日航機墜落事故と言えば、自衛隊員に後ろから抱きかかえられた女の子が、ヘリコプターにロープで釣り上げられていくシーンを鮮明に思い出せる程、TVで何度も報じられて来た。しかし、その自衛隊員が、あの救出直後に何を思い、何を考えたかは、後に著者の門田隆将氏が本人に取材して、本書の第一章「戦士は戻りぬ」に記述しない限り歴史の断片として埋もれたままであっただろう。物理的な救出にとどまらず、心の救出にまで思い至っていた自衛隊員は、何と素晴らしい方であろう。涙なしに読むことはできない。
520名の人命を奪った未曽有の航空機事故。事故に関してご遺族に語っていただくことは憚れるであろう中、おそらく著者の信念や熱意が伝わって胸の内を明かしてくれた方々への取材から本書は成り立っている。
私たちは、ブラックボックスに遺されたレコードで、墜落に至るまでの操縦室の緊迫した様子を聴くことができる。機長と副機長が、コントロールできなくなった機体を何とか操縦しようと、わめきに近い機長の指示に一生懸命に返答し従う副機長。指示と応答が途切れることなく繰り返され、最期には諦念にも似た機長のかけ声で山に突入し終える。聴いている間、体中にぐっと力が入り、涙が出て来るのをとどめられなかった。
航空機操縦に関して、墜落は可能性としてゼロでないことは機長も副機長も分かっていたであろう。可能性としての危機に実際に直面した時、どうしようもできない時、何とかしようとする意思と行動を働かせる人たちがいた。
私は、同じことを福島原発事故に対処した吉田所長に重なって感じる。原発運転に関して、メルトダウンは可能性としてゼロでないことを頭の片隅で分かっていただろうが、全電源喪失という危機に直面して、何とかしようと意思決定し行動された。
著者は吉田所長について「死の淵を見た男」で著したが、日航機事故の機長や副機長については著されていない。ご遺族や企業の取材の壁はあるのかもしれないが、本書巻頭の言のように「勇者」であることをレコードに遺した方々についても是非知りたいと思った。
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尾根のかなたに 父と息子の日航機墜落事故 (小学館文庫) 文庫 – 2012/9/6
門田 隆将
(著)
遺族が辿った不屈の物語
1985年8月12日。航空史上未曽有の悲劇。遺族の悲しみと苦しみは想像を絶した。なんの予兆もなく突然、愛する者を奪われた家族たちは、うろたえ、動揺し、泣き叫び、茫然となった。
父を失った「息子」たちは、やがて「父親」となった。ノンフィクション作家・門田隆将は思った。「あの、寡黙な男たちこそ、何かを後世に伝える義務があるのではないか」――。
<私は、今は「父親」となった当時の「息子たち」を訪ねる作業を始めた。それは決して愉快なものではなかった。訪ねていっても、胸の内を吐露してくれる男たちはむしろ少なかった。今なお、自らの内面を「語る」ことに納得ができていない男たちの方が多かったのだ>(「はじめに」より)
しかし、何人かが取材に応じてくれた。彼らは四半世紀という長い年月を経て、苦悩と悲しみを克服していった。
哀しみの「時」は、いつまでその針を刻み続けるのだろうか。最愛の人を事件や事故で奪われた家族は、どうやって絶望を克服できるのか。
本書で取り上げる5つの「父と息子の物語」に、そのヒントがある。
『風にそよぐ墓標』、待望の文庫化。2012年10月、WOWOWにてドラマ化決定!
