青年将官のモントリヴォー侯爵は、サロンの女王然とした可憐なランジェ公爵夫人に熱烈な恋をする。夫人もその気になるが、浮気と宗教心、貞節観念を交錯させなかなか落城しない。まんまと手玉に取られたと憤慨し、秘密組織を背景に復讐する侯爵。しかし、それは全くの見当はずれで、夫人は懊悩しながら道ならぬ恋の焔を燃焼させていたのだ。その至純な愛を神に捧げ、信仰生活に新たな希望の光を見出そうと、彼女は世間を捨てスペインの孤島の修道院に入るが、5年後……。
侯爵、夫人ともに陰翳に満ちた彫りの深いキャラクターが与えられ、作品をぐんと奥行きのあるものにしている。読みどころは、何といっても恋の駆引きの妙。その互いの胸を探りあうデリケートな心理戦は、男性の筆とは思えぬほど精妙に描かれている。ふたりの間で交わされるニュアンスに富んだ甘美な会話、いささかこそばゆい秘密のやり取りについ引き込まれ、華麗なサロンで狂おしい情念の火花を散らす貴顕淑女の姿が目に浮んでくる。しかし、ドラマが進むにつれ、夫人の漏らす言葉は忍び音のようなトーンに変り、嘆きの余韻が尾を引いていく。
生涯を通じて多くの女性と恋をしたバルザック。そのうちの一貴婦人が公爵夫人のモデルで、彼女とは一悶着の末に関係が解消されたという。そんな苦い恋愛体験から導き出された箴言や警句が作品にちりばめられ、匂いたつロマンスにピリリとした薬味を添えているのも特筆されよう。それにしてもエピローグで語られる夫人の運命はあまりにも悲しい。
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ランジェ公爵夫人 単行本 – 2008/3/5
恋の駆け引きはゲーム、本物の恋なんて……
ランジェ公爵夫人とモンリヴォー将軍。19世紀パリの虚飾と欺瞞に満ちた貴族社会を舞台に、悲劇的な、成就することのない愛に生きる二人の数奇な運命を描く。フランスの文豪バルザックの名作。
ランジェ公爵夫人とモンリヴォー将軍。19世紀パリの虚飾と欺瞞に満ちた貴族社会を舞台に、悲劇的な、成就することのない愛に生きる二人の数奇な運命を描く。フランスの文豪バルザックの名作。
- 本の長さ240ページ
- 言語日本語
- 出版社集英社
- 発売日2008/3/5
- ISBN-104087734633
- ISBN-13978-4087734638
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商品の説明
著者について
1799~1850年。フランスの小説家。トゥールに生まれる。生後まもなく里子に出され、母性愛に恵まれない不幸な幼少時代を送る。パリ大学法学部に学びつつ、法律事務所に見習いの書記として勤務するが、やがて文学に専念。初期習作、劇作、『風流滑稽譚』を除く90編にのぼる長編、中編、短編が<人間喜劇>の総題のもとにまとめられ、社会全体を叙情的に表現するジャンルとしての、近代小説のありかたを方向づける。
登録情報
- 出版社 : 集英社 (2008/3/5)
- 発売日 : 2008/3/5
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 240ページ
- ISBN-10 : 4087734633
- ISBN-13 : 978-4087734638
- Amazon 売れ筋ランキング: - 618,098位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 889位フランス文学研究
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2012年3月28日に日本でレビュー済み
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舞台は宮廷文化の香りが残るフランス貴族社交界。
気まぐれからランジェ公爵夫人が仕掛けた恋愛遊戯は、モンリヴォー将軍の情熱に火を点ける。恋愛心理の不均衡はやがて、あることをきっかけに劇的な逆転を見ることに…
もちろん話の軸はアントワネット(ランジェ公爵夫人)とアルマン(モンリヴォー将軍)の恋愛劇にあり、多くの項が割かれているわけだが、単なる恋愛譚として終わらせるにはひっかかる不可解さが後を引く。
