参りました。筆者の負けです。何度も泣かされました。
Bo-he-mian っぽくない漫画のレビューに驚いている方もいると思いますが、久々にハマってしまいました。
正直、このタイプの絵柄には苦手意識が強い人間ですが、でも作者のよしづきくみち氏の、色使いなどの独特のセンスの良さでしょうか、一方で表紙のイラストに不思議と惹かれるものがあって気になってはいたのです。この商品ページに書かれたレビューで、読んでみようと決意しました。
その後は、もう止まりませんでした。
一種のタイムトラベルものです。ただ、それはリアルな時間旅行ではなく、脳内に過去を再現する「インブレイン・タイムトラベル」です。その仕組みなどについては、他のレビューで皆さんが解説されているので、ぜひそちらをお読み下さい。
美人所長・風見鶏亜紀と一見チャラ男風の助手・宮山(実は訳あり)のたった二人で運営している「タイムトラベル春日研究所」。そこににやってくる客たちは皆、悲しい過去を抱えて、前へ進む事ができない人々です。そして、失った愛する人との再会、あるいは過去の過ちを正したり、自分が「落としてきたもの」を取り戻したい一心で研究所を訪れます。しかし、脳内で行われる仮想のタイムトラベルなので、決して過去を変えることはできません。
安易な解決や癒しで、「めでたしめでたし」でまとめてしまう昨今の安っぽいテレビドラマなどとは一線を隔した物語が描かれます。失った人は、決して還ってきません。時には、知らなくて良かった事まで知ってしまって、悲しみや苦しみが深まることもあります。しかしこの漫画を読んで感銘を受けるのは、大切なのは「過去をやり直す」ことではなく、悲しみ・苦しみと向き合う勇気を持つことで「再び前へ向かって歩き出そうとする」ことだと語りかけてくる事です。そして、基本、一話完結式の展開ながら、毎回心に「ちくり」、「ぐさり」とくるものを感じさせます。実はこの作者の方は、かなりの「ストーリーテラー」でもあります。必ずクライマックスで一ひねり、二ひねり加えられていて、毎度毎度「やられた!!」と唸らされます。そしてしっかり「泣かされ」ます。
実は、あまり濫用すると安っぽくなってしまうので、普段レビューでなるべく使わないようにしている言葉がありますが、こんな時こそ使わせて頂きます。この漫画は「かなり切ない」です。
もちろん、今どきの漫画の、デフォルメされたコミカルな表現や、多少のお色気なども(なぜかシリーズを経るごとに力が入っていきますが・笑)ありますが、ともすれば重くなりかねないドラマを和らげる効果にもなっていると思います。
そして、一話完結のエピソードとは別に、主人公である所長の亜紀の過去にまつわる、シリーズ全体を貫くメインストーリーもあります。そしてそれは、早くもこの第1巻のラストで動き始めます。他のレビューでも書かれていますが、1巻のラストは「え〜っ!!」という終わり方をします。もしこの漫画を読んでみよう・・・と思った方は、少なくとも3巻まではまとめて買って読む事をオススメします。真夜中に1巻を読み終えてしまった日には、もう続きが気になって、朝まで悶え苦しむことになると思います(笑)。筆者も、レビューを参考に、何となく勘で3巻までまとめて買いましたが、正解でした(ちなみに4巻からは新展開を迎えます)。説明するとネタバレになってしまいますので、あいまいな表現しかできませんが、この漫画、しっかりと「SF」してます。タイトルの「アシアト」というのもちゃんと設定として出てくるし、後半に行くにつれてどんどんSF的な要素が強まっていきます。
ハインラインの『夏への扉』のような叙情的なSFが好きな方なら、きっと気にいって頂けると思います。
「悲しみ」や「苦悩」を描いた物語は、それこそ漫画でもTVドラマでも星の数ほどありますが、お涙頂戴を売りにした安っぽいドラマとは違う、心の奥に深く突き刺さってくる何かが、この漫画にはあるように思います。
いまの漫画のメインストリーム的な絵柄でありながら、実はけっこう深い物語を描いていて、しかも敷居が低い。絵ももちろん巧いのですが、物語のクオリティーが、全く衰えないどころか巻を追うごとに加速してく感があります。そして毎回きっちり「泣かされ」ます。
作者のよしづきくみち氏は、今までほとんど原作つきの漫画を描かれてきた方だそうですが、これだけの作劇力を持っている方が、実にもったいない!現在もこの漫画を連載中ですが、今後もぜひオリジナル作品を描き続けて行ってほしい漫画家です。
そしてなにより、この漫画はもっと多くの方に読まれるべき漫画です。ほんとにもったいない!