【編集担当からのおすすめ情報】
神が与えたというしかない大きな試練への直面、そして克服。彼らが胸の内を語るまでには、決して短くはない時間が必要だったのかもしれません。
人生に悩み、くじけそうになった人にこそ読んでみてもらいたい感動のノンフィクションです。
1985年8月12日。航空史上未曽有の悲劇。遺族の悲しみと苦しみは想像を絶した。なんの予兆もなく突然、愛する者を奪われた家族たちは、うろたえ、動揺し、泣き叫び、茫然となった。
父を失った「息子」たちは、やがて「父親」となった。ノンフィクション作家・門田隆将は思った。「あの、寡黙な男たちこそ、何かを後世に伝える義務があるのではないか」――。
<私は、今は「父親」となった当時の「息子たち」を訪ねる作業を始めた。それは決して愉快なものではなかった。訪ねていっても、胸の内を吐露してくれる男たちはむしろ少なかった。今なお、自らの内面を「語る」ことに納得ができていない男たちの方が多かったのだ>(「はじめに」より)
しかし、何人かが取材に応じてくれた。彼らは四半世紀という長い年月を経て、苦悩と悲しみを克服していった。
哀しみの「時」は、いつまでその針を刻み続けるのだろうか。最愛の人を事件や事故で奪われた家族は、どうやって絶望を克服できるのか。
本書で取り上げる5つの「父と息子の物語」に、そのヒントがある。
『風にそよぐ墓標』、待望の文庫化。2012年10月、WOWOWにてドラマ化決定!
【編集担当からのおすすめ情報】
神が与えたというしかない大きな試練への直面、そして克服。彼らが胸の内を語るまでには、決して短くはない時間が必要だったのかもしれません。
人生に悩み、くじけそうになった人にこそ読んでみてもらいたい感動のノンフィクションです。
- 本の長さ304ページ
- 言語日本語
- 出版社小学館
- 発売日2012/9/6
- 寸法10.5 x 1.5 x 15 cm
- ISBN-104094087532
- ISBN-13978-4094087536
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登録情報
- 出版社 : 小学館 (2012/9/6)
- 発売日 : 2012/9/6
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 304ページ
- ISBN-10 : 4094087532
- ISBN-13 : 978-4094087536
- 寸法 : 10.5 x 1.5 x 15 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 155,653位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 784位小学館文庫
- - 33,425位ノンフィクション (本)
- - 45,003位文学・評論 (本)
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2020年3月19日に日本でレビュー済み
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2024年4月20日に日本でレビュー済み
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何故落ちたのか?の原因究明が必要。今からでも遅くない。何故墜落場所が特定出来なかったのか?機内の写真は圧力隔壁がないのに何故呼吸困難になっていないのか?何故垂直尾翼が無く30分も飛べたのか?そして墜落の真の原因はなにか?
2019年6月23日に日本でレビュー済み
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事故の遺族のその後については知らなかったので、とても感動しました。良かったです。
2018年9月1日に日本でレビュー済み
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門田先生の人間味あふれる取材記録に感動し涙した作品である。
2020年1月11日に日本でレビュー済み
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第一章の空挺の内容は、改めて自衛隊の方々への感謝の気持ちがこみ上げてきますが、二章三章と読み進むに連れ、人の人生が一瞬で悲惨な状況に突き落とされる様に胸が詰まって読み進めなくなります。
各章で、被害者が様々な偶然から事故に巻き込まれていく様子、取り残される家族に起こる苦難を、目に浮かぶような表現でつずっています。
書籍としては良く出来ていると思いますが、心の弱い方にはお薦め出来ません。
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2016年4月21日に日本でレビュー済み
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墜落遺体。墜落現場と読んで購入。
長男が家族を守るために奮闘する所は、
自分の過去とも重なり涙が出てきました。
門田氏は、他の著作も好きです。
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2015年12月20日に日本でレビュー済み
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有名な御巣鷹山の航空事故です。
同じ作家さんのほかの本を読んで、読みやすい文章だったので買ってみました。
当事者の気持ちが分かりやすく描かれていて、まるで自分の身に起きたことのように、心に迫りました、
「なぜ絶望と闘えたのか」というテーマは、作家さん自身のテーマでもあるのでしょうか。
ふつうに過ごしている、この毎日が、幸せなことなんだなあと再確認しました。
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2015年4月27日に日本でレビュー済み
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『沈まぬ太陽』が加害者目線なら、今著は被害者の目線。
事故当時、ニュース速報のテロップで見た記憶はいまだに消えません。
すべての人が「幸せになること」を願わずにはいられません。
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すべての人が「幸せになること」を願わずにはいられません。