現在の日本では人の心を癒したり孤独をなぐさめたり、ペットの果たす役割は
だんだん大きくなっているように思える。この短編集もそういう、ペットを巡る
男と女のものがたりである。ただし、ペットに癒される話とか、ほのぼのした
こころ温まる話とはすこし味わいがちがうと感じた。
短編集の主人公はいずれももう若いとは言えない女性たち。
家族に囲まれたしあわせとは無縁で、人生に倦み、それでも打算を捨てず、
ひたむきに生きようともがいている。そのような「こころの乾いた」女たちと
ペットや男との出合い・交流が主題である。
例えば、「ドルフィン・ハウス」の相原美沙緒。31歳。
・・職場の同僚十三人とは、ほどほどに打ちとけ、ほどほどに距離を置く
といった私なりのやり方で、如才なくつきあっていた。まったくの
私生活においてはともかく、私は職場では、いたって如才なくふるまうと
いう特技がある。・・
本人は如才ないのに仕事運悪く職場は7つ目。下降気流に乗り続けている。
恋愛も22歳のときに玉の輿の可能性も瞬間あったが挫折。
以来「その気になる」男とは出会っていない。
そんな美沙緒がアパート(ドルフィン・ハウス)の51歳の経営者に出合い、
「しばらくぶりに野心に」燃える。彼の飼う美しい猫ハナと美沙緒との微妙な
三角関係。ここでは美沙緒と猫のハナが同格になっている。男をめぐって
静かな水面下の戦いをしている。ハナは何も言わないが、その凝視する目は
ハナの位置にとってかわろうとしている美沙緒の意図を理解しているように
見える。
この小説を読んで彼女は私そのものだと思った。表面上は如才ないが、
打算的で、こころのうちを見せない性格。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
秋の猫 単行本 – 2002/11/26
藤堂 志津子
(著)
孤独な男女のそばにひっそりとたたずんでいる犬や猫たち。恋愛にも結婚にも、かつてのような純粋な夢を持てなくなってしまった女たちが、ペットとの交流で自信をとり戻し癒されていく姿を描く短編集。第16回柴田錬三郎賞受賞作。
- 本の長さ240ページ
- 言語日本語
- 出版社集英社
- 発売日2002/11/26
- ISBN-104087746216
- ISBN-13978-4087746211
商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
恋愛にも結婚にも、かつてのような純粋な夢を持てなくなってしまった女たち。ペットとの交流で、ありったけの愛情をそそいで一緒にすごすことの幸せを通して、癒されていく姿をうつしだす5編を収録。『小説すばる』掲載。
登録情報
- 出版社 : 集英社 (2002/11/26)
- 発売日 : 2002/11/26
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 240ページ
- ISBN-10 : 4087746216
- ISBN-13 : 978-4087746211
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,459,551位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 34,353位日本文学
- カスタマーレビュー:
カスタマーレビュー
星5つ中3.6つ
5つのうち3.6つ
全体的な星の数と星別のパーセンテージの内訳を計算するにあたり、単純平均は使用されていません。当システムでは、レビューがどの程度新しいか、レビュー担当者がAmazonで購入したかどうかなど、特定の要素をより重視しています。 詳細はこちら
9グローバルレーティング
虚偽のレビューは一切容認しません
私たちの目標は、すべてのレビューを信頼性の高い、有益なものにすることです。だからこそ、私たちはテクノロジーと人間の調査員の両方を活用して、お客様が偽のレビューを見る前にブロックしています。 詳細はこちら
コミュニティガイドラインに違反するAmazonアカウントはブロックされます。また、レビューを購入した出品者をブロックし、そのようなレビューを投稿した当事者に対して法的措置を取ります。 報告方法について学ぶ
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2017年11月19日に日本でレビュー済み
男女の関係を描いた内容で、そこで猫や犬が出てくるだけの小説
出てくる人間に魅力はないし、取ってつけたかのような猫や犬の描写
単行本や文庫の表紙が可愛いだけです
猫好きで読みましたが、ガッカリでした
出てくる人間に魅力はないし、取ってつけたかのような猫や犬の描写
単行本や文庫の表紙が可愛いだけです
猫好きで読みましたが、ガッカリでした
2014年11月7日に日本でレビュー済み
読後何となく倦怠感に見舞われる感じの「女の生々しさ」「したたかさ」が詰まってます。
2012年2月22日に日本でレビュー済み
猫を飼っているので「あー、その気持ち分かるー」
ただ、それだけ。人間的物語的にはごくごくありきたりで、その辺に溢れているレベル。
ただ、それだけ。人間的物語的にはごくごくありきたりで、その辺に溢れているレベル。
2008年11月25日に日本でレビュー済み
5作品が収録された短編集です。
5作品とも動物を飼うことをテーマにしていますが、それ以上に注目すべきなのは、どの作品も主人公は女性でありいずれも女性的感覚で描かれていることです。
作品全体を見たところ男性には感情移入しづらい点が多々ありました。
もちろんすべての男性が感情移入できないという訳ではないでしょうが、女性的な価値観で描かれている以上は女性向けの作品なのでしょう。
男性の方にはあまりオススメはしません。
5作品とも動物を飼うことをテーマにしていますが、それ以上に注目すべきなのは、どの作品も主人公は女性でありいずれも女性的感覚で描かれていることです。
作品全体を見たところ男性には感情移入しづらい点が多々ありました。
もちろんすべての男性が感情移入できないという訳ではないでしょうが、女性的な価値観で描かれている以上は女性向けの作品なのでしょう。
男性の方にはあまりオススメはしません。
2006年8月9日に日本でレビュー済み
犬や猫を飼う女の人の短編集。
読みやすいのでさらりと読めます。
何も考えないで読みすすめられるので、ちょっと時間が空いたときに読んだりするのには最適かと‥
読みやすいのでさらりと読めます。
何も考えないで読みすすめられるので、ちょっと時間が空いたときに読んだりするのには最適かと‥
2004年4月17日に日本でレビュー済み
どの話にも犬や猫が、大切な役割を担って登場する5つの短編集。5篇ともが、別な趣の作品で、楽しめました。大人の男女の愛憎やちょっとした心の明暗を描きながら、実にうまく、ペットたちが主人公を癒したり安心させたりすることを書き込んでいるので、それが緩和剤となって読み手のこちらもホッとする場面が多々あります。「幸運の犬」は、一種ホラーめいた、女の復讐劇。「ドルフィン・ハウス」の待田という男は妙なキャラクターながら“私”は何となく会いに行ってしまったりする。「病む犬」は、藤堂さん自身の、リッキーとのことが下敷きになっているでしょう。何にも特異なことは起こらないけれど、そうそう、その気持ちはわかるよ、と共感できる作品でした。