2003年小学館刊。この年は小津安二郎の生誕百周年で、ブームを当て込んで「小津本」が大挙して出版されたのを記憶している方も多いと思います。私にとっても当時は小津ブームで、物珍しさからこれらの書籍を書店で発見しては律儀に買い求めていたものです。それらの中にあって本書のユニークさは異彩を放っています。まずは目次を見ていただくと
1. 「先生と私」 ー 有馬稲子、岡田茉莉子
2. 「義兄と私」ー 小津ハマ
3. 「小津好みのお洒落」ー 原由美子
4. 「小津好みの愛用品」ー くろすとしゆき
5. 小津のグルメ手帳
6. 映画キャメラマン・川又昴のDVD化作品の見所
7. 小津作品、DVD化全作品リスト
というワケで、本書の特徴は小津の作品論を大胆に省略して、小津本人のライフスタイルに重点を置いたものであることです。つまり3は若い時からの小津のファッションセンスの変遷についての考察と、小津作品の登場人物へのファッションのこだわりを。小津のファッションセンスについては若い時からの写真を参考に、かなりシビアに評しているのが面白い。4は眼鏡、腕時計、パイプ、お椀等の愛用品を多くの貴重な写真入りで。5は小津の愛したお酒、おつまみ、そして各種食べ物屋さん等の紹介で、2003年当時も営業を続けていたお店の一覧表まで完備。この章の冒頭に俳優の三上真一郎氏による小津のお酒に関する思い出が掲載されています。三上氏は60年代前半のデビュー当時、小津に息子のように可愛がられていたそうで、何度も酒席を共にしています。三上氏が出演している小津作品は「秋日和」と「秋刀魚の味」です。
4は戦後小津作品の多くを担当した、厚田雄春キャメラマンの助手を務めた川又氏による小津作品の撮影の特徴とDVD化に際しての技術的な苦労について。
本書は面白い。特に小津監督自身のプライヴェート写真が豊富なのが特徴で、何度見ても飽きません。このAMAZONの中古品が最近お手頃なお値段になっているので、まだの小津ファンには是非おススメです。
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