【追記】本格的に読むつもりの方には、この漫画の前日譚にあたる読みきり2本を収録した短編集『僕と君のアシアト』(タイトル同じで紛らわしいですが)から読み始める事をオススメします。助手の宮山の、哀しい哀しい過去が描かれていて、それを知っているといないとで、本編を読む際の、宮山への目線が大分変わると思います。
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君と僕のアシアト〜タイムトラベル春日研究所〜 1 (ジャンプコミックス デラックス) コミック – 2010/1/4
よしづき くみち
(著)
前向きに生きたい――誰もがそう願う。でもどうしても戻りたいあの日がある。会いたいあの人がいる。知りたい真実がある。今よりもっと前に進むために―――時を駆ける感動ロマン、開幕!!
- 本の長さ202ページ
- 言語日本語
- 出版社集英社
- 発売日2010/1/4
- ISBN-104088598164
- ISBN-13978-4088598161
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登録情報
- 出版社 : 集英社 (2010/1/4)
- 発売日 : 2010/1/4
- 言語 : 日本語
- コミック : 202ページ
- ISBN-10 : 4088598164
- ISBN-13 : 978-4088598161
- Amazon 売れ筋ランキング: - 579,061位コミック
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2012年1月7日に日本でレビュー済み
2010年2月16日に日本でレビュー済み
書店で「何かいい漫画はないものか」と歩き回っていたところ、この作品が目に入りました。
表紙買いはあまりしないタチなのですが、私的に好きなタイムトラベル物だったので手に取りました。
内容は・・・まぁ可もなく不可もなく・・・と言ったところでしょう。
タイムトラベルと言えば大体の作品は伏線の張り方が上手くちょっと先読みしづらい傾向にありますが、この作品は簡単に先が読めてしまいます。
一言で言ってしまえばベタです。
個人的にはそのベタさが一番の好印象でした。無理に小難しい話にするよりも断然いい。
逆に悪い点を挙げるとすれば、それはキャラの薄さでしょう。
第一話での主人公は、ほとんど活躍と呼べる活躍もありません。一話完結形式とは言え、ちょっと薄すぎました。
しかし二話以降からはちょっとずつ活躍の場が増えてきます。(それでもまだ薄いですが・・・)
総合的に見れば評価は70点というところです。
決して面白くないわけではないので、「絵がキレイだ」というだけで買ってもおそらく損はしないでしょう。
表紙買いはあまりしないタチなのですが、私的に好きなタイムトラベル物だったので手に取りました。
内容は・・・まぁ可もなく不可もなく・・・と言ったところでしょう。
タイムトラベルと言えば大体の作品は伏線の張り方が上手くちょっと先読みしづらい傾向にありますが、この作品は簡単に先が読めてしまいます。
一言で言ってしまえばベタです。
個人的にはそのベタさが一番の好印象でした。無理に小難しい話にするよりも断然いい。
逆に悪い点を挙げるとすれば、それはキャラの薄さでしょう。
第一話での主人公は、ほとんど活躍と呼べる活躍もありません。一話完結形式とは言え、ちょっと薄すぎました。
しかし二話以降からはちょっとずつ活躍の場が増えてきます。(それでもまだ薄いですが・・・)
総合的に見れば評価は70点というところです。
決して面白くないわけではないので、「絵がキレイだ」というだけで買ってもおそらく損はしないでしょう。
2012年12月9日に日本でレビュー済み
時間もののSFが好きで、表紙の絵柄も気にった事から購入しました。
物理的に時間移動出来ないけど仮想タイムリープで自らの過去と決着をつける、というようなテーマをベースとして、様々な依頼を受けていくのですが、人物造形や心の描写が極めて単純なのが残念です。物理移動出来ないので人間描写が鍵になり、そこをうまくかければ面白くなると思うのですが。それから話の展開も、一話完結の為か無理が目立ちます。
決してただの駄作だというわけではないのですが、ちょっとイマイチかな、という感じでした。
