野沢尚の作品の特徴の一つ、徹底的な描写が随所に見られる。
あとがきにあるように、尊敬する人物へ向けて力を入れて書い
たということがよく分かる力作。
時には嫌悪感さえ覚えるほどのリアルさで迫ってくる文章は、
著者が持っていたエネルギーの放出なのだろう。
そのエネルギーを自分自身に向けてしまったため、今、もう
同氏の新作は読めないという不幸な事態を招いてしまったの
だと思う。
巻末の夫人の言葉は、悲しみを乗り越えたが、今なお理解し
きれないという歯がゆさが滲んでいて心が痛む。
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烈火の月 単行本 – 2003/12/1
野沢 尚
(著)
あらゆる犯罪が集結する千葉県愛高市の刑事・我妻諒介は、「微笑んだ次の瞬間、凶暴になれる」と恐れられる破天荒な男。希望なき時代が産んだヒーロー・我妻と麻薬密輸業者との激闘を描く白熱の刑事アクション小説
主人公の我妻諒介は「微笑んだ次の瞬間、凶暴になれる」と恐れられる愛高署“最凶”の42歳の刑事。アクアライン開通によって人口が増加し、麻薬、青少年犯罪、汚職などあらゆる犯罪が集結しつつある千葉県湾岸の架空都市・愛高を舞台に、我妻と “女マトリ”烏丸瑛子が麻薬密輸業者に立ち向かう刑事アクション小説。
我妻は、まるで月のように、日本に溜まった悪によって輝き始める。そして彼の照り返しがやがて読者の心をも照らす。「タイトルの『烈火の月』にはそういう思いを込めている」と著者が語るように、我妻は誰もが閉塞感に押し潰されそうな現代にこそ輝きを増す、従来の刑事小説史上になかったニューヒーローといえる。
主人公の我妻諒介は「微笑んだ次の瞬間、凶暴になれる」と恐れられる愛高署“最凶”の42歳の刑事。アクアライン開通によって人口が増加し、麻薬、青少年犯罪、汚職などあらゆる犯罪が集結しつつある千葉県湾岸の架空都市・愛高を舞台に、我妻と “女マトリ”烏丸瑛子が麻薬密輸業者に立ち向かう刑事アクション小説。
我妻は、まるで月のように、日本に溜まった悪によって輝き始める。そして彼の照り返しがやがて読者の心をも照らす。「タイトルの『烈火の月』にはそういう思いを込めている」と著者が語るように、我妻は誰もが閉塞感に押し潰されそうな現代にこそ輝きを増す、従来の刑事小説史上になかったニューヒーローといえる。
- 本の長さ477ページ
- 言語日本語
- 出版社小学館
- 発売日2003/12/1
- ISBN-104093796718
- ISBN-13978-4093796712
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
死んだら楽になれるなんて思うなよ! 我妻諒介、42歳。機動隊を経て千葉県愛高署刑事。現在バツイチ、娘一人。憎悪と殺意で沸騰する街が生んだ破天荒な刑事・我妻の決死の闘いが始まる…。
登録情報
- 出版社 : 小学館 (2003/12/1)
- 発売日 : 2003/12/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 477ページ
- ISBN-10 : 4093796718
- ISBN-13 : 978-4093796712
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,219,540位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 322,176位文学・評論 (本)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2021年8月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ビートたけし主演監督作品「その男、凶暴につき」の小説版。
ただし、登場人物や結末は映画と大きく異なる。
映画「その男、凶暴につき」を視聴して面白かったので、
原作の小説にも手を出した。
東京湾アクアラインに繋がる千葉県の架空の市町村「愛高市」を舞台に、
「愛高署の瞬間湯沸かし器」の異名を取る暴力刑事の我妻諒介が、
麻薬を巡って街に渦巻く陰謀に対して戦いを挑む話。
映画版を先に見ていたので、主人公の我妻はビートたけし、悪役の仁藤と
清弘はそれぞれ岸部一徳、白竜を頭に思い浮かべながら読んだ。
物語途中から登場し我妻と共に捜査を担当することになる
「マトリの女」烏丸は、なんとなく真木よう子を想定した。
烏丸の気の強さとやさぐれっぷりが真木のイメージと重なる。
