気取りも無く、素直に読後感を述べるとすれば、本書は大変画期的な本である。学習漫画に西田幾多郎が取り入れられたことは、大いに評価すべきことといっていい。
西田幾多郎(にしだ・きたろう、1870~1945)といえば、陽明学を学んだことが知られている。
例えば、本書の最後の方に、西田幾多郎が、その晩年に、父親ゆかりの宇ノ気小学校に『中江藤樹全集』を父の名前で寄贈したとある。中江藤樹といえば、「日本陽明学の祖」と称される江戸初期の人物だが、事実、藤樹は陽明学で大悟しており、その二大高弟の熊沢蕃山や淵岡山(ふち・こうざん)らは、藤樹の教えとともに陽明学を学び、人間力を高めていったのである。
西田幾多郎が、中江藤樹の全集を読んでいたという事は、当然のことながら、陽明学も知っていたということで、実際、西田の親友の禅学者・鈴木大拙は、陽明学者・細野燕台(えんだい)の講義を聞いている。
ついでながら、西田幾多郎の哲学と陽明学の関連について触れておきたい。
以下は、尾藤正英『日本文化の歴史』(岩波新書)にある「知行合一」についての説明である。
「西田哲学の重要な概念の一つに、〈行為的直観〉がある。これは、人が行為の中で真実を知るという意味であるが、これに類似した概念として、儒学の分野で、朱子学に対し中国で、明の時代に起こった陽明学の〈知行合一〉がある。
これは、知ったことは必ず行わなければならないという、単純な意味ではなく、知ることは行うことであり、行うことは知ることである、との意味である。
つまり、行わなければ、本当に知ったことにならない、知るということと行動することとは、同じだという考え方である。
これも先にみた道元の〈弁道話〉のなかでの、〈修・証〉一致の思想、すなわち〈修〉(修行=行為)と〈証〉(悟り=知)とは、別のものではないとする考え方と似ている。
陽明学にはこのように日本思想との共通点があるので、日本では朱子学よりも、どちらかといえば好まれた。
江戸時代に、教育上は朱子学が一般的であったが、個人としては陽明学に関心を持った人が多い。
とくに幕末の政治運動の中で活動した人々、西郷隆盛、吉田松陰、横井小楠らが、陽明学に感心をもっていたことが知られている。明治以後もそうであって、私たちの使用している〈良心〉という言葉も、陽明学の〈良知〉という観念に由来している」(「第14章、近代日本における西洋化と伝統文化」)
陽明学の「知行合一」説や「致良知」説が、西田哲学に影響していることは、竹内良知、下村寅次郎、安岡正篤をはじめとする専門家たちも認めていることである。
本書では、特に「万物一体」説が取り上げられているが、もちろん「万物一体」説は、陽明学の思想である。
また、本書では「無」についても説かれているが、西田哲学でいう「無」は、陽明学でいう「自然」「中庸」「良知」のことである。
こうなると、鈴木大拙の学習漫画も期待したいところである。
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小学館版学習まんが 2 西田幾多郎: 世界に影響を与えた日本人初の哲学者 (学習まんが 小学館版) 単行本 – 2013/8/19
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偉大な哲学者、初の学習まんが化!
京都に残る「哲学の道」は、西田幾多郎が思索しながら歩いた道であり、その全集は哲学書として記録的な大ベストセラーとなりました。彼の著書「善の研究」は60年ほど前の文系の大学生の必読書として親しまれていました。
国内外の有識者・研究者に大きな影響を与えながら、内容の難解さのためか、彼の考えは一般的に知られていませんでした。
一方、彼の生まれ故郷である石川県かほく市では、小学校から彼の業績を教え続けています。本書はかほく市と西田幾多郎記念哲学館の協力・監修により、彼の生涯とその考えを誰にでもわかりやすく描いた、初の学習まんがです。
世界の主流だった西洋哲学と異なる、独自の「西田哲学」がどんな考えなのか、それがどのように生まれたのかを、小学生でもわかるようにストーリーで解説する、非常に大胆な内容です。
彼の著書に興味があった人、難解で理解できなかった人など大人にもぜひ読んでほしい一冊です。
【編集担当からのおすすめ情報】
明治初期から第二次大戦までの、激動の日本に生きた教育者であり思想家であった西田の生涯を理解できる本。
京都に残る「哲学の道」は、西田幾多郎が思索しながら歩いた道であり、その全集は哲学書として記録的な大ベストセラーとなりました。彼の著書「善の研究」は60年ほど前の文系の大学生の必読書として親しまれていました。
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【編集担当からのおすすめ情報】
明治初期から第二次大戦までの、激動の日本に生きた教育者であり思想家であった西田の生涯を理解できる本。
- 本の長さ160ページ
- 言語日本語
- 出版社小学館
- 発売日2013/8/19
- 寸法15.9 x 1.7 x 22.7 cm
- ISBN-104092271670
- ISBN-13978-4092271678
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- 言語 : 日本語
- 単行本 : 160ページ
- ISBN-10 : 4092271670
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2014年7月17日に日本でレビュー済み
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2014年6月25日に日本でレビュー済み
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哲学書を読む読解力に不安があるため、まずまんがからと思い購入。幾多郎の人となりを学ぶことはできた。でももう少し西田哲学とはどういうものかという場面も入れて欲しかった。学生の哲学的な問いに答えるシーンがあるのだが、さらっとしたもので、それくらいなら知っていた。もちろん哲学の解説をするのが目的のまんがではないのは読んでみてわかりました。ですから小学生が読むならおすすめです。とにかく人となりはよく学べます。それ目的なら星4つです。
2018年8月19日に日本でレビュー済み
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西田幾多郎博士の伝記本に漫画があったことに驚きました。小学生向けなのでしょうが、大人でも読み応えがあります。構成や内容もよく吟味されていて好感を持ちました。これを読んだ方は、西田幾多郎記念哲学館を訪れることをお勧めします。
2017年2月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
大変 難解な表現で有名な西田幾多郎について、非常に解りやすく理解できました。
この本は子供は勿論、大人の方でも西田幾多郎の世界を満喫出来ると思います。
とても良い本でお薦めできます。
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2017年5月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
西田以外のイデオロギーがちりばめられていて、
落ち着かないと西田の考えと勘違いしてします。
高等な学問や人物を取り扱うのだから、その辺は注意して作成すべきだと思う。
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