幻視能力を持たないのに大神官の役目を引き受けざるを得なかった主人公イリス。「谷」に残る科学技術を駆使して来たるべき大災厄を予測し対策を立てるが、科学技術ははるか昔に禁止されていて民衆には理解できない。そのため、幻視能力を偽装し、大神官の神託として災厄を予言し、人々を安全な地に移動させようと努力する。王である腹違いの弟タジオンとの対立、舞姫シリンとの恋愛（恋愛と言っていいのかどうか？イリスにはまだ自覚がない）、次第に頻発し出す地震と増える被害。そんな中、イリスは暗殺未遂に遭う。
印象に残るのは竜の子を助けるために転落死したかつての師、盲目だったエル・ライジアについてのイリスの言葉。「ライジアはただ傷ついた竜の子のあわれな鳴き声を聞きたくなかったのだ。それは彼をいらだたせ傷つける。助けてやるほかに方法はない。彼には選択の余地がなかったんだ。同情とはそういう風にするものだ、違うか？」・・・うーむ・・・。そうかもしれない、などと、当時思ってしまった自分は若かったのか。でも、その答えは未だに出ていない。
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