本著はアルバカーキートリビューン紙が、1939年ころからインフォームドコンセントなしに、プルトニウムを直接人体に注射する人権無視の人体実験を少なくとも18人に対しアメリカが隠密に進めていた事件について、徹底的に独自調査し、エネルギー省に対し、情報公開請求し、ジグソーパズルのような謎について究明していった壮大な記録である。
核というものを見つけてしまった科学者の中で、オッペンハイマーやエンリコ・フェルミをはじめとするマッドサイエンティストたちが、戦時下において「50万人殺戮計画」を宿命とし、ナチスの毒ガスを超える尋常ではないプルトニウムという猛毒物質が、人体においてどういった挙動を行うのかを実際に余命いくばくかの老若男女の患者に直接注射していき、あるものは1年半で死に、あるものは50年くらい生きていくという結果になったことが判明したのである。
プルトニウムの挙動が人体でどのようになるのかを見るため、尿・便の採取から始まり、死亡すると、内臓・骨にまで実験にかけられた人々の遺族の同意もなく、ある場合には墓まで掘り返して調査していたのである。
主に、肝臓や脾臓、骨にたまり細胞をずたずたにしていたようであることが記載されている。
このマンハッタン計画は実は「部隊名」であり、原爆の父オッペンハイマーは、原爆そのものの熱線での即死についてはあまり興味があったとは思えないことがわかる。
あくまで放射性物質により汚染された食物摂取によるプルトニウム等の毒性を「黄色い猿」であった日本人に向けて最早、ドイツ降伏とソ連による侵攻により時間の問題であったポツダム宣言を受諾する直前の日本国に非情にも原爆をウラン型とプルトニウム型の2発も落として、その後を「実験」したのである。加えて一般人への無差別殺戮は国際法上完全なる違反行為であることは言うまでもない。
肥田舜太郎医師の証言にもあるように、被爆地で入市被爆して死亡した御遺体を米軍は取り上げて、返ってきたのは親指1本だけだったというのは、放射性物質が人体内でどういった挙動をするのかをみるために取り上げていったのであるということは明白であることがわかる。
日本人医師たちが治療、診療した記録でさえ取り上げていったのであるからなおさらである。
現在でも、エネルギー省はマンハッタン計画の実験データの情報公開を拒んでいるようであり、ICRPやIAEAはこれらのバックデータを某大に蓄積し、原発産業と綿密な連携を図っているのであろうことは想像に難くない。
また、18人どころか数千人に実験が及んでいる可能性がでてもいるのである。
アイゼンハワーの「Atoms for peace」が偽善であることは、明白であるのだ。
終盤には、広瀬氏らしく、ロスチャイルド財閥との関係などを分析していて興味深いので、こちらも読んでみるとなかなか面白い。
しかしながら、本著を読み終えて、都市部での原発事故が発生してしまった日本では、こうした人権無視の人体実験は放っておいても行われているような状況であり、プルトニウムに関しては最低でも45kmまで飛んでいることがわかっているわけで、それ以降に調査する気配がない日本政府は非常に危険であると思われる。
福島で有名になった人物の言葉を借りれば、
「これから福島という名前は世界中に知れ渡ります。福島、福島、福島、何でも福島。
これは凄いですよ。もう、広島・長崎は負けた。福島の名前の方が世界に冠たる響きを持ちます。
ピンチはチャンス。最大のチャンスです。何もしないのに福島、有名になっちゃったぞ。
これを使わん手はない。何に使う。復興です、まず。 」
よくこんなことを言えたものだと戦慄すら覚える。
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プルトニウム人体実験: マンハッタン計画 単行本 – 1994/11/1
アルバカーキー トリビューン
(編集),
広瀬 隆
(翻訳)
- 本の長さ366ページ
- 言語日本語
- 出版社小学館
- 発売日1994/11/1
- ISBN-104093894515
- ISBN-13978-4093894517
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
原爆開発に奔走していた1940年代のアメリカ。その過程で18人の一般市民に対し、プルトニウムを注射するという人体実験が行われていた。「戦後最大のスキャンダル」として全米を揺さぶる「国家の犯罪」追跡の全記録。
登録情報
- 出版社 : 小学館 (1994/11/1)
- 発売日 : 1994/11/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 366ページ
- ISBN-10 : 4093894515
- ISBN-13 : 978-4093894517
- Amazon 売れ筋ランキング: - 576,701位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
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2012年3月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2014年9月17日に日本でレビュー済み
