昭和九年一月。麻布(あざぶ)の〈張(ちょう)ホテル〉を舞台に、江戸川乱歩が体験する不思議で妖しい四日間の物語。
乱歩その人がそこにいる、あれこれ悩み、妙な体験をし、原稿を書いている。その臨場感が半端なくて、「久世(くぜ)さんの幻視力てば、すげぇわ」思いました。
虚実のあわいが融け合っていく作品のたたずまい、文章の風趣も素晴らしい。とりわけ、乱歩が筆を走らせていく『梔子姫(くちなしひめ)』の幻想奇譚の美しさには、くらくらっと来ましたねぇ。夢見心地で酔わされましたわ。
中国の美青年、翁華栄(オウ ファーロン)。栗毛の美しい人妻、ミセス・リー。この二人のキャラも良かったですね。
殊に、「バーナビー・ロスとエラリー・クイーンとは、もしや同一人物ではないか」なんて推理するミセス・リーは、実に魅力的な女性でした。
それと、本書でも触れている乱歩の中絶作品『悪霊』騒動については、奈落一騎『江戸川乱歩語辞典』(誠文堂新光社)のコラムに、その記述があります。何としても乱歩に書いてほしい「新青年」編集部の広告文が、なかなかに凄まじいっす。当事の乱歩の懊悩(おうのう)は、かなりのものだったんじゃないでしょうか。
私が読んだ創元推理文庫本では、表紙カバーが素敵ですね。山田緑の装画、中島かほるの装幀、ともにセンスがあって良かったです。
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一九三四年冬-乱歩 単行本 – 1993/12/1
久世 光彦
(著)
スランプの末、突如行方をくらました超売れっ子作家・江戸川乱歩。謎の空白の時を追いながら、乱歩の奇想天外な新しき怪奇を照らす。知的遊戯をまじえ、謎の日々を推理。第7回山本周五郎賞受賞作。
- 本の長さ269ページ
- 言語日本語
- 出版社集英社
- 発売日1993/12/1
- ISBN-104087740455
- ISBN-13978-4087740455
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
超売れっ子の探偵小説作家・江戸川乱歩が、スランプの末、行方をくらました。乱歩は、一体どこで何をしているのか…。謎の空白の時を推理しながら、乱歩の苦悩に迫る力作長編。
登録情報
- 出版社 : 集英社 (1993/12/1)
- 発売日 : 1993/12/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 269ページ
- ISBN-10 : 4087740455
- ISBN-13 : 978-4087740455
- Amazon 売れ筋ランキング: - 458,811位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 129,940位文学・評論 (本)
- カスタマーレビュー:
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2023年12月31日に日本でレビュー済み
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2022年9月14日に日本でレビュー済み
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満足です。しっかりとカヴァーが付いていて、集める人はまず気になるところです。
2014年8月24日に日本でレビュー済み
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芳醇で連想を刺激する詩的散文の世界。
昭和9年の乱歩失踪事件中の目くるめく性的体験に読者を引き込む。鏡の向こうの仮想世界の蠱惑と妖美。実際の乱歩の禿頭と眼鏡姿をこの小説の中で動かせてみる。ピタッとはまる。久世さんは余程乱歩を読み愛してきたのだなと思う。
冬の一日。柔らかく快適な温度の風呂に半日浸かっていたような充実感、爽快感を得ることができる。名作だと思います。
昭和9年の乱歩失踪事件中の目くるめく性的体験に読者を引き込む。鏡の向こうの仮想世界の蠱惑と妖美。実際の乱歩の禿頭と眼鏡姿をこの小説の中で動かせてみる。ピタッとはまる。久世さんは余程乱歩を読み愛してきたのだなと思う。
冬の一日。柔らかく快適な温度の風呂に半日浸かっていたような充実感、爽快感を得ることができる。名作だと思います。
2020年4月20日に日本でレビュー済み
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舞台は昭和初期の東京麻布界隈の洋風ホテルです。江戸川乱歩がくちなし姫なる小説をを書き上げるまでの滞在中の数日間の出来事とくちなし姫の二本立てです。登場人物は乱歩、美少年のボーイ、宿泊中のミセスリー婦人です。非日常の夢の話です。なぜか散歩中の永井荷風がちょっと出てきます。