当たり前だが、映画では端折られていた話が小説だと
より細かく書かれている。特に、我妻が世話になっている先輩の
岩城課長に関する部分の話は、小説を読むと理解しやすい。
終わり方は、小説の方が好きだった。
映画も小説も巨悪を一刀両断して万々歳、なんて
わかりやすい終わり方ではないものの、
我妻と清弘の狂気ばかりがクローズアップされた映画より、
「何があっても生きていく」というメッセージが感じ取れる
小説の終わり方のほうが後味が良くて好き。
警察組織に関する細部の描写や
麻薬を摂取した者の心理描写なども、
リアルに描かれていてハマってしまった。
総じて言うと、クライムノベル好きは読んで損しない作品。
こんな面白い小説を書く方が自死してしまった事が惜しまれる。
ただし、登場人物や結末は映画と大きく異なる。
映画「その男、凶暴につき」を視聴して面白かったので、
原作の小説にも手を出した。
東京湾アクアラインに繋がる千葉県の架空の市町村「愛高市」を舞台に、
「愛高署の瞬間湯沸かし器」の異名を取る暴力刑事の我妻諒介が、
麻薬を巡って街に渦巻く陰謀に対して戦いを挑む話。
映画版を先に見ていたので、主人公の我妻はビートたけし、悪役の仁藤と
清弘はそれぞれ岸部一徳、白竜を頭に思い浮かべながら読んだ。
物語途中から登場し我妻と共に捜査を担当することになる
「マトリの女」烏丸は、なんとなく真木よう子を想定した。
烏丸の気の強さとやさぐれっぷりが真木のイメージと重なる。
当たり前だが、映画では端折られていた話が小説だと
より細かく書かれている。特に、我妻が世話になっている先輩の
岩城課長に関する部分の話は、小説を読むと理解しやすい。
終わり方は、小説の方が好きだった。
映画も小説も巨悪を一刀両断して万々歳、なんて
わかりやすい終わり方ではないものの、
我妻と清弘の狂気ばかりがクローズアップされた映画より、
「何があっても生きていく」というメッセージが感じ取れる
小説の終わり方のほうが後味が良くて好き。
警察組織に関する細部の描写や
麻薬を摂取した者の心理描写なども、
リアルに描かれていてハマってしまった。
総じて言うと、クライムノベル好きは読んで損しない作品。
こんな面白い小説を書く方が自死してしまった事が惜しまれる。
2011年7月10日に日本でレビュー済み
ホームレスに扮し、ホームレス狩りの少年たちを骨折するほど痛めつけ事件を解決するなど、型に嵌らない暴力刑事:我妻が主役のバイオレンス作品。
麻薬取締官:烏丸が登場してからの麻薬常習者の描写が凄いです。
芸能人により麻薬ニュースが話題を呼んでいますが、麻薬について細かく描かれています。
1951年に覚せい剤取締法が制定されるまでの、第2次世界大戦中、戦後には日本国内ではヒロポンというなでメタンフェタミンが合法的に流通ししていたという事実。
モルヒネから生まれたヘロインの禁断症状の恐ろしさ。
そしてそれらを取り締まる警察組織の腐敗。
後半の銃撃戦での銃火器類の表現は、「殺し屋シュウ」、「魔笛」などでもそうですが、細かい描写からよりリアリティが増しています。
強烈な内容ですが、さすが野沢作品非常に楽しめました。
麻薬取締官:烏丸が登場してからの麻薬常習者の描写が凄いです。
芸能人により麻薬ニュースが話題を呼んでいますが、麻薬について細かく描かれています。
1951年に覚せい剤取締法が制定されるまでの、第2次世界大戦中、戦後には日本国内ではヒロポンというなでメタンフェタミンが合法的に流通ししていたという事実。
モルヒネから生まれたヘロインの禁断症状の恐ろしさ。
そしてそれらを取り締まる警察組織の腐敗。
後半の銃撃戦での銃火器類の表現は、「殺し屋シュウ」、「魔笛」などでもそうですが、細かい描写からよりリアリティが増しています。
強烈な内容ですが、さすが野沢作品非常に楽しめました。
2005年10月7日に日本でレビュー済み
面白い。前半やや他の野沢作品と毛色が違うか?と感じさせるややユルい展開。暴力的な刑事が主人公というプロットは度肝を抜く、というほどではありません。
野沢真骨頂は中盤以降。平板にみえた主人公や脇役、敵役の表情にディティール・色が加えられ、ユルいストーリーが急加速する。乗り遅れに注意してください。
著者はあとがきで「後講釈はいやなんだけど」と言いつつ、本作品が産まれた背景を語ります。「その男、凶暴につき」の脚本として書かれた本作品の原案。
麻薬や暴力などいろいろなかたちをとって本書で表現されているのは人間の破壊願望。何をどうして破壊したいのか。願望の実相を見事に描ききっています。
