日本よりフランスでの評価が高い作者の作品だが、本作も現地では人気作品となっている。中学時代にタイムスリップして故郷で暮らす主人公(四十代後半)には、そのまま故郷を懐かしむ当時の作者の姿が投影されているように思えるが、1947年生まれの作者にとって中学時代の山陰地方の暮らしというのは未だ貧しく、また戦争の傷跡が人びとの日常に生々しく残るものであった。小津シネマにしてもそうだが、いかに現代の欧米人の生活とはかけ離れた風土や生活様式、時代を背景としたものであっても、時代・土地を問わない普遍的な情感(=ある程度、歳を取った者の郷愁は万国共通のものだろう)の込められた真摯な作品であればキチンと今も国際市場で評価されるらしい。谷口氏のヨーロッパでの成功は、とても勇気づけられるものだ。
こんな静逸な作品は昔も今も日本の漫画界では稀有なものであるが、静逸であるということが、尚更時間の流れを感じさせて味わい深い。下巻の最終頁に出てくる「時の旅人」という言葉は、我々読者のことでもあるのだ。
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遥かな町へ 上 (ビッグコミックススペシャル) コミック – 1998/9/1
谷口 ジロー
(著)
▼第1話/彼方への扉▼第2話/14歳▼第3話/ふたたびの春▼第4話/軽いめまい▼第5話/時の空▼第6話/父の領分▼第7話/心の風景▼第8話/見知らぬ位牌●主な登場人物/私(48歳、東京で暮らすサラリーマン。中学生時代にタイムスリップしてしまう)、父(「私」が中学2年生の時に失踪)、母(「私」が26歳の時に死亡)、妹(「私」と3歳違い。20歳で結婚する)●あらすじ/48歳のサラリーマンの「私」は、京都への出張の帰路、二日酔いのもうろうとした気分のまま電車に乗り込んだ。いつのまにか居眠りをしていた「私」は、東京に戻る新幹線ではなく、故郷の倉吉に向かう急行に乗ってしまっていたことに気付く。「私」はそのまま故郷に帰り、菩提寺の母の墓参りをするが、母の墓前で突如激しい目まいに襲われる。気がつくと「私」は、記憶にある34年前の故郷に、中学生の姿で立っていた!!(第1話)▼この巻の特徴/中学生時代にタイムスリップした「私」は、初めは戸惑っていたものの、次第に生活を楽しむようになる。ある日、同級生の家で酔いつぶれた「私」は、迎えに来た父親との帰り道、父が失踪するのは正にこの年であることに気付く。
<ご注意>希少本ですので、「在庫あり」の場合でもs-book.comのみの販売となりますことをご了承ください。また、ご注文できた場合でもお手配できない場合や、装丁等が汚れていたり、交換等も難しくなります。
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- 本の長さ198ページ
- 言語日本語
- 出版社小学館
- 発売日1998/9/1
- ISBN-104091837123
- ISBN-13978-4091837127
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商品の説明
出版社からのコメント
何者かに操られるかの様に訪れた故郷で、48歳の意識はそのままに、34年前の中学時代にタイムスリップしてしまった「私」は…。
登録情報
- 出版社 : 小学館 (1998/9/1)
- 発売日 : 1998/9/1
- 言語 : 日本語
- コミック : 198ページ
- ISBN-10 : 4091837123
- ISBN-13 : 978-4091837127
- Amazon 売れ筋ランキング: - 66,292位コミック
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2007年8月31日に日本でレビュー済み
これは おおきな 創作者による 渾身の作品と思った。
若者には 理解困難かもしれない。年寄りには 夢と希望と哀愁をあたえてくれる作品。
かって このような 作品にはであったことはない。
この作品は 谷口ジローが 自分で構想し 創り上げた奇跡の作品である。
48歳の主人公は 突如 『時をかける少年』となる。
中学生に戻ったのだ。
しかも、48歳生きてきた経験をもっったまま。
場所は鳥取県倉吉市。この町で 彼は少年時代生きていたのだ。祖母、母、父、妹。
少年は 身体が軽くなる。走ることに苦痛なし。