物理的に時間移動出来ないけど仮想タイムリープで自らの過去と決着をつける、というようなテーマをベースとして、様々な依頼を受けていくのですが、人物造形や心の描写が極めて単純なのが残念です。物理移動出来ないので人間描写が鍵になり、そこをうまくかければ面白くなると思うのですが。それから話の展開も、一話完結の為か無理が目立ちます。
決してただの駄作だというわけではないのですが、ちょっとイマイチかな、という感じでした。
2014年1月28日に日本でレビュー済み
とても優しい気持ちになれる物語です。
第一巻は導入部に当たるようで、すぐにはピンと来ない話が多いかも知れないけれど、後でちゃんと伏線だったことが分かります。
第二巻以降が楽しみな上質な作品です。
第一巻は導入部に当たるようで、すぐにはピンと来ない話が多いかも知れないけれど、後でちゃんと伏線だったことが分かります。
第二巻以降が楽しみな上質な作品です。
2011年7月11日に日本でレビュー済み
タイムトラベル物には良作が多いと思っているので購入してみました。
20年以内、市内限定、脳内記憶からのバーチャル空間と想像していたタイムトラベルとは違いましたが
これはこれで新鮮ですね。設定の生かし方が上手いと思います。
てっきり笑ゥせぇるすまん風の1話完結型だと思っていたのですが、後半からは所長をとりまく壮大な(?)ストーリーも動きだします。
かなり続きが気になる終わり方していますのでこれからの展開に期待。
20年以内、市内限定、脳内記憶からのバーチャル空間と想像していたタイムトラベルとは違いましたが
これはこれで新鮮ですね。設定の生かし方が上手いと思います。
てっきり笑ゥせぇるすまん風の1話完結型だと思っていたのですが、後半からは所長をとりまく壮大な(?)ストーリーも動きだします。
かなり続きが気になる終わり方していますのでこれからの展開に期待。
2011年2月16日に日本でレビュー済み
割と地味なタイムトラベルもの連作短編。
柔らかい綺麗な絵柄には好感が持てるが
事件を前にした反応・感情描写などが画一的であり
キャラクターに血の通った生き生きとした「人間」を
あまり感じられないのは寂しいところ。
柔らかい綺麗な絵柄には好感が持てるが
事件を前にした反応・感情描写などが画一的であり
キャラクターに血の通った生き生きとした「人間」を
あまり感じられないのは寂しいところ。
2010年3月23日に日本でレビュー済み
短編集掲載の方でも良作でしたが、こちら(本作)も良作です。
連載作品になることで、短編ではできなかったこと(登場人物のことや世界観)が色々と描かれていて面白いです。
1巻での内容は、ホスト、兄妹、仲良し3人組、なくしもの、俳優を扱った作品があり、個人的には兄妹の話が特に気に入りました。この話は特に切なくて、後悔しないためにはどうすれば……と考えさせてくれます。
タイムトラベルを扱った作品ですが、市内限定、過去20年以内、タイムパラドックスがない(過去を変えて現代に戻ってきても何も変わっていない)といった特徴があって、それがこの作品に良い効果を与えています。
連載作品になることで、短編ではできなかったこと(登場人物のことや世界観)が色々と描かれていて面白いです。
1巻での内容は、ホスト、兄妹、仲良し3人組、なくしもの、俳優を扱った作品があり、個人的には兄妹の話が特に気に入りました。この話は特に切なくて、後悔しないためにはどうすれば……と考えさせてくれます。
タイムトラベルを扱った作品ですが、市内限定、過去20年以内、タイムパラドックスがない(過去を変えて現代に戻ってきても何も変わっていない)といった特徴があって、それがこの作品に良い効果を与えています。
2010年1月29日に日本でレビュー済み
何か良い漫画は無いかネットで探していて、絵の綺麗さとマイブームの「タイムトラベル」物という事で購入しました。
タイムトラベルと言っても本当に過去へ行くのでは無く20年内の市内限定です、被験者の脳内に過去を再現、そこで何をしても現在に影響しません。
過去を変えるのではなく過去を経験する事で現在の自分に何かしら変化をもたらす、そういった内容です。
一話完結型で切なくていい話です、そして所長が可愛いですw
でも終わり方がとても気になります…早く2巻が読みたいですね。
タイムトラベルと言っても本当に過去へ行くのでは無く20年内の市内限定です、被験者の脳内に過去を再現、そこで何をしても現在に影響しません。
過去を変えるのではなく過去を経験する事で現在の自分に何かしら変化をもたらす、そういった内容です。
一話完結型で切なくていい話です、そして所長が可愛いですw
でも終わり方がとても気になります…早く2巻が読みたいですね。