3章構成ですべて異なる話になっている。
全体としてメッセージが分かりにくく読みにくい印象だった。
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翻弄者 単行本 – 2009/4/3
藤原 章生
(著)
第3回開高健賞受賞、藤原章生の渾身作!
現役の新聞記者である著者が、政争や経済闘争のひずみの影に、自由さえ奪われた人々の思いを拾いあげて綴った佳作。軟禁されたり、職を奪われたり、薬に侵されたとき、人は何を守って生きるのか。
現役の新聞記者である著者が、政争や経済闘争のひずみの影に、自由さえ奪われた人々の思いを拾いあげて綴った佳作。軟禁されたり、職を奪われたり、薬に侵されたとき、人は何を守って生きるのか。
- 本の長さ240ページ
- 言語日本語
- 出版社集英社
- 発売日2009/4/3
- ISBN-104087814165
- ISBN-13978-4087814163
商品の説明
著者について
福島県いわき市生まれ。北海道大学工学科卒業。住友金属鉱山勤務後89年に毎日新聞社入社、93年~94年メキシコ留学。95年~01年、ヨハネスブルグ駐在アフリカ特派員。02年~06年、メキシコ駐在中南米特派員。08年3月より、ローマ支局長。2005年「絵はがきにされた少年」で第3回開高健ノンフィクション賞受賞。
登録情報
- 出版社 : 集英社 (2009/4/3)
- 発売日 : 2009/4/3
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 240ページ
- ISBN-10 : 4087814165
- ISBN-13 : 978-4087814163
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,847,719位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 425,170位文学・評論 (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2009年6月21日に日本でレビュー済み
3章で構成されているが、著者が現場に立ち会っているものと、立ち会っていないと見られるものが混在している。
前者はノンフィクション的、後者は聞き書きでフィクション的に感じられる。
そのため、全体として統一感に欠ける感が残ってしまう。
こういう編み方は珍しいと思う。
なぜ著者の過去の作品のように、全編、自分が現場に立ち会ったルポを載せなかったのか。
ネタが足りずに出版を急いだのだろうかと、邪推してしまった。
前者はノンフィクション的、後者は聞き書きでフィクション的に感じられる。
そのため、全体として統一感に欠ける感が残ってしまう。
こういう編み方は珍しいと思う。
なぜ著者の過去の作品のように、全編、自分が現場に立ち会ったルポを載せなかったのか。
ネタが足りずに出版を急いだのだろうかと、邪推してしまった。
2013年5月27日に日本でレビュー済み
本を閉じてからもしばらく、私、ただぼんやりとしていました。少量で酔ってしまう昼下がりのアルコールのような余韻にふわふわとして。
* * *
■Episode 1 ジャマールを探して
サダム・フセインの預言者として14歳で宮廷に召喚され、そこに住まわされ、2003年3月米英軍のバグダット空爆のタイミングで外に出た29歳の男のインタビュー。
老成した預言者は「人なんか、所詮一人だ。(略)愛し、愛されたいってことだ。でも、俺は人間らしい生活ができないとわかっていた。宮殿に着いてからずっと、そんな感情を押し殺してきた。(略)俺の心理とかを考えてもらっても、それほどドラマチックなものには、ならない」(本文)と著者に言う。その同じ男が違う場面では「見知らぬ他人と暮らし、家庭を築く。子供ができて、その女と夕暮れの町を歩く。そんな生活がしてみたい……」(本文)とも言う。
フセインの運命を読めた男も、自分のこととなれば混乱するのかもしれない。自分を読む、客観的に見つめるということは、他者を知ろうとすることより難しい。幻想小説のようなストーリーをさまよいながら、そんなことを考えます。
■Episode 2 ケープタウンに漂う
“人と人との関係は、一度決まってしまえば、そう簡単に変わるものではない”(本文)――。クラックを買うためにからだを売っている22歳のジャッキーと、彼女に焦がれ、ガードのように尽くしながら、ともに薬の淵に堕ちていきそうになっているタクシードライバーのミッシェル。
子どもの頃いじめられた経験から、ミッシェルは人の仕草や視線で敏感に相手の心を読むことができる。半面、同じ経験が彼を意固地にもしている。苦い過去を呼び覚ます言葉に触れるとき、傷ついた彼と、開き直った彼が同時に反応する。感情に従った彼が前者なのだとしたら、理論武装で獲得した彼が後者で、その亀裂に苦しみがあるのかもしれない。そんな彼にとって「傷つきたいんでしょ」(本文)と制御不能な感情のほうを呼び覚ましてしまうジャッキーはファム・ファタル。彼女から抜け出すことはとても難しいように見えて、それがとても哀しい、愛のはなし。
■Episode 3 キューバに残った詩人