クラスの 皆のあこがれのまと 賢く美しい少女と つながり、お互いを愛し合う。このあたり、おませで勇気がないとできない行動だ。周りも認めてゆく。
ぼくは この少女を愛する。これほど美しく賢い少女を見たことがない。
彼女の姿は 下巻の第5章「夏の風景」の巻頭の絵を みてほしい。
すばらしい。
さらに 個性あふれるおませな友人達。
こんなこと あの時代に この倉吉市では 実際にあったのだろうか。
=======
父は黙々と仕事をし家族のことを配慮している。その父が 失踪する!それをとめようとする少年。しかし不可能であった。
父の失踪を ゆるす 豊かな母。そして 母の死。
全てが 優しいのである。
《自分に 真剣に生き、人の生き方を 大事に大事にしている。》
こんな夢のような世界が 倉吉市にあったのだろうか。
最後のあっと驚く結末。父の姿が見える。錯覚か。
『父の暦』とくらべ この作品は ぼくたちを 仰天させ、翻弄させてくれる。 この翻弄こそ ぼくたちが望んでいたこと・夢物語。
谷口ジローは そんな世界を 仮想であろうと 具体的に創作してくれた。
この 作品をみたら 自らの 人生を 思い切り 振り返ること可能となる。
すばらしい 夢。
ありがたい。やはり 谷口ジローは天才である。
若者には 理解困難かもしれない。年寄りには 夢と希望と哀愁をあたえてくれる作品。
かって このような 作品にはであったことはない。
この作品は 谷口ジローが 自分で構想し 創り上げた奇跡の作品である。
48歳の主人公は 突如 『時をかける少年』となる。
中学生に戻ったのだ。
しかも、48歳生きてきた経験をもっったまま。
場所は鳥取県倉吉市。この町で 彼は少年時代生きていたのだ。祖母、母、父、妹。
少年は 身体が軽くなる。走ることに苦痛なし。
クラスの 皆のあこがれのまと 賢く美しい少女と つながり、お互いを愛し合う。このあたり、おませで勇気がないとできない行動だ。周りも認めてゆく。
ぼくは この少女を愛する。これほど美しく賢い少女を見たことがない。
彼女の姿は 下巻の第5章「夏の風景」の巻頭の絵を みてほしい。
すばらしい。
さらに 個性あふれるおませな友人達。
こんなこと あの時代に この倉吉市では 実際にあったのだろうか。
=======
父は黙々と仕事をし家族のことを配慮している。その父が 失踪する!それをとめようとする少年。しかし不可能であった。
父の失踪を ゆるす 豊かな母。そして 母の死。
全てが 優しいのである。
《自分に 真剣に生き、人の生き方を 大事に大事にしている。》
こんな夢のような世界が 倉吉市にあったのだろうか。
最後のあっと驚く結末。父の姿が見える。錯覚か。
『父の暦』とくらべ この作品は ぼくたちを 仰天させ、翻弄させてくれる。 この翻弄こそ ぼくたちが望んでいたこと・夢物語。
谷口ジローは そんな世界を 仮想であろうと 具体的に創作してくれた。
この 作品をみたら 自らの 人生を 思い切り 振り返ること可能となる。
すばらしい 夢。
ありがたい。やはり 谷口ジローは天才である。
2008年8月10日に日本でレビュー済み
ごく普通の48歳サラリーマンが、出張中の電車内で突然めまいと頭痛に襲われた。
気が付くと故郷の鳥取県倉吉市で14歳の自分にタイムスリップしていた、、、
心は48歳で、周囲の環境や身体は14歳当時。
あの時好きだった女の子や旧友達と、懐かしい中学生活を過ごす。
サラリーマン生活に追われて、すっかり忘れていた「あの時」の気持ちや出来事を
体験する。
そして父が突然失踪した理由や、中学生だった自分が知らなかった父母の深い苦悩・過去などを知っていくにつれ、どうしても理解出来なかった長年の謎が解けていく。
当然大人が読んでも面白いのですが、中高生にもお薦めしたいと思いました。
本当に良書です。
非常におもしろかったです!
気が付くと故郷の鳥取県倉吉市で14歳の自分にタイムスリップしていた、、、
心は48歳で、周囲の環境や身体は14歳当時。
あの時好きだった女の子や旧友達と、懐かしい中学生活を過ごす。
サラリーマン生活に追われて、すっかり忘れていた「あの時」の気持ちや出来事を
体験する。
そして父が突然失踪した理由や、中学生だった自分が知らなかった父母の深い苦悩・過去などを知っていくにつれ、どうしても理解出来なかった長年の謎が解けていく。
当然大人が読んでも面白いのですが、中高生にもお薦めしたいと思いました。
本当に良書です。
非常におもしろかったです!
