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RIGHT×LIGHT10 (ガガガ文庫) 文庫 – 2010/10/19
魔狼消失!? ケースケ絶体絶命の危機!!
瞼を開いた僕の視界は、少女の顔に占領されていた。肩まで切りそろえられた黒い髪。陶器のような白い肌。僕のよく知る女の子。
「未由?」
名前を呼ぼうとして、声が出せないことに気づく。僕の口は未由の唇に塞がれていた。
「よかった。起きてくれた」
唇を触れ合せながら呟く未由。その彼女の口元から赤い雫が伝う。瞳からは涙が零れる。
「未由、いったい何を……」
問いかけると、彼女はその表情に暗い影を宿しながら、少しずつ僕の傍から遠ざかった。背後に見えた景色は――動かない雲。張り付いた空、どこまでも続く白い砂浜。僕はここでずいぶん長い間気を失っていたらしい。
「啓介くんがすごく苦しそうで……全然目を覚ましてくれなくて……腕も、そんな状態で……見てられなくて……」
未由は震える声で言った。そして僕はひとつだけ「現実」を把握する。もう無いんだ。僕の――≪魔狼≫は。僕はもう「英雄」ではないんだ。途方にくれながら、未由とふたりきり、僕はその奇妙な世界のなかをとぼとぼとさまよい歩く。あてどなくその世界――アリッサの故郷である≪方舟≫の内部を、未由とふたりで歩き続けた。
ケースケ絶体絶命の第十巻。
瞼を開いた僕の視界は、少女の顔に占領されていた。肩まで切りそろえられた黒い髪。陶器のような白い肌。僕のよく知る女の子。
「未由?」
名前を呼ぼうとして、声が出せないことに気づく。僕の口は未由の唇に塞がれていた。
「よかった。起きてくれた」
唇を触れ合せながら呟く未由。その彼女の口元から赤い雫が伝う。瞳からは涙が零れる。
「未由、いったい何を……」
問いかけると、彼女はその表情に暗い影を宿しながら、少しずつ僕の傍から遠ざかった。背後に見えた景色は――動かない雲。張り付いた空、どこまでも続く白い砂浜。僕はここでずいぶん長い間気を失っていたらしい。
「啓介くんがすごく苦しそうで……全然目を覚ましてくれなくて……腕も、そんな状態で……見てられなくて……」
未由は震える声で言った。そして僕はひとつだけ「現実」を把握する。もう無いんだ。僕の――≪魔狼≫は。僕はもう「英雄」ではないんだ。途方にくれながら、未由とふたりきり、僕はその奇妙な世界のなかをとぼとぼとさまよい歩く。あてどなくその世界――アリッサの故郷である≪方舟≫の内部を、未由とふたりで歩き続けた。
ケースケ絶体絶命の第十巻。
- 本の長さ341ページ
- 言語日本語
- 出版社小学館
- 発売日2010/10/19
- ISBN-104094512365
- ISBN-13978-4094512366
登録情報
- 出版社 : 小学館 (2010/10/19)
- 発売日 : 2010/10/19
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 341ページ
- ISBN-10 : 4094512365
- ISBN-13 : 978-4094512366
- Amazon 売れ筋ランキング: - 2,393,989位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2015年6月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
6年前に読み始めたものだが、いろいろあって7年近くも続きを読めなかった。最近結末が気になり最後まで読もうと近くの書店に行ったが置いておらず半ば諦めかけたがアマゾンなら手に入るだろうと思い購入した。これから読むつもりであるので楽しみにしている。
2010年11月25日に日本でレビュー済み
エノクとの戦いで瀕死を彷徨い、突然≪方舟≫に飛ばされた啓介から始まる本巻。アリッサは囚われ、右腕を失い、街を、みんなを助ける機会も役割も失った「ただの人」という敗北感と虚無感と寂寥感に覆われる重い序盤から始まる。アリッサの叔母【スーラ】の客観的な指摘はもとより、同じく≪方舟≫に転移された友月の優しい言動までもが心に突き刺さっていく。周りから取り残される疎外感や、ちょっとしたすれ違いもあって、何とも言えない憂いを湛えていくのだが、「そういえばここにいたねぇ」という意外な人物の登場が、啓介の諦め切れない想いの後ろ盾になっていく妙味が中盤から見られた。≪方舟≫周辺から≪箱庭≫へ、そして、さらに奥深くまで巡っては啓介の想いが確固たるものとなっていく。全てを失った啓介に出来る唯一の事として、その確かで強い想い、諦めない気持ちがクローズUPされていく、その心境の変化が巧みに描かれていた。≪方舟≫特有の事情による幸運も味方したり、周りの面々が次々とヘルプ役になっていくような、若干都合の良い展開にも見えるが、後ろ向きになりかけていた啓介の心のベクトルが変化していく流れは悪くない。≪方舟≫の秘密も相応に明かしながら、啓介の心の準備が改めて整っていく良さがあった。まぁ、実際のところは無力のままではあるが、ここからどう盛り返していくのかはお楽しみということである。何しろ精神だけでとんでもない力を発揮し、とんでもない逆転を招き、とんでもない希望すら見出せる強さを披露したのだから。さらには、何故か≪方舟≫にいた由衣の正体と、その後の“兄妹喧嘩”で物理的な力まで得るオマケ付きである。また、シリーズ全体としては未だ不明な点も残されていることや、アリッサの出番がほとんど無かったことが次巻以降のお楽しみをさらに増やすことになっており、代わりといっては何だか、ほぼ出ずっぱりな友月が、いろいろとおアツい部分を一手に引き受けて頑張っている。しかし、「英雄」というのは全知全能の存在だなぁ。