「七世代の掟」(本文抜粋)
きわめて民主的な政治システムを完成していたイロクォイ族(現在のニューヨーク州付近に住んでいた人々)では、部族の会議が行われるたび、人々はまず自分たちの義務を次のような言葉で誓いあうのだった。
「何事を取り決めるにあたっても、われわれの決定が以後の七世代にわたっておよぼすことになる影響をよく考えなくてはならない」と。
ある決議事項をめぐって自分が投票するなら、その票は自分だけではなく、まだ生まれてもいない者たちも含めて、以後の七世代のための1票なのだ。
・・・この教えたった一つを守れば、今、われわれが直面している社会問題=テロや国際摩擦、また、様々な「発明」により招いた大気・土壌汚染問題を回避できていたはずです。我々は近視眼的で、退化さえしているのではないか?というシンプルな着想を得ました。
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いまだから読みたい本――3.11後の日本 単行本 – 2011/7/27
いまだから読みたい本――3.11後の日本
だれもが立ちすくんだあの日以降、坂本龍一と仲間たちは、不安に打ち勝つために「いまだからこそ読むべき本」を互いに読み返し、共有し合った。
起きてしまった現実と、たたみかけて噴出した種々の言説と情報の大波に、われわれはどのように向き合えばよいのだろうか――。ソーシャルメディアを介して、NY-東京間では書評のやりとりが行われ、心を落ち着かせ、思考を助けてくれる本のリストは増殖し、ブッククラブが形成された。
本書はそのリストをブッククラブが編纂チームとなって精選し、心にしみる文章を収録した短編集。9・11をNYで体験し、従来も戦争や核の問題などに、社会的発言や活動を繰り返してきた坂本龍一からの日本へのメッセージも収載。
巻末に編纂チームによる、もっと読みたい古今の名著のおすすめガイド付き。
だれもが立ちすくんだあの日以降、坂本龍一と仲間たちは、不安に打ち勝つために「いまだからこそ読むべき本」を互いに読み返し、共有し合った。
起きてしまった現実と、たたみかけて噴出した種々の言説と情報の大波に、われわれはどのように向き合えばよいのだろうか――。ソーシャルメディアを介して、NY-東京間では書評のやりとりが行われ、心を落ち着かせ、思考を助けてくれる本のリストは増殖し、ブッククラブが形成された。
本書はそのリストをブッククラブが編纂チームとなって精選し、心にしみる文章を収録した短編集。9・11をNYで体験し、従来も戦争や核の問題などに、社会的発言や活動を繰り返してきた坂本龍一からの日本へのメッセージも収載。
巻末に編纂チームによる、もっと読みたい古今の名著のおすすめガイド付き。
- 本の長さ128ページ
- 言語日本語
- 出版社小学館
- 発売日2011/7/27
- ISBN-104093881987
- ISBN-13978-4093881982
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登録情報
- 出版社 : 小学館 (2011/7/27)
- 発売日 : 2011/7/27
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 128ページ
- ISBN-10 : 4093881987
- ISBN-13 : 978-4093881982
- Amazon 売れ筋ランキング: - 696,750位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 622位読書法
- カスタマーレビュー:
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2011年10月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
どんな本なのか???
