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終末のフール 単行本 – 2006/3/24
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2xxx年。「8年後に小惑星が落ちてきて地球が滅亡する」と発表されて5年後。犯罪がはびこり、秩序は崩壊した混乱の中、仙台市北部の団地に住む人々は、いかにそれぞれの人生を送るのか? 傑作連作短編集。
- 本の長さ304ページ
- 言語日本語
- 出版社集英社
- 発売日2006/3/24
- ISBN-104087748030
- ISBN-13978-4087748031
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登録情報
- 出版社 : 集英社 (2006/3/24)
- 発売日 : 2006/3/24
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 304ページ
- ISBN-10 : 4087748030
- ISBN-13 : 978-4087748031
- Amazon 売れ筋ランキング: - 299,660位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 7,233位日本文学
- カスタマーレビュー:
著者について
1971(昭和46)年千葉県生れ。
1995(平成7)年東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で、新潮ミステリー倶楽部賞を受賞し、デビュー。
2002年刊行の『ラッシュライフ』が各紙誌で絶賛され、好評を博す。2003年に発表した『重力ピエロ』は、ミステリファン以外の読者からも喝采をもって迎えられ、一気に読者層を広げた。また『重力ピエロ』で、1970年代生れとしては、初の直木賞の候補となる。
2004年『チルドレン』、2005年『グラスホッパー』、2006年『死神の精度』が直木賞候補に。2004年『アヒルと鴨のコインロッカー』で吉川英治文学新人賞受賞。洒脱なユーモアと緻密な構成で読む者を唸らせ、近年稀にみる資質の持ち主として注目を浴びている。
2008年『ゴールデンスランバー』で第5回本屋大賞と山本周五郎賞を受賞した。
カスタマーレビュー
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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「ああ、これはあの話に出てきた人だな」とか、「そうか。あの人の名字は●●ていうんだな」とか、読み進めていくなかで見えてくる登場人物たちの繋がり具合が面白かったです。
心に沁みる言葉がいくつかあったんだけど、なかでも、生まれながらの難病を抱えた息子を持つ父親が《「人生ってのはいろいろあるもんだよな」》集英社文庫 p.79 て言うところと、暴漢に襲われた父親が息子に《『頑張って、とにかく、生きろ』》p.359 て言うところは、胸にずんと来ましたね。しびれました。
収録された八つの話のなかでは、「太陽のシール」と「冬眠のガール」が良かったな。
殊に、「冬眠のガール」の主人公・田口美智(たぐち みち)のキャラは、同じ著者の名作『砂漠』に出てくる〈南(みなみ)〉と通じる雰囲気があって、いいなあ思いました。
そうした極限状態の時に、どういう思考、行動を持つか、章ごとに視点を変えながら書いてます。
私はキックボクサーの章が好きです。地球滅亡が近づき、周りが慌てふためく中、淡々と日々のロードワークを続けるようなボクサーが「明日死ぬとしたら生き方が変わるのですか?」と問いかけます。日々を惰性で生きてしまう人には無縁の考え方のように感じました。
極限状態に陥ったとき、自分はどう考え、動くだろうか?考えちゃいますね。
これほどに陳腐で、使い古され、なおかつ備えられていない問いがあろうか。
あらゆる生物は始まりと終わりを持ち、成長するに従いその終わりを意識し始める。
でも、『さしあたり』この問いは保留されたまま。
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本作『終末のフール』は、8年後に惑星が地球に衝突し、それが不可避で、とどのつまり大多数の人間が遠くない将来に絶命するというSF・ディストピア的設定。そして死が万人に意識され、騒擾がひとくさりあり、その後の小康を得たころの人々の有様を描いています。
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惑星衝突を5年後に控えた仙台のとある住宅地という共通の設定。表題作「終末のフール」はじめ「太陽のシール」「籠城のビール」「冬眠のガール」「鋼鉄のウール」「天体のヨール」「演劇のオール」「深海のポール」の計8作の短編からなる。
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今回、サスペンス・スリラーものではない作品として書き始めたそうですが、伊坂氏独特の人物の連関が随所に見られます。
従前は異なる作品で同一人物が登場したりしていましたね。
本作では短編間で同一人物が行き来します。「終末のフール」で登場するビデオ屋の渡部は「深海のポール」では主人公ですし、そのほかにも渡部氏は登場します。
むしろ、この仙台の団地「ヒルズタウン」を各主人公の視点で切り取った、というべきか。その点では8編で8様の終末物語が描かれているといっても良いかもしれません。
・・
そして、これもまた伊坂作品でつと言われる「健全な倫理観」のようなものがベースに作品が構築されている気がします。
今回でいえば「生きること、それだけで正しい。生き抜くことは義務」とでも言った生命観。特に最後の短編「深海のポール」で、主人公渡部とサッカー仲間の工藤との間で交わされるセリフが胸を突きます。
「渡部の親父さんの言葉は鋭いよ。『光あるうち光の中を歩め』っていう小説があるだろ。あれを真似れば『生きる意味がある限り、生きろ』ってことだ」
「どういうことですか」
「死に物狂いで生きるのは権利ではなく、義務」
・・・
人は、とかく、物事に対して意味を求めがちです。生きることにも当然意味を見出したくなります。意味はあると言えばあるし、無いと言えば無い。人によって、宗教によって、異なることもあるでしょう。神の命のもと生かされていると思う人もいるでしょう。あるいは、リチャード・ドーキンスよろしく、個体の生命なぞ所詮、種と遺伝子の「のりもの」で、個々人の人生に意味などないとシニカルになることもあるでしょう。
多元的な考えが認められるからこそ、この「とにかく生きる」というシンプルなメッセージの基礎づけが重く沁みます。
もちろん、それでも答えを欲しがるのは若者にありがちな話です。自分の生きる意味なんてあるのか、どうせ死んでしまうのに一生懸命頑張って何になるのか。とか。
私も自分の父親に真剣に問うたことがありました。確か大学なんて通っても意味がないとやめようとしていたんだと思います。あまり覚えていませんが。
あれから30年ほどたちます。いまだに生きる意味なんて分からんし、生きる目的や好きなことだってどんどん変わるものだと感じています。むしろ若い時に確信してる方がちょっと嘘っぽくね、くらいにすら思います。
・・・
ということで非スリラー系伊坂作品でした。
誤解を恐れずに言えば、「生きる」原理主義とでもいった倫理観の通底する、ディストピア作品?でありました。
そうした点でいうと、思想系の好きなかた、議論好きなかた等には楽しんで読んでいただけると思います。倫理のディスカッションのネタとしても面白く読めると思います。
読んだ後には、自分の終末を想起しました。
ちょっと期待していたものではなかった。
内容を見ずに買ったのが悪かったのですが…
閉塞感のある時代、明るさをどう求めるのか。
読むべきものがあると思います。