ピカレスクロマンという表現は陳腐ですが、人間の極限状態を描かせたら野沢の右に出るものなし。
期待を裏切りません。
野沢真骨頂は中盤以降。平板にみえた主人公や脇役、敵役の表情にディティール・色が加えられ、ユルいストーリーが急加速する。乗り遅れに注意してください。
著者はあとがきで「後講釈はいやなんだけど」と言いつつ、本作品が産まれた背景を語ります。「その男、凶暴につき」の脚本として書かれた本作品の原案。
麻薬や暴力などいろいろなかたちをとって本書で表現されているのは人間の破壊願望。何をどうして破壊したいのか。願望の実相を見事に描ききっています。
ピカレスクロマンという表現は陳腐ですが、人間の極限状態を描かせたら野沢の右に出るものなし。
期待を裏切りません。
2014年6月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
古い出版物ですが、評価どおりで書棚に置いても問題ありませんでした。
ありがとうございます。
ありがとうございます。
2015年9月11日に日本でレビュー済み
北野武監督、主演映画「その男、凶暴につき」の脚本を書いた野沢さんが、小説に書き直した作品。脚本は現場で北野監督にいくらか修正されたらしいので、映画とは多少異なるストーリーになっています。映画は封切り当時観て北野武の迫真迫る演技に、かなり興奮したのを覚えています。小説の方も主人公、我妻刑事の暴れっぷりが凄かった!最後に麻薬組織の親玉、それに群がる県警組織のトップ達を、完膚なきまでに叩きのめす様は痛快でした。殺し屋の清弘、麻薬取締官の瑛子等登場人物達も印象的で、結構掘り出し物の一冊でした。
2013年5月19日に日本でレビュー済み
ビートたけしの映画「その男凶暴につき」の脚本はこの野沢によって書かれたが、現場でたけしによってかなり修正され、
野沢はかなり悔しい思いをしたらしい。その野沢がその脚本を全面的に小説に書き直し、出版したのがこの作品である。
正直、非常に面白い。批評にあるように野沢が「一球たりともおろそかにせず全力投球した」作品になっている。
何といっても主人公の暴力刑事我妻の存在感は圧倒的である。自閉症の娘を持ち、その行く末を案じる一人の親で
ありながら、権力の腐敗に目をつぶれず立ち向かう。犯罪人に対する容赦ない仕打ちははっきりと言って極めて痛快で
あり、その徹底した暴力は爽快でもある。周りの人間描写もうまい。パートナーとなるマトリの女烏丸暎子、敵対する暴力団の
男清弘。さらに愛高署の面々。かなり作者が警察組織の取材や勉強することによってより現実味を帯びた描写が続く。
この才能豊かな作者野沢が04年6月に自らの命を絶って二度と彼の才能に触れることが出来ないのは極めて寂しい。
野沢はかなり悔しい思いをしたらしい。その野沢がその脚本を全面的に小説に書き直し、出版したのがこの作品である。
正直、非常に面白い。批評にあるように野沢が「一球たりともおろそかにせず全力投球した」作品になっている。
何といっても主人公の暴力刑事我妻の存在感は圧倒的である。自閉症の娘を持ち、その行く末を案じる一人の親で
ありながら、権力の腐敗に目をつぶれず立ち向かう。犯罪人に対する容赦ない仕打ちははっきりと言って極めて痛快で
あり、その徹底した暴力は爽快でもある。周りの人間描写もうまい。パートナーとなるマトリの女烏丸暎子、敵対する暴力団の
男清弘。さらに愛高署の面々。かなり作者が警察組織の取材や勉強することによってより現実味を帯びた描写が続く。
この才能豊かな作者野沢が04年6月に自らの命を絶って二度と彼の才能に触れることが出来ないのは極めて寂しい。
2008年12月22日に日本でレビュー済み
42歳でバツイチの刑事吾妻諒介と30歳で同じくバツイチの烏丸英子。
2人は薬物のルートを追いかけるのだが、裏社会の陰湿さの描写は読んで
いて目を背けたくなった。そういう箇所がいくつもある。犯罪に手を染める
者を次第に追い詰めていく過程はスリリングで面白さも多少は感じるが、
不快感のほうが勝ってしまう。英子に降りかかる災難も、読むに耐えない。
どちらかというと男性向きの作品のような気がする。ラストも救いがなく、
後味の悪い読後感だった。
2人は薬物のルートを追いかけるのだが、裏社会の陰湿さの描写は読んで
いて目を背けたくなった。そういう箇所がいくつもある。犯罪に手を染める
者を次第に追い詰めていく過程はスリリングで面白さも多少は感じるが、
不快感のほうが勝ってしまう。英子に降りかかる災難も、読むに耐えない。
どちらかというと男性向きの作品のような気がする。ラストも救いがなく、
後味の悪い読後感だった。