と思う人も多いと思いますが、
この本は、色んな本から
「いまだから読みたい」
をテーマに「抜粋」された文章が綴られています。
坂本龍一、その他著名人による選考ですが、
どれも選び抜かれたという感じがします。
たんなる寄せ集めやガイドブック的な本ではなく、
これはこれで一つの「本」というレベルまで昇華された一冊です。
装丁や本文レイアウトなども可愛く美しい本です。
と思う人も多いと思いますが、
この本は、色んな本から
「いまだから読みたい」
をテーマに「抜粋」された文章が綴られています。
坂本龍一、その他著名人による選考ですが、
どれも選び抜かれたという感じがします。
たんなる寄せ集めやガイドブック的な本ではなく、
これはこれで一つの「本」というレベルまで昇華された一冊です。
装丁や本文レイアウトなども可愛く美しい本です。
2017年4月13日に日本でレビュー済み
2011年8月1日発行である。最も早い時期に発刊された震災関連の「真摯な」単行本かもしれない。アンソロジーだが、内容の紹介よりも【目次】を見る方が最も適切な紹介になっている気がする。
【目次】
(巻頭詩)大男のための子守唄(茨木のり子)/心に響いた言葉たち(坂本龍一)/母なる樹(竹村真一)/リオの伝説のスピーチ(セヴァン・カリス=スズキ)/きぼう(ローレン・トンプソン)/震災後一五〇日(中井久夫)/津波と人間(寺田寅彦)/現代における人間と政治(丸山眞男)/戦争責任者の問題(伊丹万作)/「われ=われ」のデモ行進(小田実)/なぜ交換船にのったか(鶴見俊輔)/被爆地に夫を捜して(吉部園江)/チェルノブイリの祈り(スベトラーナ・アレクシエービッチ)/アトムの哀しみ(手塚治虫)/イシュマエル(ダニエル・クイン)/倚りかからず(茨木のり子)/七世紀の掟(管啓次郎)/先住民族指導者シアトルの演説
引用を始めたら、キリがなくなるのは判り切っている。それでも、いくつかを記す。
私の世代には夢があります。いつか野生の動物たちの群れや、たくさんの鳥や蝶が舞うジャングルを見ることです。でも、私の子どもの世代には、もうそんな夢を持つこともできなくなるのではないか?あなたたちは、私ぐらいの歳のときに、そんなことを心配したことがありますか?(リオの伝説のスピーチ/セヴァン・カリス=スズキ12歳1992)
「だまされていた」といって平気でいられる国民なら、おそらく今後何度でもだまされるだろう。いや、現在でもすでに別のうそによってだまされ始めているのにちがいないのである。(戦争責任者の問題/伊丹万作1946)
一方、アトムの動力源は元は原子炉だったことをあげつらい、アトムを原子力推進派に分類しようという輩がおり、アニメ「アトム・ザ・ビキニング」でその議論は再燃しているのだが、私はあえて言いたい。手塚治虫は、明確に反原発の立場に立っていたと。ドラえもんを見よ。22世紀ではどら焼きなどの質量をエネルギーに変えているだけで放射能など出ない設定になっている。アトムも80年代のアニメでは核融合反応でエネルギーを引き出すように変わっている。何よりも、チェルノブイリのあとに手塚はこう述べている。
ぼくの代表作と言われる「鉄腕アトム」が、未来の世界は技術革新によって繁栄し、幸福を生むというビジョンを掲げているように思われていることです。「アトム」はそんなテーマで描いたわけではありません。自然や人間性を置き忘れて、ひたすら進歩のみをめざして突っ走る科学技術が、どんなに深い亀裂や歪みを社会にもたらし、差別を生み、人間や生命あるものを無残に傷つけていくかを描いたつもりです。(略)つまり「鉄腕アトム」で描きたかったのは、一言で言えば、科学と人間のディスコミュニケーションということです。(ガラスの地球を救え/手塚治虫1989)
こういうときだからこそ、心にひびくたくさんの言葉を集めて、少しでもだれかの役に立てばと願っています。(心に響いた言葉たち/坂本龍一2011.6.25)
【目次】
