下巻は三原監督率いる西鉄の日本シリーズ対巨人戦3連勝、セリーグの万年最下位球団大洋ホエールズの監督になり、この球団を優勝に導いたこと、さらに近鉄、ヤクルトの監督を経て、日本ハムの球団代表になり、勇退して、逝去するまで。
何と言っても、ノンプロに毛が生えた程度の力しかなかった西鉄をパリーグの覇者に導き、日本シリーズで巨人を叩いて3連覇した実績が凄い。わたしが知っていたのはその事実だけであったが、本書を読むと三原人事が冴えわたっていることがよくわかる。中西、豊田、高倉などまだ球歴の浅かった高卒球児を周囲の雑音にはお構いなしに辛抱強く使い、自らがスポーツ記者だった経験を生かしてマスコミを上手に利用して心理作戦を企てた実績は、ただものではない。弱小球団大洋ホエールズをセリーグ優勝させたこともさることながら、日本シリーズでは誰もが圧勝と予想していた強打の大毎オリオンズ(西本監督)を4−0で下したことも、思い出した。
三原監督のコンセプトは、合理的な野球の追及であり、プロに徹した選手を育て上げたこと、また野球を知らない球団オーナー、フロントと一線を画し、真の意味でのスポーツ、ベースボールの在り方を追求したことにある。しかし、三原のその正論は、巨人(ジャイアンツ)のあこぎな振る舞いに見て見ないふりをし、野球を企業の広告塔としてしかみない球界では異端視され、常に反チーム内外の反三原グループと対峙しなければならなかった。
本書では西鉄ライオンズが黒い霧事件の影響を受けて凋落し、消滅していくプロセス、また所謂江川問題の真相を追究しながら、三原野球の真髄を浮き彫りにしている。著者はその三原野球によりそいながら、舞台裏の実相を、綿密な取材をもとに克明に描き、この人でなければ書けなかった球界のドラマに迫った。著者渾身の力作である。

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魔術師 下: 三原脩と西鉄ライオンズ (小学館文庫 た 3-2) 文庫 – 2005/4/1
立石 泰則
(著)
巨人を追われ巨人を倒し球界改革を夢見た
昭和33年の日本シリーズ読売ジャイアンツvs西鉄ライオンズ。3連敗後の4連勝で巨人を倒した三原脩監督の生涯を描いたノンフィクション。彼が追い求めたものは現在の日本プロ野球が見失ってしまったものだった。
昭和33年の日本シリーズ読売ジャイアンツvs西鉄ライオンズ。3連敗後の4連勝で巨人を倒した三原脩監督の生涯を描いたノンフィクション。彼が追い求めたものは現在の日本プロ野球が見失ってしまったものだった。
- 本の長さ541ページ
- 言語日本語
- 出版社小学館
- 発売日2005/4/1
- ISBN-104094054928
- ISBN-13978-4094054927
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登録情報
- 出版社 : 小学館 (2005/4/1)
- 発売日 : 2005/4/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 541ページ
- ISBN-10 : 4094054928
- ISBN-13 : 978-4094054927
- Amazon 売れ筋ランキング: - 823,401位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2013年3月11日に日本でレビュー済み
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2018年4月12日に日本でレビュー済み
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日本のプロ野球の歴史がすべてわかる内容です。すごい時代と今でも同じ様なことでもめている野球界の体質を知ることができた。また野球に限らずすべての業界に言える内容であった。
2006年9月6日に日本でレビュー済み
前書きの欄に、出版に至るまでの経緯が少し、記してあったが、著者は、この作品に相当のこだわりをもっていたように思えた。
この辺の気持ちは、私も、駄作ながらも、著作を持っているので、よくわかったが、この本を開いてみて、何ら、それに恥じない作品であることがよくわかった。
これまで、三原脩という人についての本は、自伝も含めて、他にも色々と読んでいたが、「自伝よりも他者の方が客観的に見ることが出来る」ということをこれほど、立証した作品も珍しいのでは無かろうか。
それほどに、この本は緻密な取材、構成で成り立っており、これまで見えてこなかった三原脩像というものが見えてくるような気がする。
この辺の気持ちは、私も、駄作ながらも、著作を持っているので、よくわかったが、この本を開いてみて、何ら、それに恥じない作品であることがよくわかった。
これまで、三原脩という人についての本は、自伝も含めて、他にも色々と読んでいたが、「自伝よりも他者の方が客観的に見ることが出来る」ということをこれほど、立証した作品も珍しいのでは無かろうか。
それほどに、この本は緻密な取材、構成で成り立っており、これまで見えてこなかった三原脩像というものが見えてくるような気がする。
2008年7月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
上巻もだが、とにかく筆者の取材にかける意欲がすざまじいと感じた。証言や参考文献をもとに書かれたノンフィクションであるが、素晴らしい臨場感である。そのうえ、記述が細かい。ただ、三原の生涯と直接関係のないような枝葉の部分について(ドラフト制度、江川問題のことなど)もやたらと細かく書かれているので、少々閉口した。
プロ野球の歴史に関心のある方は、興味深く読むことができるであろう。
プロ野球の歴史に関心のある方は、興味深く読むことができるであろう。