モンリヴォーはあまりにあっさりとロンクロール侯爵の恋の駆け引きに関する指南を受け入れてはいないか?そのロンクロールは修道女テレーズとなったアントワネット奪回時にはモンリヴォーの傍らにいる。また、アントワネット誘拐に手を貸したモンリヴォーの仲間はモンリヴォーに忠実過ぎやしないか?名誉が重んじられる社会の話である。命令・依頼の内容によっては自分が軽蔑を買うリスクだってあるだろう、などなど。
この不可解さが解決するのは、巻末に付されている「序」という一見、配置としては矛盾しているように思える章である。
そう、この「ランジェ公爵夫人」は「十三人組物語」という友愛と結束で強く結ばれた類まれな男達の物語の一部なのである。ナポレオン帝政下のパリで、表には決して出てこない盟約で結ばれた男達は、一人の仲間の情熱にも斯くの如く付き合ったのだ。「ランジェ公爵夫人」を足場に「十三人組物語」へと興味が湧いてくる。
気まぐれからランジェ公爵夫人が仕掛けた恋愛遊戯は、モンリヴォー将軍の情熱に火を点ける。恋愛心理の不均衡はやがて、あることをきっかけに劇的な逆転を見ることに…
もちろん話の軸はアントワネット(ランジェ公爵夫人)とアルマン(モンリヴォー将軍)の恋愛劇にあり、多くの項が割かれているわけだが、単なる恋愛譚として終わらせるにはひっかかる不可解さが後を引く。
モンリヴォーはあまりにあっさりとロンクロール侯爵の恋の駆け引きに関する指南を受け入れてはいないか?そのロンクロールは修道女テレーズとなったアントワネット奪回時にはモンリヴォーの傍らにいる。また、アントワネット誘拐に手を貸したモンリヴォーの仲間はモンリヴォーに忠実過ぎやしないか?名誉が重んじられる社会の話である。命令・依頼の内容によっては自分が軽蔑を買うリスクだってあるだろう、などなど。
この不可解さが解決するのは、巻末に付されている「序」という一見、配置としては矛盾しているように思える章である。
そう、この「ランジェ公爵夫人」は「十三人組物語」という友愛と結束で強く結ばれた類まれな男達の物語の一部なのである。ナポレオン帝政下のパリで、表には決して出てこない盟約で結ばれた男達は、一人の仲間の情熱にも斯くの如く付き合ったのだ。「ランジェ公爵夫人」を足場に「十三人組物語」へと興味が湧いてくる。
2008年3月26日に日本でレビュー済み
この小説は、四部構成になっています。
第一部は、モンリヴォーがアントワネットを探して、修道院の謁見室で修道女テレーズ(アントワネット)と再会する場面です。そこで、モンリヴォーはおいかえされます。
第二部は、二人の馴れ初めの場面に戻ります。そして、ここではモンリヴォーがランジェ公爵夫人(アントワネット)に手玉に取られてしまいます。
第三部は、モンリヴォーがアントワネットへの思いを断ち切ったのに対し、逆に、アントワネットが恋に目覚めます。
第四部は、再び、モンリヴォーが修道女テレーズを略奪すべく、断崖から修道院に潜入します。しかし、そこには悲劇が待っています。
従って、この物語はラブ・ストーリーです。それも、行き違いばかりのメロ・ドラマです。
二人の男女の心の動きが、きっちりと描かれており、二人の心理戦が読みどころです。
ところが、この物語は「十三人組物語」と言う冒険譚の一部のようです。それで第四部のあの略奪作戦があるようです。
第一部は、モンリヴォーがアントワネットを探して、修道院の謁見室で修道女テレーズ(アントワネット)と再会する場面です。そこで、モンリヴォーはおいかえされます。
第二部は、二人の馴れ初めの場面に戻ります。そして、ここではモンリヴォーがランジェ公爵夫人(アントワネット)に手玉に取られてしまいます。
第三部は、モンリヴォーがアントワネットへの思いを断ち切ったのに対し、逆に、アントワネットが恋に目覚めます。
第四部は、再び、モンリヴォーが修道女テレーズを略奪すべく、断崖から修道院に潜入します。しかし、そこには悲劇が待っています。
従って、この物語はラブ・ストーリーです。それも、行き違いばかりのメロ・ドラマです。
二人の男女の心の動きが、きっちりと描かれており、二人の心理戦が読みどころです。
ところが、この物語は「十三人組物語」と言う冒険譚の一部のようです。それで第四部のあの略奪作戦があるようです。