(巻頭詩)大男のための子守唄(茨木のり子)/心に響いた言葉たち(坂本龍一)/母なる樹(竹村真一)/リオの伝説のスピーチ(セヴァン・カリス=スズキ)/きぼう(ローレン・トンプソン)/震災後一五〇日(中井久夫)/津波と人間(寺田寅彦)/現代における人間と政治(丸山眞男)/戦争責任者の問題(伊丹万作)/「われ=われ」のデモ行進(小田実)/なぜ交換船にのったか(鶴見俊輔)/被爆地に夫を捜して(吉部園江)/チェルノブイリの祈り(スベトラーナ・アレクシエービッチ)/アトムの哀しみ(手塚治虫)/イシュマエル(ダニエル・クイン)/倚りかからず(茨木のり子)/七世紀の掟(管啓次郎)/先住民族指導者シアトルの演説
引用を始めたら、キリがなくなるのは判り切っている。それでも、いくつかを記す。
私の世代には夢があります。いつか野生の動物たちの群れや、たくさんの鳥や蝶が舞うジャングルを見ることです。でも、私の子どもの世代には、もうそんな夢を持つこともできなくなるのではないか?あなたたちは、私ぐらいの歳のときに、そんなことを心配したことがありますか?(リオの伝説のスピーチ/セヴァン・カリス=スズキ12歳1992)
「だまされていた」といって平気でいられる国民なら、おそらく今後何度でもだまされるだろう。いや、現在でもすでに別のうそによってだまされ始めているのにちがいないのである。(戦争責任者の問題/伊丹万作1946)
一方、アトムの動力源は元は原子炉だったことをあげつらい、アトムを原子力推進派に分類しようという輩がおり、アニメ「アトム・ザ・ビキニング」でその議論は再燃しているのだが、私はあえて言いたい。手塚治虫は、明確に反原発の立場に立っていたと。ドラえもんを見よ。22世紀ではどら焼きなどの質量をエネルギーに変えているだけで放射能など出ない設定になっている。アトムも80年代のアニメでは核融合反応でエネルギーを引き出すように変わっている。何よりも、チェルノブイリのあとに手塚はこう述べている。
ぼくの代表作と言われる「鉄腕アトム」が、未来の世界は技術革新によって繁栄し、幸福を生むというビジョンを掲げているように思われていることです。「アトム」はそんなテーマで描いたわけではありません。自然や人間性を置き忘れて、ひたすら進歩のみをめざして突っ走る科学技術が、どんなに深い亀裂や歪みを社会にもたらし、差別を生み、人間や生命あるものを無残に傷つけていくかを描いたつもりです。(略)つまり「鉄腕アトム」で描きたかったのは、一言で言えば、科学と人間のディスコミュニケーションということです。(ガラスの地球を救え/手塚治虫1989)
こういうときだからこそ、心にひびくたくさんの言葉を集めて、少しでもだれかの役に立てばと願っています。(心に響いた言葉たち/坂本龍一2011.6.25)
2012年6月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
主に80年代の日本を代表するバンドYMOやアカデミー賞も受賞した映画音楽などでの世界的評価を背景に、環境問題など多くの問題に、広い意味での表現者として意見を表明し、脱原発運動のアイコンとなるなど、ある種のオピニオン・リーダーとしての存在になっている音楽家・坂本龍一と、6人の編纂チームが編んだ文筆集。
実際に抜粋されているのは、十数編の文章・詩・演説であるが、「さらに読みたい人のために」として、89冊の書籍についての、編者らによるブック・レビューが並ぶ。
抜粋された文章の趣旨は、私にとっては、ほとんど、どこかで見たり聞いたりしたことのあるような内容であり、復習的な感覚でさらさら読めたが、手塚治虫が「じつはたいへん迷惑していることがあります。(中略)『鉄腕アトム』が、未来の世界は技術革新によって繁栄し、幸福を生むというビジョンを掲げているように思われていることです。」というのには、そんなこと言われてもねえ、と思った。最近の子供はどうか知らないが今大人世代になっている多くの人が子供の頃に聴いた、あのテレビ・アニメ版の明るいアトムのテーマソングを聴いたなら、アトムが科学の未来に希望を託したキャラクターと思われても無理なからぬところがあると思う。そういう意味では、いかに手塚治虫が自分の作品で表現したかったものが伝わっていない状況を迷惑と主張しても、分が悪い感は否めない。