2004年4月22日に日本でレビュー済み
父の暦に続く、故郷・鳥取県を舞台にした谷口氏の作品の第二弾。舞台は、鳥取県中部の倉吉市。中年男性が、突然、中学時代にタイムスリップし、父の失踪の理由を探ります。父の姿から見えてくる男の生き方とは。家族とは。考えさせられる作品です。
2006年4月21日に日本でレビュー済み
初出はビックコミック。全2巻の作品。‘04年に1冊にまとめたものが再版されている。原作はなく著者のオリジナル作である。
都会に住む48歳の男がタイムスリップして14歳の頃に戻ってしまう。記憶はそのままである。つまり48年の人生を経験した14歳である。人生をやり直しているようなものだ。身体も軽いし、勉強、友人、全てが新鮮である。
男の父は、家庭は円満だったにもかかわらず、彼が14歳のとき、誰にも何も告げずに家を出てしまっている。彼はその理由をいまだに知らない。タイムスリップした彼は、父が家を去る時になんとか引き止めようと説得するのだが、父の気持ちが理解できたと同時に自分の気持ちにも気付いてしまった“48歳”の彼は止めることが出来ない。結局、何も変えることが出来ないまま彼は記憶を取り戻し、もとの生活に戻る。そして、ある日、家に届いた小包を開けると…。
ストーリーとしては目新しいものではないし、小説だとしたら力量がある作家でないと駄作になりそうである。しかし、これが谷口ジローの絵(人物だけではなく背景もふくめた絵である)で描かれると素晴らしい作品となる。大人のマンガである。原作なしのオリジナルとしては代表作の一つに数えられるだろう。
谷口ジローは欧米での評価が高い。この作品もヨーロッパでいくつかの賞を受賞している。詳しくはわからないのだが、ストーリーを重視する傾向にある日本の漫画に対し、欧米では絵を重視して、絵自体で何かを表現する作品が多いようだ。90年代以降の著者のオリジナル作は殆どが地味である。しかし、「絵だけで物語を表現」できる彼の評価が高いのは当然なのかもしれない。
都会に住む48歳の男がタイムスリップして14歳の頃に戻ってしまう。記憶はそのままである。つまり48年の人生を経験した14歳である。人生をやり直しているようなものだ。身体も軽いし、勉強、友人、全てが新鮮である。
男の父は、家庭は円満だったにもかかわらず、彼が14歳のとき、誰にも何も告げずに家を出てしまっている。彼はその理由をいまだに知らない。タイムスリップした彼は、父が家を去る時になんとか引き止めようと説得するのだが、父の気持ちが理解できたと同時に自分の気持ちにも気付いてしまった“48歳”の彼は止めることが出来ない。結局、何も変えることが出来ないまま彼は記憶を取り戻し、もとの生活に戻る。そして、ある日、家に届いた小包を開けると…。
ストーリーとしては目新しいものではないし、小説だとしたら力量がある作家でないと駄作になりそうである。しかし、これが谷口ジローの絵(人物だけではなく背景もふくめた絵である)で描かれると素晴らしい作品となる。大人のマンガである。原作なしのオリジナルとしては代表作の一つに数えられるだろう。
谷口ジローは欧米での評価が高い。この作品もヨーロッパでいくつかの賞を受賞している。詳しくはわからないのだが、ストーリーを重視する傾向にある日本の漫画に対し、欧米では絵を重視して、絵自体で何かを表現する作品が多いようだ。90年代以降の著者のオリジナル作は殆どが地味である。しかし、「絵だけで物語を表現」できる彼の評価が高いのは当然なのかもしれない。
2007年1月2日に日本でレビュー済み
普段着の家族が突然、父という上着を理由もなく失くしてしまう。それは、突発的な事故でもなくただ父の心の葛藤というのか、迷いからである。多分、多くの人がそんな想いを抱くかもしれない40代の父親の心情を鮮やかに描き出す。そして、その父の失踪を心の迷いとして持ち続けて、タイムトリップしてでも止めようとした息子の想いと。谷口ジローは、鬼才である。もっと日本で認められればいいと思う。