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国が自国の国民をこのように扱うのか、と驚きと共に警鐘を感じる。社会の、歴史の教科書には出てこない人間の恐ろしい歴史の一コマをまざまざと見せてくれる。そして更に驚くことは、その非人間的な行為を暴露し被害者たちに伝え人々に真実を伝えたのが一地方紙の女性記者だったことだ。戦争に関わってこのような恐ろしい研究に手を染めたのはなにもアメリカだけではない。しかし得体の知れないプルトニウムという特殊な放射性元素についての人体実験であるがゆえに許しがたい犯罪実験だと思う。事実真実は探し求めなければなかなか見つけられないものだ。多くの人々に読んで欲しいと思う。
2014年5月17日に日本でレビュー済み
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「プルトニウムファイル」の著者であるアイリーンウェルサム氏(アルパカーキートリビューン)の記事をまとめた本。調査報道の臨場感がいい。
いい本なんで星5つけたいけど、解説者(訳者)の書いた第三部が残念すぎるので3個。
参考:
プルトニウムファイル(翔泳社)
http://www.amazon.co.jp/dp/4798130885
いい本なんで星5つけたいけど、解説者(訳者)の書いた第三部が残念すぎるので3個。
参考:
プルトニウムファイル(翔泳社)
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2017年8月17日に日本でレビュー済み
アメリカがアメリカ国民に対して行った人体実験の詳細な報告書。実験対象となった被害者の写真が掲載されている。被害者の中には5歳の少年がいる。よくぞ、この狂気の事実を明らかにしてくれた❗️アメリカのおぞましい恥部・ダークサイドであるが、アメリカ一国に限ったことではない。第二次世界大戦中のナチス・日本の731部隊の蛮行も同罪である。アメリカは広島にウランを用いたリトルボーイを投下した。この一発で充分なのに、さらに長崎にプルトニウムを用いたファットマンを投下した。日本人を人間とみなさない野蛮な実験を強行したアメリカ。アメリカに言い逃れはできない❗️ その後のベトナム戦争でどれだけの量の枯葉剤をぶちまけたか、世界は確かに記憶している。イラクに劣化ウラン弾に形を変えて、核のゴミを撒き散らしたのは、つい最近のこと。次の戦争を起こしたくてウズウズしているアメリカ。私が生まれた60年前と、世界は何も変わっていない。全く進歩していない。血が流されるたびに地球が身震いして、地震や集中豪雨が発生する。人類の滅亡が絵空事でなくなった。
2007年7月24日に日本でレビュー済み
本書の第1部の最初のページを読みはじめると、みぞおちあたりが締め付けられ、吐きたい気分になりました。米国のAlbuquerque Tribune紙でプルトニウム人体実験について詳細に調査した内容を記事としたことでピューリッツア賞を受賞したEileen Welsomeの"The plutonium experiment"を翻訳した本書、私にとって衝撃な本でした。
第1部はプルトニウムを注射されて人体実験された18名に関する内容(執筆はEileen Welsome記者担当)、第2部は医師や放射性物質取り扱いの現場などで働いた人々の事故などを中心に解説(執筆はAlbuquerque Tribune)されます。
本書は単なる翻訳本ではなく、翻訳者の広瀬隆氏によって第1部の前に「ウェルサム記者のレポートについて」と題して本書を読むのに役に立つ計画の背景や関係する人物、放射性物質の単位などの基本知識が20ページにわたって提供され、第3部は広瀬隆氏自らの解説として、マンハッタン計画や実験が明るみに出て以降の社会的な反応などについて紹介されます。
アメリカは最初の原爆の実験で自国の兵士を爆心地から遠くない場所に配したり、広島・長崎の原爆投下後にその被爆の影響を評価するため、原爆傷害調査委員会を設置したりしています。戦争が狂気を生んだのか、このような狂気を人間は本来的に持っているのか、考えさせられます。
ひとりのジャーナリストの長年にわたる地道な調査が隠蔽された一国のスキャンダルを太陽の下に曝しました。暗部ともいえるこの実験に関する本を読むには心の準備が必要ですが、多くの人、特にジャーナリストを目指す人には是非、読んで欲しい本です。
第1部はプルトニウムを注射されて人体実験された18名に関する内容(執筆はEileen Welsome記者担当)、第2部は医師や放射性物質取り扱いの現場などで働いた人々の事故などを中心に解説(執筆はAlbuquerque Tribune)されます。
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アメリカは最初の原爆の実験で自国の兵士を爆心地から遠くない場所に配したり、広島・長崎の原爆投下後にその被爆の影響を評価するため、原爆傷害調査委員会を設置したりしています。戦争が狂気を生んだのか、このような狂気を人間は本来的に持っているのか、考えさせられます。
ひとりのジャーナリストの長年にわたる地道な調査が隠蔽された一国のスキャンダルを太陽の下に曝しました。暗部ともいえるこの実験に関する本を読むには心の準備が必要ですが、多くの人、特にジャーナリストを目指す人には是非、読んで欲しい本です。
2004年2月24日に日本でレビュー済み
原子爆弾、水素爆弾の威力、破壊力を検証するために実証するために科学的に分析しデータを収集するために歴史の悲劇が行われて来たのならば、一体全体無念の思いでこの世を去った彼らの人生とは何だったのか、戦渦の中で壮大なる実験場としてわが国が利用され結果的に幾千万の被害者を生み出し、今尚中東の地で劣化ウラン弾という別の形の核の悲劇が発生している現実を直視すればアメリカという国家の真の姿が見えるはずだ