2012年4月3日に日本でレビュー済み
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魅了されました。乱歩好きが高じて、こちらも読破してしまいましたが、想像以上に乱歩の世界観を再現されていたと思います。梔子姫はいい小説です。
2014年9月8日に日本でレビュー済み
雑誌「新青年」への連載開始が遅れたうえ、誤魔化し誤魔化し書いてきた「悪霊」
物語の先を思いつけずついに休載
1934年1月、書けない苦しさから逃れんと家出をした江戸川乱歩・40歳が腰を落ち着けたのは
溜池にある主に外国人向け長期滞在用の<張ホテル>
そこで天啓を受けたかのように書き始めた「梔子姫」
江戸川乱歩がホテルに滞在した4日間を描いています
客の世話をする中国人美青年や滞在中のアメリカ人夫妻から受ける刺激
乱歩の隣室に関わる恐ろしい話
現実世界と「梔子姫」の世界、乱歩の夢の奇妙な符合
乱歩の日常をよくよく調べあげたものらしく、無理なく一人の作家の人間像を描き出しています
さらに、乱歩が書いたとしか思えない作中作「梔子姫」
「百閒先生 月を踏む」の作中作も百閒先生そのものでしたが、深く深く読み込んでいなければ出来ない技ですね
井上ひさしさんによる解説がユニークです
本書をテキストに創作講座を行う、という設定で本書の素晴らしさを『力説』されています
久世光彦という作家は、言葉を使って、物語の時代、場所へ読者を導き、イメージを読者へ送り届けることが出来る
このような作業が出来ない人にはろくなものは書けない、とまで仰っています
ある程度、乱歩作品を読んでいるほうが、楽しめる作品かと思います
本書をきっかけに乱歩を読むのも良いでしょう
そして本書を再読
さすれば、猶更本書の面白さを堪能できることでしょう
物語の先を思いつけずついに休載
1934年1月、書けない苦しさから逃れんと家出をした江戸川乱歩・40歳が腰を落ち着けたのは
溜池にある主に外国人向け長期滞在用の<張ホテル>
そこで天啓を受けたかのように書き始めた「梔子姫」
江戸川乱歩がホテルに滞在した4日間を描いています
客の世話をする中国人美青年や滞在中のアメリカ人夫妻から受ける刺激
乱歩の隣室に関わる恐ろしい話
現実世界と「梔子姫」の世界、乱歩の夢の奇妙な符合
乱歩の日常をよくよく調べあげたものらしく、無理なく一人の作家の人間像を描き出しています
さらに、乱歩が書いたとしか思えない作中作「梔子姫」
「百閒先生 月を踏む」の作中作も百閒先生そのものでしたが、深く深く読み込んでいなければ出来ない技ですね
井上ひさしさんによる解説がユニークです
本書をテキストに創作講座を行う、という設定で本書の素晴らしさを『力説』されています
久世光彦という作家は、言葉を使って、物語の時代、場所へ読者を導き、イメージを読者へ送り届けることが出来る
このような作業が出来ない人にはろくなものは書けない、とまで仰っています
ある程度、乱歩作品を読んでいるほうが、楽しめる作品かと思います
本書をきっかけに乱歩を読むのも良いでしょう
そして本書を再読
さすれば、猶更本書の面白さを堪能できることでしょう
2013年2月5日に日本でレビュー済み
読み進むうちに甘い毒に痺れていくような迷宮的作品。
乱歩その人を主人公とした趣向は筒井ともみや斉藤栄にもあったと記憶するが怪奇幻想文学に造詣の深かった著者らしく群を抜いた出来ばえ。
高名な演出家であった著者が文芸でのみ表現できる対象として乱歩を選んだことが、乱歩の映像化が往々にしてその原作の魅力に遠く及ばぬことを傍証している。
作中作の短編小説が単純な乱歩のパスティーシュでなく久世光彦の個性を濃厚に感じさせる点も逆に好ましい。
本作の如きこそ創元推理文庫に収録される日本作品に相応しいと思う。
乱歩その人を主人公とした趣向は筒井ともみや斉藤栄にもあったと記憶するが怪奇幻想文学に造詣の深かった著者らしく群を抜いた出来ばえ。
高名な演出家であった著者が文芸でのみ表現できる対象として乱歩を選んだことが、乱歩の映像化が往々にしてその原作の魅力に遠く及ばぬことを傍証している。
作中作の短編小説が単純な乱歩のパスティーシュでなく久世光彦の個性を濃厚に感じさせる点も逆に好ましい。
本作の如きこそ創元推理文庫に収録される日本作品に相応しいと思う。
2018年6月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
少々尺が長過ぎるきらいはあるものの、乱歩の時代と文壇仲間の事情もうかがえ、幻想耽美盛りだくさんの内容。若干エロに傾き過ぎの面もあるが、まぁ乱歩ほんらいのグロは少なく上品。