作者得意の歴史パステーシュ物だが、非常に楽しく読めた。「もし幕末に日本をこよなく愛する異国人が日本内に居たならば」という仮定で書かれた作品だが、史実に則っている部分と作者の創作部分とが虚実入り混じった体裁で、笑えると共に、幕末に関して非常に勉強になった。作者の事前調査が行き届いているのである。幕末物でこれ程までに時代背景や人物関係が分り易い歴史物は初めて読んだ。作中の異国人が日本や列強を冷静に分析している様に、作者も幕末を俯瞰的かつ冷静に見ているのである。
その上、不平等条約、生麦事件、池田家事件、吉田松陰の死の顛末、新撰組、公武合体等の史実を作者独自のパステーシュ味で笑いへと転化しているのだから、アクロバット的手腕と言える。特に、くだんの異国人が"鞍馬天狗"に扮して、「日本の夜明けは近い」と呟くシーンは笑いが止まらなかった(ただし、若い読者の方には意味不明かも)。当然の事ながら、物語が進行するに連れ、史実から次第に遠ざかって行く(それでも基本線を守っている所が凄い)ので、結末はどうなるのかとハラハラしたが、素晴らしいアイデアが用意されている。
この結末は、明治維新に対する作者の理想像なのかも知れない。幕末の様々な事情に詳しくなれる上に、楽しさも充分に味わえるお得な作品。作者の持ち味が十二分に出た作品で、歴史好きでない方にも安心してお薦めできる佳作だと思う。
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幕末裏返史 単行本 – 2008/9/26
清水 義範
(著)
あるフランス人が、日本の幕末史を変えた!?
一人のフランス人が幕末の日本にやってきた。不平等条約を結ぶところだった幕府を救ったり、遣米使節団に随行したりと大活躍……彼の働きが運命の歯車に不思議に作用し、歴史が「ひっくり返る」!
一人のフランス人が幕末の日本にやってきた。不平等条約を結ぶところだった幕府を救ったり、遣米使節団に随行したりと大活躍……彼の働きが運命の歯車に不思議に作用し、歴史が「ひっくり返る」!
- 本の長さ288ページ
- 言語日本語
- 出版社集英社
- 発売日2008/9/26
- ISBN-104087712591
- ISBN-13978-4087712599
登録情報
- 出版社 : 集英社 (2008/9/26)
- 発売日 : 2008/9/26
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 288ページ
- ISBN-10 : 4087712591
- ISBN-13 : 978-4087712599
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2009年6月24日に日本でレビュー済み
作者得意の架空歴史ものです。幕末に現れた親日派どころか日本語を日本人以上に操り日本の歴史を変えてしまったフランス人アナトール・シオンを主人公に、攘夷は起こらず、倒幕佐幕派の戦いも起きなかった幕末史を描きます。
シオンは将軍家定とハリスの会談には同席し、孝明天皇にも謁見し、龍馬、西郷とも当然親しくし、憲法まで作ってしまいます。
幕末が好きな人なら、え〜?そううまくいくかな〜?と思いつつもこういう歴史もあったのかと思いを馳せるのは楽しいです。しかし幕末史に疎い人が読んだらどこからどこまでが本当の歴史でどこが架空なのか混乱するかも・・??
シオンは将軍家定とハリスの会談には同席し、孝明天皇にも謁見し、龍馬、西郷とも当然親しくし、憲法まで作ってしまいます。
幕末が好きな人なら、え〜?そううまくいくかな〜?と思いつつもこういう歴史もあったのかと思いを馳せるのは楽しいです。しかし幕末史に疎い人が読んだらどこからどこまでが本当の歴史でどこが架空なのか混乱するかも・・??