レイナルド・アレナスと、デルフィン・プラッツ(イラム・プラット)――。同性愛者で作家であるふたりは、キューバ革命に翻弄され創作する自由を奪われる。アメリカに亡命して自殺するまで、攻撃しながらもキューバのことばかり書いたレイナルドに対して、デルフィンはキューバで空気のように溶け込んでいく道を選ぶ。
イラムの独白形式で、根っこにある背景や屈折がよく似ていながら、その発露のあり方がまったく違ったふたり(レイナルドとイラム)を対比的に浮かび上がらせている。Episode 2 でミッシェルという個人の中に混在していた相反する人格が、このEpisode 3 では違ったふたりの作家として表れているような印象も受けました。ある感情に対するアウトプットの仕方は人によって様々で、どれがよくて、どれが悪いなんてことはないのだと。
「イメージは空から降ってくる。(略)でも、言葉は違う。自分の中からわき上がってくる。(略)やはりイメージと言葉は違う。その境目に何かがある。それがきっと詩」(本文)。
美しいくだり。
* * *
著者は3つのエピソードをシンプルな日本語で書いています。テーマに安易な結論を導くようなこともしません。決して難しくない、誰にでも理解できる単語の組み合わせが、独特の文体、そして世界をつくっています。
読み終えた私は、ポジティブな気持ちになっているのか、逆にネガティブな気持ちになっているのか。答えを見つけようとすると、魅力が半減してしまうような気がしています。素晴らしさは、本に宿る著者が描き出した空気そのものであり、結論や、白か黒か?といった二元論による評価は必要ないのだと思いました。
* * *
■Episode 1 ジャマールを探して
サダム・フセインの預言者として14歳で宮廷に召喚され、そこに住まわされ、2003年3月米英軍のバグダット空爆のタイミングで外に出た29歳の男のインタビュー。
老成した預言者は「人なんか、所詮一人だ。(略)愛し、愛されたいってことだ。でも、俺は人間らしい生活ができないとわかっていた。宮殿に着いてからずっと、そんな感情を押し殺してきた。(略)俺の心理とかを考えてもらっても、それほどドラマチックなものには、ならない」(本文)と著者に言う。その同じ男が違う場面では「見知らぬ他人と暮らし、家庭を築く。子供ができて、その女と夕暮れの町を歩く。そんな生活がしてみたい……」(本文)とも言う。
フセインの運命を読めた男も、自分のこととなれば混乱するのかもしれない。自分を読む、客観的に見つめるということは、他者を知ろうとすることより難しい。幻想小説のようなストーリーをさまよいながら、そんなことを考えます。
■Episode 2 ケープタウンに漂う
“人と人との関係は、一度決まってしまえば、そう簡単に変わるものではない”(本文)――。クラックを買うためにからだを売っている22歳のジャッキーと、彼女に焦がれ、ガードのように尽くしながら、ともに薬の淵に堕ちていきそうになっているタクシードライバーのミッシェル。
子どもの頃いじめられた経験から、ミッシェルは人の仕草や視線で敏感に相手の心を読むことができる。半面、同じ経験が彼を意固地にもしている。苦い過去を呼び覚ます言葉に触れるとき、傷ついた彼と、開き直った彼が同時に反応する。感情に従った彼が前者なのだとしたら、理論武装で獲得した彼が後者で、その亀裂に苦しみがあるのかもしれない。そんな彼にとって「傷つきたいんでしょ」(本文)と制御不能な感情のほうを呼び覚ましてしまうジャッキーはファム・ファタル。彼女から抜け出すことはとても難しいように見えて、それがとても哀しい、愛のはなし。
■Episode 3 キューバに残った詩人
レイナルド・アレナスと、デルフィン・プラッツ(イラム・プラット)――。同性愛者で作家であるふたりは、キューバ革命に翻弄され創作する自由を奪われる。アメリカに亡命して自殺するまで、攻撃しながらもキューバのことばかり書いたレイナルドに対して、デルフィンはキューバで空気のように溶け込んでいく道を選ぶ。
イラムの独白形式で、根っこにある背景や屈折がよく似ていながら、その発露のあり方がまったく違ったふたり(レイナルドとイラム)を対比的に浮かび上がらせている。Episode 2 でミッシェルという個人の中に混在していた相反する人格が、このEpisode 3 では違ったふたりの作家として表れているような印象も受けました。ある感情に対するアウトプットの仕方は人によって様々で、どれがよくて、どれが悪いなんてことはないのだと。
「イメージは空から降ってくる。(略)でも、言葉は違う。自分の中からわき上がってくる。(略)やはりイメージと言葉は違う。その境目に何かがある。それがきっと詩」(本文)。
美しいくだり。
* * *
著者は3つのエピソードをシンプルな日本語で書いています。テーマに安易な結論を導くようなこともしません。決して難しくない、誰にでも理解できる単語の組み合わせが、独特の文体、そして世界をつくっています。
読み終えた私は、ポジティブな気持ちになっているのか、逆にネガティブな気持ちになっているのか。答えを見つけようとすると、魅力が半減してしまうような気がしています。素晴らしさは、本に宿る著者が描き出した空気そのものであり、結論や、白か黒か?といった二元論による評価は必要ないのだと思いました。