核の力、原子力にしても、それが発見された当初は、兵器としての利用は脅威であり悲劇ではあっても、電力を生むエネルギー源としての利用は平和利用であり私達の生活を豊かにするものとして多くの人々に期待され、希望を託された感は否めない。しかし、スリーマイル、チェルノブイリ、福島、と、忘れかけたころに繰り返される悲劇を見れば、あるいは、将来何世代にもわたって負担となっていくような廃棄物の問題を考えれば、その期待・希望が甘すぎる考えであったことも、また、否めない。
しかし、その甘すぎた考えに大した反省もないままに、2012年6月現在、民主党・野田佳彦政権も、その批判者たるべき最大野党・自民党も、原発再稼動に突き進もうとしている(社民・共産などの小政党、あるいは第三極などと見られる他の勢力が原発に反対するだけでなく、二大政党である民主党や自民党にも、少なくとも現時点では原子力体制に疑問を持つ向きもないではないが、世論はともかく、現実政治の政局の上では、どうも再稼動論に押されぎみである。それほどまでに原発利権は、旧来型の政治家にとっては甘い汁なのであろう)。技術革新の進んだ火力発電への移行が進んだ東電管内では差し当たり原発なしで暮らせそうであるが(賠償問題や福島原発の廃炉に向けた作業がどうなるかという問題を孕んだ中での束の間の安定であり油断はできないが)、仮に東電管内で脱原発が実現しても、隣の静岡・浜岡原発が再稼動され万が一のことがあれば、首都圏にも住んでいられなくなるのだが。
本書のチェルノブイリ体験者のインタビュー談話は、そうした現状への反省を否応なく迫るし、その他の本書の文章・詩・演説も、結局、現在の日本の問題は、歴史の教訓、警鐘を忘れ、あるいは省みない、活かさないことで深刻化したのではないかとの反省を余儀なくさせる。
本書の巻頭言的な坂本龍一の「心に響いた言葉たち」でも挙げられる田中正造(日本で最初の公害問題と言われる足尾銅山鉱毒事件を告発した)の、真の文明は山を荒さず、川を荒さず、村を破らず、人を殺さざるべし、という言葉は、原発に依存しすぎたこれまでのエネルギー体制への痛烈な批判としても通用するであろう。
「もっと読みたい人のために」の坂本龍一セレクションの項には、「自然を資源や投資の対象としてだけ扱う現在の文明から、ヒトも自然の一部だという当たり前な事実に基づいた、より高度な文明のグランドデザインのためのヒントとなる本を選びました」とある。このような視点は他の編者にも共通するものと思われるし、今後、どのような政治を選び、どのような社会を造っていくかを考える上では、省みられなければならない視点であろう。
全体の中では微小な疑問点ではあるが、私がそれでいいのかな、と思った点を一つ。坂本龍一の参照した情報ソースで一点YouTubeのアニメ動画に触れられているが、時代の流れであろうか。著作権の問題を気にして(公式チャンネル以外の)Youtube動画を敬遠するなど、今や、闇米を口にせずに餓死した裁判官と同様の「愚挙」なのだろうか(その後、国会で違法ダウンロードに刑罰を課す法改正が成立し、10月1日から施行されることとなった。が、Youtube等で権利処理を経ない動画を視聴する場合にそれらの視聴がストリーミング方式であることを根拠に刑罰の対象となる受信〔ダウンロード〕とは異なるといいうるのか、それともプログレッシブ・ダウンロードという一種のダウンロードでありやはり刑罰の対象となるのかは、いまだ議論が分かれているようである)。
その点はさておき、全体としては、共感したり考えを整理したりできる良好なブック・ガイドであり、文筆集であった。(敬称略)
実際に抜粋されているのは、十数編の文章・詩・演説であるが、「さらに読みたい人のために」として、89冊の書籍についての、編者らによるブック・レビューが並ぶ。
