預金をそのまま置いておいても増えないから投資に回す。これは現代人の多くが考えていることではないでしょうか。夫の早期退職で資金繰りの計画が狂い、なんとか増やさないと・・・と、営業マンのすすめるままに投資信託を買ってしまう。それが信用取引で新興株を掛け金を上乗せして取引をする。
このような危ない投資信託を買ってしまうのは、不安に流され他人の進める投資話に、はい、はいとうなずいてしまうところから始まる。
しかも誰の相談もなしに内緒で始めるから、追証による保証金支払いを借金で補う、「損益隠し」が横行する。こうやって泥沼に陥っていく。
ずっと慎重にためてきたお金が、「銀行預金だけでは利息もほとんどつかず、死に金になりますよ。それじゃながい老後生活や無職の息子さんの将来を守っていけませんよ」と不安をあおり投資話に乗せ、長年ためてきた眠る預金を手数料や信託報酬などでむさぼる金融業界の闇。
闇金の話ばかりに焦点があてられるので、見失いがちだが、転落の罠というのはいろいろなところに潜んでいる。
夫の早期退職を無断でということで奥さんは夫に責任転嫁して自分を正当化しているが、この家族に往々にして起こっていることは、コミュニケーション不足。つまり相談の不在である。
これは弱みを見せて事を荒立てたくない日本人に多く備わっている気質でもあり、大きな問題だ。信頼関係がない家族には隠し事が増える。すると、困っても相談もできない。結果取り返しがつかない場所まで行ってようやく事態が発覚し、まったく取り返しのつかない場所まで行ってしまう。
人生を甘く見てるとかそういう簡単なことではなく、多くの人は自分の弱みを認めようとしない。息子が親に相談せず怠惰に生きてしまうのも、結局自分の中にある弱みを見せたくないことの表れだ。
相談しても頭ごなしに否定されたら、相談するのもばかばかしくなるだろう。相談できない家庭というのは本質の問題には触れたがらない。頭から否定するか、全肯定かのどちらかになりやすい。
家庭内のお金の話に見えて実は家庭内の人間関係の話がこの話の肝だと思う。裁判所の取り立てを息子がどうでもない手紙だと思って、適当にポケットに突っ込み忘れることで、1400万の貯金が取り押さえられる深刻な事態に陥るのも、こういった問題の根本部分であると思う。
また、株のストップ安で、元本すべての保証金を支払うなんて話はあり得ないという話はあるが、これはもともと騙しでやっている犯罪行為なので、実際の制度はそこまで詳しくはないが、追い込まれた人間が論理的に分析するのは困難だろう。
もともとトゴという違法行為がまかり通ってしまっている世界だ。このような暴利は、債権者が弁護士事務所に駆け込めばたちまち露呈する。この話ではその辺をうまくやって回避して証拠を出さないように立ちまわっているようだが、訴えをおこされた話もあったが事なきを得たように、現実と照らし合わせるといろいろ無理がある設定は結構ある。（傷害事件や交通事故関係も結構無理ある部分も多い）
リアリティはあるが、リアルとは切り離したほうがいい部分もあるので、必要以上にリアリティを求める必要もないだろう。
ただ、普通に生きている私たちが陥りやすい罠に非常に切り込んだ漫画であることは間違いなく、本当に様々な教訓を教えてくれる題材だと思う。
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