、もっとこの本を理解
できるような気がします。
本当に、先入観無しに、いろいろな方にこの本を手に取っていただきたいです。
2012年3月24日に日本でレビュー済み
最初に「左岸」から読みました。
まりの波乱万丈な人生を、楽しみながら読みました。
すぐに「右岸」を読みました。
こちらは、まりの人生の隣というイメージで読みましたが、
とても興味深かったです。
広い部屋で一人で読むと、背筋がぞぞぞとなってしまうこともありましたが。
「冷静の〜」は、淡々としていて、またパリが主な舞台のため現実感がなく、
途中で読むのをやめようとなんども思ってしまいましたが、
こちらは読み終わったあと、もっと読みたいと寂しくなるくらいでした。
まりの波乱万丈な人生を、楽しみながら読みました。
すぐに「右岸」を読みました。
こちらは、まりの人生の隣というイメージで読みましたが、
とても興味深かったです。
広い部屋で一人で読むと、背筋がぞぞぞとなってしまうこともありましたが。
「冷静の〜」は、淡々としていて、またパリが主な舞台のため現実感がなく、
途中で読むのをやめようとなんども思ってしまいましたが、
こちらは読み終わったあと、もっと読みたいと寂しくなるくらいでした。
2008年11月3日に日本でレビュー済み
「人生と人生の間には川がある。
僕がつねにこっち側で生きているように、
そして茉莉ちゃんがそっち側で生きているように、
ぼくたちはお互いの人生を見ることができないよね。
人間の数だけ岸辺があるんだと思う。
だからぼくはいつも岸辺に立って、
あなたや、会えない家族、友人らのことを思うのです。」
女性視点の『左岸』、
そしてこの『右岸』。
これから読むなら、江國の『左岸』から読むことをお勧め。
でも、男性にはあまり面白みがないかも。
辻の『右岸』は、相当よかった。
登場人物もそれぞれが描いても(たとえば青山志津夫のような共通のサブキャラ)同じ雰囲気をちゃんとまとっていたり、
逆に、
同じ情景を描いていても、見えてくる風景の色合いや空気感が異なっていたりと面白い。
晩年の七に対する九の感情は、
辻の、環境をめぐる世界とメディアに対する警鐘にも感じた。
この「対」の作品を読んでいて、
人って結局こういうものだな、と思った。
全く異なる山中で生まれた一滴の雫たちが、
それぞれ流れになり、出会い、
ひとすじの川となったその両岸に立つ、
そういうことが、奇跡なんだと思う。
人は人の別のストーリィを生きていて、
だからこそすれ違いや葛藤があるけれど、
それを包括して、寄り添い生きてくことがいかに奇跡であるか、
すごく遠回りしながら気づく物語です。
僕がつねにこっち側で生きているように、
そして茉莉ちゃんがそっち側で生きているように、
ぼくたちはお互いの人生を見ることができないよね。
人間の数だけ岸辺があるんだと思う。
だからぼくはいつも岸辺に立って、
あなたや、会えない家族、友人らのことを思うのです。」
女性視点の『左岸』、
そしてこの『右岸』。
これから読むなら、江國の『左岸』から読むことをお勧め。
でも、男性にはあまり面白みがないかも。
辻の『右岸』は、相当よかった。
登場人物もそれぞれが描いても(たとえば青山志津夫のような共通のサブキャラ)同じ雰囲気をちゃんとまとっていたり、
逆に、
同じ情景を描いていても、見えてくる風景の色合いや空気感が異なっていたりと面白い。
晩年の七に対する九の感情は、
辻の、環境をめぐる世界とメディアに対する警鐘にも感じた。
この「対」の作品を読んでいて、
人って結局こういうものだな、と思った。
全く異なる山中で生まれた一滴の雫たちが、
それぞれ流れになり、出会い、
ひとすじの川となったその両岸に立つ、
そういうことが、奇跡なんだと思う。
人は人の別のストーリィを生きていて、
だからこそすれ違いや葛藤があるけれど、
それを包括して、寄り添い生きてくことがいかに奇跡であるか、
すごく遠回りしながら気づく物語です。
2012年9月28日に日本でレビュー済み
左岸から読みました。
久々に、どっぷりハマり込み、茉莉の悲運な人生に涙したので、左岸での謎解きと九の人生を知るための右岸に期待100%で読み始めたのに、意味の無い下品な性描写ばかりで、現実からかけ離れすぎたストーリー展開に、苦痛の他何の感情も湧きませんでした。
久々に、どっぷりハマり込み、茉莉の悲運な人生に涙したので、左岸での謎解きと九の人生を知るための右岸に期待100%で読み始めたのに、意味の無い下品な性描写ばかりで、現実からかけ離れすぎたストーリー展開に、苦痛の他何の感情も湧きませんでした。
2010年4月11日に日本でレビュー済み
超大作。
10年ぶりのコンビ復活に
とても期待していました。
でも、味付けが濃すぎて
よくわからない感じ。
う〜ん。
もっとノーマルな設定でやって欲しかったなぁ。
あと個人的にはパリを舞台にして欲しくなかったかな。
なんとなく、安易な感じがしてしまって・・・。
10年ぶりのコンビ復活に
とても期待していました。
でも、味付けが濃すぎて
よくわからない感じ。
う〜ん。
もっとノーマルな設定でやって欲しかったなぁ。
あと個人的にはパリを舞台にして欲しくなかったかな。
なんとなく、安易な感じがしてしまって・・・。