抜粋された文章の趣旨は、私にとっては、ほとんど、どこかで見たり聞いたりしたことのあるような内容であり、復習的な感覚でさらさら読めたが、手塚治虫が「じつはたいへん迷惑していることがあります。(中略)『鉄腕アトム』が、未来の世界は技術革新によって繁栄し、幸福を生むというビジョンを掲げているように思われていることです。」というのには、そんなこと言われてもねえ、と思った。最近の子供はどうか知らないが今大人世代になっている多くの人が子供の頃に聴いた、あのテレビ・アニメ版の明るいアトムのテーマソングを聴いたなら、アトムが科学の未来に希望を託したキャラクターと思われても無理なからぬところがあると思う。そういう意味では、いかに手塚治虫が自分の作品で表現したかったものが伝わっていない状況を迷惑と主張しても、分が悪い感は否めない。
核の力、原子力にしても、それが発見された当初は、兵器としての利用は脅威であり悲劇ではあっても、電力を生むエネルギー源としての利用は平和利用であり私達の生活を豊かにするものとして多くの人々に期待され、希望を託された感は否めない。しかし、スリーマイル、チェルノブイリ、福島、と、忘れかけたころに繰り返される悲劇を見れば、あるいは、将来何世代にもわたって負担となっていくような廃棄物の問題を考えれば、その期待・希望が甘すぎる考えであったことも、また、否めない。
しかし、その甘すぎた考えに大した反省もないままに、2012年6月現在、民主党・野田佳彦政権も、その批判者たるべき最大野党・自民党も、原発再稼動に突き進もうとしている(社民・共産などの小政党、あるいは第三極などと見られる他の勢力が原発に反対するだけでなく、二大政党である民主党や自民党にも、少なくとも現時点では原子力体制に疑問を持つ向きもないではないが、世論はともかく、現実政治の政局の上では、どうも再稼動論に押されぎみである。それほどまでに原発利権は、旧来型の政治家にとっては甘い汁なのであろう)。技術革新の進んだ火力発電への移行が進んだ東電管内では差し当たり原発なしで暮らせそうであるが(賠償問題や福島原発の廃炉に向けた作業がどうなるかという問題を孕んだ中での束の間の安定であり油断はできないが)、仮に東電管内で脱原発が実現しても、隣の静岡・浜岡原発が再稼動され万が一のことがあれば、首都圏にも住んでいられなくなるのだが。
本書のチェルノブイリ体験者のインタビュー談話は、そうした現状への反省を否応なく迫るし、その他の本書の文章・詩・演説も、結局、現在の日本の問題は、歴史の教訓、警鐘を忘れ、あるいは省みない、活かさないことで深刻化したのではないかとの反省を余儀なくさせる。
本書の巻頭言的な坂本龍一の「心に響いた言葉たち」でも挙げられる田中正造(日本で最初の公害問題と言われる足尾銅山鉱毒事件を告発した)の、真の文明は山を荒さず、川を荒さず、村を破らず、人を殺さざるべし、という言葉は、原発に依存しすぎたこれまでのエネルギー体制への痛烈な批判としても通用するであろう。
「もっと読みたい人のために」の坂本龍一セレクションの項には、「自然を資源や投資の対象としてだけ扱う現在の文明から、ヒトも自然の一部だという当たり前な事実に基づいた、より高度な文明のグランドデザインのためのヒントとなる本を選びました」とある。このような視点は他の編者にも共通するものと思われるし、今後、どのような政治を選び、どのような社会を造っていくかを考える上では、省みられなければならない視点であろう。
全体の中では微小な疑問点ではあるが、私がそれでいいのかな、と思った点を一つ。坂本龍一の参照した情報ソースで一点YouTubeのアニメ動画に触れられているが、時代の流れであろうか。著作権の問題を気にして(公式チャンネル以外の)Youtube動画を敬遠するなど、今や、闇米を口にせずに餓死した裁判官と同様の「愚挙」なのだろうか(その後、国会で違法ダウンロードに刑罰を課す法改正が成立し、10月1日から施行されることとなった。が、Youtube等で権利処理を経ない動画を視聴する場合にそれらの視聴がストリーミング方式であることを根拠に刑罰の対象となる受信〔ダウンロード〕とは異なるといいうるのか、それともプログレッシブ・ダウンロードという一種のダウンロードでありやはり刑罰の対象となるのかは、いまだ議論が分かれているようである)。
その点はさておき、全体としては、共感したり考えを整理したりできる良好なブック・ガイドであり、文筆集であった。(敬称略)
2011年8月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
地震のあったことで、悩んだり、つらくなったり、考え込んでしまったりすることもあると思いますが、この本に書かれている言葉で少しすっきりしたり、気持ちを整理したりできればいいと思います。滋味深い言葉がありました。言葉としてひとつひとつに力があったように感じました。
2014年9月20日に日本でレビュー済み
こういう本が一番良くないです。本にするような内容はないです。
2011年10月6日に日本でレビュー済み
ゲーテの言葉に、行き先に迷ったら原点に戻れ、というのがある。3・11以降、日本丸は何を目指すのか、どのような航海をすればよいのか。3・11前後で、風景を、生活を観る目が変わった。大地震と、原発事故の前の日本はどこかおかしかったのだ。大地震対策の不備、原発安全神話、どこか浮ついていた。被災地の荒涼とした風景、日に日にあきらかになる放射能被害の実情をまのあたりするにつけ、遅ればせながら狂った現代社会再認識し、狂気が常識化していたことを反省せざるをえない。
本書編集のリーダー格であった坂本龍一さんは、3・11に遭遇して言葉を失い、音楽の無力さを感じ、大きな喪失感をもった。時間の経過のなかで、友人、知人とフェイスブックをとおして「3・11以降だからこそ胸にひびいていた言葉」(p.7)を「たくさんの文章や本をあげていくなかで、それを本にしようという話が起こり、・・・多くの人に共感してもらえる読書案内」(p.10)にしたのが本書である。
茨木のり子、竹村真一、セヴァン・カリス=スズキ、ローレン・トンプソン、中井久夫、寺田寅彦、丸山真男、伊丹万作、小田実、鶴見俊輔、吉部園江、スベトラーナ・アレククシエービッチ、手塚治虫、ダニエル・クイン、菅啓次郎、先住民族指導者の文章が連ねられているが、いずれも深く考えさせられるメッセージが続く。
チャップリンの「独裁者」をとおして主格の価値観がが逆転した現代社会について論じた丸山真男の「現代における人間と政治」、無責任感覚がが社会に蔓延していく構造を読みといた伊丹万作の「戦争責任者の問題」、市民運動の基本は「いくら何でもひどすぎる」という思いでデモ行進に集まることと語る小田実の「『われ=われ』」のデモ行進」、チェルノブイリ原発事故の悲惨さを市民感覚で告発したスベトラーナ・アレククシエービッチの「チェルノブイリの祈り」がとくに印象に残った。
手塚治虫の「アトムの哀しみ」、寺田寅彦の「津波と人間」も一読に値する。
本書編集のリーダー格であった坂本龍一さんは、3・11に遭遇して言葉を失い、音楽の無力さを感じ、大きな喪失感をもった。時間の経過のなかで、友人、知人とフェイスブックをとおして「3・11以降だからこそ胸にひびいていた言葉」(p.7)を「たくさんの文章や本をあげていくなかで、それを本にしようという話が起こり、・・・多くの人に共感してもらえる読書案内」(p.10)にしたのが本書である。
茨木のり子、竹村真一、セヴァン・カリス=スズキ、ローレン・トンプソン、中井久夫、寺田寅彦、丸山真男、伊丹万作、小田実、鶴見俊輔、吉部園江、スベトラーナ・アレククシエービッチ、手塚治虫、ダニエル・クイン、菅啓次郎、先住民族指導者の文章が連ねられているが、いずれも深く考えさせられるメッセージが続く。
チャップリンの「独裁者」をとおして主格の価値観がが逆転した現代社会について論じた丸山真男の「現代における人間と政治」、無責任感覚がが社会に蔓延していく構造を読みといた伊丹万作の「戦争責任者の問題」、市民運動の基本は「いくら何でもひどすぎる」という思いでデモ行進に集まることと語る小田実の「『われ=われ』」のデモ行進」、チェルノブイリ原発事故の悲惨さを市民感覚で告発したスベトラーナ・アレククシエービッチの「チェルノブイリの祈り」がとくに印象に残った。
手塚治虫の「アトムの哀しみ」、寺田寅彦の「津波と人間」も一読に値する。